バカ達と双子と学園生活   作:天星

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11 家

  ……放課後……

 

 明久に地獄を見せる(皆で勉強会をする)べく、僕達は雄二の家へ向かっていた。

「ん? もしかして、雄二の家に行くの初めてか?」

「そういえば、記憶に無いのぅ」

「…………(コクリ)」

「何か集まる時って大抵は僕の家に集まってたもんね」

 それも大きな理由だとは思うが……

「雄二の家に行こうとしても、その雄二が何かと理由を付けて家に寄せ付けようとしなかったと記憶しているが?」

「あ~……まぁな」

「何でまた」

 まさか、明久の姉のような変人か変態が家族に居る……とか?

 いや、流石にそれは……

「実は、うちのお袋がちょっと妙な人間……

 すまん、訂正だ。かなり奇妙な人間でな……

 出来れば見せたくなかったんだ」

 ……当たってたよ。

「……ん? 見せたくないなら何でわざわざ言ったんだ?」

「いやまぁ、明久の家族の事を聞いておいて自分だけ隠すってのもどうかと思ってさ」

 ……なんだろう、何となく悲しくなってきた。

「ま、そのお袋は今日から友達と温泉旅行に行ってるからな。

 存分にくつろいでくれ」

 今日からの旅行だったのか。運が良いな。

 

 

  ………………

 

 

「さあ、着いたぞ」

「……普通の家だな」

「そりゃそうだ」

「つまらんな。もっとこう、扉を開けたらボウガンの矢が飛んでくるみたいなギミックは無いのか」

「お前はただの住宅に何を期待してんだ!!」

 まぁ、冗談だけどさ。

「ったく、とりあえず上がってくれ」

「それじゃあお邪魔し……雄二」

「ん? 何だ?」

「……いや、何でもない」

「? まあいいや。居間はこっちだ」

 玄関に明らかに雄二のものでない靴が一足だけ並んでいた。

 更に補足すると、その靴は長時間歩くのに適している靴。言い換えると旅行にそこそこ適した靴である。

 ……まぁ、些細な問題だろう。だって……

 

「お、お袋!?」

 

 雄二の母が居るのに気づくのが、数秒変わるだけだし。

 

「………………」プチプチプチプチ……

 

 っていうか、扉を開けたら一心不乱にプチプチをやってる女性が居るって、ちょっとした怪談のような……

 

バタン!

 

「ゆ、雄二……今のって……」

「あ、アレはだな! きっとアレだ! どっかの精神病患者が脱走して家に侵入してるに違いない!

 きっとそうだ!!」

 雄二よ。少々苦しい言い訳だぞ?

 って言うか家族の事は隠さないんじゃなかったのか?

 

『あら、もうこんな時間。さっき雄二を送り出したと思ったのに』

「おふくろぉぉぉぉぉおおお!!!」

 

 今日は普通の平日だから、雄二が家を出たのは約8時間前のはずなのだが……

 まさか8時間も延々とプチプチをやっていたのだろうか?

 

『あら雄二。お帰りなさい』

『てめぇ! 何で居やがる!! 友達と温泉旅行に行ったんじゃないのか!!』

『それがねぇ、どうやら日付を間違えちゃったみたいで。

 ほら、7月と10月って似てるじゃない』

『どこが似てるってんだ!! 字数も違けりゃ文字の形もかけ離れてるぞ!!』

『まったくもう雄二ったら。そうやってまた私を天然ボケ女子大生扱いして』

『サラッと図々しい事を言うな! あんたの黄金期はとっくの昔に終わってるだろうが!!』

 

「……雄二も、本当に苦労してるんだね……」

「……らしいな」

 

 

  ………………

 

 

 そんなこんなで、結局雄二の部屋に移動して勉強する事になった。

「雄二……お疲れ」

「まさか明久に同情される日が来るなんてなぁ……ハハハ……」

 なんだか、雄二がひどくくたびれているようだが……些細な問題だな。

「ところで雄二」

「……ああ。そうだな」

 くたびれていても声をかけただけで僕の言いたい事が伝わったようだ。流石は雄二だ。

「この部屋は……狭すぎる!」

 普通の部屋に7人って、無茶だ!

「すまんな。あのお袋が本当にただの精神障害を持つ不審者だったら居間が使えたんだが」

「……まぁ、仕方ないさ」

 何か文句言っても部屋が広くなるわけでもないし。

「しかしこれでは勉強どころではないぞ?」

「…………(コクリ)」

 これだけ狭ければ明久に地獄を見せるのが容易にはなるだろうが、勉強が進展しなければ全く意味が無い。

「あ、あの~……」

「どうした姫路」

「ちょっと気になったんですけど、空凪くんの家はダメなんでしょうか?」

 何? 僕の家?

 まったく、そんなの当然……

「……あれ? 何で気づかなかったんだ?」

 親は海外に居て、()と僕の2人しか住んでおらず、そこそこ広い居間を確保するのは容易な僕の家に。

「おいまさか、俺のお袋を見る為にわざと忘れたふりをしてたんじゃないだろうな?」

「いや、単純に盲点だった。すまん」

 そしてそんな奇妙な策を練る事ができるほど有能なつもりはない。

「空凪の家ってここから近いの?」

「ん~、歩いて15分くらいか」

「近っ!」

 

 そんなこんなで、僕の家に移動する事になった。

 

 

  ……15分後……

 

 

「ほら、着いたぞ」

 何の変哲も無い我が家に。

「思ってたより普通の家ですね」

「そうね。もっとこう、何か凄いのを想像してたわ」

「キミ達は僕を一体何だと思ってるんだ」

 この2人とは本当に色々あった気がするから気持ちが少しは分からないでもないが。

「まあいい。入ってくれ」

 光はまだ帰って来てないようだ。これで居間が独占できる。

 

「さて、これでようやく勉強会に入れる。

 諸君、気合は十分か?」

「「「「「おう/はいっ!/ええ/(コクリ)/うむ!」」」」」

 

 ……一人足りなかった気がするな。

「明久はどう思う?」

「エート、その、うん。まあ良い感じなんじゃないカナ?」

「……そうかそうか。

 では、これから明久に来世の恐怖を味わってもらう。

 諸君、気合は十分か?」

「「「「「当然だ!/は、はいっ!!/腕が鳴るわね!/(グッ!)/望む所じゃ!」」」」」

「みんなさっきより反応良くない!?」


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