風呂を終えて、今日はもう休む事になった。
女子と男子に分かれてそれぞれの部屋で布団の準備をする。
……さて、彼ら彼女らは一体どんな話をしていたのか。
……優子side……
今日は良い日だったな。久しぶりに明久くんとまともに話せたし。
空凪くん曰く『付き合ってるのがバレたら明久が血祭りにされる』とかいう事で周囲には関係を隠してるわけだけど……まどろっこしいなぁ。
っていうか、このメンバーの中でならバレても良いんじゃないかな? どうなんだろう?
「それじゃあ、もう寝ましょうか」
全員が布団を敷き終えた所で姫路さんが言う。
「いーや、寝かせないヨ?」
それに対して愛子が何かを企んでいるような様子で返答する。
「……愛子、何するの?」
「こういう時はコイバナって相場が決まってるでしょ!」
決まってるのかなぁ……?
話せる事なんてそんなに無いんだけどなぁ。
「……私は雄二のお嫁さんになる。絶対なる!!」
「ああ、うん、そうダネ~」
「私は秀吉くんが大好き!」
「光、それも知ってる」
このヒト達の関係は少なくとも私たちの間では周知の事実だ。
今更言われなくても分かってる。
「うぅ~、良いなぁ。2人には堂々と『好きだ!』って言える人が居て」
「島田さんには居ないのカナ?」
「一応気になる人は居るけど……恋愛って言うより単に信頼しているっていうか……
あと、ウチの事は美波って呼び捨てで良いわよ」
「おっけ~。ボクも愛子で良いからね」
「わかったわ」
「それで美波、その信頼してる人って誰なのカナ~?」
「え? えっと、ぱ、パス!」
「え~? しょうがないなぁ……
それじゃあ、姫路さんは?」
「あ、えっと、私も瑞希で良いですよ?」
「分かった。で?」
「い、言わなきゃダメですかね?」
「当然! 代表や光も言ったんだから!!」
あの2人をカウントするのは卑怯なんじゃないかなぁ……?
「好きな人は居るのかな? さっきの反応だと、当然居るよネ」
「は、はい。居ます。居ますけど……だ、誰にも言わないで下さいね?」
「もちろんだよ! ここに居るメンバーだけの秘密だよ!」
「うぅぅぅ……それじゃあ言いますよ?
私が好きなのは……
……吉井明久くんです」
「「……えっ?」」
「あれ? どうしました?」
「い、いや、なんでも無いヨ? ね、優子!」
「え、ええ。何でも、無い、わ」
「???」
姫路さんは明久くんの事が好き……?
じゃあ、もしかして私は……
明久くんを横から奪い取ってしまっていた……?
「そ、それより、愛子ちゃんはどうなんですか?」
「え? ぼ、ボク? と、特に無いかなぁ……」
「じゃあ、木下さん、優子ちゃんは?」
「え、えっと……」
ど、どうしよう? 言うべき? ここで言ってしまって良いの!?
「……と、特には無い……かなぁ……」
言えなかった。
ここで言うべきだったのかもしれない。
けど、私には言えなかった。
だって、明久くんの名前を出した時の姫路さんの顔は、とても嬉しそうだったから……
……一方その頃……
「クックックッ、迷っているようだな明久」
(今僕達がやっている麻雀は3対1で得点を競う変則マッチ。
そして現在の点差は61900点勝ちのオーラス、そして親は剣じゃない。これなら役満を和了られない限り大丈夫!!)
(相手はあの剣だからな。ドジんなよ明久!)
(分かってるって! 秀吉、剣の手の得点は?)
剣の背後に立っている秀吉が明久たちにサインを送る。
(う~む……
(よし、それなら……)
「これでどうだ!!」
明久が勢いよく牌(の代わりのカード)を場に叩きつける。
「ふむ、それで和了ったら僕の負けだ」
「でしょう?」
「だから……カン!」
「っ!!」
「もう一つカンだ。
そして更にカン!!」
剣が連続でカードを引いていく。
そして……
「ツモ。
これで10翻。
そして……康太。槓ドラを捲ってくれ
大明槓の分は飛ばして」
「…………
「では、ドラ3。数え役満は32000点。
僕の勝ちだ」
「うぁぁぁぁああああ!!!」
「むぅぅ、済まぬ」
「仕方ないさ。相手が悪かった……」
……片方の部屋の空気が若干シリアスでも、勝手に楽しくやっていたようだ。
※ 麻雀のルールが分からない人は剣くんがまたとんでもない事やってるんだな~くらいの解釈で大丈夫です。