1人と1匹   作:takoyaki

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五十話です



何と、投稿を始めてから、もう半年経ちます!!
(正確に言うなら明日で、半年です)



いやぁー……時間が経つのは、あっという間ですね………


てなわけで、どうぞ






闘技場で捕まえて

「で、どうやって、こんなうじゃうじゃいる人間の中から特定の人物を探し出すんだ」

ヨルの質問に、ホームズはむくりと立ち上がりながら答える。

「おれの血の匂いを目印に探してくれないかい?」

ヨルは、ホームズに言われた通り鼻をひくつかせ、探す。

コレで見つかればいいのだが………

「……お前の血の匂い、あちらこちらかするぞ。恐らく、血のついたものを捨て………いや、拭いているな。俺の鼻をごまかす為に。…………お前の血の匂いは役に立たんぞ」

そうは問屋が降ろさなかった。

「……面倒だね」

ホームズは、歯噛みする。

「まあ、やるしかないけど……」

ホームズは、後ろ向きに気合いを入れた。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

上手くいった、と男、アルクノアの男は考えていた。

どうやら、奴らは完全に勘違いしていたようだ。

最初から、狙いはマクスウェルでもホームズでもはない。

あの、ティポとか呼ばれている人形なのだ。

そのサポートを自分は、ボスから任されていた。

仲間の一人が少女から、人形を無事取り上げた時、コレで作戦は終わりだと思った。しかし、それだけでは終わらなかった。

自分の目の前に猫を肩に乗せた、男が通り過ぎたのだ。

この騒ぎのなから、普通、見過ごしただろう。

しかし、自分は、見過ごせなかった。

あの出で立ち、そして、喋り方。

どう考えても、あの時自分達のいた拠点を潰して暴れまわった奴だ。

奴のせいで、自分は、居場所を完全に失ってしまったのだ。

それからの日々は決して楽しい日々ではなかった。

それを思い出した時には、手にはナイフが握られていた。

怒りで頭に血が登ったという所だ。

しかし、不思議と出来るだけ気付かれない様に奴に近づき、腹を刺す、これをやるだけの冷静さも保っていた。

急所を外してしまったのは痛かったが、あの傷なら動けないだろう。

もし、治療してもらうなら、誰かを呼ばねばならない。

別にそれは、それでいい。

そうすればマクスウェルへの応援が減るだけだ。

逆に、それをしなければ奴の怪我は悪化する。急所を外されているとは言え、軽い怪我では無いのだ。行動不能ぐらいになら出来るだろう。

ティポを手にいれ、上手くいけばマクスウェルかホームズのどちらが消える事になる。

まさか、自分でも、ここまで上手くいくとは思っても見なかった。

正直笑いが止まらないという奴だ。

口は醜く歪み、気を抜くとヨダレがこぼれてしまいそうだ。

「ふふふふ、はははは………」

今、自分達を散々苦しめた奴、ミラ・マクスウェルは、黒匣(ジン)を前に避ける事しかできない。

今までの自分達が受けてきた屈辱を奴はもろに受けているのだ。

「せいぜい苦しめ、ふふ、はははは!!」

観客席から、声援を送る事にする。

すると、客席から、悲鳴が聞こえる。目の前で観戦していた連中は、席を空ける。

自分としては、ちょうどいい限りだ。

何せ、見づらくて困っていたのだから。

ラッキーと思っていると、頭に違和感を覚える。

 

不思議に思っていると、観客席の手すりが自分に近づいてきた。

 

 

そして、そのまま自分の顔面に衝撃を与えた。

「………?!」

この時になってようやく分かった。

 

 

 

 

 

 

 

手すりが近づいたのでは無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が手すりまで吹っ飛ばされたのだ。

 

 

 

 

 

 

「やあ」

 

 

 

 

 

挨拶に振り返ると、そこには、アホ毛を立て、ポンチョをはためかせた、碧い瞳のがチャームポイントのホームズが肩にヨルを乗せ佇んでいた。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「な、何で俺だって分かった!」

ホームズが投げ飛ばしたアルクノアは、鼻血を垂らしながら叫ぶ。

ホームズは、呆れている。

「もう少し、シラぐらい切りたまえよ………」

「いいから答えろ!!俺達には霊力野(ゲート)がない、だから、その猫を使って、それを頼りに探す事は不可能の筈だ。おまけに、お前の血の匂いはあちらこちらでするようにしてある。どう考えても、俺だけに標的を絞る事はできないんだよ!」

ホームズは、左手にある円盤の盾をいじる。

「解説どーも。ところで、何処でそれを聞いたんだい?」

「黙れ!質問してるのはこっちだ!質問に質問で返すなと言われなかったのか!」

懐から取り出したナイフをホームズに向けている。

ホームズは、ため息を吐くとゆっくりと奴に近づく。

 

 

 

「簡単さ。おれの血の匂いがして………そして、霊力野(ゲート)の気配を感じない人間を探したんだよ。それが君だった。ただそれだけだよ」

 

そもそもヨルがホームズが刺されるまで気付かなかったのは、霊力野(ゲート)の気配を感じなかったからだ。

この時点で、容疑者は霊力野(ゲート)を持たないアルクノアに絞られる。

だが、それだけでは、まだ足りない。

だから、ホームズが次に選んだのは、ヨルが役に立たないと切り捨てた、ホームズの血の匂いだ。

あっちこっちで拭いているとヨルは、言った。つまり、本人にも血の匂いがついている可能性があるのだ。

ホームズは、それにかけて条件を絞ってヨルに探させた。

一つでは、足りない、しかし、二つ揃えば相手を絞り込む絶好の条件なのだ。

「くっくっく、こういう時は、お前を褒めたくなるなぁ」

「そりゃあ、どうも。涙が出るほど嬉しいね」

ヨルは、満足気に目を細める。

ホームズは、頬を引きつらせながら返す。

ヨルとは対照的に男は目を限界まで開く。

「クッソ!」

己の計画が破綻したことに男は、気付くとナイフを構えるとホームズに向かって突き出してくる。

ホームズは、空中まで、ジャンプをすると、観客席の手すりに着地する。

あんな不安定な足場に着地した癖に本人は、至って普通の顔をしている。

アルクノアの男も同様に手すりに乗る。

そして、ナイフを捨てると細身の剣を懐から抜く。

「へえ………」

ホームズは、にやりと笑うと力強く踏み込んだ。

観客達の騒音をゴングとして。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「あれ、アルヴィンとホームズは?」

ミラに助太刀する為に、ジュード達は闘技場の方に降りた。

「アルヴィンは、攫われたティポをエリーゼと共に追った。ホームズは………」

知らんと言おうとして、ミラは、言葉を無くす。

「あれじゃないか?」

ミラの指差す先に、手すりの上で恐らくアルクノアであろう男に蹴りを放っているホームズがいる。

「ホームズ!!」

レイアは、予想外の事に驚いて声をあげる。

一歩間違えば、そのまま転落コースの場所で、ジャンプ、回し蹴り、とヒヤヒヤするような技の連続を行っている。

「ホームズ………わき腹が赤いんだけど……」

ローズは、どう考えても普通ではない赤みに息を呑む。

ローエンは、相手から目線を外さずに口を開く。

「恐らく、ホームズさんは、ミラさんを助ける戦力を減らしたくなかったのでしょう。ホームズさんの傷を治す為にジュードさんかレイアさんを呼べば、それだけで、ミラさんへの助けが減ってしまいます」

エリーゼがいない今、貴重な回復役を分割する訳にはいかない。

そして、口にこそ出していないが、ローエンは気づいていた。

今回は、予想外の出来事が多すぎた。

ここでホームズが襲われるなんて事態まで起こってしまえば、ジュード達では対処しきれない。

だからこそ、ホームズは、自分で対処しようとしたのだ。

「みなさん、ホームズさんも気になりますが、今は目の前の相手に集中しましょう」

「ローエンの言う通りだ。いくぞ!」

ジュード達はローエンとミラの言葉で目の前のアルクノアに各々武器を構え直す。

「ホームズ………帰ってきなさいよ………」

ローズは、悔しそうに歯噛みをしながら、小さくこぼした。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

アルクノアは、切っ先をホームズに狙いを定めると突き出す。

ホームズは、飛んでそれを躱すと相手の後ろに着地し、蹴りを放つ。

しかし、相手もそれぐらい予想していたようだ。屈んでかわす。

蹴りを躱されたホームズは、バランスを崩さないように、両足をまた、手すりの上に着地する。相手は、振り向きざまに剣を振るう。

ホームズは、一歩後ろに下がる。

さっきから、ホームズは、攻めあぐねている。

相手の細身の剣。これのせいで、ホームズの間合いで勝負出来ないのだ。

観客席に降りてもいいのだが、下手すれば巻き込んでしまう。

文字通り崖っぷちという奴だ。

そんな事を考えていると、相手からの連続の突きがやってくる。

ホームズは、何とか紙一重で躱す。

最後の一撃をホームズは、盾でいなす。

そして、相手の懐に潜り込む。

 

 

 

ようやくホームズの間合いで勝負が出来る。

 

 

 

 

ホームズは、そのまま、顎を蹴り上げようと右足を僅かに上げる。

その時、相手は、避けるでも、防ぐでもなく、自分の懐に手をいれる。

 

懐から出てきた手にはナイフが握られている。

 

 

 

 

「─────ッ!!!」

 

完全に油断した。

戦闘が始まる前に、相手は、ナイフを捨てた。

これで、相手の武器は剣のみとホームズは、判断してしまった。

攻撃体制に入っている今のホームズに紙一重で躱すという芸当は、無理だ。

ホームズは、バク宙をしながらナイフを蹴り上げる。

そして、手すりから踏み外す事なく着地する。

予想外の行動に相手が驚いているうちに、後ろに下がり距離を取る。

無事だったのはいいのだが、相手の手にはまだナイフが握られている。

ホームズは、ため息を吐く。

「剣にナイフって………卑怯でしょ。おれの間合いで勝負出来ないじゃないか」

「バーカ。勝負ってのは、そういうもんだ」

アルクノアは、ホームズの文句にそう返すとホームズに向かって駆け出した。

「おれがいうのも妙だけど、よく、こんな場所で戦えるね」

「ああ、同感だ」

ホームズとヨルの会話が終わる頃には相手の剣がホームズに迫る。

その剣をいなす。

しかし、相手は、次にナイフで追撃してくる。

突っ込めば確実にナイフの餌食だ。

何とか後ろに下がると、今度は剣が襲ってくる。

(隙がないつーか……)

剣先がホームズの頬を掠める。

 

 

「打つ手がない、だろう?」

剣が真っ直ぐホームズに迫る。

 

 

 

 

 

剣を盾で受け止める。

レイピアというわけではないので、押される。

 

 

 

 

(くっそ!こっちとら、出血が多くてフラフラしてんのに!)

 

 

ホームズは、歯ぎしりをしながら、足を踏み外すギリギリのラインで踏ん張る。

押し切るかと思いきや、相手の方が距離を置く。

突然力を緩められたホームズは、前のめりに体制を崩す。

相手の狙いはそれだったようだ。

剣は、真っ直ぐホームズに狙いを定める。

そして、一気に距離を詰める…………

 

 

 

筈だった。

 

 

「なっ………!」

 

 

 

アルクノアの男は足をもつれさせ、体制を崩す。

ギリギリのところで身体を捻り観客席の方に落ちる。

 

 

今の自分の状況を振り返ってみるが、どう考えても、そんな事は起こる筈がない。

気になって、違和感のある自分の足を見る。

 

 

そこには、右足に巻きついている黒い紐、ヨルの尻尾が目に入った。

よく目を凝らしてみると、ホームズの肩からだらりとヨルの尻尾が観客席の床を這っている。

ご丁寧に分かりづらいように、手すりのすぐそばを這っている。

 

「ふぅー……やれやれ間に合った」

 

 

ホームズは、そう微笑むと観客席に降る。

そして、胸ぐらをつかみ上げる。

 

 

 

「手は無いけど、尻尾ならあるさ」

 

 

そう言って男の足に巻きついている尻尾を見る。

 

 

 

 

 

ホームズは、その男の言葉を聞くと闘技場の方へ力任せに投げる。

そして、ホームズもそれを追撃するように観客席から飛び降りる。

 

 

ヨルが尻尾を縮め、男を引き上げる。

 

 

「おら、しっかり、決めろ」

「言われなくても」

上がってきた男の腹にホームズの蹴りが炸裂する。

男は頭に響き渡る、鈍い音と共に、胃の中にあるものを吐き出す。

 

 

 

「卑怯………だ」

 

 

苦しそうな声でかすれながら、男はホームズに言う。

 

 

ニヤリとホームズは、笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

「『バーカ。勝負ってのは、そういうもんだ』」

 

 

 

 

 

 

ホームズは、足を腹に当てたまま、闘技場へと落ちていった。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「く………やはり、厄介ですね。詠唱が無いというのは」

ローエンは、攻めあぐねている。

相手の実力は大したものではない。

しかし、持っている兵器が厄介なのだ。

皆も似たような感じだ。

相手の隙を何とか伺っている。

 

 

そんな時、アルクノアとジュード達の間に影出来る。

 

 

ミラはそれが何なのか察知したようだ。

 

 

「下がれ!!!」

ジュード達は驚いて下がる。

 

ミラの忠告の直後にアルクノアが、降ってきた。

 

辺りを響かせる轟音と共に砂埃が巻き上がる。

 

そんな中、ゆらりと一人の人影がゆっくりと立ち上がる。

 

はっきりと姿を見たわけではない。

 

しかし、見覚えのある、シルエットにローズは、驚いた。そして安堵した。

 

 

 

砂埃が晴れるに連れて、姿が露わになる。

 

 

 

アホ毛を立て、ポンチョをはためかせた、

 

 

 

 

ホームズ・ヴォルマーノの姿が。

 

 

 

 

今、ようやく、ホームズは、闘技場へと降り立ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 






バスの上、塔の上、城の屋根の上………


高く、そして、危ない所で闘うのは男のロマン!!


あ、もちろん、やる側ではないですよ。



まあ、てなわけで、ホームズには、ここで、戦ってもらいました。


頑張ったね、ホームズ(笑)







さて、半年経ち(正確には、明日)、五十話と言うキリのいい数字を迎えたので、何かやろうと思います!


詳しくは、活動報告にて!



では、また、五十一話で( ´ ▽ ` )ノ

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