何と、投稿を始めてから、もう半年経ちます!!
(正確に言うなら明日で、半年です)
いやぁー……時間が経つのは、あっという間ですね………
てなわけで、どうぞ
「で、どうやって、こんなうじゃうじゃいる人間の中から特定の人物を探し出すんだ」
ヨルの質問に、ホームズはむくりと立ち上がりながら答える。
「おれの血の匂いを目印に探してくれないかい?」
ヨルは、ホームズに言われた通り鼻をひくつかせ、探す。
コレで見つかればいいのだが………
「……お前の血の匂い、あちらこちらかするぞ。恐らく、血のついたものを捨て………いや、拭いているな。俺の鼻をごまかす為に。…………お前の血の匂いは役に立たんぞ」
そうは問屋が降ろさなかった。
「……面倒だね」
ホームズは、歯噛みする。
「まあ、やるしかないけど……」
ホームズは、後ろ向きに気合いを入れた。
◇◇◇◇
上手くいった、と男、アルクノアの男は考えていた。
どうやら、奴らは完全に勘違いしていたようだ。
最初から、狙いはマクスウェルでもホームズでもはない。
あの、ティポとか呼ばれている人形なのだ。
そのサポートを自分は、ボスから任されていた。
仲間の一人が少女から、人形を無事取り上げた時、コレで作戦は終わりだと思った。しかし、それだけでは終わらなかった。
自分の目の前に猫を肩に乗せた、男が通り過ぎたのだ。
この騒ぎのなから、普通、見過ごしただろう。
しかし、自分は、見過ごせなかった。
あの出で立ち、そして、喋り方。
どう考えても、あの時自分達のいた拠点を潰して暴れまわった奴だ。
奴のせいで、自分は、居場所を完全に失ってしまったのだ。
それからの日々は決して楽しい日々ではなかった。
それを思い出した時には、手にはナイフが握られていた。
怒りで頭に血が登ったという所だ。
しかし、不思議と出来るだけ気付かれない様に奴に近づき、腹を刺す、これをやるだけの冷静さも保っていた。
急所を外してしまったのは痛かったが、あの傷なら動けないだろう。
もし、治療してもらうなら、誰かを呼ばねばならない。
別にそれは、それでいい。
そうすればマクスウェルへの応援が減るだけだ。
逆に、それをしなければ奴の怪我は悪化する。急所を外されているとは言え、軽い怪我では無いのだ。行動不能ぐらいになら出来るだろう。
ティポを手にいれ、上手くいけばマクスウェルかホームズのどちらが消える事になる。
まさか、自分でも、ここまで上手くいくとは思っても見なかった。
正直笑いが止まらないという奴だ。
口は醜く歪み、気を抜くとヨダレがこぼれてしまいそうだ。
「ふふふふ、はははは………」
今、自分達を散々苦しめた奴、ミラ・マクスウェルは、
今までの自分達が受けてきた屈辱を奴はもろに受けているのだ。
「せいぜい苦しめ、ふふ、はははは!!」
観客席から、声援を送る事にする。
すると、客席から、悲鳴が聞こえる。目の前で観戦していた連中は、席を空ける。
自分としては、ちょうどいい限りだ。
何せ、見づらくて困っていたのだから。
ラッキーと思っていると、頭に違和感を覚える。
不思議に思っていると、観客席の手すりが自分に近づいてきた。
そして、そのまま自分の顔面に衝撃を与えた。
「………?!」
この時になってようやく分かった。
手すりが近づいたのでは無い。
自分が手すりまで吹っ飛ばされたのだ。
「やあ」
挨拶に振り返ると、そこには、アホ毛を立て、ポンチョをはためかせた、碧い瞳のがチャームポイントのホームズが肩にヨルを乗せ佇んでいた。
◇◇◇◇
「な、何で俺だって分かった!」
ホームズが投げ飛ばしたアルクノアは、鼻血を垂らしながら叫ぶ。
ホームズは、呆れている。
「もう少し、シラぐらい切りたまえよ………」
「いいから答えろ!!俺達には
ホームズは、左手にある円盤の盾をいじる。
「解説どーも。ところで、何処でそれを聞いたんだい?」
「黙れ!質問してるのはこっちだ!質問に質問で返すなと言われなかったのか!」
懐から取り出したナイフをホームズに向けている。
ホームズは、ため息を吐くとゆっくりと奴に近づく。
「簡単さ。おれの血の匂いがして………そして、
そもそもヨルがホームズが刺されるまで気付かなかったのは、
この時点で、容疑者は
だが、それだけでは、まだ足りない。
だから、ホームズが次に選んだのは、ヨルが役に立たないと切り捨てた、ホームズの血の匂いだ。
あっちこっちで拭いているとヨルは、言った。つまり、本人にも血の匂いがついている可能性があるのだ。
ホームズは、それにかけて条件を絞ってヨルに探させた。
一つでは、足りない、しかし、二つ揃えば相手を絞り込む絶好の条件なのだ。
「くっくっく、こういう時は、お前を褒めたくなるなぁ」
「そりゃあ、どうも。涙が出るほど嬉しいね」
ヨルは、満足気に目を細める。
ホームズは、頬を引きつらせながら返す。
ヨルとは対照的に男は目を限界まで開く。
「クッソ!」
己の計画が破綻したことに男は、気付くとナイフを構えるとホームズに向かって突き出してくる。
ホームズは、空中まで、ジャンプをすると、観客席の手すりに着地する。
あんな不安定な足場に着地した癖に本人は、至って普通の顔をしている。
アルクノアの男も同様に手すりに乗る。
そして、ナイフを捨てると細身の剣を懐から抜く。
「へえ………」
ホームズは、にやりと笑うと力強く踏み込んだ。
観客達の騒音をゴングとして。
◇◇◇◇
「あれ、アルヴィンとホームズは?」
ミラに助太刀する為に、ジュード達は闘技場の方に降りた。
「アルヴィンは、攫われたティポをエリーゼと共に追った。ホームズは………」
知らんと言おうとして、ミラは、言葉を無くす。
「あれじゃないか?」
ミラの指差す先に、手すりの上で恐らくアルクノアであろう男に蹴りを放っているホームズがいる。
「ホームズ!!」
レイアは、予想外の事に驚いて声をあげる。
一歩間違えば、そのまま転落コースの場所で、ジャンプ、回し蹴り、とヒヤヒヤするような技の連続を行っている。
「ホームズ………わき腹が赤いんだけど……」
ローズは、どう考えても普通ではない赤みに息を呑む。
ローエンは、相手から目線を外さずに口を開く。
「恐らく、ホームズさんは、ミラさんを助ける戦力を減らしたくなかったのでしょう。ホームズさんの傷を治す為にジュードさんかレイアさんを呼べば、それだけで、ミラさんへの助けが減ってしまいます」
エリーゼがいない今、貴重な回復役を分割する訳にはいかない。
そして、口にこそ出していないが、ローエンは気づいていた。
今回は、予想外の出来事が多すぎた。
ここでホームズが襲われるなんて事態まで起こってしまえば、ジュード達では対処しきれない。
だからこそ、ホームズは、自分で対処しようとしたのだ。
「みなさん、ホームズさんも気になりますが、今は目の前の相手に集中しましょう」
「ローエンの言う通りだ。いくぞ!」
ジュード達はローエンとミラの言葉で目の前のアルクノアに各々武器を構え直す。
「ホームズ………帰ってきなさいよ………」
ローズは、悔しそうに歯噛みをしながら、小さくこぼした。
◇◇◇◇
アルクノアは、切っ先をホームズに狙いを定めると突き出す。
ホームズは、飛んでそれを躱すと相手の後ろに着地し、蹴りを放つ。
しかし、相手もそれぐらい予想していたようだ。屈んでかわす。
蹴りを躱されたホームズは、バランスを崩さないように、両足をまた、手すりの上に着地する。相手は、振り向きざまに剣を振るう。
ホームズは、一歩後ろに下がる。
さっきから、ホームズは、攻めあぐねている。
相手の細身の剣。これのせいで、ホームズの間合いで勝負出来ないのだ。
観客席に降りてもいいのだが、下手すれば巻き込んでしまう。
文字通り崖っぷちという奴だ。
そんな事を考えていると、相手からの連続の突きがやってくる。
ホームズは、何とか紙一重で躱す。
最後の一撃をホームズは、盾でいなす。
そして、相手の懐に潜り込む。
ようやくホームズの間合いで勝負が出来る。
ホームズは、そのまま、顎を蹴り上げようと右足を僅かに上げる。
その時、相手は、避けるでも、防ぐでもなく、自分の懐に手をいれる。
懐から出てきた手にはナイフが握られている。
「─────ッ!!!」
完全に油断した。
戦闘が始まる前に、相手は、ナイフを捨てた。
これで、相手の武器は剣のみとホームズは、判断してしまった。
攻撃体制に入っている今のホームズに紙一重で躱すという芸当は、無理だ。
ホームズは、バク宙をしながらナイフを蹴り上げる。
そして、手すりから踏み外す事なく着地する。
予想外の行動に相手が驚いているうちに、後ろに下がり距離を取る。
無事だったのはいいのだが、相手の手にはまだナイフが握られている。
ホームズは、ため息を吐く。
「剣にナイフって………卑怯でしょ。おれの間合いで勝負出来ないじゃないか」
「バーカ。勝負ってのは、そういうもんだ」
アルクノアは、ホームズの文句にそう返すとホームズに向かって駆け出した。
「おれがいうのも妙だけど、よく、こんな場所で戦えるね」
「ああ、同感だ」
ホームズとヨルの会話が終わる頃には相手の剣がホームズに迫る。
その剣をいなす。
しかし、相手は、次にナイフで追撃してくる。
突っ込めば確実にナイフの餌食だ。
何とか後ろに下がると、今度は剣が襲ってくる。
(隙がないつーか……)
剣先がホームズの頬を掠める。
「打つ手がない、だろう?」
剣が真っ直ぐホームズに迫る。
剣を盾で受け止める。
レイピアというわけではないので、押される。
(くっそ!こっちとら、出血が多くてフラフラしてんのに!)
ホームズは、歯ぎしりをしながら、足を踏み外すギリギリのラインで踏ん張る。
押し切るかと思いきや、相手の方が距離を置く。
突然力を緩められたホームズは、前のめりに体制を崩す。
相手の狙いはそれだったようだ。
剣は、真っ直ぐホームズに狙いを定める。
そして、一気に距離を詰める…………
筈だった。
「なっ………!」
アルクノアの男は足をもつれさせ、体制を崩す。
ギリギリのところで身体を捻り観客席の方に落ちる。
今の自分の状況を振り返ってみるが、どう考えても、そんな事は起こる筈がない。
気になって、違和感のある自分の足を見る。
そこには、右足に巻きついている黒い紐、ヨルの尻尾が目に入った。
よく目を凝らしてみると、ホームズの肩からだらりとヨルの尻尾が観客席の床を這っている。
ご丁寧に分かりづらいように、手すりのすぐそばを這っている。
「ふぅー……やれやれ間に合った」
ホームズは、そう微笑むと観客席に降る。
そして、胸ぐらをつかみ上げる。
「手は無いけど、尻尾ならあるさ」
そう言って男の足に巻きついている尻尾を見る。
ホームズは、その男の言葉を聞くと闘技場の方へ力任せに投げる。
そして、ホームズもそれを追撃するように観客席から飛び降りる。
ヨルが尻尾を縮め、男を引き上げる。
「おら、しっかり、決めろ」
「言われなくても」
上がってきた男の腹にホームズの蹴りが炸裂する。
男は頭に響き渡る、鈍い音と共に、胃の中にあるものを吐き出す。
「卑怯………だ」
苦しそうな声でかすれながら、男はホームズに言う。
ニヤリとホームズは、笑みを浮かべる。
「『バーカ。勝負ってのは、そういうもんだ』」
ホームズは、足を腹に当てたまま、闘技場へと落ちていった。
◇◇◇◇
「く………やはり、厄介ですね。詠唱が無いというのは」
ローエンは、攻めあぐねている。
相手の実力は大したものではない。
しかし、持っている兵器が厄介なのだ。
皆も似たような感じだ。
相手の隙を何とか伺っている。
そんな時、アルクノアとジュード達の間に影出来る。
ミラはそれが何なのか察知したようだ。
「下がれ!!!」
ジュード達は驚いて下がる。
ミラの忠告の直後にアルクノアが、降ってきた。
辺りを響かせる轟音と共に砂埃が巻き上がる。
そんな中、ゆらりと一人の人影がゆっくりと立ち上がる。
はっきりと姿を見たわけではない。
しかし、見覚えのある、シルエットにローズは、驚いた。そして安堵した。
砂埃が晴れるに連れて、姿が露わになる。
アホ毛を立て、ポンチョをはためかせた、
ホームズ・ヴォルマーノの姿が。
今、ようやく、ホームズは、闘技場へと降り立ったのだ。
バスの上、塔の上、城の屋根の上………
高く、そして、危ない所で闘うのは男のロマン!!
あ、もちろん、やる側ではないですよ。
まあ、てなわけで、ホームズには、ここで、戦ってもらいました。
頑張ったね、ホームズ(笑)
さて、半年経ち(正確には、明日)、五十話と言うキリのいい数字を迎えたので、何かやろうと思います!
詳しくは、活動報告にて!
では、また、五十一話で( ´ ▽ ` )ノ