1人と1匹   作:takoyaki

216 / 242
二百十五話です。


ついに、ついについについに!!!



三年目です!!


三年もやって、まだ完結してないってどういうこと?!なんて突っ込みは、今の私の言葉で勘弁してください。


とある漫画家も言っていましたが、三年というのは、中学生や高校生が卒業する、という期間になります。
春休みにこの作品に出会った方がもしかしてもう卒業か?なんて考えるととても感慨深いです。


てなわけで、どうぞ


油断ダメ!ゼッタイ!

【さて第3ステージは、ガチンコ三本勝負!ルールは、場外に落ちるか、死ぬ以外の戦闘不能に陥ること!】

会場は、円形のステージに唯一入場用の架け橋が掛けられていた。

【トップバッターは、この子だ!!】

レイアが棍を持って入場する。

【対する相手は、こいつだ!!】

促されて入ってきたのは、薙刀の男だ。

二人が入ると架け橋がゆっくりと上っていく。

レイアは、相手の男を見据える。

見るかに筋骨隆々とした男にレイアは、冷や汗が流れる。

レイアを見るなり溜息をつく。

「な、何?」

「別に不満はない。勝てばいいんだからな」

思い切り不満そうな声で言う男にレイアは、自分がナメられていると分かった。

自分の相手が華奢な女性ということが納得がいかないのだ。

観客席に無事戻ったローズとエリーゼは、苦笑いをしている。

「女子供相手でも手加減は、しない」

「安心して。わたしもしないから」

その言葉に今度は男の額に青筋が浮かぶ。

【さあ、得物は両方かなりの長さ!さあ、勝利の女神は、どちらに微笑む!?】

レイアと男が構える。

【それじゃあ、始め!!】

男は、開始の合図と同時にレイアに向かって突撃する。

薙刀は、空を切り裂きレイアへと最短距離を走る。

その銀色に輝く刃は、禁止されている死を連想させた。

刃は、レイアの目前まで迫る。

 

 

 

 

 

「馬鹿ね」

 

 

 

 

ローズは、観客席でポツリと呟く。

「シャープネス!!」

術名を告げるとレイアに力が宿る。

そして、それと共にレイアは、半身になって、迫る薙刀を避けた。

標的を失い、止まれなくなった男。

 

 

 

 

 

 

「あの子はホームズ相手に真っ向勝負で勝ったのよ」

 

 

 

 

 

 

レイアは、その男の顔面に棍の先を使ってカウンターを入れた。

「─────っ!!」

自分の勢いが上乗せされ、更にシャープネスで力の上がったレイアの一撃を食らった男は意識と共に派手に飛ばされた。

その一瞬の出来事に会場は、ポカンとしている。

【えーっと……】

実況が審判に目配せをすると、審判は首を横に振る。

【気絶により、勝負あり!!】

それと同時に会場が湧いた。

架け橋がゆっくりと降りてくる。

レイアは、苦笑いしながらそれを使って試合場を後にした。

舞台袖に戻るとローエンとホームズが待っていた。ホームズが手を挙げるとレイアも手を挙げ、ハイタッチをする。

「瞬殺とはね、驚いたよ」

「いや、殺してないよ」

レイアは、肩をすくめる。

「多分、あの人の方がわたしより強いと思うんだけど……」

レイアは、申し訳なさそうに言うとローエンが微笑む。

「いいんですよ、レイアさん。勝った方が勝者なんですから」

「当たり前じゃん」

「ええ。当たり前のことですよ」

ローエンの言葉にレイアは、納得したようだ。

力強くうんと頷くと腰に両手を当てる。

「じゃあ、次はローエンだよ」

「えぇ。お任せください」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

【さあ!お次は、ご老人の登場だ!!】

「歯に絹せぬにも程がありますね」

ローエンは、ホッホッホと笑っている。

【お前らのチームどうなってるんだ!?メンバーが多種多様だぞ!!そんなお前らの敵はこいつだ!!】

相手は、二つの短刀を構えた男だった。

ローエンは、細剣を取り出す。

「ここは、腕に自信のある奴らが来る場だ。自慢の知恵は役に立たねーぜ」

「おや?私のことを知っているのですか?」

「あぁ。指揮者(コンダクター)イルベルトだ。軍師様が来るようなところじゃない」

「そうですか」

ローエンは、相変わらず含笑いだ。

【さあ!ルールは、変わらず!いくぜ………】

二人は全身に力を込める。

【始め!!】

二刀の男が仕掛ける。

ローエンは、細剣で受け流す。

しかし、受け流したところから直ぐに剣戟が襲いくる。

(なるほど……詠唱している暇はなさそうですね)

短刀は、後一歩のところまで迫る。

だが、その後一歩が届かない。

格下相手に一向に勝負がつかない。

そんな状態に男は苛立つ。

(これで決めてやる!!)

男は渾身の突きを放とうと踏み込もうと右脚に力を込める。

ローエンは、身を翻して躱すと足払いをかける。

踏み込もうとした足を払われた男は、態勢を崩す。

ローエンは、その隙に背後に回る。

その時、男の視界には、場外の暗い穴が広がっていた。

ここに落ちれば、場外。

そこで負けは確定する。

(まさか……!ここに誘導されていたのか!?」

「気付いたようですね」

ローエンは、そう言うと男の背中をトンっと押す。

「少し、遅かったようですけど」

態勢の崩れていた男は、なす術もなく穴の中へと落ちて行った。

【おーっと!場外だ!!これにより、勝負ありってヤツだ!!まさかの展開!!】

ローエンは、静かに笑みを浮かべて

架かった橋を渡ってレイア達の元へと戻る。

レイアとホームズがローエンに駆け寄る。

「流石だよ、ローエン」

「年寄りということで随分、侮っていらっしゃったので利用させてもらいました」

ローエンは、そう言ってホームズと静かにハイタッチする。

「年とは取るのではなく、重ねるのです。積み重ねればそれだけで財産なんですよ」

「今の試合の後だと大分重みが違うよねぇ………」

ホームズは、そう言って伸びをする。

ヨルは、ホームズの肩で尻尾をぐねぐねと渦巻かせる。

「さて、これで二勝したことだし、俺達の勝ちってところか?」

ホームズは、指を折って数える。

「そうだねぇ………これで、おれは戦わなくていいよねぇ?」

そう言って試合会場を見ると相手が仁王立ちしていた。

どうやら、そうは問屋がおろさないようだ。

ホームズは、その男の顔を見て目を丸くする。

【おーっと!負けは決まったがそれでも自分の勝負は、やる!その心意気買ってやるぜ!!もうひと試合許可してやろう!!】

解説の声が朗々と響き、観客が湧く。

「ホームズ、出るしかなさそうだよ」

レイアの言葉にホームズは、無言のままだ。

レイアは、眉をひそめてホームズの前に立つ。

「ホームズ!」

レイアの言葉にハッと我に帰るホームズ。

「………何だい?」

「隠し事は無しだよ。ホームズ、なんか変だよ。何があったの?」

ホームズは、しばらく迷った末口を開く。

ホームズから語られる事柄にレイアとローエンが息を飲む。

話し終えるとホームズは、顔を上げる。

「ほんじゃあ、行ってくるよ」

「待って!行かなくてもいいよ!そんな事情なら!」

レイアの言葉にホームズは、ひらひらっと手を振ってそのまま控え室を後にした。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「あれ?レイアにローエン、舞台袖で見てるんじゃなかったの?」

「もう片付けたいからって追い出されました」

レイアとローエンは、ジュード達のいる観客席に戻っていた。

「試合は!?」

「まだ、始まってないけど……どうしたの?」

「ホームズの対戦相手、ホームズをイジメてた張本人なんだよ!」

レイアの言葉にミラは、首を傾げる。

「別に問題ないだろ。一番最初の時に今までの憂さ晴らしとばかりに踏みつけていたでないか」

「違うんだよ。あれは、立場が、違うからやり返せなかった相手。だから、別に今ならどうってことない、らしい」

レイアは、最後は尻すぼみになる。

ホームズの言っていた言葉なのだ。

自分のことではないため、どうしても言葉に力が伴わない。

「でも、今度は幼いホームズじゃ敵わなかった相手、つまり、」

「年の離れたイジメっ子ってところか?」

アルヴィンの言葉にレイアが頷く。

ジュードがこめかみに指を当てる。

ホームズの話を思い出す。

ホームズをいじめていた人間には、二種類いた。

一つは、石を投げるなどして直接行動に移した者。

そして、もう一つは……

「それって、ホームズに霊力野(ゲート)がないって見抜いて、イジメを扇動した………」

「そう、張本人」

ジュードの言葉にレイアが頷く。

「でも、ホームズならそれぐらい……」

エリーゼの言葉にローエンが首を横に振る。

「幼いホームズさんにとって、あの方は、何より怖い存在だったのでしょう。立場上敵対出来ない。なら、一緒に寄ってたかって何かやって来るかと思えばそんなことはしない。自分の手は汚さず、ホームズさんを追い詰める、その汚さがホームズさんには恐ろしかった」

ローエンは、そう言ってイジメをしていた男と相対しているホームズに視線を向ける。

「幼い頃の恐怖は、呪いとなって自身を縛る。今のホームズさんにあの相手は、いくら何でも………」

ローエンの解説にローズが息を飲む。

「そんな、止めな………」

 

 

 

 

 

【それじゃあ、最終試合、泣いても笑ってもこれで最後だ!!勝負、始め!!】

 

 

 

 

 

 

ローズの制止も空しく会場から合図が飛んだ。

 

 

 

 

負けて失うものなどなく、勝っても何も手に入らない、ホームズの勝負が始まった。






高校卒業時の長い春休みでやったこのエクシリアももう、随分昔の話になってしまいましたね…………

アンニュイな気分になったところで、章の解説、今回は大問題の「ガイアス王」。
そう、ホームズが裏切った章です。
前の章は、ローズとホームズの関係を掘り下げるという目的の他にこの章につなげるために出来るだけ仲良くさせておきました。
結構、皆さんの予想も裏切りて良かったです。
批判が来ることも覚悟していたのですが、そんなこともなく、ホッと胸を撫で下ろしました。
まあ、ホームズの好感度と反比例してレイアの好感度が上がってるだろうなぐらいは、思いました。
レイア対ホームズ戦は、個人的にあそこまでの話で一番の盛り上がりでした。



では、少し語りすぎたのでこの辺で。



では、また二百十六話で( ´ ▽ ` )ノ


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。