そんなこんなで夕食へ。
「ん~っと、パエリヤか?」
「うん。僕の得意料理だからね」
適当に食べてみるが普通に美味い。
木下姉は家事が楽そうだ。
……いや、逆に困るのか? 明久を喜ばせられる料理が作れなくて。
「ところで皆さん、うちの愚弟の学校での様子はどんな感じでしょうか?」
案の定と言うべきか食事中にも話を聞き出そうとしているようだ。
まだ疑われてる……? まぁ、口裏を合わせてくれれば大丈夫だろう。
この家の台所はリビングの隣なので先ほどまでの会話は雄二達に筒抜けだ。口裏を合わせる事はそう難しい事じゃない。
とりあえず雄二に任せて様子を見るか。
「学校での様子ってのは、さっき話してた学力とか女子との付き合いとか、そういうのですか?」
「はい。なるべく詳しくお願いします」
「どうもこうも、さっき
最初は底辺に居たけど最近頑張ってる。
異性との怪しい交流なんざ聞いたこともない」
「本当ですか? 周囲の人間に隠して誰かと交友している……という事は考えられませんか?」
「ハッハッハッ、それは無いでしょう」
「何故言いきれるのですか?」
「だって、こいつと付き合うような酔狂な女子がそうそう居るわけ無いでしょう」
「…………(コクコク)」
「むぅ、確かにそうですね」
なるほど、流石雄二だ!
これ以上の証拠は存在しないだろう!!
「アレ、おかしいな。目から汗が……」
代償として明久の心がダメージを負ったようだが、些細な問題だな。
後で木下姉に癒してもらうと良いさ。
あと、その説に補足を付け加えるなら……
「そもそも、明久が女子と付き合い始めて周囲に隠すような頭があると思いますか?」
「確かにそれもあったな。もし明久が告白とかなんてされたら狂喜乱舞して校内を駆け回るんじゃないか?」
「その後鉄人に捕まって説教を喰らうのじゃな?
ああ、鉄人というのは生活指導の西村教諭の事じゃ」
「…………そして明久は永遠に女子と付き合う事ができない」
「みんな嫌いだぁ!!!」
何を言っている。これはお前への愛だ!
不純(?)異性交友が玲さんにバレないようにする為の演技だ!!
決して『明久はバカだから実際にあるんじゃないかな~』という妄想を言ってみたわけでは決して無い!!
「そうですか。安心できました。
皆さんありがとうございました」
「ぐはっ!」
玲さんがあっさり受け入れたせいか、明久の心に更にダメージが入ったようだ。
食後に勉強会を始めようかとも思ったが……勘弁してやろうか?
明久がこのままヘマしなけりゃ現状の成績でも何とかなる……はずだし。
………………
「「「「「ご馳走様でした」」」」」
「お粗末様でした。っと」
夕食を済ませて食器を適当に片付ける。
「……さて諸君、今日はどうする? 勉強会をやっていくか、それともお開きにするか」
「ん~、まあ今日はもう遅いしまた今度で良いか」
「そうじゃのぅ。あんまり遅いと親に怒られてしまうからのぅ」
「…………(コクリ)」
「そんじゃ、帰りますか。お邪魔しました」
「ええ。またいつでもいらしてくださいね」
そんなこんなで、僕達と玲さんのファーストコンタクトは終了した。
今回の偵察の成果は……まあ、上々と言った所か。
玲さんがどういう人物なのか、少しずつ分かってきた……ような気がする。
さて、明日からはどうするかなあ……
……翌日 朝……
「タスケテクダサイ」
……なんか、デジャヴだ。