バカ達と双子と学園生活   作:天星

165 / 243
夏休み編 After
プロローグ


 皆と海へ旅行に出かけ、そして帰ってきてから翌日の朝。

 僕はいつものように目を覚ました。

 

(……少々早すぎたか。まあいい)

 

 寝起きでぼやけた頭を集中を使って強引に覚醒させ、今日の予定を確認する。

 

(確か、今日はいくつかの漫画の発売日だったな。

 あの名作のパラレルワールドを描いた作品『照-Teru- Side雀』

 かの名作の敵国サイドの姿を描く作品『米これ 日の丸サイド!』

 例の名作に出てくる苦労人の日常を描く作品『Goddes Beats!! Toward Sun Door』

 伝説の名作のある意味では正式な続編『ばねの人々』

 ……何と、4つも出るじゃないか! 今日は素晴らしい日だ!!)

 

 気分が良いので、とりあえず本屋へと向かう事にする。

 当然まだ店なんて開いてないが……問題ない。いざとなればピッキングしてしまえば良い。

 あ、窃盗なんて真似はしないよ? 金はちゃんと置いていく。

 

「さぁ、いざ行かん!!」

 

 気合を入れてドアを開けた所で……

 

「あ、おはようございます。空くん」

 

バタンッ!!

 

「……僕、最近疲れてるのかなぁ……」

 

 現実逃避しても何も解決しないので、恐る恐るドアを開ける。

 

「空くん、大丈夫ですか? 何かあったんですか?」

「……まぁ、ね」

 

 はい、どこからどう見ても僕の彼女です。

 ……ところでさぁ……

 

「おまえ、いつから居たんだ?」

「えっと……30分くらい前からでしょうか?」

「……インターホンを鳴らそうという発想は無かったのか?」

「寝てるかもしれないと思いまして」

「まぁ、確かにそうなんだけどさ……

 ……ちょっと来い」

「え? はい」

 

 とりあえず瑞希を家に上げて適当な場所で待たせる。

 さて、と。

 

 

  ……10分後……

 

 

「……完成だ。受け取れ」

 

 作成したものを瑞希に投げ渡す。

 

「わっ、とっとっ。これは……鍵ですか?」

「うちの合鍵だ。樹脂を固めて適当に削っただけの安物だがな」

「も、もしかして、今作ったんですか……?」

「ああ。明久の鍵を複製する時に必要な道具は一式揃えたからな。

 まさかこんな早く使う事になるとは思ってなかったが」

「でも、これって貰っちゃって良いんですか?」

「勝手に複製したり、人にあげたりしなきゃな。

 まぁ、お前なら心配ないと思うが」

「はいっ! 大切にしますね!!」

 

「…………で?」

「はい?」

「何か用があったんじゃないのか?」

「……?」

「わざわざ家の前で張り込んでいた理由を聞かせてほしいんだが?」

「理由が無いとダメですか?」

「なるほど、特に理由は無いと。

 ……じゃあ何しに来たんだお前!!」

「えっと……空くんと一緒に居たかったから。ですかね」

「……深く考えるだけ無駄らしいな。

 僕はこれから本屋に行くが、付いてくるか?」

「はいっ!」

「じゃ、行くぞ」

「……ちょっと待ってください? ついスルーしちゃいましたけど、本屋ってまだ開いてないですよね?」

「開いてないなら開ければ良いじゃないか」

「どうやって開ける気ですか!?」

「ここに鍵を複製するキットがあるだろう?」

「いやいや、型が無いと無理ですよね?」

「無理だと思うか?」

「……空くんならやりかねないですね」

「よく分かってるじゃないか」

 

 あの店が扉を解錠する場面は何度か見ている。当然、鍵も。

 その記憶を頼りに複製を試みたら……多分70%くらいの確率で成功するんじゃないかな。

 

「でも、開店する前に店に入ったら普通に不法侵入で捕まってしまうのでは?」

「……新刊の本を一冊しか用意していない店が悪い!!

 裁判になったらそう訴えれば良いさ」

「捕まる前提で話さないでくださいよ!!」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。