バカ達と双子と学園生活   作:天星

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06 心

「空凪くん、どこに行ってしまったんでしょうか……」

 

 この広い海水浴場を闇雲に探そうとしても体力が保たないですね。

 何か、手がかりは無いでしょうか?

 

 空凪くんが行きそうな場所。

 騒がしい場所じゃなくて静かな場所に行きそうな気がします。

 だからと言って部屋に戻っているという事もなさそうな気がします。

 海の中で潜水している……というのも無さそうですね。静かかもしれませんが危ないです。

 海で適当に泳いでいるか浜辺で休憩しているか……そんな感じでしょうか?

 そして静かな……人気の無い浜辺となると、海の家などの施設からやや遠い不便な浜辺、でしょうか?

 だったら海岸線沿いに歩いていれば見つけられるはずです。

 いえ、絶対に見つけます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……どれだけ歩いたでしょうか?

 やっと、見つけましたよ。

 

「空凪くん」

 

「……付いてくるなと言ったはずなんだがな」

「付いてきたわけじゃありません、自分で探し出したんです」

「モノは言い様だな。

 で、わざわざこんな所まで何の用だ?」

「空凪くんに、伝えなければならない事があります」

「……下らない事じゃないだろうな?」

「それは……分かりません」

「だったら「でも!!」

 

 強い意志を込めて、私は言葉を紡ぐ。

 

「私にとっては、とっても大事な事なんです。だから聞いてください」

「……良いだろう。聞こう」

「はい」

 

 深呼吸して、決意を固める。

 そして、口を開く。

 

 

「私は……あなたの事が好きなんです」

 

 

「……何を馬鹿な事を。

 貴様が好きだったのは明久のはずだ」

「吉井くんも好きです。けど、今はそれ以上に、あなたの事が好きなんです!」

「到底信じられないな。

 お前にそんな事を言われても、明久の代わりを求められているだけにしか聞こえない」

「そんな事はありません。そもそも吉井くんとあなたでは全然違うじゃないですか」

「まあ確かにそうだが……

 ……じゃあ訊くが、お前はこんなののどこを好きになったって言うんだ?」

「ふふっ、空凪くんってばおかしな事を言いますね」

「何だと?」

「人を好きになるのに、理由なんて要るんですか?

 私があなたの事を好きだと思ったから好きなんです。それ以外に何か必要ですか?」

「……そんなので良いのか? 後で間違いだと気付いて後悔するかもしれんぞ?」

「しませんよ。私が選んだ事ですから」

「……分かった。信じようじゃないか」

「それじゃあ!」

「お前が僕の事が好きなのは信じよう。

 だが、僕はお前の事が別に好きでも何でもないぞ」

「はい、分かってます。

 だから、付き合ってくださいとは言いません」

「ほぅ?」

「いつか絶対に振り向かせてみせます。

 だから、覚悟しておいてください!!」

「……良いだろう。

 お前のその行動を止める言葉を僕は持ち得ない。

 お前が望むままに、行動すると良い」

「はいっ!!」

 

 空凪くんに、認めてもらえた。

 好きな人に、認めてもらえたんだ。

 やっぱり、私の心は間違ってなんかいない。

 だって、私は今、こんなにも嬉しいんだから。

 

 

「……んじゃ、そろそろ戻るか。他の連中は着替えやら何やらもとっくに終わってるだろうし」

「はいっ♪」


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