1人と1匹   作:takoyaki

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七十八話です



新章突入です!!






てなわけで、どうぞ


ラ・シュガルへ
天から下るこの気持ち


「よし!」

ホームズは、ポンチョを羽織り、靴紐を結ぶ。

そして、部屋の中の鏡に立つとアホ毛をいじり始める。

一晩寝たことにより、ホームズの体調は、周りが呆れるほど回復した。

「流石、ジュード君、おかげで助かったよ」

「……これからは、気をつけてよ」

ジュードは、ため息を吐く。

刀を腹で受け止めるなんて馬鹿みたいな行動は、これっきりにして欲しいというのがジュードの思いだ。

「まあ、考えておくよ」

今度も同じ治療をやる羽目になりそうだ。

「ホームズさんも懲りませんね……」

ローエンは、呆れている。

「優等生も大変だねえ」

「アルヴィン代わってよ……」

ジュードは、ため息を禁じ得ない。

「俺としては、殺されなければ、いくらでも食らってもらっても構わないがな」

そんな中、ヨルが、ホームズの肩から白い牙を見せてそう言う。

「君は、本当に優しいね」

ホームズは、どうでもよさそうに返すとアホ毛を一本立てる。

「お待たせ。さ、行こうか」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

一行は、ロビーで合流すると、そのままワイバーンの檻のところに歩いていった。

「どう、ホームズ調子は?」

ローズの質問にホームズは、手を振る。

「バッチリ。睡眠て偉大だよね。君は?」

「同じくってところね、そう言えばレイアは?」

「わたしも大丈夫だよ」

レイアは、エッヘンと胸を張る。

それから、何かを考え込む。

「そう言えば、ホームズ、あの時の守護氷槍陣の事だけどさ……」

「話題変わりすぎだよ……どうなんっているんだい、君の頭」

ホームズは、片眉を上げる。

しかし、そんなホームズに構わずレイアは、続ける。

「槍じゃなかったんだけど、柱だったんだけど」

それから、ニヤリと笑う。

「どうして?」

ホームズは、その顔を見て全てを察した。

(この子気付いてるな……)

ホームズは、面倒くさそうに顔を歪める。

「何、言わなきゃダメなの?」

「ええ、ホームズさんの実力に関わる問題ですので」

ローエンもにこやかに笑っている。

ローズも途中で気づくとニヤニヤしだした。

「ホームズ、この期に及んで、隠し事とは感心しないな」

何も気づいていないミラが追い打ちをかける。

ホームズは、観念した様にため息を吐く。

「槍になんてしたら、柱とは比べ物にならない怪我をしちゃうだろう、下手すりゃ死んじゃうよ」

ホームズの言葉にミラは、ポカンとした顔をする。

アルヴィンは、対照的にクスクスと笑っている。

その生暖かい空気に耐えられなくなったホームズは、顔を背ける。

「優しいね、ホームズ君」

アルヴィンの言葉にホームズは、肩をすくめる。

「ほら、おれって紳士だから」

『鏡見てから、いえー』

ティポの言葉に心底傷ついた顔をするとホームズは、話し始めた。

「まあ、殺すつもりは、なかったからね。最初から足止めする事が目的だったし……」

「なるほど、手加減していたのか?」

ミラの言葉にホームズは、目を丸くした後大笑いする。

レイアに至っては呆れ顔だ。

「手加減なんてしてなかったよ、ホームズは……」

レイアは、ため息を吐く。

ホームズのどの攻撃にも手加減なんて物はなかった。

常に全力だったと言ってもいい。

「よく分かってるじゃないか、レイア」

ホームズは、目元に薄っすらと涙を浮かべると頭にはてなマークを浮かべているミラに説明する。

「何も殺す気でやるだけが、全力勝負というわけでもないんだよ」

氷槍陣がいい例だ。

確かに槍ではなく柱だった。

しかし、そうは言ってもスピードタイミング、パワー、どれを取っても手加減のての字もなかった。

ミラも自分の腹を蹴られた事を思い出す。

「なるほど、理解した。お前は、手加減(そんなもの)とは縁遠いところにいるということだな」

ホームズは、悪戯っぽく笑う。

「頼まれたら、考えてあげるよ」

「そして、実行しないんだろ」

ミラは、ホームズを見ながらそう告げる。

ヨルは、肩で聞いていてニヤニヤする。

「大分、分かってきたな、オンナ」

ホームズは、オールドアップをする。

そんな事を話していると、ワイバーンの檻に着いた。

ユルゲンスが腕を組んでお待ちかねだ。

「もう出発するか?」

「頼む」

ミラの言葉を聞くとユルゲンスが檻を開ける。

四頭のワイバーンとご対面だ。

「四頭?」

ローズは、首を傾げる。てっきり、一人一頭かと思っていたのだ。

「そうだ。だから、悪いけど二人で一頭に乗ってくれ」

「分かった」

ミラは、そう返事をする。

「組み合わせは………」

ホームズは、どうするかと考える。

とりあえず、エリーゼとレイア、それからローズとレイアというのは無しだ。

どう考えても力が足らず、ワイバーンを制御出来ない。

ホームズが考え込んでいる間にミラが指示を出す。

「アルヴィンとエリーゼ、ローエンとレイア、ホームズとローズ、そして、余った私とジュードでいいだろう」

「ま、妥当だな」

ヨルの言葉に皆頷く。

そして、それぞれワイバーンに乗る。

迷いなく乗る面々を見てローズは、首を傾げる。

「もしかして、みんな乗ったことあるの?」

そのローズの問いに一同は、口を揃えて答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

『『あるわけないだろ((でしょ))』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「うわぁああぁああーー!!」

大空に響き渡るジュードの声。

只今一行がいるのは、地上百メートルの場所だ。

まあ、言うまでもないことだが、落ちれば無事では済まないだろう。

そんなところをホームズ達は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言うことを聞かないワイバーンを必死に操っていた。

 

 

 

 

 

「くっ……!」

ミラは、必死に引っ張る。

ジュードと違い、ミラには、獣隷術なしでワイバーンを従えるという力を持っているのだ。

だから、代わったのだが、思いの外上手くいかない。

「わぁぁぁあ!!落ちる!落ちるぅ!」

レイアは、ローエンが操るワイバーンで声の限り叫ぶ。

「意外に、難しいですね……!」

顔を険しくさせながら、手綱を引っ張る。

しかし、言うことを聞く様子はない。

「真っ直ぐ飛んで欲しいですー!」

エリーゼ達のところも似たようなものだ。

アルヴィンの言うことを全く聞かない。

『しっかり、操縦しろー!!』

「うるせえ!黙ってろ!」

「あばばば」

よっぽど余裕がないのだろう。

いつものチャラチャラしたものいいとは、かけ離れている。

 

では、ホームズ達は?

 

 

 

 

 

 

「だあぁぁぁぁぁあーー!!」

 

 

 

 

どこの組み合わせよりも暴れていた。

「ちょっと、ホームズ!」

ちなみに手綱を握るのはホームズだ。

ローズは、ホームズの腰に抱きついている。

せっかくのシチュエーションだが、ロマンもクソもありゃしない。

「クソ!全然言うこと聞かない!どうなってるだい!?」

ワイバーンは、右へ左へと忙しい。

周りを見てもみんな苦労しているが、ホームズ達のは格別だ。

そんなワイバーンを見て、ホームズはある事に気づく。

「なんか、この子怯えてないかい?」

そう行動が明らかに挙動不審なのだ。

ローズもホームズの言葉に頷く。

そう考えれば色々と納得がいく。

「なんか、まるで得体の知れない物を恐れているかのような………」

ホームズは、ある事に思い至り、フードの中にいる奴を見る。

「君、自分の事、なんだと思ってる?」

「化け物。得体の知れない、な?」

ヨルは、ホームズの言葉に流し目で答える。

つまり、ヨルに怯えてワイバーンは、暴れ回っていたのだ。

仕方ないと言えば仕方ない。

何せ、自分の背中にいるのは、リーゼ・マクシアを滅ぼしかけた化け物。

そして、ヨルの話を鵜呑みにするなら、ワイバーンはヨルとの戦いで使用されている。

ワイバーンに刻み付けられた先祖から恐怖を察知したのだろう。

 

 

 

 

ホームズの堪忍袋が破裂し、手綱を掴みながら叫ぶ。

「こんの……クソ猫!!今すぐ降りたまえ!そして戻ってくんな!」

「それが出来たら苦労しない」

「だったら、ミラみたいにワイバーンを大人しくさせておくれ!!」

「さっきも言ったろ。無理だって」

「本ッ当に使えな……いーー!!」

ホームズの文句が言い終わる前にワイバーンは、急下降した。

暴れながら、海に向かって一直線に落ちていく。

「ホームズ!!」

「言われなくて……も!」

ホームズは、手綱を力の限り引っ張りギリギリのところで、墜落を免れる。

しかし、今度は、石柱に向かって飛んでいる。

このままでは、激突してしまう。

恐怖に動揺しているのだろう。

ワイバーンもタダではすまないというのに、避ける気配がない。

「この、クソワイバーン!ちったぁ、言うこと聞きたまえよ!!」

ホームズは、手綱を引っ張るが言うことを聞く気配はない。

このままでは、待ち受ける運命は、火を見るよりも明らかだ。

「調子に………乗んな!」

ホームズは、リリアルオーブを活用して最大限の力で手綱を引く。

突然来た強い力にワイバーンは、驚くと、そのまま柱ギリギリのところを飛ぶ。一歩間違えば足をかすってしまいそうなところを全力で上空へと飛んでいく。

歯をくいしばって、どうにか安定させる。

 

 

 

そして、そのまま雲の上へと躍り出てた。

 

 

 

 

 

「ふん!」

ホームズは、手綱でワイバーンを何とか制御して飛ぶ。

「ホームズ」

「なんだい?」

ローズの言葉に、ホームズは、漸く周りの景色を確認する。

「これは……」

ホームズは、思わず息を飲む。

自分の足元に広がる雲、そして、地上にいる時よりも遥かに強い光を放つ太陽。

綺麗、というのが一番だろう。

「すごいねぇ……これは」

ホームズは、そう言って目を丸くする。

「本当に……」

ローズは、思わず微笑む。

先程までの騒ぎが嘘のように穏やかな時間が流れる。

ヨルも珍しく、表情を柔らかくして、その景色を眺める。

「長生きはするもんだな」

「君が言うと説得力が違うね」

何せ二千年以上生きているのだ。

ヨルは、ホームズの言葉にクスリと笑った後、すぐに顔を顰める。

その突然の表情の変化にホームズは、怪訝そうに尋ねる。

「ヨル?」

「来るぞ!」

 

 

 

 

ヨルの言葉と共に雲が蹴散らされる。

 

 

 

 

 

現れたのは、巨大な竜だった。

 

 

 

 

 

「なんだ……こいつは!?」

アルヴィンは、思わず口走る。

とりあえず、友好的でない事だけは確かだ。

「降りよう!!」

ジュードの言葉と共に一行は、下降していく。

しかし、竜は、追ってくる。

おまけに、火まで吐いてくる始末だ。

「クソ!どうして、追ってくるんだ、あの子は!?」

ホームズの悪態を背中で聞きながら、返す。

「恐らく、うっかりあの馬鹿の縄張りに入ちまったんだろうな」

「……それか、エサか。って所かい?」

「そういうことだ」

そんな事を話していると火の球が吐き出される。

ホームズ達にはギリギリで当たらなかった。

しかし、ホームズを逸れた火の玉は、そのままジュード達のワイバーンの翼に当たる。

翼を負傷したワイバーンは、そのまま真っ逆さまに落ちていった。

「ジュード!」

レイアが叫び、皆は彼らのワイバーンを追う。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「くっ!」

ミラとジュードは、何処かの広場に不時着した。

その場からどうにか立ち上がろうとする。

何とか怪我もせずに済んだが、衝撃が体から抜けない。

そのフラフラとしている所を魔物、プテラロングは、襲いかかる。

「ジュード!」

ジュードが振り返るとプテラロングが迫っていた。

迫りくる、ワイバーンをアルヴィンが、大剣で防ぐ。

しかし、あっさりと振り払う。

アルヴィンは、空中で一回転をすると着地をする。

「アルヴィン……」

アルヴィンの突然の行動にジュードは、驚く。

「っだぁあぁああ!!」

その間に、遅れてやってきたホームズは、勢いをつけた飛び蹴りをプテラロングにお見舞いする。

アルヴィンは、ジュードに背を向けて、プテラロングに銃を構える。

 

 

 

 

 

 

「今はよそ見して暇はないぜ」

 

 

 

 

 

 

戦いの火蓋は、切って落とされた。

 

 

 

 

 

 




前回の後書きが誤解を招きそうだったので、少し手直ししました。






まぁ、それはともかく、忙しかった予定も一旦の終わりを迎えました(まぁ、まだ最高に面倒臭いのが、あるのですが……)
というわけで、今回あげました。
それにしても、今回書いた話のアニメーション本当にすごかったですよね………
セーブデータ別にして何回も見ましたもん。
そんな事を思い出しながら書いていました。







では、七十九話で( ´ ▽ ` )ノ



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