バカ達と双子と学園生活   作:天星

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04 審査

「待った。まだ終わってないぞ」

 

 光から抗議の視線を投げかけられるが……僕としては今のうちに畳み掛けておきたいので黙殺する。

「明久、貴様が弁当を作ってきた理由は分かった。

 だが解せないのは、その姉とやらの監視の外であっても模範的な生活態度を演じている事だ」

「そ、それは……」

「考えられる可能性は二つ。

 一つは学校に居ても監視されている」

「ええっ!?」

 キョロキョロと辺りを見回す明久。

 ふむ、外れのようだな。

「で、もう一つは生活態度以外でも何かしら評価されているって事か。

 例えば、学力とか?」

「!!」

「当たりみたいだな。テストの点が良くないと……何かあるんだな」

「……うん」

 明久はがっくり肩を落として語り出す。

「僕の生活態度、更に期末テストの成績次第では姉さんが海外に帰らずにずっと僕の家に居座る事になるんだよ……」

 明久の姉、海外在住だったのか。まあどうでもいいが。

「お前、姉の事が嫌いなのか?」

「え?」

「だって、居座られるのが嫌で今頑張ってるんだろ?」

「う~ん、苦手ではあるけど、嫌いってわけじゃぁ……」

 となると、個人に対する感情ではなく、生活の監視そのものが嫌なわけだ。

 って言うか単純に一人暮らしでマイペースに生活したいだけか。

「付け焼き刃で演じる生活態度。それに加えてお前の悲惨な成績……

 ……諦めろ明久」(ニコッ)

「いやいや諦めないでよ!! 成績はあくまで振り分け試験の時のとの比較だから!!」

「……なるほど。えっと……雄二、こいつ何点くらいだったっけ?」

「確か合計で600点台じゃなかったか?」

「うん。そのくらいだよ。

 今の減点が20点くらいだから、期末で620くらい取れば僕は解放されるんだ!」

「減点?」

「うん。生活態度を見て減点したり加点するらしいけど……加点しているのは見たことないよ……」

 減点20、振り分け試験で600、目標620って事は……成長した点数が減点を上回っていれば明久の姉は外国に帰る……と。

 ……ところで、

「お前の姉が来てからどれだけ経ってるんだ?」

「え? えっと……来たのが昨日のお昼くらいだから……」

「大体丸1日か。1週間後から始まる期末試験の終わりまでが審査期間とすると2週間前後。単純計算で15倍に膨れ上がって減点300ってとこか。

 目標は900点だな」(ニコッ)

「さっきから何なのその嫌な微笑みは!! っていうか無理だよ900点なんて!!」

「僕はあくまで安全ラインを考察しただけだ。実際にはどのくらいになるかは分からん」

「驚かさないでよ!!」

「そういうわけで、その明久の姉とやらに会ってみない事には何も言えん。

 会ってみれば正確な安全ラインを見極めたり、減点を減らす手段を考える事もできるが……どうする?」

「え? う~ん……?」

「お前が姉を見せたくないという事は十分に理解しているつもりだ。

 だから決断はお前に任せる。

 自力で解決出来るなら僕はこれ以上は詮索しない。

 だが、協力が必要なら情報の出し惜しみはするな。分かったか?」

「……分かった」

「それじゃ、この話は放課後にでもまた。今は楽しく飯を食うとしようか」

 木下姉の心配も大体払拭されただろうし。

 それじゃ、いただき……

 

キーンコーンカーンコーン……

 

「……………………」

 予鈴が鳴った→授業開始まであと5分→目の前には手つかずのお弁当……

 

「兄さんコロス」

「んな事言ってる暇があったら飯を食え!!」

「ああ、こういう時いつものソルトウォーターだったら一瞬なのに!」

「吉井クン!? 時間が無いからってそれはどうかと思うよ!?」

「……ごちそうさま」

「代表早っ!!」

「……雄二がくれたのは。大事に取っておく」

「いや食えよ!! 腐るぞ!!」

「ごちそうさまなのじゃ」

「秀吉ぃぃぃっっ! お前もか!?」

「何を勘違いしておるのじゃ! 部活が忙しい者にとって早食いは必須のスキルじゃよ」

「…………同じく」

「お前の場合は部活じゃないよなごちそうさま」

「兄さん? 何さりげなく完食してるの!」

「メロンパン半分が今日の昼食だからな」

「えっと、これ、どうやってしまっておきましょうか……?」

「完食すればどうという事は無い」

「無茶ですよ!!」

「木下、空いた箱貸して!!」

「うむ!」

「瑞希、これに!」

「ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

  ……放課後……

 

 

「で、結論は出たか?」

「とりあえずは頑張ってみるよ。まだ減点20だからね。

 成績も前と比べたら結構上がってるし」

「……そうか。気が変わったらいつでも相談しろよ」

「うん。ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ……そして翌朝……

 

「タスケテクダサイ」

「……何があった……?」




※ 明久の点数は原作5巻では『800点くらい』となっていますが、科目数が10で800点だと平均点が80点くらいになってしまいます。
  おそらく科目数が間違っているのだと思われますが……いろいろと面倒なので、明久の平均点を多めに見積もって60点、10科目の単純な足し算で600点程度としています。

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