バカ達と双子と学園生活   作:天星

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07 尋問

「ところでお二方。うちの愚弟の学園生活はどのような感じでしょうか?」

 案の定と言うべきか、明久たちが台所で料理を始めると玲さんが僕達に話しかけてきた。

「どのような……と言いますと?」

「主に学業や()()()()などです。

 姉として把握しておかねばなりませんからね」

「……確かに、そうですね」

 異性関係がやたら強調されていた気がするな。

 やっぱり疑われてんのかなぁ……?

 とりあえず、答えられる範囲で答えておこうか。

「一年次の成績は僕は詳しくないのでお答えしかねます。

 ただ、二年次の最初の時点での成績が下から1桁、一学年300人なので下から3%程度だという事を考えると大体想像はつきますね。

 だよな秀吉?」

「そうじゃのう……明久の成績が大きく動いていたという話は聞かぬのぅ」

 そして多分その程度の事は姉である玲さんも把握しているはず。こんな所で嘘吐いてもしょうがない。

「それでは、二年次の成績はどうなっているのですか?」

 よし。ここで嘘にならない範囲で成長をアピールしてみるか。

「それが面白い事に全体的に成長してるんですよ」

「え、成長、ですか?」

「はい」

 そこで驚くのか。少しは弟を信用……してるから驚いてるのか。

「心境の変化でもあったのか、はたまた文月学園の試験召喚システムが上手く学習意欲を向上させたのか、大体の科目がやや向上。日本史や世界史に至っては凄まじい成長をしていますよ」

「急成長……ですか」

 そして何やら考え込む玲さん。どうしたんだろうか。そこまで信じられないのだろうか?

「……具体的には、どれほどの成長なのでしょうか?」

 この質問は……少々興味深いな。

 質問というのは相手から情報を引き出す為のものだが、逆に相手に情報を与えるものでもある。

 相手は何を、どの程度知りたいのか。そういう情報は駆け引きの場では貴重な手札になる。

「具体的と言いますと、点数がどれだけ上がったか……とかでしょうか?」

「はい」

 『成長したorしてない』だけを気にするならともかく、具体的な数値を訊くってのは気になる。

 文月の生徒でもない限り、点数の値の上昇を知っても価値は実感できないはずだから。

 ……とりあえず、適当に答えておこうか。

「ん~そうですね……

 玲さんは文月学園の総合科目の算出方法はご存知ですか?」

「ええ。単純に10個の科目の点数を合算した値ですよね?」

「はい。その総合点数での成長量は……

 ……大体300オーバーと言った所でしょうかね」

 日本史&世界史で各100点ちょい、その他の科目でも地味にあげてるみたいだから大体そんなもんだと思われる。

「……そうですか。ありがとうございました」

「いえいえ。お役に立てたなら何よりです」

 明久は『900点なんて無理だよ!』とかホザいていたが、900点ならギリギリ行くだろうし、直前に詰め込めば更に100~200点くらい上がる気がする。

 それだけ伸びしろが大きいって事なんだけどさ……

「では、異性関係はどうでしょうか?」

「特に問題のある事はしてないと思いますよ」

 心の底からの本音である。

 え、不純異性交友の禁止? 木下姉との付き合いは不純じゃないから問題ない。

 問題のある異性との関係を強いて挙げるなら……船越事件(解決済み)と学園長との裏取引(雄二と僕が深く関わったが明久はそこまで関わっていない)くらいのもんだろう。

 あとは合宿覗き冤罪事件とか? 解決済みではあるがアレが一番問題だったかもな。

 っていうかそもそも玲さんが求めてるのはそういう方向性の『問題ある交友』じゃないし……

「……本当ですか?」

「当然です」

「……そうですか。

 では、秀吉くん?」

「うむ」

「この写真について、聞かせていただけないでしょうか?」

 そう言って玲さんが取り出したのは例の写真。

 明久と木下()がイカれたジェットコースターに乗ってる写真だ。

「これはあなたですか?」

「そ、それはじゃのぅ……」

 こういう駆け引きで嘘を吐く事自体は簡単だ。

 だが、その嘘が破られると発言力を一気に失う事になる。

 詭弁でも何でも良い。嘘は可能な限り避けたい。

 なので僕はこう言った。

「何言ってるんですか玲さん。この写真のどこからどう見ても()()でしょう」

 ……嘘は言ってない。極めて勘違いしやすいが。

「確かにそっくりですね。

 しかし、この写真の秀吉くんは女子の恰好をしていますよ?」

「ああ、それは僕の仕業ですよ」

「と、言いますと?」

「あの二人が休日に遊園地で遊ぶって言うんで、面白そうだから裏で色々と手回しして……

 そこの係員もカップルだと完全に勘違いしてましたよ♪」

 木下姉が可愛いと言える(女子にしか見えない)服装で来たのは僕と、ついでに工藤がさんざんイジった事が少なからず影響してるだろう。

 ……多分。

「……なるほど。では、不純異性交友ではなく不純同姓交友をしているという事でしょうか?」

 え? 不純同姓交友……?

「…………確かに」

「剣ぃっ!? 納得してはダメなのじゃ!」

「まあ不純かどうかはともかく、皆で楽しくやってますよ」

「そうですか。色々ありがとうございました」

「いえいえ。他に気になる事があったら何でも訊いてくださいよ。答えられる範囲で答えます」

 ……これで凌ぎきったかなぁ……?


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