バカ達と双子と学園生活   作:天星

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02 演技

  ……優子side……

 

 屋上で色々とあった後でそれぞれの教室に戻った。

「あ、二人共お帰り。何してたの?」

 教室の扉を開けると吉井くんが声をかけてきた。

 会話は空凪くんに任せて適当に自然体を装っておこう。

「大したことではない。ところで、課題は少しでも進んだのか?」

 そう言えば休講の課題が出てたんだっけ? 秀吉の分やっとかないと。

「愚問だね! 当然じゃないか!!」

 へぇ。吉井くんってちゃんと課題やってるのね。

 ちょっと見直したわ。

「……ああ、僕が愚かだった。お前が課題なんてやってる訳が無かったな」

 ……え?

「ちょっと!! どういう意味さ!!」

「言葉通りの意味だが……結局やってないんだろ?」

「もちろんだよ。僕がやるわけ無いじゃん♪」

 数秒前の感心を返して欲しい。

「あれ、秀吉? さっきから何か静かだけど、どうかしたの?」

「え? 何でもない……のじゃ」

 あ、危ない危ない。突然話を振られたんでメッキが剥がれる所だった。

「う~ん…………」

「な、なんじゃ?」

「やっぱり違和感を感じるなぁ……何だろう……?」

「き、気のせい、ではないかのぅ?」

 何でこういう時に限って鋭いの!?

 ほ、ほら、空凪くん? 何かフォローして!

「おいおい明久、何バカな事を言ってるんだ」

 そうそう、そうやって話題を逸らして……

「コレが秀吉じゃなかったら何だって言うんだ」

 引っ張るのその話!?

「えぇっと……例えば、優子さん?」

「っ!!」

「何をバカな事を言っているんだ」

「そそそそう、なのじゃ! 一体よs、明久は何を言っておるのじゃ!?」

「え? いやただ言ってみただけだけど……」

 そ、そう……驚かせないでよ……

「全くだな。これのどこが木下姉だと言うんだ」

 まだ引っ張るの!?

「え? えっと……可愛らしい所とか、スマートな感じがする所とか……

 あれ、どうしたの秀吉? 顔が赤い気がするけど……」

「え? あ、姉上が褒め称えられてるので恥ずかしくなったの、じゃ!」

 我ながら苦しい言い逃れね……

 もっとまともな答えは無かったの?

「そういうものかなぁ……」

「もしお前に兄弟か姉妹が居るなら想像してみるといい。

 その人が褒め称えられてる事を」

「えっと……

 ……………………………………………………

 医者を勧めるよ!」

「ちょっと待て。思考が飛躍しなかったか?」

「え? そんなこと無いけど?」

「っていうかお前に兄弟が居たのか」

「まぁ、姉さんが居るよ……」

 へぇ、吉井くんってお姉さんが居るんだ。

「しっかし、そんなに木下姉っぽいか?」

「え? うん」

 このヒト、協力する気なんて無いんじゃないでしょうね……?

「んじゃあ秀吉、木下姉の演技をやってみてくれ」

「……はい?」

「どうせだから木下姉の演技をして過ごしてみれば面白いんじゃないか?」

 ……なるほど、いくら私っぽく見えても演技って事にしちゃえば大丈夫……と。

「そうじゃな。やってみようかのぅ」

「では、スタート」

「ん~、ゴホン。

 こんにちは、吉井くん」

「おお! 優子さんだ!! 秀吉だなんて全く分からないよ!!」

 そりゃ本人ですからね……

「ではお題、『明久に愛の告白する木下姉』で」

「ッ!?!?」

 なっ、なななななななな!?

「(何て事言ってくれちゃってるのよぉ!!!)」

「(え? 木下姉と結びつきにくいように本人が()()()言わないようなお題を与えてみたんだが……)」

 協力する気が無いんじゃないかなんて疑った私がバカだったわ。

 このヒト、絶対に協力する気なんて無い!!

「ほら、所詮は演技だ。やってみろ」

「どんな感じになるんだろう……?」

 う、うぅぅ……えっと……

「よ、よよ吉井くん?

 え、えっと……き、君が好き……です」

「ぐはっ!」

 え、あれ? 何か吉井くんが血を吐いて倒れたよ?

「お~い、大丈夫か~」

「す、凄い威力だったよ。本人じゃないって分かってるのに!」

 そこまでなの……?

「ふむ、もしもだが、本人があんな風に告白してきたらお前はどうするんだ?」

 何なの!? 私を精神的に殺したいの!?

「え? そりゃもちろん……

 ……でもあり得ないよね……」

 もちろん何? どっちなの!?

「あり得なくは無いと思うが……」

「だって、あの優子さんだよ!?

 あの優子さんがこんな僕に、ブサイクでバカで甲斐性なしの僕に告白なんてするわけ無いじゃないか!!」

「言ってて悲しくないか?」

「……うん」

「だ、大丈夫よ。ブサイクなんて事は無いし、バカ…………えっと…………」

「秀吉! 中途半端なフォローは止めて! 余計傷つくから!」

「え、えっと……ごめん」

 ごめん、バカは否定できなかったわ。

「はぁ、じゃあ質問を変えようか。もし木下姉ではなく姫路あたりが告白してきたらどうするんだ?」

「ええ~? それもあり得ないよ」

「仮定の話なんだが……」

「ん~、姫路さんみたいに可愛い女子が告白なんてあり得ない事だとは思うけど……そうだなぁ……

 ……って、秀吉? 何か顔が怖いんだけど?」

「……なんでもないわ」

 うーん、なんかモヤモヤする……

「どうした~? 嫉妬か~?」

 ……嫉妬……なのかなぁ…………?

「まあ何でもいいや。次のお題は……」

「待ちなさいコラ」

 一体どんなお題を出すつもりなのよ。

「よし。じゃあ……って、明久伏せろ!!」

「っ!!」

 吉井くんが急に床に伏せる。そして吉井くんの残像にカッターナイフらしきものが……って、一体どうなってるの!?

 

『チッ、外したか!』

『まだだ!! 取り押さえるぞ!!』

 

 カッターを投げつけてきたのは黒マントの集団。えっと、確か……

「おい明久、お前なんかやらかしたか? 異端審問会に追われるような事」

「心当たりは無いけど、異端審問会だからね……」

 え、えっと、一体何がどうなってるの?

「とりあえずお前らは逃げろ。僕が食い止めておく」

「そう。じゃ、よろしく」

「ちょっとはためらってくれよ……

 あと、秀吉は今ちょっと走れないからおぶっていけ」

「え、そうだったの? 怪我でもしたの?」

「え、えっと……うん」

 走らなくて済むようにという空凪くんの配慮だろうか? 受け取っておこう。

 

「さぁ、地獄を見たい奴からかかってこい!!」

『総員突撃! 異端者を逃すな!!』

 

 

「秀吉、行くよ!」

「うん」

 

 

 

 ……あれ? 私ってそもそも逃げる必要ってあるの……?


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