1人と1匹   作:takoyaki

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二百二十八話です。



続く連続投稿!



てなわけで、どうぞ


両友並び立ち

「遅い」

「別にわざとじゃないんだから許しておくれよ」

そう言ってホームズは、右脚に力を込める。

そして、そのまま走り出した。

「ヨル!」

ホームズは、走りながら指示を出す。

「やかましい、命令するな」

ヨルは、そう言うと口から黒球を吐き出した。

宙に浮かぶ黒球をホームズは、回し蹴りの要領で蹴る。

蹴られた黒球は、弾けて黒霞となり、ホームズの脚にまとわりついた。

ホームズは、勢いを殺さずガイアスにそのまま回し蹴りを放つ。

迎え撃つガイアスは、先程爆砕ロックで現れた目の前の煙と一緒に次元刀で斬り払う。

ぶつかり合うホームズの黒い脚と、ガイアスの次元刀。

鈍い音ともに二人は、弾かれた。

ガイアスは、次元刀を持ち直すと振り下ろす。

ホームズは、態勢を崩しながら、弾かれた右足を軸足にして、迫る白刃を踵から蹴り上げた。

「む、!?」

一瞬現れた隙にホームズは、後方宙返りで、ガイアスの背後に立つ。

そして、再び黒霞の脚で蹴りを放つ。

ガイアスは、それを振り向きざまの一刀で弾き返す。

ホームズは、忌々しそうに肩にいるヨルを睨む。

「ねえ、さっきから弾き返されてるんだけど……」

「まあ、文字どおり次元が違うというやつだ」

「当然よ。私の力なのだから」

そう言ってミュゼは、ガイアスの隣に並び立つ。

「へぇ、それはそれは」

ホームズは、つまらなそうにそう返す。

「ホームズ」

「?」

ガイアスの言葉にホームズは、首をかしげる。

「俺に協力する気はないのか?」

「当然」

ホームズは、そう言ってガイアスを指差す。

「君の目指す未来は、おれの欲しい未来じゃあない」

ミラの方に視線を向ける。

「忘れられがちだけど、おれは商人だ。だから……」

そして、ニヤリといつもの意地の悪い笑みを浮かべる。

「おれを雇いたければそれ相応の報酬を用意したまえ、ガイアス!!」

ホームズの左脚に炎が纏わりつく。

「紅蓮脚!!」

紅に染まるホームズの左脚がガイアスに向かって放たれた。

ミュゼが二人の間に入りガイアスに届くまえにそれを止めた。

「いい加減にしなさい!!」

ミュゼは、髪を巻きつけるとそのままホームズを投げ飛ばした。

宙に舞い上がったホームズは、そのまま重力に引っ張られるように下に向かう。

「シルフ!!」

ミラの声とともに風が巻き上がりホームズの落下の勢いを殺した。

勢いの落ちたホームズは、そのままなんとか着地する。

「助かった……ありがと、ミラ」

「礼はいい!!来るぞ!!」

ミラの言う通りミュゼは、目前まで迫っていた。

黒霞はまだ脚にある。

ホームズは、脚を踏み鳴らす。

「守護氷槍陣!!」

ホームズとミラを囲って氷の槍が現れる。

だが、そんなものミュゼの前では壁にすらならなかった。

あっさりと砕くと髪を伸ばす。

ホームズは、ミラを突き飛ばし、盾で受ける。

「ぐっ!!」

「貴方は、貴方だけは!!」

ミュゼは、そう言って髪をホームズに向かって伸ばす。

ホームズは、盾と脚でそらしていく。

「シャドウもどきの封印を解き、エレンピオスを滅ぼすのを止める、ガイアスには協力しない!!貴方は、この世界を滅ぼしたいの!?」

「そんなこと……」

ホームズは、迫る髪を掻い潜って回し蹴りを叩き込む。

「言ってないだろう!!」

黒霞の右脚の攻撃にミュゼは、息がつまる。

「このっ!!」

だが、飛ばされると同時にミュゼの髪がホームズの肩を貫いた。

「うぐっ!!」

「貴方のやっていることは、そう言うことよ!大精霊として認められないわ!!」

ホームズは、目を丸くした後下を向く。

「自分の欲望で世界を振り回さないで!」

ミュゼの叫びにホームズは、

「くくく…………」

「?」

 

 

 

 

「あーっはっはっはっはっはっはっ!!」

 

 

 

 

心底面白そうに笑っていた。

 

 

 

 

耳に残る笑い声にミュゼは、一瞬だけ固まった。

ホームズは、その隙にそのまま髪を掴むと肩から引き抜き振り回してガイアスにぶん投げた。

「欲望で世界を振り回すな?馬鹿を言うんじゃあない!欲望が世界を回すんだ!」

リリアル・オーブが輝きだす。

「おれは、両親の故郷を探し出す!その邪魔は、誰にもさせない!!」

ヨルは、くくくっと面白そうに笑う。

「だよな。欲望(それ)がなくちゃ、お前じゃない」

「君に言われたくないねぇ」

ヨルは、ニヤリと笑い返すとそう言うとミュゼを睨みつける。

「だいたい、お前は、何を世界のためみたいな顔してるんだ。そこの王に依存しているだけだろ」

「なん……ですって?」

明らかに殺気の増したミュゼに構わず、ホームズが言葉を引き継ぐ。

「君は、正しい行いをしているつもりかい?君のやっていることは、人の信念に寄生して甘い汁啜ってるだけだ」

ホームズの言葉は、完全にミュゼの逆鱗に触れた。

「殺す!!」

ミュゼは、真っ直ぐにホームズに向かっていく。

ホームズとヨルは、目を険しくさせ、迎え撃つ。

「甘い汁を啜るのはここまでだ」

その瞬間、ホームズのリリアル・オーブが輝いた。

 

 

 

 

 

「「辛酸を舐めろ」」

 

 

 

 

 

最高潮(オーバーリミッツ)に達した輝きから繰り出されるのは、ただ一つ、秘奥義だ。

 

 

 

 

 

 

「地獄の様に熱くっ!!」

 

 

 

 

 

ホームズの踏み鳴らした脚を中心にして青い炎の陣が出現する。

赤より高温の青い炎は、ミュゼを焼く。

ミュゼは、何とか炎獄から抜けようとする。

「悪魔の様に黒くっ!!」

黒霞を纏った脚にホームズは、更に闘気を混ぜ、ミュゼの腹部へと蹴りを放った。

「─────っ!!」

その衝撃は、今までとは比べものにならない。

 

 

だが、この技は、それで終わりではない。

 

 

 

 

 

化け物(天使)のように純粋で?」

ヨルの尻尾がミュゼの関節、髪、全てを拘束する。

 

 

「人生の様に苦い!!」

 

 

 

 

 

ホームズは、黒霞の脚で炎の陣を踏む。

炎は渦を巻く様に黒霞の脚へと吸い寄せられて行き、黒霞と混ざり合う。

混ざったそれ(・・)は、新月を思わせる程真っ黒だ。

ホームズは、拘束されているミュゼに背を向けるほど身体を回して遠心力を乗せる。

 

 

 

 

 

 

 

「「"エスプレッソ・ラプソディー"!!」」

 

 

 

 

 

動くことの出来ないミュゼにホームズの秘奥義が炸裂した。

丸太をぶつけた様な鈍い音が響き渡る。

ミュゼは、腹部に走る衝撃と熱に堪らず膝をついて倒れた。

 

 

 

 

 

 

「……やったか?」

ホームズの蹴りは一つ残らず叩き込まれた。

それを見たヨルの呟きにホームズは、首を振る。

「だったら、苦労はないけどね」

ホームズは、ミュゼを指差す。

「見たまえ」

ホームズに促されて視線を移す。

視線の先のミュゼの指がピクリと動く。

確かにダメージは、あるだろう。

だが、行動不能かと言われればそうではない。

「気ぃ抜くんじゃあないよ。相手は……」

ミュゼの髪が伸び、ホームズに襲いかかる。

「大精霊だ」

ホームズは、そう言いながら左手の盾で刺突を防ぐ。

だが、今回は刺突ではなかった。

髪は広がり、盾を避け、ホームズを拘束した。

「ぐっ!!」

「へぇ……やるじゃない。間一髪で、首を守るなんて」

自分の予想が外れたことに気付いたホームズは、空いている右腕を髪と首の間に挟んだのだ。

おかげで、窒息は免れた。

だが、身体に巻かれた髪は、ホームズを締め付け続ける。

「がっ……!!」

締め付ける力が上がり、響いてはいけない音が響き渡る。

(やばい………!)

 

 

 

 

 

 

「剛招来・纏!!」

 

 

 

 

 

颯爽と現れたローズが、紅い闘気を纏った刀でミュゼの髪を斬り裂いた。

「ホームズ!!」

駆け寄るエリーゼとレイアが、精霊術で治療する。

「ゴホッ………ゴホッゴホ」

拘束から解かれたホームズは、何度も咳き込む。

「ホームズ、立てる?」

ホームズは、頷いて返すと何とか立ち上がる。

「もう少し、休んでいてもいいのよ?」

「馬鹿言いたまえ。繁忙期に休む商人がどこにいるんだい?」

ローズの言葉にそう返すとホームズは、レイアとエリーゼの肩をポンと叩く。

「助かったよ。ありがと」

『どういたしましてー』

ホームズのお礼にティポが答える。

ホームズは、その返しに頷くとミュゼに視線を移す。

「それじゃあ、二人はガイアスをよろしく。ジュード達と協力してどうにかしておくれ」

「ちょっと待って、ホームズ、まさか」

血相を変えるレイアに構わずホームズは、頷く。

「当然。おれ達は、ミュゼとだ」

ホームズとヨルは、もうミュゼの方しか見ていない。

「無茶だよ!!さっきだってかなり危なかったじゃん!!」

「なら、私達ならどう?」

そう言ってローズが髪を全ていなしてホームズの隣に立つ。

ホームズは、目を丸している。

「えーっと………」

「迷ってる暇はないぞ」

ヨルの忠告通り、ミュゼが髪を繰り出してきた。

「っく!守護方陣!!」

ホームズは、足を踏み鳴らして光の陣を発動させる。

集まる髪は、光の陣に立ち入れない。

「分かった!!任せる!!」

事態を飲み込んだホームズは、ローズにそう言うとニヤリと笑う。

「待ってました!!そうこなくっちゃ!!」

そう言うとエリーゼとレイアの背中を押す。

「ホームズの事は任せて!二人は、ジュード達と協力してガイアスを」

「……分かりました!!」

「頼んだよ!!」

二人は、言いたいことを飲む込むとローズに託してガイアスの元へと向かった。

「させない!!」

ミュゼの髪が二人に向かって伸びる。

「それは、こっちのセリフだよ!!」

ホームズの回し蹴りがミュゼの顔面を捉える。

若干動きの鈍いミュゼにホームズは、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。

「やっぱり、ダメージゼロってわけじゃあないみたいだねぇ」

「そりゃそうでしょ、あのマーロウさんを戦闘不能に追い込んだじゃない、あの技」

「一時的にな」

ローズとヨルの言葉にホームズは、肩をすくめる。

ホームズの隣には、二刀を構え力強い意地を宿した目でミュゼを捉えるローズがいる。

すれ違ってばかりで、挙句に殺されかけた相手だ。

そんなローズがホームズの隣にいる。

ヨルは、ようやく揃った足並みをいつもの様にホームズの肩から眺めていた。

「ホームズ、こんな時は、なんて言うんだ?」

ヨルの言葉にホームズは、頷き不敵に笑ってみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて、仕切り直しだ」

 

 

 

 

 

 

 

 







ここの時は、みんな秘奥技を放っての登場だったので、ホームズ達にもやってもらいま



はい!てなわけで、今回の章の振り返りは、こちら




『マクスウェル』



久々にパーティーinしたローズとともに大冒険でしたね。
時止めバトルをやったり人外が本領を発揮したりと、中々に化け物チックなバトルでしたね。
時止めは、面白そうだからと入れてみたの「味方がこんなにも苦戦するはめになりました。



ではまた、二百二十で( ´ ▽ ` )ノ

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