【新】東方二相博麗伝    作:咲夜ノ美鈴

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 ※この小説は、投稿サイト「pixiv」にも掲載されております。マルチ投稿している作品ではありますが、その点ではご了承ください。
 ※この小説は東方projectの二次創作同人小説であり、上海アリス様の「東方project」を原作とさせて頂いています。マルチ投稿と同様にご了承ください。



第壱章:異変の根源は博麗の彼方へと・・・

  

  【新】東方二相博麗伝

  第壱章 異変の根源は博麗の彼方へと・・・

 

 幻想郷は魂によって創造され、形を成す。

 しかし、現界の人間には行き着くことの出来ぬ世界であり、現界・冥界・彼岸など様々な空間を博麗大結界によって区切り顕現する桃源郷。

 其処には人間や妖怪、妖精や神が住み憑いており、幻想を共有している。

 彼らは抑制や派閥の概念を失くし、自らの時間を謳歌する独立的な社会構造を創りあげた。

 

 だが、どんな社会構造でもズレや軋みは生じるもの。

 完璧な社会や世界など足掻いても創れぬように神はそう定義を作動させたからだ。

 その誤差、あるいは幻想の綻びこそが「異変」なのである。

 絶大な力によって幻想郷の軸を曲げ、己が幻想を創ろうと欲する存在が引き起こす具現の革命。

 

 しかし、社会や世界と同じく「異変」も完璧ではない。

 他者の干渉によって進行を妨げられる場合があるのだ。

 その定義を利用し「異変」を抑制・破壊する存在、この幻想郷の社会構造を安定させている存在、それこそが博麗神社の巫女である「博麗霊夢」なのだ。

 先代巫女も同様であったが、彼女の存在失くして幻想郷は成り立たないだろう。

 

 だが、昨夜から幻想郷の境界や軸のバランスが微妙にずれている。

 俺に限らず、妖怪や妖精たちにとっても非常に気にかかる現象だ。

 取り敢えず情報もズレ自体も確認が取れていない以上、迂闊に動くのは良き判断ではないだろう。

 まずは当の本人である「博麗霊夢」に話でも聞きに行くとしよう。

           

                        著 龍凪燕月

 

 爽やかな風と空気が駆け抜ける幻想郷の空を、俺は一人寂しく飛んでいた。天気は満天の快晴、日差しが雲に遮られながら淡い色素のシャワーの如く降り注いでいる。真下には向日葵が咲き乱れる丘が幾重にも重なり、プリズムリバー三姉妹の幻想的な演奏と共に良き風情を出している。

 

 燕「そろそろ見えてくるはずなんだが・・・、少し順路間違えたか?いや、そんな事は無いだろ。どんだけ霊夢に会いに行ってると思ってんだよ。」

 

 俺は現在進行形で馴染みのある博麗神社、もとい霊夢に会うために空を駆け抜けている。いつもの道中を通っているはずなんだが、何時まで経っても神社が見えてこない。いつもの三姉妹が丘で演奏していた所を見る限り、進行方向は間違ってはいないはず。なら神社が見えてくるのは当然だ。だが、現実はそう進んでいない。

 

 燕「・・・一旦止まって考えた方が良さそうだな。」

 

そう言って加速を停止し、空間浮遊停止状態に切り替えた。

 

 燕「昨日の夜に感じた違和感と、この怪奇的な現象が関係してるのか?それとも霊夢が神社の位置を緊急で変えたのか?いや、どちらにしても良い方向に進んではいないか。まったくどうなってるんだよ・・・。」

 

 途方に暮れていると、聞き慣れた声が俺の背中を押した。

 

 文「あややや?なっちゃんお久しぶりですね~。とりあえず一枚写真撮ってもいいですか?なかなかいい記事になるネタが無くて困ってるんですよ(笑)」

 燕「脈略もなく何言ってんだよ。というか俺を記事のネタにしたところで売り上げが伸びるとは到底思えねーけど。」

 

 この挨拶代りにネタになれと言ってくる新聞記者は、俺の昔からの友人で「射命丸文」という鴉天狗である。暇が出来たら朝まで飲み合う仲で、何かと行動を共にする事が多く信頼の置ける妖怪の一人だ。何度か酔った勢いで友人の一線を越えそうになったが、何とか死守出来ている。文は文屋という新聞社の運営管理者かつたった一人の記者だ。文屋が出版している文々。新聞は写真こそ見事であるが、肝心の文面がかなり酷いことになっている。俺も見たことがあるが、コメントの仕様がない。そんな相変わらずの調子で話しかけてくるのである。

 

 文「そう固いこと言わないでネタになって、ね?。ほら、新聞に載ったら色んな意味で有名人になれるチャンスよ?こんな機会は滅多にないわよ(笑)」

 燕「文の記事に出たら悪い意味で有名人になるから止めとく。実際に咲夜がパッド付けてる付けてないの記事載せて、殺されかけたんだろ?」

 文「あややや・・・バレてましたか。でもあの時は仕方がなかったのよ!ネタが一つもない中で唯一あった暴露スクープだったんだから。大丈夫、咲夜さんの二の舞にはならないから心配しないで(笑)。私がちゃんと保障するわよ?」

 

 自信に満ちたその顔にはNOという答えは通用しないことを瞬時に俺は悟った。まずい、このままじゃ本当に記事に載せられる。どうすれば・・・・・、そうだ!記事に載せれないようなネタを言えばこの場を免れることが出来るはず!これが最高の得策だ!

 

 燕「なら、俺と文が酒にベロンベロンに酔ってその勢いで二人身体と身体を交えて一夜を過ごしたっていう記事はどうだ?写真は俺と文が〇〇しながら△△△して顔を赤らめながら文が『ら〇ぇ!イ〇ちゃ〇〇!』って喘いでる所にすれば良くない?」

 

 俺がそう真顔で言うと、文は顔を真っ赤にしながら、

 

 文「あややや・・・でもそれはちょっと心の準備というものが・・・。そりゃ酔ってなっちゃんとしそうになった時はあるけど・・・、でも私は清く正しい射命丸文なの!そんな事スクープにできるわけないわ!」

 燕「それなら俺をネタにするって話は無しでいいよな?」

 文「ぬぐぅ・・・・・それは・・その・・・・」

 

 よし、やっぱり効果的中だった。文は見かけこそ結構攻め気味の態度だけど、自分のことになったら一気に弱気な乙女になるから其処を突けばこっちの勝ちだ。というか俺は本来の目的を忘れてないか?早く霊夢に会わなきゃいけないのに何してるんだろう。

 

 燕「それじゃ先を急がなきゃならないから行かせてもらうぞ。また酒を交わせる時があれば飲もうぜ。」

 

 これでスタート地点に戻れると安心しながら加速しようとしたその時、顔を赤くして黙り込んでいた文が衝撃の言葉を口にした。

 

 文「・・・・・なっちゃんとすれば記事に載せていいんだよね?」

 燕「え?いや、まあそうだけど俺は単に冗談で言っただけで・・・・・」

 

 俺はここでやっと気付いた。最高の得策だと思っていた選択が、最悪の失策になっていることを。

 文は恥ずかしさMAXの表情で俺に詰め寄って来ながら、

 

 文「あややや・・・。でもなっちゃんがその気なら・・・いいよ?その代りそっちが誘ってきたんだから責任は、ちゃんととってもらうんだからね。というか文屋の名に懸けてそのスクープを意地でも載せてやるわ!これこそネタ作りのチャンスよ!ほら、早速〇〇〇するんでしょ?私が脱いだ方がやりやすいなら脱ぐわよ!というか脱ぐ!今すぐ脱ぐ!」

 

 まったく俺の意見を聞くことなく、文はひとりでに脱ぎ始めた。

 

 燕「待て待て待て待て待て待て待て!!!!!分かった!俺が悪かったから服を脱ぐな!ストップストップ!!」

 

 俺は慌てながら文を必死に止めようとした。だが、文は「脱いでやる!絶対に〇〇〇して載せてやる!」と清く正しいの欠片もない言葉を連呼して変な意地を張り、抵抗をまったく止めない。これはもうどうしようもないと悟った俺は「いつもの」最終手段に出た。あまり選択したくはない文を止める俺だけが使える唯一手段。その時、一瞬時が止まったように、文の唇に俺の唇を重ねて口を塞いだ。俗に言う「接吻(キス)」である。

 

 文「!!!!!!!!!!!」

 

 文はこの上なく驚いた顔をしたが、まったく拒む様子もなく、ただただ俺に胸の鼓動を伝えるように落ち着きを取り戻した。ひとつ心配なのは何故か表情が惚けていることだ。そのキスの刹那が終わった後、文を落ち着かせるために言った、

 

燕「・・・・少しは俺の話を聞いてくれよな?」

 

だが、そんな俺の気持ちなど聞きとめることなく、

 

 文「・・・・気持ちはこれで伝えて・・・。」

 

と静かに答えた。

そして、数秒見つめ合った末に、文は俺を求めるように舌を絡ませ始めた。

 

 文・燕「ん、んぁ・・・・・んぅ、ちゅ、ちゅ」

 

 その時、一瞬時間が止まったような感覚に襲われたが、俺は文の気持ちに答えることしか出来ず、拒む気にもなれなかった。ただただ求め合う鼓動に身を任せ、時間だけが過ぎていった。

 

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 その後、一旦地上に降り、俺がいつも休んでいる迷いの森の「ある場所」で文が完全に落ち着くのを待った。霊夢には申し訳ないが、少し到着が遅れそうだ。まあ自分で招いた結果だし、責任は取らないといけない。そう今後の方針を悩んでいると、文がふと声を漏らした。

 

 文「あのさ、なっちゃんって一体何の用事があってここに来たの?いつもは龍凪神社で依頼を受けてるはずなのに。」

 

 そんな何の疑いもなく話しかけてくる文に、嘘を言うなんてことは出来なかった。

 

 燕「この頃、幻想郷の様子がおかしい。見た目は普段と変わらないが、少しずつ境界や軸のバランスが崩れてきてる。他の妖怪の仕業っていう可能性はあるかもしれないけど、今回は違う。昔読んだことがある古い文集に書かれてたことと似てるんだよ。」

 文「それって博麗文集のこと?でも、あの文集は先代巫女が跡形もなく焼き尽くしたって聞いたわよ。中身が相当危険な内容だって噂もあったくらいだから。」

 燕「確かに博麗文集は存在自体が不条理で、管理方法を間違えれば異変を簡単に起こせるほどの霊力を封じ込めてるからな。だからこそ不安なんだよ。その文集には、『博麗が力を失いし時、異変への災厄は解放され、もう一人の博麗が生まれ出でる。その博麗、闇に生まれ影を喰らい幻想を砕く。幻想郷の終焉を意味する二相博麗異変を呼び起こすものなり。』って書かれていた。これが本当なら、霊夢は今かなり危険な状況下に陥っていることになる。」

 文「それなら今すぐ行動を起こさないといけないわね。俄かに信じがたいけど、幻想郷が消滅するなんて考えたくもないわ。」

 

 なら、今後の方針は決まったか。だが文を危険な目に晒すのは避けて通りたい。やっぱり、俺は独りで進むべきだな。博麗文集がそう告げている以上、逆らうのはリスクを伴うか。

 

 燕「なら俺は霊夢に会いに行ってくる、直接話した方が信憑性も増すはずだろ。文はどうするつもりなんだ?」

 文「私は出来る範囲で情報を探してみるわ。幻想郷の情報網を知り尽くしてるこの清く正しい射命丸文にお任せあれ!」

 燕「ああ、無理はするなよ。もし報告があれば鴉を使ってくれ、伝言を頼むには持って来いだろ?」

 

 文は笑顔で答えると、数匹の鴉と共に大空へと羽ばたいた。その姿は見惚れるほど美しく、黒き羽根が舞い上がる情景は圧倒されるばかりだった。

 

 燕「・・・・・俺も動くとするか。」

 

 霊夢を探し出し、異変の有無を確認する。博麗文集の真相を暴く。やらなければならない事は増える一方だ。だが、龍凪の巫女として仕事を全うすることに変わりはない。快晴だった空はいつの間にか黒き雲に覆われ、風や空気は生気を失くしている。妖怪や妖精たちの姿もない。本格的に異変の前触れが始まったようだ。久しぶりに幻想郷で休日を謳歌したかったけど、そうも簡単にはいかないものだな。レミリアに頼めばこんな面倒な運命変えれるはず・・・・・いや、そんなに都合の良い能力じゃないな。

 

 さてと、余談ばかり語っていても運命は進行しない。霊夢、今すぐお前に会いに行ってやる。そして、幻想郷を終焉させる運命を俺がこの手で破壊してやる。

 

 燕「そうだろ?燕狼・・・・・。」

 

 すると、燕月の周りに禍々しき狂気の黒き波動が現れ始めた。その姿は、幻想郷を喰らい尽したという凶き狼「燕狼」以外の何者でも無かった。そして、大地が震え畏れし最凶の狼が主を讃える咆哮を放った。

 

 狼「ゴァアアアァアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」

 

                          終幕

 




 この度は【新】東方二相博麗伝を読んでいただき、誠に有難うございます。第壱章ということで投稿させていただいたのですが、いかがだったでしょうか?何かと不満など有ると思いますが、今後とも改善していき、皆さんに心から幻想郷の世界を堪能して頂けるように努力していきたいと思っております。
 どうぞ、これからも咲夜ノ美鈴を宜しくお願い致します。
 Twitterのアカウントも一応貼っておくので、ご感想などを寄せて頂ければ幸いです。
 @sakuyanomeirin
 それでは、また第弐章で逢いましょう。
 

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