1人と1匹   作:takoyaki

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五十八話です。




新しい日朝が始まりました。



早くカーアクションが見たいです。


てなわけで、どうぞ


カン・バルク
心頭滅脚


「ヘックシュン!!」

ホームズは、盛大にクシャミをする。

ただいま、こちら、モン高原。

雪がざんざか降り注ぎ、そして、温度も急激に下がっている。

先ほどまでのシャン・ドゥが嘘のようだ。

「寒い」

ホームズは、ポンチョについているフードを被る。

「そりゃあ、雪降ってて暑い訳ないでしょう」

ローズの冷たいツッコミが飛んでくる。

ホームズは、頬を引きつらせる。

「ユルゲンスさん、まだです?」

「まだまだだよ」

ホームズは、大きくため息を吐く。

「アルヴィン、コートおくれ」

「やだよ、何でおたくに、あげなきゃいけねーんだよ」

「いいだろ、減るもんじゃないし」

「減るわ!!色々!!」

ホームズとアルヴィンのくだらないお喋りにジュードは、ため息を吐く。

「ミラ、大丈夫?寒いと足に響くと思うけど………」

「大丈夫だ、ジュード」

ミラは心配そうなジュードに微笑みかける。

それを見ていたローズは、ホームズに尋ねる。

「ホームズ、傷口痛くない?」

何せ、短時間で同じ場所を二度も刺されているのだ。

しかし、当の本人は、アルヴィンからコートを引き剥がそうとするのに精一杯で、それどころではない。

「………なんか、心配するのが馬鹿らしくなってきたわ」

「……そうですね」

ローエンは、呆れたようにローズに賛同する。

ホームズは、そのままアルヴィンにバックドロップを食らっている。

「あぁ、そうだ、ホームズ」

ユルゲンスが、ホームズに声をかける。

「ふぁい………」

ズボッと、雪から出てくる。

「指輪外しておいた方がいいぞ。凍傷になるから」

「手袋しても?」

「………まあ、多分大丈夫だろうねど、念のため」

ホームズは、手袋を取り、中指についている指輪を外す。

「もっと早く言ってください」

ホームズは、仏頂面で、腰にある非常用袋に放り込む。

「ハハハ、すまない」

ユルゲンスがにこやかに謝る。

ホームズもそれ以上追求しない。

「そう言えば、ホームズのお母さん、カン・バルクにいるんだよね。少し怖いけど、会ってみたいなぁ」

レイアは、複雑な顔をしながら、ホームズに言う。

対照的にジュードは、胃が痛くなってきている。

すっかり、忘れていたがジュード達はホームズを殺しかけたのだ。

何を言われるか、いや、何をされるか、分からない。

「ん?なにいってるの?そんな事一言もいってないよ」

ホームズは、さも当然と言うような顔をしている。

「え、だって、カン・バルクで別れてきたって………」

「うん、別れてきた。でも、そこにいるかどうかは、分からないよ」

レイアは、ようやく納得がいった。

そう、ホームズの母は行商人なのだ。

一所に、ずっと留まっている訳がない。

「騙したね」

「君が勝手に勘違いしただけだろう」

膨れっ面のレイアにホームズは、肩をすくめる。

そんなホームズに構わず、レイアは、棍を構える。

ホームズは、思わず顔を強張らせる。

「え、いや、そこまで怒らなくても」

レイアは、力強く棍を振るう。

ホームズは、屈んでかわす。

レイアの棍は、そのままホームズの後ろにいた、魔物を直撃する。

「油断大敵」

「………今度から、気を付けるよ」

ホームズは、倒れる魔物を眺めながら呟く。

「では、早速お願いしましょう」

ローエンは、ホームズにそう言いながら武器を構える。

注意してみると、いつの間にやら、魔物達がホームズ達を囲んでいた。

「うわぁ………つーか、ヨル、君気付いてただろう」

ホームズは、フードの下にいるヨルに話しかける。

「当たり前だ」

「教えてくれればいいのに………」

「直ぐに分かる事を教えても仕方ないだろ」

ホームズは、ため息を吐くと構える。

魔物達が襲いかかって来た。

いつもの様に蹴りを放とうとするが、雪に足を取られて、ワンテンポ遅れる。

「………仕方ない!」

ホームズは、すぐに切り替えて魔物を殴りつける。

殴られた魔物は痛みに耐える。

その様子をレイアは、ポカンと眺めている。

「ホームズ………今、殴った?」

「え?あ、うん。見ての通り」

なんて事ない様に言うホームズを見ながら、レイアは、言葉を繋ぐ。

「なんで?今まで頑なに蹴ってたのに」

「いや、だって、指輪してたから………殴った拍子に壊したくないし……」

「理由が思ったよりも可愛らしい!?」

「母さんから、譲り受けた指輪だから………」

「理由が思ったよりも重苦しい……」

遠い目をしながら、言うホームズにレイアは、同情する。

自分のお菓子を勝手に食べただけで、半殺しにする様な親なのだ。

譲り受けた指輪を壊したなんて、知られたら、どうなるかなんて想像したくない。

しかし、もう一つ疑問がでてくる。

「というか、荷物の中に入れておけば?」

「うーん……荷物をなくす事もあるからさ………」

ホームズの言葉に、レイアは、ホームズがル・ロンドに来た時の事を思い出す。

あの時、ホームズは、荷物を置いてきてしまっていたので、無一文だった。

その荷物に指輪を入れておいたら、悲惨な事になっていただろう。

ホームズは、まだ構えを解かない。

「それに、指輪は、指にはめてこそ、指輪だしね。まあ、結局、殴るより……」

ホームズは、殴られた痛みから回復し襲いかかってくる、魔物に蹴りをかます。

蹴りを食らった魔物は派手に倒れた。

「蹴った方が強いんだよね……」

「あぁ、そうだね」

レイアは、ピクリとも動かない魔物を見ながら、ポツリともらす。

「そういうわけだったんだね……」

魔物を倒したジュードは、ホームズに近づく。

「ずっと不思議だったんだ」

「疑問が解けたようで何よりだよ」

ホームズは、肩をすくめる。

「それより、魔物は?」

「とりあえず、全滅させました。このまま進みましょう」

ホームズの質問にローエンが答える。

「りょーかい」

ホームズは、そう言って前に進むが一旦止まる。

振り返ると、俯いているエリーゼが目に入る。

まだ、ショックから回復していないようだ。

「エリーゼ、いくよ」

ホームズの声にエリーゼは、無言で頷くとホームズの少し後ろを歩く。

「………ズは、」

「ん?」

しばらく歩いていると、ホームズにエリーゼが声をかける。

「ホームズは、お父さんが死んでいるって言われてた時、どう思い……ましたか?」

「どうって言われても……」

ホームズは、物心ついた時には、死んでいる事を知っていた。

エリーゼと違い、いつか会えると思っていた訳ではないのだ。

しかし、それでも ………

「寂しかったかなぁ………やっぱり………」

ホームズは、俯く。

ホームズの言葉をエリーゼは、黙って聞いている。

「そんな事を聞いて、どうするんだい?」

エリーゼは、しばらく黙る。

「よく……分かりません……」

『今、エリーゼの頭の中は、ぐちゃぐちゃなんだよー』

ティポの言葉を聞いて、ホームズは、考える。

ティポは、エリーゼ自身の言葉を喋っていただけ、おまけにデータを抜き取らて、以前とは変わっている。

更に追い打ちをかけるように知らされる両親の事実。

「まあ、ぐちゃぐちゃになるよねぇ………」

エリーゼは、こくりと頷く。

「ホームズは、無いんですか?そういう経験……」

ホームズは、一瞬だけ黙る。

記憶の中を様々なものが通り過ぎる。

「………あるよ」

小さくホームズは、ポツリと返す。

「その時、どうしたんですか?」

「ん………あぁ、まあ、参考にしない方がいいかな……」

ホームズは、歯切れの悪い返事をする。

「いつもの、ですか?」

エリーゼは、呆れた様に言う。

「まあね」

ホームズは、小さく微笑む。

『役に立たないなー、ホームズ』

ティポの言葉は、エリーゼの本音だ。

「おれにアドバイス求める時点で、君は色々間違えてるよ」

ティポの言葉にホームズは、顔色を変えずに返す。

ホームズのその物言いにエリーゼは、再び黙って俯いてしまう。

その様子を見たホームズは、ため息を一つ吐く。

「じゃあ、一つだけ、アドバイスしてあげる」

ホームズは、指を一本ピンと立てる。

「みんな、君の事を心配してるよ、ジュードも、レイアも、ミラも、ローエンも、ローズも、多分アルヴィンも。ヨルは怪しいな……」

ヨルの名前は少し小声になってしまうホームズ。

その言葉を聞くとエリーゼは、思わず顔をあげる。

ホームズは、そんなエリーゼの顔を見て溜息を吐く。

 

 

 

 

「信じてないね」

 

 

 

 

『当然だよーバホー』

 

 

 

誰一人として、エリーゼの頼み事を聞いていない。

 

 

 

『一人ぐらい聞いてくれてもいいじゃないかー』

「それでもね、君が思ってるより、みんなは、君の事を心配してるんだよ」

ホームズの話を聞くと、エリーゼは、しばらくむすっとしたあと、みんなの元へスタスタと歩いて行った。

 

 

 

 

一度もホームズの方を振り返る事もなく。

 

 

 

 

ホームズは、そんなエリーゼを見るとため息を一つ吐く。

「やれやれ………やっぱり、難しいよ、ローエン」

ホームズは、後ろにいるローエンに話しかける。

そう、ローエンは、ホームズ達の後ろに居て、ずっと話を聞いていたのだ。

「いえいえ、上出来ですよ」

ローエンは、微笑んでいる。

「ま、後は彼女しだいだね」

ホームズは、肩をすくめる。

結局のところエリーゼの問題なのだ。

「……ホームズさん、厳しいですね」

ホームズは、少し驚いているがニヤリと笑う。

「何の事だい?」

「ジジイの戯言です」

ローエンもホッホッホッと笑っている。

 

 

 

 

 

ホームズとローエンは、そう言うと、歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 









ホームズの今回の話。




まあ、蹴り技をメインにしようと考えてから、どうして、殴らないのかというのを考えなくてはいけませんでした。
何せ、ホームズは別に料理人というわけではありません。
むしろ、料理は作らせてはいけない人間です。
どうしようかなぁと思いながら、録画しておいた指輪の魔法使いの話を見ている内に……
そうだ、これにしよう!となり、今の結果に落ち着きました。
あ、指輪には、特に特別な力というのものはありません(笑)






では、また、五十九話で( ´ ▽ ` )ノ





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