祭りを無事に終え遊び尽くした僕達は、現在、帰りの車の中に居る。
え? ミスコンはどうなったって? 何か審査員のスポンサーが中国人の出場者にセクハラしたり、それに司会がブチ切れたりして大騒ぎになってお開きになったよ。
残念ではあるな。あのまま進んでいればAクラス女子4人が上位を独占してただろうに。
……いや、あのアホな審査員の事を考えるとそうでも無いのか……?
「空凪くん、よくも騙してくれたわね」
「勝手に騙された方が悪い。っていうか勝手に尾行してたのが悪い」
「それはそうかもしれないけど……」
「優子、兄さんの性格が悪いのは今に始まった事じゃないわ」
「そうかもしれないけど……っていうか、姫路さんも加担してたのよね?」
「はい。ちょっと楽しかったです」
「楽しかったって……あなた本当に変わったわよねぇ……」
「『あの姫路が出場!』ってなれば他の連中も出場しやすいかな~っていう気遣いだ。伝わらなかったか?」
「いや、そもそもさっき『騙した』って言ってたじゃないの!!」
「細かい事は気にするな」
「はぁ……相変わらず本当に疲れる人ね……
姫路さん大丈夫? こんなのと一緒に居て疲れない?」
「大丈夫です。一緒に居られて、凄く幸せですから」
「……そう」
「そう言えば、どうして優子ちゃんだけ私の事を『姫路さん』って呼ぶんですか?」
「へ?」
「テスト勉強の時に名前で呼んでくださいって言ったのに、優子ちゃんだけが未だに名字呼びですよ。
そのせいか妙な壁を感じます。だから名前で呼んでください」
「そ、そうね。えっと……みず、き?」
「……なんだかまだ壁を感じますね。
もしかして、吉井くんの件で負い目を感じてるんですか?」
「え、それは……」
「もしそうなら、気にしないでください。
それが無理だったら、堂々としてて下さい。
あなたは自分でその立場を勝ち取ったんですから。
その立場にたどり着けなかった人の分まで、吉井くんを幸せにしてあげてください」
「…………そうね。ごめんね、瑞希」
「はい、これからも仲良くしていきましょうね。優子ちゃん!」
ホント、瑞希は変わったよな。
いやまぁ、変えたのは僕なんだが。
この変化は、何を齎すのだろうか?
そう言えば、行きの時と変わらず彼女は僕にひっついているが、行きの時ほどの鬱陶しさは感じない。
……まぁ、多少は感じてるんだが。
僕自身も変化している、という事なのだろうか?
この変化が、良い変化である事を祈ろう。
「瑞希、楽しかったか?」
「はい。とっても」
「なら、来年もまた来るか。
いや、ここじゃなくても良い。どっか行くか」
「はい、勿論です!!」