『きゃーこわーい』
『光よ、そんな棒読みでは誰も騙されぬぞ?』
『だって、大して怖くないけど雰囲気だけは楽しみたいからさ』
……その台詞、三年生に喧嘩売ってるよな。
でもまぁ、この様子なら悲鳴を上げて脱落という事は無さそうだな。
『あら? あなた方は……女の子同士の組み合わせで来ましたか。
それでしたらわたくしにできる事はありませんね。どうぞお通り下さい』
『素通りできる事は良い事なのじゃが……納得が行かぬ』
小暮先輩も余裕でパスした。
『あ、小暮先輩って言ったかしら?』
『ええ。どうしましたか?』
『……秀吉君を女扱いした事、後で覚えてなさい?』
『…………』
何か光から負の怨念が滲み出てるような気がする。
小暮先輩も若干引いてるし。
っていうか光、お前も最初は間違えていただろうが。
『何か言った兄さん?』
……鋭い。
『光? どうしたのじゃ?』
『いえ、何でもないわ。行きましょう』
まぁ、小暮先輩を突破できたなら問題は無いだろう。
あの二人に康太みたいな分かりやすい弱点があるとは思えないし。
モニターの画面は順調に進んでいく。
しばらくすすむと今度は……えっと……
「……島田、あのモヒカンの名前何だっけ? 猿か類人猿か猿人類のどれかだったという所までは記憶してるんだが……」
「どれでも無い事は確かね」
「……確か常村だな。うん」
さっきグロ画像を披露した夏川と違い、普通の制服のようだ。
どんな仕掛けを用意しているのやら……
『来たか木下、待っていたぞ』
『何じゃ? どういう事じゃ?』
『邪魔だからとっとと消えてくれないかしら』
『時間は取らせねぇさ。
……いいか、木下秀吉』
『何じゃ?』
『俺は……お前の事が好きなんだ』
「しっかりして、秀吉君! 秀吉くん!!!」
「す、すまぬ……もう、大丈夫……なのじゃ」
「くっ、あのモヒカン、もっと痛めつけるべきだった。
どうして止めたの兄さん!!」
「……分からないのか?」
モヒカンの愛の告白を受けて秀吉は発狂し絶叫。
光も発狂(?)しモヒカンに殴りかかる。
……などという可愛い(?)事はせず、冷静沈着に足払いをかけて転ばせたあと、四肢の関節を片っ端から丁寧に外すという悪魔の所業を行った。
放っといたらモヒカンがクトゥルフ神話か何かに出てくるような異形の生物になりそうな気がしたので急いで止めに入った。
その際に失格にされたら堪ったもんじゃないので、先生に連絡し、マイクとカメラの携帯を免除してもらった。
「ったく、あれ以上やったらグロ画像で削れていたSAN値が更に削れていたぞ?」
「そうだけどさぁ……」
「……でもまぁ、あのくらいなら大丈夫だな。よくやった光」
「ええ。そうね」
結構痛めつけてたけど、最後のチェックポイントには出てくるかな。
這ってでも出る……とまでは言わずとも、多少の怪我なら構わず出てきそうだ。
「さて、次の作戦は?」
「お前、行けるか?」
「仰せのままに。島田、行くぞ」
「ちょっと待って!! あんなのが待ち受けてるのに行けって言うの!?」
「それは問題ないだろう。光が相当痛めつけたから多少の休憩は要るはずだし、
……何より、アレは秀吉専用の作戦だったみたいだからな」
もし演技だったなら秀吉なら余裕で見破って笑って受け流せただろう。
そうできなかったって事は、あの変態の告白は本気だったって事なんだろうなぁ……
……後で僕も痛めつけておこう。機会があれば。
「それじゃ、出発」
「うぅぅ……行くわよ! 行けば良いんでしょ!?」
そういうわけで再び突入。
「…………」
「…………」
「…………何もして来ないな」
「…………そうね」
「……もしかすると僕に恐れをなしているのかもな」
「そんな事……ありえそうね」
前回の突入では直接接触系の仕掛けを完全に防いでみせたし、先ほど暴走する姉さんを止めるという偉業を見せつけた所だ。
怖気づいていても不思議ではない。
順調に進んでいくと小暮先輩が見えてきた。
「またいらっしゃいましたね」
「ええ。先ほどは素通りしてしまってすいませんね。急いでいたもので」
「仕方がありませんよ。事情は聞きました。
妹さんを止めていただいて感謝します」
「礼を言われるような事ではないですよ。
……ところで、あなたの仕掛けは肝を試すものではありませんね」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
「では、行かせてもらいます」
「そうですか。頑張ってくださいね」
「……あ、あと、その汚れた床の恨みは忘れないんで」
「待ってください。それはそちらの生徒が汚したものなのでは?」
「そうでしたっけ? まあどっちでも良いですけど」
適当に会話して突破する。
会話をしなければ突破してはいけないという決まりは無いので黙殺しても良かったのだが、逃げたと思われても嫌なので止めておいた。
そしてまた暫くするとチェックポイントに到着した。
「ふぅ、無事にたどり着けた」
「そ、そうね……うふ、ふふふ……」
……島田が瀕死のようだ。とっとと終わらせよう。
「それでは先輩方、始めましょうか。
「望む所よ。
「パートナーの子も早く休ませてあげなよ?
「さ、
[フィールド:現代国語]
3ーAクラス 289点
3ーAクラス 277点
300点越えでは無いのか。流石に人員不足だったのかな?
で、こちらの点数は……
2ーFクラス 空凪 剣 400点
2ーFクラス 島田美波 32点
「「……え?」」
「あれ? 先輩方どうしました?
……ああ、すいません、こいつのこの点数、古典に比べたら大分頑張ってるんで見逃してやってください」
「いやいや、問題なのはキミの方だよ!?」
「何でFクラスなのに400点も!?」
「残念ながら、答えるつもりはありません。
では行きますよ!」
……数分後……
3ーAクラス Dead
3ーAクラス Dead
2ーFクラス 空凪 剣 133点
2ーFクラス 島田美波 Dead
「お疲れ様でした」
「お、お疲れ~……」
「キミ強いね~……」
三年生のペアを一方的に虐殺……とまでは行かなかったが、そこそこの余裕をもって撃退した。
島田をかばいながら戦う事も不可能ではなかったとは思うが、ここいらで脱落した方が本人も楽だろうと思い見捨てた。
さて、とりあえず一度戻るか……