1人と1匹   作:takoyaki

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番外編そのご!です




結局2月までかかってしまいました……



てなわけで、番外編ラストです!



ではどうぞ



間が遠なりゃ契りが薄い?

「さてと……」

ローズは、買い物袋の中を確認する。

「こんなもんかしらね」

とある街での買い出しの帰り道、ローズはジュードとミラとアルヴィンと共に歩いていた。

「まぁ、グミもライフボトルもあって困るもんじゃないしな」

「……特にホームズ」

アルヴィンがそう頷くとジュードは、げんなりした様に言う。

「どうでもいいけど、戦う度に死にかけるのやめて欲しいんだけど」

ローズは、ハァとため息を一つ吐く。

そんな事を話していると、先頭を歩いているジュードがピタリと歩みを止める。

「……ジュード?」

不思議そうにローズは、首を傾げる。

「……ねぇ、こっちの道から帰らない?」

そう言って脇の道をジュードが指をさす。

「何馬鹿なこと言ってるの。この道が一番の近道なのよ」

対するローズは、呆れながら歩みを進めようとする。

「いや、でも……」

「いいから、ほら!」

ローズは、ジュードの顔の前で両手をパン!と叩く。

びっくりして思わず目を閉じたジュードの隙をついてジュードの前に出る。

するとそこには、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人で買い物をしているレイアとホームズがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっ……とこれは……」

ローズは、目の前の光景に完全にフリーズする。

二人はニコニコとしながら、店に入っていく。

「随分と楽しそうだね〜」

アルヴィンは、ニマニマと笑いながら言う。

ローズは、振り返らないが耳をピクリと動かす。

「や、あの……アルヴィン……」

ジュードは慌てる。

「ふむ、これが俗に言うデートと言う奴か」

ローズの耳がピクピクと動く。

「ミラ!」

ミラの言葉にジュードは、更に慌てる。

ジュードは、直ぐにローズの方を向く。

「……ほら、あのさ……ヨルもいるから、二人っきりって事は無いと思うんだけど……」

「呼んだか?」

ひょっこりとジュードの足元からヨルが現れた。

「……なんでいるの?」

「あぁ……」

ヨルはどうでもよさそうに欠伸をすると更に言葉を繋ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でも、二人にして欲しいんだと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュードは、空気が凍りつくのを感じた。

ローズは、先程からピクリとも動かない。

「…………よ」

「な、なに?」

「尾行よ!跡をつけるわ!」

ぐっという音が聞こえそうなほど拳を強く握ると、ローズはそう宣言した。

「と言うわけで、みんな行くわよ!」

「なんで、僕たちまで!?」

「決まってるじゃない。一人でこんなことをしていたら……」

「していたら?」

「ストーカーよ」

「………そこは、嘘でも心細いからって言って欲しかったよ…」

そのあまりに堂々した物言いに、ジュードは、ため息を吐く。

予想していた可愛らしい感じの理由からはかけ離れている。

「ついでに言うなら、メンタルがもつ自信がないわ」

「言い方ッ!!」

「……おたく、もう少し可愛げのある言い方をしようぜ」

アルヴィンは、大きくため息を吐く。

ローズは、そんな二人の突っ込みを無視するとヨルに顔を向ける。

「さあ、ヨル。二人を捕捉、そして、バレないようにつけるわよ!」

「………ハァ……まぁ、俺も大して離れられないからいいけどよ……」

こうして、言い出しっぺのローズ、呆れるアルヴィンと、見つけてしまったことを後悔しているジュードと、何も状況が掴めていないミラと、巻き込まれたヨルは、ホームズとレイアのデートを尾行、もとい、観察することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「で、ここなのね、別れた店は」

「そうだ」

ヨルに確認を取ったローズは、恐る恐るという感じに店の中を覗く。

 

 

 

動きは不審者。

 

 

 

 

行いは、ストーカー。

 

 

 

 

何か聞かれた場合、弁明のしようがない。

「………アルヴィン」

「言うな」

二人はそう言いながら、ローズの後をついて行く。

「ふむ、それにしても楽しそうだな」

ミラは、そう言って二人を見る。

二人は確かに先程からとても楽しそうに食材の買い物をしている。

「………そんな、あんなに楽しそうなホームズを見るなんて……」

ローズは、とても悲しそうに呟く。

落ち込むローズにジュードは、なんて声をかけていいか分からずオロオロしている。

「普通に記念日に出来るレベルよ」

「気持ち悪い!」

しかし、直ぐにかける言葉は見つかった。

「何考えてるの!そんな事でいちいち記念日作らないでよ!」

「当たり前でしょ!そんなんで、記念日をつくるわけないじゃない!物の例えよ!」

ローズは、ジュードの突っ込みに負けじと言い返す。

そして、更に言葉を続ける。

「私の前であんなに楽しそうなホームズを見るなんて、記念日にするぐらいレアってことよ!!」

「……そんなに珍しいの?」

ジュードは、引きつり笑いと共に尋ねる。

ローズは、コクリと頷いた。

アルヴィンは、ため息を吐く。

「……ま、七割程おたくが悪いんだがな」

「……うるっさいわね……分かってるわよ……それぐらい」

アルヴィンの評価にそう悪態で返すとローズは、更に観察を続ける。

相変わらずホームズは、たのしそうである。

同じようにレイアもとても楽しそうだ。

対するローズは、言葉もなくそんな二人を見ている。

「……いいなぁ……」

ポツリと呟くローズに思わず目頭が熱くなるジュードとアルヴィン。

「ふむ……もしかして、羨ましいのか?」

ようやく状況が飲み込めたミラが当たり前の事を聞く。

ローズは、ミラの言葉に顔を真っ赤にすると手を振りながら必死に否定する。

「ばばばばばばばか言ってんじゃないわよ!」

「違うのか?てっきりホームズがデートしているのが羨ましいと思ったんだが……」

「だから!違うって……ん?」

ローズは、もう一度否定しようとして、首を傾げる。

「……ホームズ『が』?」

ローズの不思議そうに小首を傾げる。

そんなローズにミラはうむと頷く。

「要はアレだろう?自分もデートがしたことが無いのに、ホームズがデートをしている……これが気に食わないんだろう?」

トンチンカンに捻くれた解釈を披露するミラにローズは、空いた口が塞がらない。

「……何言ってるの?」

「違うのか?」

「ちっがうわよ!なに、人をさりげなく最悪な人間にしてるのよ!!」

「ふむ……ならば、ホームズ『と』デートをしているレイアが羨ましいのか?」

「な─────っ!!」

ストレートなミラの物言いに顔を真っ赤にする。

今まで誰もが理解はしていたが触れなかった事に何のためらないもなく切り込んだミラにジュードとアルヴィンは、血の気が引く。

「そんな訳ないでしょ!!か、か、勝手なこと言わないで!!」

「ふむならば……やはり、ホームズ『が』自分を差し置いてデートをしたことが気に食わないのだな?」

「え……いや……その」

ローズとしては、そんな性格の悪い理解は、やめて欲しいのだが、それを否定すれば確実に先ほどの話に戻る。

悪気がないところが誰よりもタチが悪い。

と言うことは?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうです……」

 

 

 

 

 

 

 

ローズは、そう答えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ミラは、満足そうに頷く。

 

 

 

 

 

そんな彼女達をジュードとアルヴィンは、離れた所から見る。

 

 

 

 

 

「ねぇ、アルヴィン」

「なに?」

「僕、もうホームズ関係でローズにミラを絡ませるの止めようと思うだけど」

「名案だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、二人はローズの側に近づく。

 

 

 

 

 

 

「………ジュード、アルヴィン……」

「どうした?」

「メンタルがもたないので帰りたいです」

「……………そうだね」

「…………帰るか」

そう言ってアルヴィンは、ヨルの方を見る。

「つーわけだから、俺ら帰るわ」

「あぁ、勝手にしろ」

ヨルに手を振ろうとしてアルヴィンは、もう一度ホームズとレイアのいる店を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……なるほど」

アルヴィンは、最後に誰ともなくそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

「ハァ………」

ローズは、机に突っ伏したまま動かない。

「……やっぱり、楽しそうだったな」

そのまま思い出す様にポツリと呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何があったんですか?」

どんよりと沈んだ空気を宿に帰ってきてからずっと発しているローズを遠巻きに見ながら、ローエンがジュードに尋ねる。

「実は………」

そう言って、今日あった事を説明する。

するとローエンは、何とも言えない顔をしてエリーゼをと顔をあわせる。

「……どうしたの?」

ジュードは、不思議そうに尋ねる。

何と言おうか悩み、そしてローエンが口を開く。

「実はですね………」

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

ローエンが説明しようとした瞬間レイアとホームズ、それとヨルが買い物袋を持って帰ってくる。

 

 

 

 

 

 

その重々しい空気に二人はとても気まずそうにする。

 

 

 

 

 

 

 

「ナニコレ?」

「さ、さあ?」

二人はとても戸惑うが、ホームズは買い物袋を抱え直す。

「とりあえず……始めてるよ」

ホームズは、そう言ってキッチンに消えていった。

取り残されたレイアは、ため息を一つ。

 

 

 

 

 

 

 

「で、何があったの?

……まあ、奥で暗い空気を出してるローズを見ればだいたい分かるけどね」

レイアは、ホームズが聞こえないのを確認して話を聞く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、わたしとホームズがデートをしてるって、そうおもったわけね、ジュード?」

「な、何で僕だけ?というか、怒ってる?」

「べつにぃー」

レイアは、頬を膨らませてそっぽを向く。

「それで、何が聞きたいの?」

顔を背けたままレイアは、尋ねる。

そんなレイアにジュードは、おずおずと尋ねる。

「二人はデートをしてた訳じゃ………ないんだよね、うん」

「次、その質問をしたら怒るよ」

「しかし、ヨルは言っていたぞ『二人にして欲しいと言われた』と」

今度は、ミラが尋ねる。

するとレイアは、きょとんとする。

「そりゃあそうだよ。だってペット立ち入り禁止だったんだもん」

「ま、食料品を売ってるところだったからな」

アルヴィンは、二人の話を聞いてそう言う。

そう、アルヴィンは、先ほどヨルの方を振り返った時、扉に『ペット立ち入り禁止』の張り紙が貼ってあったのを発見したのだ。

その時にだいたいのカラクリにも察しがついていた。

「じゃあ、何でそんな場所に二人で入ったのよ?」

ローズが机に顎を乗せながら尋ねる。

「何でって……」

そこで言葉を区切ってキッチンに目を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホームズが料理するからだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「は?」」

 

 

 

 

 

 

 

悲劇を知っているミラとジュードは、この世の終わりのような顔をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな二人に構わずレイアは、キッチンの方を振り返る。

「ホームズ!ちゃんとレシピ通りにね」

「わーってるよ」

「塩と砂糖間違えないでね」

「分かってるって」

「火加減間違えないでね」

「分かってるって!!」

二人はそう言い合う。

一頻り注意をすると一行の方を振り返る。

 

 

 

 

 

 

「……てことだから」

 

 

 

そういったレイアに今度は、ジュードが詰め寄る。

「ちょっと、何考えてるの!ホームズに料理させるなんて!レイアもいたでしょ!あの時の現場に!」

「ま、まあ、言いたいことは分かるけど……」

自信を持って大丈夫と言えないところがレイアの正直なところだ。

 

 

 

「待って、レイア。

『二人』で買い物に行った理由を聞いてないわ」

 

 

 

 

ローズのしつこい追及にレイアは、何とも言えない顔で口ごもる。

 

 

 

 

 

「えーっと……大した理由じゃないんだけど……何て言おう……」

 

 

 

 

 

「私が説明する……です」

 

 

 

そう言ってエリーゼが口を開く。

 

 

 

 

勿論、大げさない理由などない。

 

 

 

 

実に下らない理由だ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「あっ!……しまった……」

 

レイアは、ジュードとアルヴィンとミラが買い物に出て行った後、自分も欲しいものがある事に気付いた。

しかし、頼むのを忘れてしまったのはしょうがない。

 

 

 

「仕方ないな……自分で買いに行くか……」

レイアは、そう言って下に降りていく。

下に降りるとそこには、トランプをやっているローエンとエリーゼとホームズがいた。

どうやら、ババ抜きをやっていたようで、ローエンが一抜け、残りのワースト一位をかけた熾烈な争いをホームズとエリーゼが繰り広げていた。

「………あのさ」

「何?」

「これから、買い物に行くんだけど……何か欲しいものある?」

「私は別にないですよ」

ローエンは、そう答える。

「私も……です」

そう言ってエリーゼは、ババではないカードを引く。

最後までババを持っていたのは、ホームズだった。

ホームズは、がっくりと肩を落とすとレイアの方を見る。

「……じゃあさ、食材買ってきてよ」

「食材?!」

「えーっと……トマトとマカロニ……パスタって言ってもいいのかな……後は……」

「待って待って待って!」

レイアは、急いで止める。

「そんなに沢山人に買わせようっていうの?」

「だって欲しいものある?っていうから」

ホームズは、ジョーカーのカードを見つめながらそう言う。

「だからって限度があるでしょ!!」

ホームズの勝手な言い分に声を荒げるレイア。

「ホームズさん……そんなに欲しいんだったら、一緒に行ってきたらどうですか?」

「えぇ〜めんどくさいなぁ……」

「女の子をパシらせるなんて……」

『サイテー』

エリーゼとティポの言葉にホームズは、ため息を一つ吐く。

「分かったよ……行きゃあいいんでしょ」

「そんなことばっかりやってるから、モテないんだよ」

「君、おれにそれを言っとけばいいと思ってるだろう?」

レイアとホームズは、そう言って宿から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「……というわけです」

「すっげぇ。本当に大した理由じゃない」

アルヴィンは、半ば感心しているし、ローズは、呆れかえって脱力している。

「どこまでいっても、ホームズは、ホームズね……」

ローズは、多少元気になりため息を吐く。

そして、ちらりとキッチンに目を向ける。

「それで、ホームズは何を作っているのよ」

「ミネストローネ」

その言葉を聞いた瞬間ジュードとミラは、思いっきり顔をしかめる。

何せホームズのミネストローネには、いい思い出がない。

薄かったり、甘かったり、濃かったりと、何一つとして、まともなりゃ物は出てこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうなることやら………」

 

 

 

 

 

 

ジュードは、ノリノリで料理をするホームズを見てポツリとこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、出来たよ」

ホームズは、鍋を持ってきてローズの皿にミネストローネを注ぐ。

他の面子は手を出さない。

「どうぞ。食べて」

ローズは、自分にだけ盛られたミネストローネを見て眉間に皺を寄せる。

「あのさ、最後に一つ聞いていい?」

「どうぞ」

「何で、私だけに料理を作ったの?」

その質問に向かいに座ったホームズは、ピタリと止まる。

そして、頬をぽりぽりとかく。

「うーんと、あのさ……ほら、君に髪留めを上げたことがあったろう?」

ローズは、髪留めを触る。

「うん。ちゃんとつけてるわよ」

「あぁ、うん……でもさ、なんか怒らせちゃったろう?」

「なんかじゃないでしょ」

ローズは、ギロリと睨む。

ホームズは、少し面食らったが説明を続ける。

「まあ、だからさ、折角だしプレゼントを買い直そうと思ってね……髪留めだとそれを見るたびに怒りを思い出すわけじゃん。

だったらさ、料理だったら食べたらお終いかな?って思って……」

「料理を買ってきてローズにあげようとしたから、私が止めたの」

レイアが横から口を挟む。

得てしてそう言うものは、手作りと相場が決まっている。

買ってきてあげるというのは、少し違う。

さらに言うなら、男女が逆でお菓子が相場だ。

「てなわけで、料理が苦手なホームズの為に私が色々と選んでいたわけ」

「じゃあ、あんなに楽しそうだったのは……」

「今回はうまく行きそうだと思ったからに決まってるだろう?」

ホームズの答えにローズは、安堵と疲労のため息を吐く。

そんなローズを見てミラは口を開く。

「良かったな、ローズ。ホームズがデートをしていたわけではなくて」

「ちょっ!ミラ!!」

ローズは、顔を真っ赤にして詰め寄った後ホームズの方を向く。

不思議そうに首を傾げているホームズにローズは、更に慌てて何か言おうとするが何も出てこない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで、お前が先を越されたというわけでは無さそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慌てるローズに構わず、ミラは爆弾をもう一つ放り込む。

 

 

 

 

「は?」

ホームズは、訳がわからないという風に首を傾げる。

 

 

 

 

 

「うむ。つまりな、ローズは、友人であるホームズが、自分より先にデートをした事に落ち込んでいたのだ。自分を差し置いて、デートを体験したお前に」

「……はぁ!?」

ローズは、今度は顔を青くしてミラに詰め寄る。

このままでは、性格の悪い女、一直線だ。

何とか弁明しようとするが、上手い言葉が出てこない。

そんなローズを見てホームズは、頬を引きつらせる。

「いい性格してるよ……君」

ホームズは、ため息と共にローズを半眼で睨む。

(((あーあ……)))

全てを知っているジュードとアルヴィンとヨルは心の中でため息を吐く。

いたたまれないローズは、キョロキョロと目を泳がせる。

ホームズは、パンと手を叩いてミネストローネを手で示す。

「まあ、それはそれ。取り敢えず食べておくれよ」

ホームズは、そう言ってミネストローネを勧める。

ミラとレイアとジュードは、固唾を飲んで見守る。

アルヴィン、エリーゼ、ローエンは、そこまで緊迫していない。

ローズは、泳がせていた目をミネストローネに戻すと勧められるままにスプーンですくって飲む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん……良くできるんじゃない?」

 

 

 

 

ローズは、そう感想を漏らした。

 

 

 

 

 

 

何とも微妙な感想だがホームズは、目を輝かせる。

 

 

 

 

 

「まぁ、私の方が上手いけど」

「君ね……」

ホームズは、瞳の輝きを消し去り半眼で睨む。

そんなホームズをローズは、面白そうにクスクスと笑うとにっこりとホームズに笑いかける。

 

 

 

 

 

 

 

「冗談よ。おいしいわ、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

ローズにしては、物凄く素直なお礼に一同は、驚く。

ホームズも面食らったようで頬をぽりぽりも人差し指でかく。

「お、おう……良かった……よ」

ホームズの答えが聞こえているのかいないのか、ローズは、あっという間に飲み終わると次のスープを盛る。

「馬鹿に素直だな。変なものでも食ったのか?」

「ヨル……喧嘩売ってる?」

ホームズとヨルは罵り合う。

そんな二人に構わずローズは、鍋の中身を確認する。

「……それにしても多いわね……何人分作ったのよ」

「四人分」

「はぁ?!私の他にも食べる人いるの?」

ローズは、少しがっかりしたように言う。

しかし、ホームズは首を横に振る。

「いや、その、ローズなら食べれるかなって思ったんだけど……いや、無理だったら、おれが……」

食べるよっと言って鍋に手を触れた瞬間ローズの拳骨がホームズの頭に落ちた。

ホームズは、そのまま意識を飛ばす。

白目を剥いて机に突っ伏したホームズを見てアルヴィン達は、呆れながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「食事中の犬の食べ物に触れちゃいけないのよ」

「ローズ……その例えは、女の子としてどうなんだろ……」

呆れるレイアを無視してローズは、ぐびぐびとミネストローネを全て一人で飲んだ。

「ご馳走様」

そう言って席を立つ。

「それじゃあ、私は先に部屋に戻ってるわ」

そう言って自分の部屋へと歩いて行った。

それを見送るとジュードは、不思議そうに首を傾げる。

「それにしても、ホームズは何で四人分も作ったんだろ?」

そんなジュードにヨルがある本を開いてみせる。

「何?」

「ここだ。ここを読んでみろ」

ジュードは、ヨルに言われて渋々読み始める。

「えーっと……なになに『ミネストローネの作り方(四人前)』って……まさか……」

 

 

 

 

 

 

ジュードの脳裏に先ほどのホームズの料理風景が思い出される。

 

 

 

 

 

 

『ホームズ!ちゃんとレシピ通りにね』

『わーってるよ』

 

 

 

 

 

 

 

「そういう事だ。この馬鹿はレシピ通りに作ったんだよ」

そう四人分の作り方しか載ってなかったのでホームズは、一人分に計算するよりも『レシピ通り』を守るため、メニューをまんま採用する方を選んだのだ。

「………ホームズ」

エリーゼは、呆れ顔だ。

この器用な様で不器用な男には、ため息しかでない。

「まぁ、よっぽど美味しいモノを食べさせたかったんだよ」

レイアは、そうフォローして気付く。

「あのさ、ヨル、この前なんて言ったけ?確か十回に一回は、絶品ができる……だっけ?」

「そうだな」

ヨルは淡々とレイアの質問に答える。

「………おい、少し残っているぞ」

そんな会話をしているとミラが鍋の底の方にミネストローネが皿の半分あるかないかの量が鍋底にあった。

「………食べちゃおっか」

悪魔の囁きがレイアに聞こえる。

「そうだね」

「私も興味ある……です」

「私もいただきましょう」

「んじゃあ、おれも」

「私も是非」

「俺は、パス」

「えぇ、何で?」

「腹一杯なんだよ……お前らがさっき散々物を食わせただろうが」

「あぁ、そうだったね……」

 

 

 

こうして、ヨル以外の面子も悪魔の囁きに耳を傾けた。

 

 

 

 

みんなで小皿に上手に分けると、一気にぐびっと飲む。

 

 

 

 

 

 

 

そして、感想を一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「あまっ!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームズのミネストローネは、信じられないぐらい甘かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホームズ……あんなに言ったのにまた、間違えてる……」

レイアは、そう言って拳をワナワナと握る。

ホームズの料理の残念さがアルヴィン、ローエン、エリーゼにも知れ渡った。

そんな中、エリーゼがポツリと呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、ローズ、これを四人分飲んだんですよね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一同は、血の気が引く。

 

 

 

このミネストローネとは、思えないものをローズは、在ろう事か四人分平らげだのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか………」

 

 

 

 

 

 

 

レイアは、勢いよく扉を開け、走ってローズの部屋を開ける。

 

 

 

 

 

部屋の中には、ベッドに横になり、苦しそうに呻いているローズがいた。

 

 

 

 

 

 

 

「ローズ!!」

驚いたレイアの声にローズは、ゆっくりと寝返りを打つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイアぁ……お腹痛いよぉ……痛いよぉ……苦しいよぉ〜……苦しいよぉ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青白い顔をして、うーんうーんと苦しそうに呻くローズを見て、レイアはため息を吐く。

詰まる所、ホームズを気絶させたのも、残さず食べたのも、全部ホームズに料理が失敗したことを悟らせないためだったのだ。

あの素直の感想は、文字通り変な物を食べたせいだったようだ。

 

 

 

 

 

呻くローズを見てレイアは、考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

ローズの為に、注意を払い過ぎて作りすぎたホームズ。

ホームズの為に自分の体調を犠牲にしたローズ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ………」

 

レイアは、ため息を吐く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こんの……不器用バカップル!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイアは、心の中で叫んだ。

 

 

 

 






ここでのバカップルは、馬鹿みたいにイチャつくカップルではなく、馬鹿な二人という意味です。
まぁわざわざ言わなくてもいいですよね(笑)


今回の話は二つのリクエストを一つにまとめました。



如何でしたでしょうか?


今回の話に触れるなら、まあ、ローズですかね?
可愛いや、残念や、馬鹿や、かっこいいなど様々な感想を持ってもらえると嬉しいです。




思えば、この番外編は、基本的にほとんどの話で誰かが飲み食いしていますね……


元旦にやったことはその後も続くといいます。


……やっぱり元旦から闇鍋の話をやったのが原因ですかね(笑)




では、また本編でお会いしましょう!!

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