バカ達と双子と学園生活   作:天星

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09 或る晴れた日の悲劇

「う……ん……?」

 あれ? 僕いつの間に眠ってたかなぁ……?

「お、起きたか。そろそろ昼だぞ」

「あ、雄二。何があったんだっけ?」

「あ、あれだけの事をやって覚えてないのか……

 あの船越先生を殺気だけで追い払ってたぞ」

「…………ああ~」

 多分一種のトランス状態に入ってたんだろう。

 一つの物事に集中し過ぎるせいで記憶能力まで曖昧になったんだと思う。

「ああ……ダルい……」

 そんな状態になったせいで今日の分の集中力を使い切ってしまったようだ。

 寝てたっぽいから多少は回復してるかもしれんが、かなり無茶したっぽいからなぁ……

「ほら、昼飯食いに行くぞ!」

 昼飯? ……はて?

 何かあったような…………

「それじゃ、ワシも行こうかの」

「…………(コクコク)」

「フッ、じゃあ僕は贅沢にソルトウォーターと幸せの黒い粉(黒砂糖)を……」

 明久はいつも通り。つまり問題はここじゃあ無い。

 突然豪華な料理を持ってきたら逆に異常事態だがな……

「あ、あの……皆さん……」

 ……あれ? 何か今引っかかったような……

「あ、姫路さん。一緒に学食行く?」

「あ、いえ、あの……昨日言っていた……」

「もしや、弁当かのぅ?」

「は、はい! ご迷惑で無ければどうぞ!」

「迷惑な訳無いじゃないか!! 久しぶりのカロリーだよ!!」

「明久……お前いつか餓死するぞ……?」

 何だろうなぁ……喉の所まで出掛かってる気がするんだが……

 ……この状態でこれ以上考えても無駄か……?

 とりあえず飯食うか……

 

 

  ……side out……

 

  ……光side……

 

 ……昼休み Aクラス教室……

 

「!?!?」

 な、何か今、猛烈な悪寒を感じたような……

「……? どうしたの、光?」

「………………

 皆、今日は天気が良いから昼食は屋上で食べない?」

 私にも、兄さんほどでは無いが謎の直感がある。

 その直感が今、何かを告げている……

「急にどうしたの?」

「……何となく?」

「まあ良いんじゃないカナ? 天気も良いしさ」

「特に問題は無いけど」

「……(コクリ)」

 と、言う訳で、私はいつものメンバー(代表、優子、愛子)と一緒に屋上に向かった。

 そして、屋上の扉を開き、そして……

 

ガタガタガタガタ

 

 ……地面に頭を打って痙攣してる男子生徒の姿を見た……

「ちょ!? これ一体何があったの!?」

「光……か? 僕にもよく分からん……」

「剣っ!! あんた集中力使いきってるでしょ!! 邪魔だから横になってなさい!!」

「……そうさせてもらおう」

 集中力が切れた愚弟はポンコツ以外の何者でもないからね……

 さて、自分なりに状況を整理してみましょうか。

 まず、足元で寝てる情けない弟。

 そして少し離れた所で痙攣してる男子生徒A(土屋くん)

 その向こうに秀吉君と姫路さんと……男子生徒B(吉井くん)。(ちなみに秀吉君とは優子との繋がりで面識はある)

 ついでに、あまりの急展開に固まってるAクラスメンバー3人。

「…………秀吉君、一体何があったの?」

 とりあえず、一番まともに説明出来そうな人に説明を求めてみる。

「え、えっとじゃな……」

「…………(ムクリ)」

 あ、痙攣してた男子A(土屋くん)が起き上がって……

「…………(グッ!!)」

 姫路さんに向かって親指を立てた。

「(……秀吉君、今から言うのはただの推測だから、間違ってたら言って?)」

「(う、うむ……)」

「(……姫路さんの料理を食べたら、ああなったの?)」

 さっきまで倒れていて、今なお生まれたてのヤギのようになってる男子A(土屋くん)を指し示しながら問う。

「(……うむ)」

 ……ええぇ~……

「……姫路さん、こんにちは」

「あ、こんにちは」

「昼食よね? 私たちも混ぜてもらって良い?」

「はい。良いですよ」

「(ひ、光!? 何をするつもりなんじゃ!?)」

「(この状況を何とかするわ)」

 かなり気が進まないが、この状況を見捨てて行ってしまえるほどの冷徹さは残念ながら持ち合わせていない。

 じゃあまずは……

「ただいま~って、誰?」

「おーっす、飲み物買って……って翔子!?」

「……雄二」

「どどどどどどうして翔子がここに!?」

 あ、何か更なる事件が……

 っていうか代表と坂本君(流石に敵の大将は偵察しておいた)って知り合いだったんだ。

「……私達はここでお昼を食べに来た」

「そそそそうか。そうだよな。うんうんうんうん」

 何か坂本君が異様に怯えてるように見えるのは気のせい……?

「……雄二、大丈夫?」

「あ、ああ。ちょっと驚いただけだ。それじゃ、飯食うか」ヒョイ パクッ

 あ……

 

バタン ガシャガシャン、ガタガタガタガタ

 

 …………やっちまった……

「ひ、姫路さん? このお弁当……何か変なものは入れてないわよね……?」

「と、特におかしなものは入れてないはずですけど……」

 嘘だっ!! と、どこかのかぁいい少女のように叫びそうになったが、生憎と嘘を吐いてるようには見えない。

 ひとまず内容物を把握しておきたいんだけど……

「ところでそのお弁当、何が入ってるの?」

「えっと、卵とか、その他野菜とか……あと隠し味を少々」

「何を入れたの?」

「それは……秘密です。隠し味ですから」

 何か怪しいなぁ……

「ごめんなさい、私実は食物アレルギーがあって、どんなに極秘のものであっても明らかにしておきたいの」

 真っ赤な嘘だけど、本当ならマジで命に関わる事だ。断ったりはしない……はず。

「あ、そうだったんですか。

 それじゃあ仕方ないですね。

 えっと、卵焼きには硝酸と塩酸と……」

「…………え?」

 幻……聴……?

「(……全員、集まってくれる?)」

 倒れている男子3人と姫路さん以外の全員を集める。

「(お願い秀吉君、今のは幻聴だったと言って?)」

「(すまぬ、ワシにもしっかりと聞こえた)」

「(……秀吉君も幻聴を聞いたのね)」

「(ごめん、私もしっかりと聞こえた)」

「(うん……はっきりと言ってたよね……)」

「(……私も、聞こえた)」

「(は、ハハハ……きっと姫路さんの小粋なジョークさ!!)」

「(み、瑞希が冗談を言う性格とは思えないけど……

 ……良くも悪くも)」

 どうやら現実逃避してる場合じゃ無さそうだ。

 はぁ、仕方ない……

「姫路サン?」

「は、はい? な、何でしょうか……?」

 可能な限り丁寧な笑顔で(殺気を込めて)問う。

「このお弁当だけど……味見はちゃぁんとした?」

「え、えっと……しようとは思ったんですけど……

 何か太っちゃいそうだったので……」

 太りたく無いという気持ちはよく分かるけどね、味見ごときで太るというのは病気を疑うレベルよ?

 そしてこのお弁当なら逆に痩せるわね。溶けて。

「じゃあ今……味見してみてくれない?」

「え!? い、今ですか?」

 完全に手遅れな気はするけど……今後の為だ。

「サァ、ハヤクシナサイ!!」

「は、はひっ!!」

 

パクッ バタン ガタガタガタガタ

 

 「「「「「「「………………」」」」」」」

 

「ちょっと……やり過ぎたのではないかのぅ……?」

「これぐらいで丁度良いわ。自業自得よ」

「相変わらず厳しいのぅ……」

「それより、お弁当食べた3人を保健室まで運ぶわよ。

 劇毒物(姫路さんのお弁当)も処理しとかないと」

 

 ……その後、色々な処理が終わる頃には昼休みは終わっていた。

 え? もちろんバカ兄は屋上に放置しといたよ。自業自得だから。

 はぁ、お腹空いた……


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