バカ達と双子と学園生活   作:天星

147 / 243
After pleyback
少女の手札


 ……さて、これで空凪剣の、僕の長い回想は終了だ。

 ここで改めて確認する。

 僕が嘘を吐いた場面はあっただろうか?

 

「……いや、嘘は吐いてないな。お前の勘違いだ」

 

 慎重に、彼女の問いかけに答えた。

 

「え? そうですか。分かりました」

 

 それに対して彼女……姫路は少々驚いたようだがあっさりと受け入れた。

 ……なんか余裕があるな。そういう態度を取られると不安になってくるが……いや、大丈夫だ。

 姫路が言っているのは恐らくはあの一言だろう。

 

『僕は、受けた痛みは忘れない。絶対に、等価のものを返す』

 

 ……だが、これは真実だ。僕が受けた痛みを忘れた事は……まぁ、殆ど無い。

 他に怪しい発言は無かったはずだが……

 

「あの日、あれからしばらくして、気になったんです。空凪君の行動が」

「へぇ。それで?」

「私はあなたが本当の事を言っているのか、疑ってみたんです。

 でも、本人に訊いても多分話してはくれない。そう思ったんです」

 

 ……少々驚いた。良くも悪くも優等生で、思い込んだら一直線なあの姫路が、人を疑うとはな。

 

「だから、みんなに訊いてみたんです。あなたがどんな人なのかを」

「……ほう?」

 

 

「坂本君は言っていました。

 普段は騒ぎが好きなバカだけど、いざという時に最も頼れる存在だ、と」

 

 ……霧島はノーカウントなんだろうか?

 

「美波ちゃんは言っていました。

 時折理解の及ばない事をするけど、悪意をもって人を騙すような人ではない、と」

 

 悪戯心をもって人を騙す事は結構あるんだがな。

 

「翔子ちゃんは言っていました。

 もし空凪くんに傷付けられるような事があったなら、きっと空凪くんも同じくらいの傷を負っている。

 だから、言動の裏をよく読んで、なぜそうしたのか考えてみてあげて欲しい、と」

 

 ったく余計な事を。

 

「御空さんは言っていました。

 時々わざと騒ぎを大きくするような事を分かってて行うけど、最終的にはベストに近い形で収めてしまう、と」

 

 よく分かってるじゃないか。

 っていうかお前、合宿の件まだ根に持ってたのか?

 

 

「そして最後に、吉井君と優子ちゃんにも訊きました」

「っ」

「勝手な事をする困った人だけど、決して悪い人では無い。と」

「……そうか」

 

 

 

 

「それで、それがどうしたんだ?」

「皆の話を聞いて確信したんです。

 あなたはあの日……

 

 ……嘘は吐いてませんね?」

 

「……最初からそう言ってると思うが」

「はい。嘘()吐いてないんです。

 ですが、本当の事も半分くらいしか言ってませんよね?」

 

 ……さて、どう答えたもんか。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。