バカ達と双子と学園生活   作:天星

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03 画策

 ……そしてしばらく車に揺さぶられてから冒頭の場面に戻ってくるわけだ。

 

「すぅ……すぅ…………」

 

 ……ああわぁってるよ!! 完全に自業自得じゃないか!!

 姫路を異常な行動に駆り立てたのは僕だし、ついでに言うなら疲れて眠ってるのは過剰に早起きしたせいだろう。

 こんな事なら妙な策を凝らさずに『明久は木下姉と付き合ってるよ。ざまーみろ!』って言えば良かった!!

 ……え? 最後余計?

 ……少々取り乱していたようだ。

 

「お前、いつのまにそんなに姫路に懐かれたんだ?」

「……知らん」

 

 僕の前に座っている雄二が話しかけてくる。

 

「っていうか、これは懐かれているのか?」

「う~む……信頼されている事は確かだと思うぞ?」

「信頼ねぇ……」

 

 それは喜ぶべきなのか? いや、この状態では全く喜べないな。

 

「まぁ、何があったのかは分からんが、逃げてばかりだと解決しないぞ?」

「おっ、経験者は語るねぇ……」

「お前に経験させられたと言った方が正しい気がするが」

「……かもな」

 

 確かにそうだな。霧島を煽って爆発させたのは僕だった。

 その後、二人共そこそこ良い関係を築けているようだしな。

 だが果たして今回のケースにそれが当てはめられるのだろうか?

 『悪役になってほしくない』という姫路に対して『場合によっては悪役になる』という僕。

 二人の主張は完全に食い違ってる上にどっちもそう簡単に譲りそうに無いからなぁ……

 

「……まぁ、自分なりに考えてみるわ」

「そうしろそうしろ。そして悩め、俺のように!」

「……お前、如月ハイランドの件をまだ根に持ってるのか?」

「当然だ! あの一件は感謝もしてるが、それとこれとは話が別だからな!!」

「はいはい」

 

 頼れるのか頼れないのかよう分からん発言だな。

 そもそも人に頼れる問題では無い気はするが。

 ……まあとりあえず……

 

「……僕も寝るか」

「寝るのか!?」

「玲さ~ん、あと何時間くらいで着きます?」

「おおよそ二時間半と言った所ですね」

「それじゃ、140分後に起きるんで、おやすみなさ~い」

 

 

 

 

 

 ……そして約140分後……

 

 

 

 

 

 

 閉じていた目を開ける。

 

「あ、起きた」

「なっ、時間は!?」

「えっと……139分と32秒だね」

「くそっ、外れた!!」

「参ったか雄二!! 僕の勝ちだ!!」

 

 明久に雄二、貴様らは一体何の賭けをしていたんだ。

 

「え~、ボクは流石に数分ズレると思ったのに」

 

 工藤、お前もか。

 

「愛子、空凪兄姉を常識の範疇で捉えちゃダメよ。

 ……私の予想と違って流石にピッタリじゃなかったけど」

 

 木下姉もか!! っていうかずいぶんとピンポイントな時刻を狙ったな!!

 

「兄さんは時間に遅れる事は少なくて、早くなる方が圧倒的に多いわ。

 基準時間のマイナス10秒からマイナス40秒の予想をした私が1位ね」

 

 細けぇ!!

 睡眠時間の範囲を予測して、当たった中で一番細かい予想をした人が1位……という事だろうか?

 

「うぅん、流石に『それ以外』っていうのは大穴狙いすぎたかなぁ?」

「島田よ、あの剣が宣言した時刻からプラマイ5分より多くずれるというのは相当な事じゃぞ?」

「そうだけどさ」

 

 なるほど、工藤あたりがプラマイ5分を予想したのかな?

 それの範囲外なら島田一人が予想的中で1位……と。

 ……あと喋ってない人は……

 

「…………」

 

 霧島は予想には参加しなかったのかもな。

 他には……

 

「すぅ……すぅ…………」

 

 相変わらず隣で寝ている姫路に……

 

「おや、起きましたか? もうすぐ着きますよ?」

 

 運転している玲さん。

 この2人も予想に参加してなかったんだろうな。きっと。

 

 ……さてと、

 

「姫路、そろそろ着くぞ。起きろ」

「んん……あ、おはようございます」

「ああおはよう。それより離れてくれないか狭い上に少々暑苦しい」

「……逃げたりしませんか?」

「この走行中の車の一番奥からどう逃げろと?」

「う~ん……しょうがないですね……」

 

 そう言って姫路は少しだけ離れてくれた。

 それでもかなり距離が近いが。

 

「……貴様、もうすこし離れる気は無いのか?」

「無いです♪」

 

 こいつ、笑顔で即答しやがったっ!!

 

『……瑞希は大胆。私も見習わないと』

『見習わなくて良いからな!!』

『そんな事言って、ホントはくっついてて欲しいんじゃないの?』

『よーし明久、表に出ろ』

『今出たら車に轢かれるよ!?』

『違うな、撥ねられるだけだ』

『大して変わってない!!』

 

 あいつらにはこれが恋人同士のやりとりか何かに見えているんだろうか?

 監視する者とされる者な立場なわけなんだが?

 っていうか、ホントいつまで着いてくるんだ……?

 ……まぁ、問題ない。海に辿り着いたら一度必ず別行動になる。

 流石の姫路も男子更衣室には入ってこない、っていうか入れないだろう。多分監視員とかも居るし。

 その隙に逃げればしばらくは解決だ。

 速攻で着替えて適当に隠れれば振り切れるはずだ!!

 

 

 

 

 ……そう、その時はそんな事を考えていたんだ……


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