バカ達と双子と学園生活   作:天星

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夏休み編 幕間
明久と優子の場合


「……ねえ明久くん」

「……優子さんが何を言いたいのかは分かるよ」

「そう? それじゃあ……」

「……ごめん、僕にもよく分からないんだ」

 

 彼らが何を話しているのか。

 その答えはシンプルだ。

 

「「浜辺のカップルって、何をすれば良いんだろう(のかしら)……」」

 

 ……なんとも、贅沢な悩みだった。

 

 

  ………………

 

 

 このカップル、とりあえず二人になってみたは良いが、そこから先がどうして良いか全く分かっていないようだ。

 

「あのさ、怒らないでほしいんだけど……

 優子さんって誰かと付き合ってたことってある?」

「あ、あるわけないでしょ!? 明久くんが初めてよ!」

「僕も優子さんが初めてだよ。だからさ、初めて同士がこうやって話してても良い案は思いつけないと思うんだ」

「それは言えてるかも……じゃあどうするの?」

「誰か身近で付き合ってる人を参考にする……とか?」

「それは良い案ね。それじゃあ……」

 

 と、少し考えた後に黙り込んでしまう。

 

「? 優子さんどうしたの?」

「……私たちの身近に、まともな人が居ない……?」

 

 まあ無理もない。Aクラスは優等生の集まりであるが故に『恋愛にかまってるヒマなんて無い!』という思考の人が多く、Fクラスは劣等生の集まりであるが故に『お前は恋愛しないのかって? 喧嘩売ってんのかゴラァ!!』と、血の涙を流すような奴が多い。

 ……え? 代表コンビ? 論外です。

 後は秀吉と光くらいだが……

 

『よっし、姫路城完成っ! 次は安土城ね!』

『どうやって作るのじゃ!? アレの外見に関する資料は残っておらんはずじゃが!?』

 

 ……ご覧のように何か常人では真似できなさそうな事をなさっておられるので全く参考にならない。

 

「よ、よしっ、それじゃあさ、アニメはドラマ、小説から参考にするっていうのは?」

「しょ、小説っ!?」

「え? いや、別に小説にこだわらなくても良いけど?」

「そ、そうね。ごめんなさい」

「? 別に良いけど……」

 

 そうして二人は考え始める。カップルらしいシチュエーションを。

 ……だが……

 

(……どうしよう、僕の家って電気代すらも節約してたからロクにアニメとかドラマとか見てないような……

 小説は論外だし……)

(うちではあんまりテレビとか見てないのよね。そんな暇があったら勉強するか……あのジャンルの小説くらいしか読んでない。

 でもアレを私と明久くんとの関係に適用させるのは……)

 

 

 

 ……その後数十分間、二人はうんうん唸っていたが、遠くからカメラを構えていた康太曰く

『…………その雰囲気は完全にカップルの物だった』

 ……との事だ。

 

 

  ……そして数十分後……

 

 

「そうか! 分かった!!」

「え、分かったの!?」

「分かったよ優子さん、考えてみれば簡単な事だったんだ!!」

「どういう事?」

「いいかい、僕達は海に来てるんだよ?

 だったら、泳げば良いに決まってるじゃないか!!」

「そ、そういうものなのかしら……?」

「だって、こんな広い場所で泳ぐなんて、今しかできないことだよ?」

「確かにそうかもしれないけど……」

「だから、何をするにしてもまず泳ごう!!」

「……そう、かもね。そうしましょうか」

 

 微妙に呆れたような表情を浮かべながらも、彼女は頷いた。

 

 その後、彼らは『いかにもカップルだ!』と言えるような行動は取らなかったようだが……

 きっと二人で楽しめていたのだろう。


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