バカ達と双子と学園生活   作:天星

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オカルト召喚獣編
プロローグ


 補習日の昼休み。僕と明久は向き合っていた。

「剣……覚悟は良いんだね?」

「フッ、それはこちらの台詞だ。明久」

 互いに闘志を滾らせ、その視線は火花を散らしていた。

「僕は姉さんの圧政の下で牙を研ぎ続けてきた。そう、君を倒すために!!」

「ならば見せてみろ。貴様の力を!!」

 目の前の怨敵を倒さんと、ルールに則り今、戦いの火蓋が落とされた。

「じゃあ、行くよ!!」

 

「「デュエル!!」」

 

 ……仰々しく語ってみたが、要は単なるカードゲームによる暇つぶしだ。

 

 

 

 

 

「よし、僕はブルーアイズを引いた! これを出せば僕の勝ちだ!!」

「ならば僕はその前にこのカードを出そう。

 そして更に召喚。

 更にもう一枚!」

「え? ちょっ!?」

「そして、3体の『青眼の白龍』を生け贄に『ラーの翼神龍』を召喚!!」

「ええええええ!?」

「第一の能力だ。このカードの攻守は生け贄としたモンスターの攻守をそれぞれ足した値になる。

 よって、9000/7500!!

 これでダイレクトアタック!!」

「うわぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

 

 

 

 

「こ、今回は僕の負けみたいだね」

「いやだから、そういう台詞は一回でも勝ってからにせい」

「失礼な! 一回くらいは勝ってるよ!

 多分!!」

「自信満々に言うな!!」

 実際の所どうだったっけかなぁ……こういう勝負の類で適当にやったときは何回か負けた事があった……かも。

「……お前ら、テンション高いな……」

 会話に割り込んできたのは雄二だ。

 暑さにやられたのかさっきまで机に突っ伏してたが、回復したらしい。

「こんな暑いのにそんなテンション上げて大丈夫なのか?」

「全く、雄二は何にも分かってないね」

「全くだ。良いか雄二。確かに今日はうだるように暑い」

「あ、ああ」

 テンションの違いに気圧される雄二。まだまだだな。

「こんな日にテンションを上げていたら余計暑くなる。そう言いたいんだろう?」

「まあ、そうだ」

「だからこそ、僕達は考えた。自分達がそれ以上に熱くなればこんな暑さは気にならないんじゃないか……と」

「アホかお前ら!! 熱中症で倒れるぞ!!」

「まだまだ甘いな。

 そうなれば保健室で休めるだろ!!」

「どんだけ補習が嫌なんだよ!!」

「補習が嫌でない奴など居ない!!」

「確かにそうかもしれんが!!」

「そうだ! 補習が嫌な奴など……」

 そして、突然視界が傾き……

「あ、あれ……?」

「お、おい!? 剣ぃぃぃぃっっっ!!」

 

 

  …………

 

 

 その後、ちょっとした騒ぎになったが、秀吉が水筒の水を分けてくれたので復活できた。

「すまん。助かった」

「普通は水を飲んだだけでは復活せぬのじゃが……」

「水分補給は大事だな」

「そこは否定はせんが……」

「ところで、お前の目的は保健室に逃げる事じゃなかったのか?」

「そ、そうだった! しまった!!

 よし、再びテンションを上げるぞ明久!」

「おうっ!」

「おいおい! またぶっ倒れるぞ!!」

「よし明久。何かテンションを上げられる事って無いか?」

「う~ん……そうだね。本当に上がるかは分からないけど」

「よし。言ってみろ」

「召喚獣が気になるかな。

 確かもうとっくにリセットされてるよね?」

「なるほど。進化した召喚獣を見てテンションを上げるというわけか」

「テンション云々はともかく、確かに気になるな」

 雄二も興味があるようだ。クラス代表としては当然ではあるが。

「よし、乗った。早速鉄人に相談しよう。

 鉄人先生! 今良いですか?」

 僕が呼びかけたら教室の隅で休憩していた鉄人が来てくれた。

「西村と呼べと何度言えば……

 まあいい。どうした?」

「リセットされた召喚獣が見たいんですよ。

 召喚許可お願いします」

「うっ、ああ、うむ……」

 ん? なんか躊躇ってる?

「何か問題でも?」

「あ~、良いか? お前や吉井の召喚獣には物理干渉能力があるから、そう易々と許可を与えるわけにはだな……」

「だったら俺のなら良いですよね?」

「いや、それはだな……」

 ……ふむ。

「やってみた方が手っ取り早そうだ。雄二、やっちゃって」

「ああ。起動(アウェイクン)!」

 白銀の腕輪の効果により、召喚フィールドが展開される。

「それじゃ僕から。試獣召喚(サモン)!」

 明久が召喚獣を呼び出す。

 そして現れたのは……立派な甲冑を纏った騎士だった。

「おおおおお!! 凄くなってる! 頑張った甲斐があったよ!!」

「ま、マジでか? あの明久の召喚獣が、こんな立派に!?」

 雄二が驚きの声を上げる。

 確かに、凄まじい進化だな。だが、ちょっと進化し過ぎじゃないか?

 BクラスやAクラスの連中のはここまで変化してなかったぞ?

「そ、そうだろう? 試召戦争本番で驚かせてやりたくてな。隠していたというわけだ」

「そうだったんですか! ありがとう鉄人♪」

「西村だ」

 

「……雄二。鉄人先生はあんな事を言ってるが……」

「ああ。おかしいな」

 それなら明久の召喚獣だけ断れば良いだけの話だ。

 僕や雄二の召喚まで止められたのは何か理由があるはず。

 例えば……

「この召喚獣に異常が出てるとか?」

 召喚獣の頭をコンコン叩きながら意見を出してみる。

 すると……

 

ポロッ

 

「「「?!!?!?」」」

 召喚獣の頭が、ポロって、落ちた。

「ぎやぁあああああ!! 僕の召喚獣がグロ画像に!?」

「お、おおお落ち着け僕。まずは自然対数の底を数えるんだ! 2.71828182845904523536……」

「おいおいおいおい、どういう事だ鉄人!」

 召喚獣が大ダメージを受けてる様子は無い。

 つまり……分割可能なのだろうか?

「あ~……仕方あるまい。

 召喚獣を調整した際に何故かオカルト色が強く出てしまったようなのだ」

「オカルト……? 首が取れるのがオカルトなんですか?」

「この召喚獣はデュラハンの特徴が現れてるのだろう」

 首の無い騎士か。なるほど。

「試験召喚システムって、ちょっとミスっただけでこうなるもんだったんですか……?」

「……そうらしいな」

「…………」

 なにそれ怖い。

「もしかして、それぞれ別の召喚獣になってるのか?」

「ああ。学園長によれば、『その人の本質を反映した召喚獣』になっているそうだ」

 本質ねぇ、なるほど。つまり明久は……

「騎士道精神とか、鎧が似合う格好良さとか!」

「「頭が無い=バカだろうな」」

「2人揃って言うことないじゃないか!!」

 明久がバカだという事は世界の真理だ。決して揺らぐ事は無いだろう。

 

『おいお前ら、なかなか面白そうな事やってるじゃねぇか』

『人の本質を映す召喚獣だって? やってやろうじゃねぇか!』

『見てな! この博愛精神溢れる俺たちの召喚獣を!』

 何かクラスメイトが寄ってきた。

 う~ん……こいつらの本質かぁ……

『『『試獣召喚(サモン)!!』』』

 

ズズズズズ……(ゾンビが出てくる音)

ズズズズズ……(ゾンビが出てくる音)

ズズズズズ……(ゾンビが出てくる音)

 

『……こ、このシステムバグってるな!!』

『いや待て。吉井の召喚獣は正常に動いてるぞ?』

『くっ、どっちが正しい事にすれば俺たちは傷つかないんだ!!』

「おい、そんなもんにしといてやれ。明久がさめざめと泣いてるぞ」

「放っといてくれ! どうせ僕はバカなんだ!!」

 ……このシステム、大丈夫なのか……?


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