1人と1匹   作:takoyaki

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九十話です



活動報告にも書きましたが、間違えてブロックユーザーにしてしまいました。


慌てて解除したのですが……治ってますよね?


不愉快な思いをさせてしまった方、本当に申し訳ありません!!




てなわけで、どうぞ










藪をつついて敵を出す

「三散華!」

ホームズの蹴りが三発、ゆらりと立ち上がった兵士を襲う。

「……」

鎧を着込んだ兵士は、無言で蹴りを受け止める。

「……効いてない?」

「ふむ、防具の性能の差だな」

鎧の強さも闘技場で相手とは、訳が違う。

こちらは、兵士。

力比べの場にいる相手とは強さも強度も違う。

(だったら……)

ホームズは、脚に闘気を纏う。

そのまま闘気を纏った左脚を顔面にぶつける。

「獅子……」

ホームズの左脚から闘気の渦が巻き起こる。

「戦哮!!」

名前を告げ、ホームズは、左から脚から闘気の獅子を呼び出す。

耐えれると思っていた慢心から、兵士は、想像以上の攻撃を食らってしまい気を失った。

しかし、直ぐに別の兵士が槍で攻撃を仕掛ける。

ホームズは、地面を滑るように移動し槍の柄の部分に入る。

そして、今度は右足に闘気を纏い振り被る。

「獅子戦哮!!」

再び放たれる闘気の獅子。

辺りが一瞬砂埃に覆われる。

(手応えが……)

砂埃が晴れるとそこには、ホームズの蹴りを盾で受け止めている兵士がいた。

ホームズは、直ぐに距離を空ける。

そして、直ぐに回し蹴りを放つ。

しかし、相手はそれを器用に槍で防ぐ。

「なら……」

ホームズは飛び上がり、敵兵の頭上を取る。

「鷹爪撃!」

そして頭上から連続の踏みつけを放つ。

「フン!」

兵士は、それも防ぎ軽く薙ぎはらう。

実力自体は大したことはない。

問題は、その防御力とカード能力だ。

「やっかいだねぇ……それ」

そう言ってホームズは、地面に降りると光るリリアルオーブを握る。

「てな訳で、頼んだ!アルヴィン!」

「頼まれた!」

アルヴィンは、そう言うと身体を半回転させて大剣を相手にぶつける。

「ドッカーン!」

威勢の良い掛け声と共にアルヴィンが相手のガードを崩す、いや、壊す。

相手のガードを壊し、隙を作るのがブレイカーの真骨頂だ。

アルヴィンの攻撃により相手は大きくのけぞる。

ホームズは、その隙に踵落としを相手の頭にぶつける。

そして、そのままそこを足場にしてバク宙をし、地面に着地する。

着地したと同時に今度は回し蹴りを顔面に放つ。

連続の同じ場所への攻撃でダメージの溜まった兵士は、そのまま気絶した。

そして、残りの敵兵を探すとそれらは、ミラ達が倒していた。

「全部倒したか……」

ヨルは、ホームズの肩の上で確認するように呟く。

「増援は?」

ジュードは、油断なく構えたままだ。

レイアは、前方を確認しながらゆっくりと武器をしまう。

「大丈夫みたい」

「王様のいる場所なのに………不思議です」

エリーゼは、思わず呟く。

「罠かもしれないぜ」

アルヴィンが余計な事を言う。

指摘としては正しいが、そのしれっとした顔を見るとどうやら何か知っているようだ。

ローエンは、顎髭から手を離し口を開く。

「すでにラ・シュガル軍は、ア・ジュールとの戦いに向けて動いているのかもしれません」

「戦いが迫ったら、王宮の守りは厚くなるんじゃないの?」

ジュードの疑問にローエンは、答える。

「元々、イル・ファンは、南北を要害によって守られていますが、決戦としては作られていません。街の内部まで突破されてしまえば、敗戦は濃厚です」

ローエンは、更に言葉を続ける。

「ですから、戦時下は兵の大半が街を離れて、海上の防衛とガンダラ要塞に配備されるのです」

「うーん……そこだけ聞くと街で戦争をさせない、いい王様に聞こえるんだけど……」

ホームズは、ため息を吐く。

まあ、実態はとんでない兵器を作っているとんでもない王様な訳だが……

ミラは、腕組みを解く。

「話は分かった。どうやら、開戦が近づいてきている。時間を無駄には出来ないな」

「ええ」

ローエンは、静かに同意する。

一同は、そのままオルダ宮へと突入していった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

オルダ宮に入るとそこには、光る円陣があった。

「何だい?これ?」

「オルダ宮の各所を繋ぐ、蓮華陣(ロータス)です。これを使わないと奥に進めません」

「よし、行こう!」

ジュードの言葉に一同は、頷く。

ホームズもそれに続こうとする。

「王に歯向かえば、お前の人生はそこで決まるぞ」

ヨルは、肩からホームズに言葉を投げかける。

「決まるんじゃない、決めるんだ」

ホームズは、肩にいるヨルにそう投げかける。

「王様に決められるんじゃない。自分で、決めるんだよ、ヨル。それが決意って奴さ」

ホームズのそんな様子を見てヨルは、残念そうにため息を吐く。

「迷うとおもったんだがな……」

「その程度で迷うものか」

ホームズは、鼻で笑うと蓮華陣(ロータス)の中に足を踏み入れた。

蓮華陣(ロータス)が展開され、ホームズは思わず目を瞑る。

そして、次に目を開くとそこは二階だった。

目の前には、さほど長くない廊下と一つの扉のみ。

「ふーん……本当に兵士いないのね……案外楽勝じゃない?」

ローズは、そう言ってすたすたと歩いていく。

そんなローズとは対照的にホームズは、難しい顔をする。

街に入られてしまえば、それだけで敗戦は濃厚。確かにその通りだし、道理に適っている。

とはいえ、王宮が落とされてしまえば、敗戦は確定である。

「『何もない』なんて事があるのかねぇ?」

「冴えてるわね、ホームズ」

ローズは、そう言って刀を構える。

ホームズは、目を険しくさせローズの先を注視する。

扉に魔法陣が出現し、魔物が現れる。

「……何だい、これ?」

ホームズは、眉をひそめながら構える。

魔物というには、少し神々しい。

緑色に薄ぼんやりと光っているその様は、ありえないというに相応しい。

そのありえない魔物は、一行を襲う。

先頭にいたローズは、片方の刀で流し、もう一方の刀で攻撃をする。

「これ、魔物なの?」

ジュードは、疑問を口にする。

「魔法陣が変化したよう見えた」

目ざとく見ていたミラがジュードに答える。

魔物は、容赦無くその尻尾でミラを薙ぎはらう。

「ぐっ!」

刀で防ぐが、吹き飛ばされる。

ジュードがすかさずレストアで回復させる。

「進入を防ぐ術か何かでしょう。まさか、私の知らない間にこの様なものが……」

ローエンは、歯噛みをしながら細剣で防ぎながら、精霊術を発動させるタイミングを探す。

「簡単には通してくれないみたいだね」

レイアは、そう言って棍をぶつける。

しかし、造られたもののせいか、ダメージが通っているか、分かりづらい。

「こんなところで時間を食ってる暇なんてないのに……」

ローズは、忌々しそうに刀で斬りかかる。

そんな中、ホームズは、口元に手を当てて何かを考え込んでいた。

「おい!ボサッとするな!」

「ねぇ、ローエン、さっきなんて言った?」

ヨルの忠告を無視してローエンに尋ねる。

「まさか、私の知らない間にこの様なものが……」

「違う。その前」

「進入を防ぐ術か何かでしょう」

「それだ」

ホームズは、肩にいるヨルに目配せをする。

「君の出番だ、ヨル」

「あぁ?!何が………」

訳のわからない事を言ったホームズに苛立ちを覚えたが、直ぐに察する。

「……なるほど」

ヨルは、一言そう呟くと飛び上がり、生首になる。

魔物達は新たな標的である、ヨルに攻撃を仕掛ける。

頭のいい魔物ならば、その時点でヨルの脅威に気付いただろう。

しかし、目の前にいるのは、唯の造られたなにか。

 

 

 

 

 

 

故に、恐怖が、生物として持っているべき感情である恐怖がない。

 

 

 

 

故に目の前にいるモノの恐ろしさが分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

故に天敵(・・)の存在に気づかない。

 

 

 

 

 

 

 

ヨルは、そんな愚かな彼らを見ると、ニヤリと耳まで口を裂け真っ赤な舌を見せる。

 

 

 

 

 

そして、そのまま、がぶりと一齧りで一匹を口の中に放り込む。

「なっ!?」

余りに突然の事にレイアは、何が起こったか分からない。

ヨルは、ごくんと飲み込み次のエサに標準を合わせる。

そして、誰にも何も理解をさせないまま、もう一匹を間髪入れずに再び喰らい付く。

もう一度ごくりと飲み込む。

最後に舌舐めずり。

「ま、悪くはない」

突然の事にローズもジュードも声が出ない。

今まで、ヨルが精霊術を食べる所は何度も見た。

今回も精霊術ではある。

しかし、曲がりなりにも生き物の形を取っていた。

それを目の前で食べたヨルには、言葉にし難い感情が湧き上がるのだ。

勿論それを眉ひとつ動かさずに指示を出したホームズにも。

とても楽しそうにくくくと笑うヨルを見てレイアは、ある種の恐怖を覚える。

(そうか、忘れがちだけど……)

「化け物だもんね、ヨルは」

「どうした?声が上ずっているぞ?」

面白そうに尋ねてくる生首ヨルにレイアは、ぐっとお腹に力を入れて睨み返す。

ここで怖いだとか口にしたら、それこそ負けだ。

王と戦う前に、身近な化け物に心で負けてしまう。

「震えてるんだよ」

それから、レイアも負けじにニヤリと笑い返す。

「武者震いって奴だね。これから、王様に挑むんだもん!」

ヨルは、見るからに強がるレイアを見て高笑いをして、いつもの姿に戻るとホームズの肩にちょこんと乗る。

ホームズは、目の前で起こった結果を確認している。

「ふむ。やっぱり、ヨルなら食べれたね。この先いくつこう言うのがあるか知らないけど、どうにかなりそうだねぇ」

「えぇ、まさかヨルさんがここまで頼もしいとは思いませんでした」

ローエンは、直ぐに切り替えホームズにそう返した。

ヨルは、ローエンのその物言いに少し不満そうだ。

「よし、さっさと行くぞ」

ミラは、そう言って扉を開ける。一行もそれに続く。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「うーん……しっかし、綺麗な廊下だ事」

ホームズは、面白そうに眺めている。

流石は、オルダ宮。

王の住むところなだけはある。

こんな状況でなければ、ゆっくりと観光したいぐらいだ。

エリーゼは、おっかなびっくりホームズの肩にいるヨルを見ながら進む。

先程の光景が頭から離れないのだ。

ヨルは、そんなエリーゼを見ると、

 

 

 

「わぁ!」

「きゃあぁぁあああ!!」

 

 

 

脅かしていた。

「何やってるんだい、馬鹿」

ホームズは、そう言ってガキの様な事をやっているヨルの耳を引っ張る

「言動には、注意したまえ。そんな事をしてると敵兵が嗅ぎつけ……」

 

 

 

 

 

「居たぞ!こっちだ!」

 

 

 

 

 

 

 

エリーゼの声を聞きつけた兵士達がワラワラと向かってくる。

「るから……」

ホームズが言い終わる頃には、兵士に囲まれていた。

 

 

 

 

 

 

「こんの……クソ猫」

 

 

 

 

 

 

ホームズは、忌々しそうに吐き捨てた。

 

 









バイトがようやく終わりました………大変だった……


これからは、少しずつペースあげれるかも!



ではまた九十一話で( ´ ▽ ` )ノ

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