バカ達と双子と学園生活   作:天星

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期末テスト編
プロローグ


 あと数週間で夏休みに入るといった時期のある平日。

 いつものように僕は通学路を歩いていた。

 だけど、その日の通学路は、いつもと違っていた。

 この世界では、絶対にあり得ないような事が起こっていたんだ。

 

 『ソレ』を見た時、まず僕は自分の目を疑った。

 瞬きしてみたり、目をこすったりしてみたけど、決して見間違いなどではなく『ソレ』はそこにあった。

 次に自分の脳がついに壊れたかと疑った。

 だが、『ソレ』以外の風景はきちんと見えているし、自分の手持ちの生徒手帳や教科書類もきちんと読める。理解できる。

 最後に、『ソレ』が偽者なのではないかと疑った。

 僕はおもむろに携帯を取り出し、ある人物に電話をかける。

 

プルルルル ガチャ

「もしもし?」

『どうしたのじゃ? こんな朝っぱらから』

「……何でもない。じゃあな」

『なぬ? ちょ』ブツッ

 

 秀吉の変装でもない。

 つまり……見えている『ソレ』が本物である……という事なのだろうか?

 バカな。あり得ない。絶対にあり得ない!!

 ……いや、まだ本物と結論付けるのは早計だ。

 とにかく、話しかけてみようか。

 

 

「明久!!」

「あ、剣。おはよう」

「……お前、本物か?」

「え? 何が?」

「……では、ユリウスカエサルが暗殺される際に腹心であったブルータスに言った言葉は?」

「え? えっと……

 『フハハハハ、よく来たな! もし私の味方になるなら世界の半分をお前にやろう!』」

「良かった。本物だな」

 こんなアホな回答をするのは明久だ!!

 って言うか、暗殺しに来た腹心を世界の半分で釣るって一体……

「何か今もの凄く失礼な事を思われたような……」

「そんな事より一体どうしたんだ? 熱があるようには見えないが……」

「ねぇ、さっきから僕の事をそこはかとなくバカにしてない!?」

「お前がバカなのは事実だろう?」

「酷い!!」

「それくらいあり得ないという事だ。

 お前が、こんな時間に登校しているなんて!!」

「し、失礼な! 僕だってたまには遅刻せずにちゃんと登校するよ!」

「それは問題ない。お前も1%くらいは遅刻せずに来る日もあるだろう」

「いや、もっとあると思うけどさ」

 うん。ちょっと言い過ぎた。

「だがな、こんな朝早くに無駄に早く登校するとはとてもじゃないが思えん!!」

「うぐっ」

「だから最初は現実逃避して、次に偽者を疑ったんだが……」

「そこまであり得ないことなの!? 僕がこの時間にここに居る事が!!」

「うん」

 何を当たり前の事を。

「だが、これは抗えぬ現実だと分かった。

 ……明久。何があった?」

「あったっていうか……いや、別に何もナイヨ?」

「お前がそう言うのであれば深くは追求せんが……

 何かあったらいつでも相談しろよ? 力になれるかは分からんが」

「え、あ、ありがとう」

 非常に気にはなるんだが……隠しておきたい事を無理に暴く必要も無いか。


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