1人と1匹   作:takoyaki

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八十話です!!



ついに来ました、八十話です!


そして、百話以内の完結は、諦めました……


もうしばらくお付き合い下さい!



てなわけで、どうぞ


開けてびっくり?

「ふぅー……終わった……」

ホームズは、ため息を付く。

ようやく一息つけたという感じだ。

それからホームズは、レイアの方を向く。

「にしても、最後、助かったよレイア」

ホームズは、礼を言うと隣でエリーゼも頷いている。

レイアは、二人の様子を見て胸を張る。

「えっへん!これからは、空の王者って呼んでね」

「はい、空の王者!」

エリーゼは、そのままレイアの要求通り賞賛を送る。

まさか、本当に言われると思わなかったのだろう。

少し恥ずかしそうだ。

「良かったね、エリーゼに感謝したら?空の王者」

「……ホームズは、相変わらずだよね」

レイアは、ホームズに半眼を向ける。

そんな事をしていると、誰かが兵士を連れて走ってくる。

「皆さん落ち着いて、女性と子供は家から出ないでください

男性の皆さんは、私と協力して戦ってください」

そう言って女性、ドロッセルが何かの構えを取る。

エリーゼは、そんなドロッセルに駆け寄る。

ドロッセルは、ここには、いない筈のエリーゼを見てポカンとしている。

「エリー………どうして?」

「ただいま……です」

エリーゼは、ちょこんと小首を傾げながらドロッセルに挨拶をする

「お嬢様」

「ローエン……」

ローエンとエリーゼの姿にドロッセルは、わけがわからない。

「それに皆さん!?」

ジュード達を見て更に驚く。

「お久しぶりです」

ジュードは、挨拶をする。

代わりに全く面識のないレイアとローズは、しどろもどろになりながら、自己紹介をする。

「えっと……初めまして、レイアです」

「あ、えっと、ローズです」

突然の人々にドロッセルは、理解が追いつかない。

「どうも………」

そう言うのが精一杯だった。

「何だか、えらい物騒な指示を飛ばしてましたけど……何かあったんです?ドロッセルさん?」

ホームズがドロッセルに尋ねると、ドロッセルは、目を丸くする。

「ホームズさん!?どうして、皆さんと?!」

「……まあ、話すと長いんですが……色々あって一緒に旅をしています」

ドロッセルは、大きくため息を吐く。

「はぁ……何が何やら……」

ようやく状況を飲み込めてきたドロッセルにミラがもう一度ホームズと同じ質問をする。

「それで、どうしたんだ?ドロッセル?」

「てっきり、ア・ジュールが攻めてきたかと思ったの……」

ホームズは、ちらりといたすらっぽい笑みを浮かべ、ア・ジュールから来たローズを見る。

ローズは、ホームズを睨みつける。

二人がやり取りをしていると、アルヴィンが膝から崩れ落ちる。

「ケガしたの?さっき、僕をかばった時?」

ジュードが急いで駆け寄る。

「大したことないって思ったけど……やっぱ、キツイわ……」

ドロッセルは、それを見ると直ぐに指示を飛ばす。

「誰か、運ぶのに手を貸して」

何人か人が集まり、アルヴィンを運ぶ。

ジュード達もそれについていく。

ローエンは、広場に残る。

流石にドロッセルが仕事をしているのに、執事の自分が真っ先に屋敷に行くわけにもいかない。

「ワイバーンの様子が気になるので……」

そのまま、言えばドロッセルに気を遣わせてしまうのでローエンは、そう言う。

「ま、そこのチャラ男より心配する価値があるよな」

ヨルは面白そうに笑っている。

アルヴィンは、半眼でヨルを睨む。

「おまえ……」

ホームズは、ヨルの髭を引っ張る。

ドロッセルは、それを見て驚く。

 

 

 

 

 

 

「ヨル……喋っ………え?」

ドロッセルのそんな様子を見てホームズは、ため息を吐く。

「後で説明します」

それからヨルの頭を鷲掴みする。

「人前で喋るなって言ってるだろう……」

ギリギリとヨルを締め上げる。

「あぁ、もう、早く行くよ!」

ジュードがホームズを止める。

ホームズは、渋々手を離すと再び歩き始めた。

ドロッセルは、混乱したが、直ぐにワイバーンを見ている男の元へ行く。

「どう、治りそう?」

「お嬢様……私は馬の調教師なんですが……」

男は困惑しながら言う。

「あなたしか頼める人がいないのよ……」

「はあ……………」

男は一応、診察を始める。

仕事がひと段落したのを見ると、ローエンは、ドロッセルに言葉をかける。

「お嬢様には、私が離れた為に苦労をかけました」

そう言って周りの様子に気づく。

何だか、ローエンの事をよく見て過ぎている気がするのだ。

 

 

 

「アレ、イルベルト様じゃない?!元ラ・シュガルの参謀か何かだったんだって」

「おお!だったら戦争になってもア・ジュールなんて敵じゃないな!」

 

 

 

ドロッセルは、申し訳なさそうに俯く。

「近頃はア・ジュールとの戦争が始まるって、みんな不安がってたいたから……」

ドロッセルは、言葉をそこで切ると顔をあげる。

「ここでは、無用な騒ぎになってしまいますね。

とりあえず、屋敷に行きましょう。……ヨルの事も聞きたいですし」

最後に戯けるように言うドロッセルを見てローエンも微笑む。

「そうですね」

そう言って二人は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

ジュード達が、椅子に座って待っているとドロッセルとローエンが帰ってきた。

「調教師によると、あの子たちの治療は、もう少しかかるみたい。

それまでは、街でゆっくり休んでいってください」

そう言って、ドロッセルは、ヨルを見る。

「それで、ヨルはどうして喋れるんですか?」

どうやらずっと聞きたかったようだ。

ホームズは、肩で欠伸をしているヨルを指差す。

「こいつ、猫じゃないんです」

「そりゃあ、そうでしょ。猫が喋るわけないじゃない」

口を挟むローズの言葉にホームズは、こめかみを引きつらせる。

「……まぁ、説明しづらいんですが、どちらかと言うと精霊に近いんです」

「はぁ……」

ドロッセルは、深いため息を吐く。

とりあえず、猫でないことは理解出来たし、魔物と言う訳でもないということも理解出来た。

「なんだか、分かったような、分からないような……て感じですね」

ドロッセルがそう言うと屋敷の扉が開き兵士が入ってくる。

ドロッセルは、直ぐにそちらに駆け寄る。

何やら報告を聞いているようだ。

ヨルは、肩から机の上に降り立ちホームズの方を見てニヤリと笑う。

「全部話さなくていいのか?」

「百戦錬磨のローエンならともかく、あんな子にベラベラ君が化け物だなんて喋るわけにいかないだろう」

ホームズは、心底うんざりしたふうに睨む。

ローズは、そのやり取りを視界の端に捉えるとミラに話しかける。

「それで、どうするの?直ぐには、発てないようだけど……」

「寧ろ、好都合だ。大事の前だからな、体を休められるに越したことはない」

そう言ってミラは立ち上がる。

「皆十分に休むといい」

「え?」

ミラの言葉にジュードは、ポカンとする。

「なんだ、ジュード、そんなに意外だったか?」

ミラも逆に驚いたようだ。

ローエンは、面白そうに笑う。

「ふふふふ、確かに、ル・ロンドを発ってから大立ち回りばかりでしたしね」

「ホームズとチャラ男が裏切ったりとかな」

ヨルの言葉にホームズは、頬を引きつらせる。

「君ね………」

ヨルのギリギリの発言に周りは、苦笑いする。

そんな空気の中、ミラはローエンに目を向ける。

「お前も、考えをまとめる時間が必要だろう?」

ローエンは、少し驚くと直ぐに微笑む。

「お心遣い、ありがとうございます」

二人の会話が終わる頃、ドロッセルの方も兵士との話が終わった。

話の終わったドロッセルは、ホームズに近づく。

「ホームズさん、あなたに渡したい物があるんです。少しここにいて下さい」

訳の分からないホームズは、マヌケな顔をした後頷く。

「はぁ……分かりました」

ホームズの返事を聞くとドロッセルは、姿を消した。

ホームズは、首を傾げる。

それからジュード達の方を振り返るとそこは、さっきとはまた違った意味で変な空気になっていた。

「…………なに?」

ホームズの言葉にレイアが声をあげる。

「何じゃない!何でそんなにここの領主さん、ドロッセルさんと仲がいいの?」

これはジュードとミラ、そしてローズの疑問でもある。

「いや、だってお得意様だもん」

ホームズは、困惑しながら答える。

いつも色々な商品を買ってもらっていたのだ。

ローズは、まだ疑いの目を向ける。

「…………それだけ?何でただのお得意様があなたに渡したいものって?」

「さてね」

ホームズは、肩をすくめる。

本当に心当たりがないのだ。

しかし、そうは言ってもホームズのテンションは、上がっていく。

「ふふふ、女の子からプレゼントがもらえるなんて………生きててよかった」

「あぁ……いつも渡す側だったんだっけ?」

ジュードの質問にホームズは頷く。

「そして、いつも捨てられていた、と言っていたな」

「わざわざ言ってくれて嬉しいよ」

ミラの言葉にホームズは、半眼でミラを見る。

しかし、直ぐに目の輝きを取り戻すと熱く語り出す。

「そう!おれにプレゼントをくれた女の子なんて、大して居なかったけど………」

ホームズは、拳をグッと握る。

「今回は、ドロッセルさんがくれる!!これで喜ばない訳が無かろうが!」

ホームズがご機嫌に、そして熱く話す傍ら、ローズは、不機嫌そうに頬杖をついている。

何だか面白くないのだ。

そして、自分があげたものを考える。

(子供の頃に作った花の冠……)

原価1円もかからない。

そして、領主様があげる何か。

どう考えても釣り合わない。

「ロ、ローズ」

わたわたとしながらレイアは、ローズに話しかける。

しかし、ローズは反応しない。

レイアは、目の前にいるヨルに助けを求める。

「(どうにかしてよ、ヨル!ローズ拗ねてるんだけど!)」

ヨルは、嫌そうに顔を背ける。

「(知らん。お前がどうにかしろ、レイア)」

「(そうやってこの面倒な事ばかり押し付けて!どうするの、ドロッセルさんがホームズの事が好きでなんか家宝的なものをあげたりとかしたら!)」

「(その妄想力をどうにかしろ!そんな事あるとおもうか?)」

「(ないと思う)」

「(即答だな………なら、いいだろう)」

「(でも……)」

レイアは、そう言ってローズを見る。

ローズは、イライラしながら机を指で叩いている。

 

 

 

 

 

「お待たせ」

「「(来た!!)」」

ヨルとレイアは、ドロッセルの方を見る。

「はい、ホームズさん」

そう言って渡したのは……

 

 

 

 

 

 

「あーー!!おれのカバン!どうしてここに!?」

 

 

 

 

 

 

ホームズがジュード達との戦いのゴタゴタで置いてきた、薬箱のようなカバンだった。

 

 

 

 

 

 

ホームズは、目を白黒させている。

 

 

 

 

 

 

 

余りのオチにレイアとローズとヨルは、開いた口がふさがらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジュードさんたちが届けてくれたんです」

「本当に!?いやーありがとう、ジュード」

女の子からのプレゼントにしては、という奴なので、落胆してもおかしくないのだが、逆にホームズは、大喜びだ。

長い行商の生活でお世話になった、大切な品だ。

ついでに言うなら、こいつが無かったせいでホームズは、レイアの宿で借金返済生活を余儀なくされたのだ。

「う、うん、まあ、どういたしまして………」

喜びのテンションのホームズとは違い、ジュードは、気まずそうだ。

「それでは、私はこれで」

ドロッセルは、そう言って立ち去った。

そんなジュードとドロッセルなんて気にもとめず、ホームズは、カバンをあける。

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームズの動きが突然止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ジュード君………」

ホームズの声から先ほどのテンションが消え去る。

「何も入っていないんだけど………どうして?」

ホームズは、カバンの中身を見つめながら聞く。

そう、何もないのだ。

商品も、服回復道具も、そして、金も……

 

 

 

 

 

 

 

ジュードとエリーゼは、気まずい思いをし、答えられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私たちが全て使った」

 

 

 

 

代わりにミラが答えた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ!!何で!?」

「お前に武器を殆ど壊されたせいで買い直さなければならなからな」

対して詫びれもせずに言葉を続ける。

そう、あの時ホームズは逃げる為にジュードを抜かすメンバーの武器を全て破壊したのだ。

「あの後、ジュード以外武器を全て壊されてしまい、どうしたものかと頭を抱えていたのだ、すると……」

「すると?」

「お前が忘れていったカバンが目に入ったのだ。試しに中身を確認したところ金が割とあったのでな」

「……それで?」

「全部使わせてもらった」

「最悪だーーー!!」

ホームズは、心から叫ぶ。

道理で再会した時に皆武器を持っていた筈である。

「君たち、なにやってんの!!おかしいだろう?!君たちのやってること、盗賊と変わらないよ!!」

ホームズ達に襲いかかって金だけ奪い去ったのだ。

「ミラ……今回は、珍しくホームズの方が正しいよ………」

ジュードがミラに耳打ちをする。

「ふむ……」

ミラは考え込む。

「どうすればいい?」

「返したまえ、金を」

ホームズは、即答する。

しかし、ホームズだって今すぐ返せるほどないことぐらい分かっている。

何せ、カバンの中にあったのは、コツコツとホームズが貯めてきたお金だ。

常に赤字と戦いながら、それでもいざという時の為にと健気に貯めてきた金だ。

直ぐにおいそれと返せる金額ではない。

ホームズは、指をミラに向かって差す。

「決めた。君には、この旅が終わるまでに使い込んだおれの金を返してもらうよ」

「ふむ、いいだろう」

ミラは凛として返す。

「ちったぁ、反省したまえよ……」

ホームズは、頬を引きつらせる。

 

 

 

 

ホームズにもう一つ、ミラ達と旅をする理由が増えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「よ、良かったね!ローズ!」

「いや、どの辺が?」

レイアのフォローにローズは、哀れな男(ホームズ)を見ながら呟いた。

 

 

 

 








そんなこんなで、どうでもいい伏線の回収です。
ずっとこれが書きたかった(笑)
とりあえず、着々と書きたかった物を書き上げて行っています。
でも、最終話は、まだまだです。


では、また八十一話で( ´ ▽ ` )ノ

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