バカ達と双子と学園生活   作:天星

123 / 243
18 敗者

 食事を終えた後、30分の時間を開けてから勝負開始という事になった。

 テスト直前の詰め込みを再現したのか、脅してから勉強させる事で効率アップを図ったのかは不明だが……まあどちらでも良い。

 元の部屋は汚れていて使えないので、その隣の部屋に移動して時間まで自習する。

 明久も雄二もものすごく真剣に勉強を……

 

「3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288…………」

「2.71828 18284 59045 23536 02874 71352………………」

 

 ……全力で空回りしてる気がする。

「……おいお前ら。円周率や自然対数の底を数十桁問うような問題はまず出ないぞ?」

「ええええっ!? そうなの!?」

「な、何故それを早く言わなかった!!」

「錯乱しすぎだろお前ら!!」

 理由を答えるなら『言うまでもないから』だけなんだが……

「まあいい。僕は休む。時間になったら起こしてくれ」

「寝るの!?」

「少しでも体力を回復させておきたいからな。

 それじゃお休み……」

 

 

  ……そして30分後……

 

 

「……剣。起きて」

「んぁ……? ああ。時間か。すまんな霧島」

「……全力を出してね」

「愚問だな」

 気力は満ち足りた。理想の状態……とまでは言えないが、可能な限りの最高の状態だ。

「……じゃあ移動する。こっち」

 そしてまた別の部屋へ移動。

 カンニング防止策かな? 本格的だ。

 

  ………………

 

 

「……それじゃあ試験を始める。

 ……このタイマーが鳴ったらスタート。

 ……30分後にまたタイマーが鳴ったら直ちにペンを置くこと」

「テスト用紙の補充はどうするんだ? いつも的確なタイミングで渡してくれる監督の先生は今は居ないが」

「……最初から必要な分だけとっておいて。途中での起立、ひいては用紙の補充は認めない」

「りょーかい」

 部屋の奥にある大きな机に大量のテスト用紙が用意されている。

 教師に頼んで貰っておいたのだろうか? 用意周到だな。

 

 各々が自分の得意科目の用紙をもっていく。

 僕には特に得手不得手は無いが、迷わず『物理』を選ぶ。

 恐らくは霧島も同じものを選ぶはずだ。

 あの時の5分勝負の時の科目だ。

 今回は6倍の30分間行うわけだが……どうなることやら。

 

 全員が着席し、暫く待つ。

 

 そして……

 

ピピピッ!

 

 スタートだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピピピピ

 

「そこまで!!

 ……隣の人と解答用紙を交換して採点して。解答集はあっち」

 霧島の指示に従い、手近な人と交換しようとする。

 が、

「……雄二と吉井」

「な、何?」「何だ?」

「……2人での交換は認めない。お互いに手心を加える可能性がある」

「そ、そんな事無いよ! ねぇ雄二!!」

「全くだな。心外だ」

 雄二は堂々としてるが、明久の目が泳いでるな……

「……吉井は愛子と、雄二は優子と交換」

「そ、そんな殺生な!!」

「あ、バカ明久!!」

 墓穴を掘ったな。

「……今回は未遂だったし不問とする。けど、次は無いから」

「「は、ハイ。すいません……」」

 

 それでは改めて、近くの秀吉と交換する。

「頼んだぞ」

「多いのぅ……ワシもこれくらいできれば良いのじゃが」

「……秀吉、達者でな」

「…………うむ」

 ……自我を保ったまま帰ってこれると良いけど……

 流石に大丈夫……だよな。うん。

 

 

 

 

 お互いの点数を控えてから霧島に渡す。

「……これで全員分、

 ……それじゃあ、順位を下から発表していく」

 

 賽は投げられた。後は結果を待つだけだな。

 

「……まず11位、現代文96点。

 ……木下秀吉」

「わ、ワシが最下位……?」

 秀吉、生きて帰ってこいよ……

 

「……次に10位、日本史156点。

 ……吉井明久」

「うぅぅぅ……まぁ、最下位じゃ無かっただけ良かったのかなぁ……?」

 明久の頼みは『一緒に励ましあおう!』かな?

 

「……9位、数学158点。

 ……島田美波」

「ええっ? 結構自信あったんだけどなぁ……」

 残念だったな。相手が悪かった。

 Fクラスの中でも尖った連中を集めてるし、Aクラスは普通にAクラスだからなぁ……

「っていうか、僕と2点違い?」

「科目が違うとは言えアキに追いつかれそうって事なのね。

 もっと頑張らなきゃ!」

 

「……8位、現代文220点。

 ……木下優子」

「は、8位かぁ……」

 確か学年順位で5位以内には入ってた筈だよな?

 尖った連中が多いという事なのか、それとも……

 

「……7位、数学222点。

 ……坂本雄二」

「は、ハハハハハ……」

 雄二が真っ白な灰になってる気がするが、気にしないでおこう。

 

「……6位、数学265点。

 ……空凪光」

「まぁ、妥当なとこかしらね」

 妥当なとこだな。

 

「……5位、数学285点。

 ……姫路瑞希」

「まだ上に4人居るんですね。

 ……確かに、残りそうな人たちですね」

 僕と霧島、そして工藤と康太か。

 ……妥当な残り具合だな。

 

「……4位、保健体育318点。

 ……工藤愛子」

「あちゃー。土屋くんには勝てなかったか」

 確か腕輪持ちだったよな。

 ってか30分でこれって相当高いよな。

 

「……3位、保健体育349点。

 ……土屋康太」

「…………3位か」

 

「ねえ雄二、ムッツリーニの素の点数ってどんくらいだっけ?」

「確か……500~600の間だな」

「……って事は、残った2人はそれ以上って事に……」

 

「……最後は同時に発表する。

 ……科目は両方とも物理。

 ……点数はそれぞれ……

 

 

 

 412、421点」

「なっ!! まさかっ!!」

「……それぞれ、空凪剣、霧島翔子。

 ……剣。今回は私の勝ち」

 

 まさか追い抜かされるとはなぁ……

 ……面白くなってきたじゃないか。




※ 30分テストの点数については、こんな考察をしてみました。

http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=78178&uid=39849

  興味があればご覧下さい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。