バカ達と双子と学園生活   作:天星

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13 逆接

  ……Cクラス教室前……

 

 さて、台本通りに進んでくれるといいけど……

「失礼します。2-Fの空凪と申しますが、小山友香さんはいらっしゃいますか?」

「私が小山だけど、何の用かしら?」

「いえ、ちょっと停戦条約について話をしたくて」

「停戦条約ねぇ……ふぅん……」

 ここまでの仮定が正しければ……

「どうしようかしらねぇ、()()()?」

 良かった。ちゃんと合ってたらしいな。

「当然却下さ。必要ないだろう?」

 Cクラスの生徒の奥に隠れていた根本君と、護衛が二人ほど姿を現した。

「ヒドいじゃないかFクラスの副代表君。

 これは明確な協定違反だよ? これで代表は戦死になる。

 そうですよね? 長谷川先生」

「そう……ですね……残念です」

 根本に言いくるめられて一緒に隠れる教師ってどうなんだ……?

 そして……何勝手に終わった気になってるんだ?

「丁度良い所に来てくれましたね!!

 長谷川先生、Fクラス空凪がBクラス根本に試験召喚勝負を挑みます!!」

「はい!?」

「……? どうしました? 早く承認してほしいんですが。

 早く下校したいので」

「おい!! お前は何を言ってるんだ!?

 さらに協定違反を重ねる気か!?

 ついさっき戦争は終わったんだ!!」

 面倒だなぁ……そろそろ種明かしするかな。

「何か話がかみ合ってませんね。

 戦争中の敵が突然現れたから戦いを仕掛けただけなんですが」

「ふざけるな!! 今は停戦期間中のはずだ!!」

「もしかして……数時間前に二階の空き教室で調印したアレの事言ってます?

 もしそうなら……あと大体12時間後に停戦ですよ」

「…………は?」

「写真を、よく、見ろ。

 長谷川先生もどうぞ」

 アレをよぉ~く見れば分かったはずなんだけどなぁ……

「何? 写真だと?」

「…………あっ!!」

「お気付きになりました?」

「ご……午前……」

「何ですって!?」

 そ、あの時計は結構前に僕が12時間ほど遅れさせた時計だ。

 諸君、一つ質問だ。PMとAM、どっちが午後か分かるか?

 ……答えはAMだ。

 簡単だったって? だけど知識として知っていても、そうそう簡単には気付けない。

 そもそもまる半日ズレてるなんて考えもしないだろう。

 時計を見て間違って覚える、あるいは自分の知識を修正する人の方が多いんじゃないだろうか?

 その証拠に……なるかは分からないけど、多分半分くらいの人は騙されてる。だって……

 

 

 

 

 

 午後は本当はPMだもん。ちゃんと気付いた?

「こ、こんなバカは話があるか!!」

「でも、ちゃんと同意の上であの時計を基準にしたはずだ。

 つまり停戦時間とは、日本の標準時間で言うと翌日午前四時から午後九時の間なんだよ」

「くぅっ!! だが、普通に考えて午後四時のはずだ!!

 と言うか、気付いたなら伝えるべきだろう!!」

 まあそうだな。そんな時間に停戦にしたら明日はまるまる停戦になっちまうからなぁ。

「でもね、これを認めないと、死ぬのはお前だ」

「なん……だと!?」

「さっきのやりとりを思い出してみろ。

  『停戦条約ねぇ……ふぅん……

   どうしようかしらねぇ、根本君?』

  『当然却下さ。必要ないだろう?』

 だったな」

「それがどうした!」

「この『停戦条約』だが……お前は何だと思った?」

「そんなもの、『FクラスがCクラスに持ちかけた停戦の条約』に決まっているだろう!!」

 ああ、こいつ今墓穴掘ったな。掘らなくても問題は無かったが、スムーズに進んで助かる。

「それに対して『却下しよう』というニュアンスを伝えるのは明らかに条約違反でしょうが。

 反論は?」

「それを言ったらそもそもお前がCクラスに来て条約を提案する事が条約違反だろう!

 あの時にはもう戦争は終わっていたんだから、違反にはならないはずだ」

 根本の主張は実にシンプルで筋が通っている。

 シンプルだからこそ穴は無いように見えるが……

「お前……アホだな。

 勝手に勘違いして自爆してたら世話無いな。

 それとも何だ、小山友香のファンクラブの行動まで試召戦争に関係するのか?」

「……は? ファン……クラブ……?」

 正式名称はFFF団だな。

 奴等はこの世に存在する全ての人間の女性のファンだと考えても間違いではない。

 ……いや、一定年齢未満の……と付け加えておこうか。怒られそうなので具体的な数値はぼかすが。

「ファンクラブの決めた停戦協定の報告を一応しにきた。

 『小山さんには彼氏が居るようだが、その彼氏を痛めつけたりすると小山さんが悲しむ。

  だから手は出さないでおこう。

  もし違反者が出たら……クックックッ……』

 って内容だ」

 何か僕がただ脅しただけのような気がするが……気のせいだ。

「そ、そんなバカな話が……」

「一応訊いておきましょう。

 長谷川先生、この僕の行動は『試験召喚戦争に関わる行為』だと言えますか?」

「そうですね……」

 この先生の裁定次第では一気にヤバくなるが……何とかなるはずだ。

「かなり誤解を招くような言い方ではありましたが……

 確かに全く関わりの無い行為と言えますね。

 分かりました。少なくともFクラスは協定違反はしてないようです」

「なるほど、ありがとうございます。

 Bクラスについてはいかがでしょうか?」

「かなり黒に近いですが……

 まだ停戦時間では無かったようなので白としましょう」

 なるほど、妥当な判断……かな?

 黒にしたら多分反論されて結局白になる気がするし。

「では改めて……Fクラス空凪がBクラス根本に試験召喚勝負を挑みます。承認して下さい!」

「良いでしょう。承認します!!」

試獣召喚(サモン)!!」

「くっ!! だがこっちは3人だ!!

 お前くらい片付けてやる!!」

「お前……算数も出来なくなったのか?

 3-2=1だろ?」

「何を言って……」

「貴様と、あと貴様だ。補習室に行ってこい」

「どういう事だ!」

「貴様はさっきの会話の中で何回不当告発をした?

 丁度2回。つまり僕には2人ほど補習室に強制的に送る権利がある。

 それを使っただけだ」

 辛く数えたらもっとありそうだが、明確に告発をしていたのは2回だ。

「くっ、お前くらい一人でも楽勝だ!! 試獣召喚(サモン)!!」

 

 [フィールド:数学]

Bクラス 根本恭二 235点

 

Fクラス 空凪剣  400点

 

「な、何だ……その点数は……!!」

「そうだな……強いて言うなら……」

 一息で間合いを詰めて根本の召喚獣を叩っ斬る。

 

Bクラス 根本恭二 Dead

 

「評価されなかった才能……だ」

 Bクラス戦、これにて終了……っと。


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