1人と1匹   作:takoyaki

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六十六話です。



六のゾロ目だ………


四のゾロ目よりは、いいかな?日本人だし





てなわけで、どうぞ





昨日の友は、今日の敵

「……貴方自分が何を言ったのか、分かってる?」

静まり返った王宮内で、真っ先にローズが口を開いていた。

その場にいた人間は、戦慄している。

聞きようによっては、侮辱しているのと同義語だ、一国の王を。

ローエンとヨルを除いた面子は、空いた口がふさがらない。

これから、交渉をしようという相手に、ほとんど喧嘩を売ったようなもの言いにレイアは、ハラハラとしながらホームズを見る。

「口の利き方に気をつけるんだな、ホームズ……次、そんな事を言えば、首に頭が乗っていないと思え」

ウィンガルは、静かに告げる。

その静けさには、殺気がこもっている。

 

 

 

指一本動かすのも

 

 

呼吸をするのも躊躇われる、そんな空気だ。

 

 

 

気のせいでなくても、ジャオからもその空気が出ている。

(なんて……緊張感……これが、四象刃(フォーブ)!)

ローズは、改めて自分がいる場所を改めて実感する。

そんな空気の中、原因(ホームズ)は、へらっと笑う。

この時、ホームズの正面に立っていたガイアスと四象刃(フォーブ)は、気付く。

 

 

 

(目が笑っていない……)

 

 

 

 

「やっだなぁー。そんなに怒らなくたっていいじゃないですか………」

一旦言葉を区切るとガイアスをその碧い瞳で見つめる。

その目に宿る光は、挑発、挑戦、そして、敵意。

ガイアス相手に一本も引かず、その全てを目に宿しガイアスを真っ直ぐに見抜く。

 

 

 

 

 

 

 

「ガイアス王は、違うんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームズは、そう言ってより一層笑みを深くする。

相変わらず目が笑っていない。

つまりこういうことだ。

ここで怒ればガイアス王は、愚かな王だと言うことになるぞ、というある意味の脅しだ。

だから、このホームズの無遠慮な言葉にも四象刃(フォーブ)は、どんなに憤りを覚えても、決してホームズを処罰する事は出来ないのだ。

自らの王を暗君と認める行動をとることなのど、決して許されるものではない。

「……なるほど」

ウィンガルも、それを察したようだ。

忌々しそうにホームズを睨む。

ホームズは、ニヤニヤと笑っている。

化かし合いは、ホームズの方に旗が上がったようだ。

ガイアスは、ホームズの挑戦的な碧い目をしかと見据える。

訳がわからないエリーゼは、近くにいるローエンにしか聞こえない声で尋ねる。

「(ホームズは、どうしてあんな事を言ったん……ですか?)」

「(エリーゼさんが原因ですよ)」

「(私の?)」

ローエンは、そう言ってウィンガルに目を向ける。

「(えぇ。ウィンガルさんのあの物言いと、エリーゼさんが、1人で寂しい思いをしていたという事実、この二つに我慢が出来なかったのでしょう)」

簡単に言うと、仲間の為にホームズは、静かに怒り、喧嘩を売ったのだ。

一杯食わすために。

エリーゼは、ローエンの説明に背中しか向けていない、ホームズを見る。

「(ホームズは、何時だって分かりづらいです)」

エリーゼは、少し不満そうな顔をして、自分に対してアドバイスした時の事を思い出した。

あの時も、もう少しちゃんと説明してくれれば、エリーゼだって少しは違った態度を取っただろう。

しかし、ホームズは、エリーゼに対して自分から気付くように仕向けた。

その方が成長するからである。

しかし、相変わらずそのことは口にしない。

エリーゼの言葉にローエンは、仕方なさそうな顔をする。

「(まあ、分かりづらいように行動してますからね)」

ローエンは、そう言ってガイアス相手に一歩も引かなかったホームズを見ていた。

そんな二人の会話に構わずガイアスは、ホームズに言葉を続ける。

「ますます、母に似てきたな」

ガイアスの一言で、ホームズは、今まで浮かべていた笑みを瞬時に引っ込める。

「やめて下さい。おれは、あの人と違って常識人です」

ホームズは、頬を引きつらせながら返す。

「(………平気で、王様相手に喧嘩売った人を常識人とは、言わないと思うんだけど)」

レイアは、近くにいるヨルに小声で話しかける

「(何を今更言っているんだ、ムスメ。あいつが非常識なのは、いつものことだろう)」

「(ヨル君が言ってもなぁ……)」

「(君たち、聞こえてるよ)」

彼らがそんなことを小声で話していると、ガイアスが口を開く。

「ふむ。まあ、ホームズのは、ともかく、マクスウェルの考え方は、俺は賛成しない」

そう言うと、ガイアスは、立ち上がる。

「人が生きる道に迷うこと……それは底なしの泥沼にはまる感覚に似ている」

「生きる事に……迷う?」

ジュードの言葉にガイアスは、頷く。

「そうだ。生き方がわからなくなったものは、苦しみから抜け出せずにもがき、より苦しむ」

ガイアスは、ホームズを見る。

「故に民の幸福とは、その生に迷わぬ道を見出す事だと俺は考える。

俺の国では脱落者は、出さない。

それが、この俺の王としての役目だ」

そう言うと、ガイアスは、ミラに手を差し出す。

「イル・ファンで、鍵を奪ったらしいな………それをこちらへ渡せ、マクスウェル」

言葉を切るとガイアスは、ミラに向かって手を伸ばす。

「断る。あれは人間の使えるものではない」

そう言って言葉を切る。

「人間は、世界を滅ぼす力を前に己を保つ事なんて、できない………二千年以上見てきた」

ミラは、最後の方は、寂しそうに呟いた。

ミラの決意は、固い。

向こうもそう判断したのだろう。

 

 

 

 

 

 

「なら、あなたに聞くとしよう」

「あなた?」

ローズが首を傾げる、その横をアルヴィンがゆっくりと歩いていく。

「アルヴィン……」

ミラは、睨みつけるようにアルヴィンの名を呼ぶ。

「嘘……だよね?」

「悪いね、これもビジネスなんでね」

驚くジュードにこやかにそう言うと、アルヴィンは、ガイアス王の前にいく。

「サイテーです!」

エリーゼの言葉もアルヴィンには、届かない。

アルヴィンは、そのままガイアスに告げる。

「ニ・アケリアに、イバルっていう巫女がいる。恐らくそいつに渡したんだろう」

「ご苦労だった。さて……」

アルヴィンの報告を聞くとミラ達を見る。

「これで、マクスウェル様達にはもう用はない。お引き取り願おうか……」

ジリジリと城兵達が近づいてくる。

「……これは」

ローズが、刀に手をかけようとした瞬間、扉が勢いよく開き、青いを基調としたタイツに身を包んだグラマラスな女性が髪を揺らしながら入ってきた。

「大変です!」

その女性は、ガイアスの近くにいるアルヴィンを見て驚く。

「アル……!?」

「よ。プレザ」

気さくなアルヴィンにプレザは、少し戸惑う。

しかし、直ぐに思い直すとガイアスに報告を続ける。

「ハ・ミルが、ラ・シュガルの進行を受けました!大精霊の反応アリとのことです!」

ホームズは、それを聞いて眉を潜める。

「四大達、解放されたの?」

「いや、それだったら、私に分かる」

ミラは、一度言葉を切るとハッとしたように声を上げる。

「まさか!新たな鍵を作り出したのか!?」

驚愕しているミラに関わらず、ガイアス王は、立ち上がる。

「全ての部族に通達しろ!開戦の準備だ!我が民を傷つけるものは、何人たりとも許さん!」

そう言うと、ガイアス王は、姿を消した。

 

 

 

 

ヨルは、誰もいなくなった玉座を見て口を開く。

「……ふむ、妙な雲行きだな」

「それは、こっちもだよ」

ホームズは、そう言ってウィンガルを指差す。

「さて……」

残されたウィンガルは、城兵を集める。

「マクスウェルを捉えろ。精霊の主を捉えたとなれば、未だ反抗的な部族も従うかもしれん」

ウィンガルの言葉と共に、城兵達がミラ達一同を取り囲む。

どうやら、戸惑っている暇はないようだ。

「エリーゼさん!」

「ハイ!」

ローエンの声にエリーゼは、答えると、あらん限りの声で呼ぶ。

「ティポ!来て!」

ティポは、呼び声に答えると城兵の手の中で突然動き出し、相手を驚かせた。

『今の内だー、逃げろー』

その一瞬の隙を突いて一同は、走り出した。

ジュードとローズが最後に後ろを振り返ると、アルヴィンは、ヘラヘラと手を振っていた。

「………覚えてなさいよ」

ローズは、歯ぎしりしながら、駆け出した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「それにしても、ティポをあんな事に使うとはね……」

ジュードは、感心している。

「えぇ、万が一の為に用意しておいたのです。ミラさんが信念を貫く時、必ず、何か起きますからね」

「……確かに、心配になるよね」

ローエンの言葉に、ジュードは、頷く。

「知ってますよ、そういうの、トラブルメーカーって言うんですよね」

「ふむ……」

エリーゼの言葉にミラは、考え込む。

『うわ!ミ、ミ、ミ、ミラ、聞いてたの』

「……あぁ。ティポの意見、否定はしないが、それを言うならティポこそトラブルメーカーなのでは、ないのか?」

「「それは……」」

誰もフォローしなかった。

「げ!フォローなし?」

「まあ、今回は、ホームズもそうだけど……」

そう言って、レイアは、ホームズを見る。

ガイアス相手に一歩も引かずとんでもない悪態をついてきたのだ。

ガイアスが本当に愚かな王だったらどうなっていたのかと考えると背筋が寒くなる。

ホームズは、先ほどから最後尾で、後ろからやってくる城兵を蹴ったり何かを投げつけたりしながらはしっている。

そんなホームズを視界の端に捉えるとレイアは、先ほどからの、疑問を口にする。

「なんで、ホームズは、あんなこと言ったんだろう?」

「まあ、エリーゼさんが原因でしょう」

そんなレイアの疑問にローエンがエリーゼにしたのと同じことを話す。

話を聞いたレイアは、大きくため息を吐く。

「………だからって、ふつう、王様に喧嘩を売る?」

レイアは、思わずため息を吐く。

「……あいつは、別に普通じゃないだろ」

ミラの言葉に側から聞いていたローズは、頬を引きつらせる。

「……まあ、否定はしないわ」

そう言って、ローズは、ため息を吐く

「見えた、あの扉よ!」

ため息から、回復したローズは、目の前の扉を指差す。

あれを抜ければ城外へと出る事が出来る。

 

 

 

 

 

 

そう、抜ければ、城外へ出る事が出来るのだ。

 

 

 

 

 

 

抜ければ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

扉が一行の目前に迫った時、最後尾を走って会話に参加していなかったホームズが、スピード上げ先頭に躍り出る。

 

 

 

 

 

 

 

そして、扉を開かないように、両手で押さえる。

 

 

 

 

 

 

「何をしている?早く開けろ」

ミラは、怪訝そうに聞く。

何せ、後ろから兵士達が追ってきているのだ。

ふざけている場合では、ない。

しかし、ホームズは、扉を開かない。

「悪いけど、それは出来ない」

ホームズは、背を向けたまま、続ける。

その声には、全く感情がこもっておらず、何を考えているか分かりづらい。

戸惑う一行に構わず、ホームズは言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実はさ、闘技大会が始まる前に、アルヴィン経由で、ウィンガルさんから、手紙を貰ってね………有事の際には、ガイアス王が、有利になるよう動けと言われてるんだ」

突然の告白に、ミラ達は言葉を無くす。

 

 

 

 

 

皆、ホームズが何を言っているのか分からなかった。

 

 

 

 

 

 

分かりづらいが、ホームズは、仲間の事を思って行動していた。

闘技場の時も、エリーゼの癇癪の時も。

それには、皆気付き始めていた。

だからこそ、信じられない。

目の前で起こっているこの現実を一同は、理解することが、出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「まさか……ホームズも」

 

 

 

 

 

 

意外にも真っ先に口を開いたのは、エリーゼだった。

エリーゼの言葉にホームズは、ようやく、彼らの方を振り返る。

「そう、よく分かったね、エリーゼ」

そう言うホームズの顔は笑顔だ。

いつもの如く胡散臭い笑顔で、相変わらず、何を考えているか、分からない。

そんな混乱の中にいる面々に関わらず、ホームズは、最後の、そして、駄目押しの一言を告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いね、マクスウェル殿。おれ、ホームズ・ヴォルマーノは、貴方方を裏切り、敵に回る」

そして、胸の真ん中に手を当て、高らかに宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだね、分かりやすく言うなら……

『ここを進みたくば、おれを倒してからにしろ』って奴だ。覚悟したまえよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
















伏線は回収する為にある……
てなわけで、アレを書いた時には、「あぁ、もうダメだな」と思っていました。


因みに言うと今までで、一番反応が怖いです…………
というか、書いてて凄く神経を使いました。
話を考えているときはいいのですが、いざ書いてみると……ね?




では、また六十七話で( ´ ▽ ` )ノ



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