バカ達と双子と学園生活   作:天星

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08 特効

『次のチェックポイントどのクラスだっけ?』

『…………Cクラス』

 

 

 Dクラスを無事突破した保体コンビ。

 そのままCクラスを目指すようだ。

 いやまぁ正確にはFクラス(C教室)なんだが。

 

 

「っていうか、あの二人ならこのまま全部突破できるんじゃない?」

「島田、残念ながらそれは無いと断言できる」

「えっ、どうして?」

「工藤はともかく、ムッツリーニという名は三年生の間でも有名だ。故に、対処もしやすい」

「対処って言うと……例えば?」

「お前も霧島の家で見たはずだ。畳を汚す血の海を……」

「確かに見たけど……アレがどうかしたの?」

「大量出血して戦闘不能かそれに近い状態になれば十分だろ?

 今の僕達の召喚獣はオカルト召喚獣。つまり、操作に慣れてない召喚獣だ。

 疲弊した状態でまともな戦闘ができるとは思えない」

 そしてそれは相手の自爆みたいなもんだから、『ダメージを与える行為』にも該当しないだろう。

「そっか……悲鳴を上げさせる事だけが向こうの手段ってわけじゃないのね」

「……まぁ、仮に康太に対する特効兵器があっても無意味なんだがな」

「え、どうして?」

「対策とは何故立てるのか、それは相手が正攻法で破れない脅威だからだ。

 保体フィールドを越えた康太はもうただのFクラス生。現国の成績はそんなに高くない。

 工藤の点数が極端に高くない限りはチェックポイントで普通に敗退するだろう」

「単純な理由ね……」

「そういう事だ。準備くらいはしていたかもしれないが、連中は機を逸した。

 それが康太に対してだけ作用する類のものなら、恐れる事は無い」

 ……何か今、フラグ立てちゃった気がする。

 ま、いっか。

 さて、モニターを……

 

 

『『『眼福じゃぁーっ!!』』』

 

 

 何事かと思いモニターを確認する。

 そこには、ざっくり言うと着物を着崩した美人が映っていた。

「……これは少々マズいかもな」

「どういう事?」

「今モニターに映ってるアレを直接見たら男子が悲鳴を上げるぞ。

 主に悦ぶ方向の」

「……この学校の男子って……」

 現在、グロ画像が突然現れた時の為に画像の解像度をやや下げているらしい。

 そのモニターの画像でこの反応なのだから、直接対面したら確実に大きな声が上がるだろう。

 

 

『…………この……程度で、この……俺がっ!』

『康太君。足が震えてるケド?』

 

 

「足が震える程度で済んでいるのか。頑張ってるな」

「アレでも頑張ってる方なのよね……」

 まぁ、十分グロッキー状態だから戦闘不能直前まで追い込むという目的は達成できていたりするわけだが。

 

 

『ようこそいらっしゃいましたお二方。私、三年A組所属の小暮(こぐれ)(あおい)と申します』

 

 

「……ところで、あの着物、どっから持ってきたんだろう?」

「え、気にするとこそこなの?」

「だって、三年生の企みが上手く行ったらあの着物は血で汚れる可能性が極めて高いぞ?

 ああいう高級品から血だけを綺麗に落とすって大変なんだぞ?」

「確かにそうかもしれないけどさ」

 

 

『小暮先輩ですか。こんにちは。ボクは2ーAの工藤愛子です。その着物似合ってますね』

『ありがとうございます。こう見えてもわたくし、茶道部に所属しておりますので』

 

 

「なんだと!? 自分のユニフォームを血で汚すかもしれない作戦を断行するだと!?

 連中、どこまで本気なんだ!!」

「いや、そこまで?」

「秀吉!! 自分のユニフォームを血で汚すなんて言語道断だよな!?」

「いや、ワシに言われても、演劇の衣装と茶道の着物では全然意味が違うぞい!?」

「くっ、それもそうか」

 

 

『それじゃあボク達、先を急ぐので』

『お待ちください。実はわたくし……』

『? まだ何か?』

『……新体操部にも所属しておりますの』

 

 

 そしてはだけていた着物は完全に脱ぎ捨てられ、その下からはレオタードを身に纏う姿が現れた。

 そのコンマ数秒後、モニターが真っ赤に染まった……

 ……多分着物も真っ赤に染まったんじゃないかな。

 

 ……さて、

 

「ちょっと記録用ハードディスクを取り替えてくる」

「え、何で?」

「どさくさに紛れて破壊しようとする女子が居るかもしれないからな。

 そんな事されたら今電車でこっちに向かってる御空に合わせる顔が無い」

「あの、どさくさって?」

「だって、あんな映像が流れたら……」

 

 

『大変だ! 土屋が死んじまう!! 助けに行ってくる!!』

『待て! 1人じゃ危険だ! 俺も行く!!』

『おい待てよ。お前らだけに良い恰好はさせないぜ!!』

『俺たちは仲間だ!! お前たちだけを死地に送るわけには行かないぜ!!』

 

 

「……という建前で小暮とかいう奴のレオタード姿を見に行く男子が殺到するだろ?」

「のんびり解説してないで止めなさいよ!!」

「おい貴様、男子の暴走を止めるのと御空の為に肝試しの記録を保存するの、どちらが大事だと思ってるんだ」

「え? えっと……それは……」

「それに、あいつらを止めようと思ったら力ずくで気絶させるくらいしか方法が無い。

 だから止めようが止めまいが結果は大して変わらない」

「そっちを先に言いなさいよ!!」

 

 そういうわけで男子の暴走は放置してハードディスクを取り替える。

 ……よし、特に損傷は無いな。

 後で康太に映像データだけコピーしてもらおう。

 

『『『『うおおおおぉぉぉっ!! 新体操ぉおおお!!!』』』』

 

 そんな事をしている内に一瞬で何ペアか失格になったようだが。

 

「……で、雄二。対策は?」

「あんな事されたら殆どの男子は全滅だからなぁ……」

「つまり、滅びてない男子で行けば良いんだな」

「そうなる。例えばお前とか……」

「……秀吉とか。かな」

 

 今なお全く動揺してないように見えるし。

 

「むぅ、ワシも一応男子なのじゃが……」

「秀吉くんなら大丈夫よ。行きましょ」

 

 秀吉&光ペア。投入。

 さて、無事に突破できると良いが……

 

 

 

「……ところで空凪」

「何だ?」

「あんたは平気なの? あの先輩」

「何らかの感情が表に出てくる前に『教室を汚しやがって』という私怨が先に来るからな」

「……なんか、納得できたわ」

 しつこいようだが、血を落とすのって大変なんだぞ?


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