1人と1匹   作:takoyaki

207 / 242
二百六話です!!


評価してくださった皆さん、ありがとうございます!!



ご指摘のあったところも治せるよう努力していますので長い目で見てください!!



てなわけで、どうぞ


女は度胸

「なるほど、そんな事が………」

女性は、ローズの長い話を聞き終わるとそう答える。

ローズ自身まさかこんなに話してしまうとは、思わなかった。

だが、何となく話してしまったのだ。

女性は、ローズの話を聞き終わってため息を吐く。

「本当、親子そっくりですね」

「?」

「いえ、こっちの話です」

女性は、そう言うとローズと向きなおる。

「ローズちゃんは、ホームズに踊らされていたんですよ」

「?」

首をかしげるローズ。

それを見て女性は、大きくため息を吐く。

「不幸なすれ違いが重なって起こったことだと思っているんですか?違いますよ。不幸なすれ違いは、ローズちゃんがホームズを殺しにかかって目を潰したことと、碧色の瞳の記憶が消えたことだけです」

そう言うとキャスター付きの椅子に腰掛ける。

「その事実は、全部ローズちゃんに知って欲しくないから黙っていたと思っているんですか?違いますよ。ホームズは、ローズちゃんが勘違いするように黙っていたんです」

レイアもミラも知っていることだ。

だが、ローズは知らない。

「人は、自分の力で辿り着いた結論を何よりも信じてしまいます。だから、ホームズは、ローズちゃんに結論を出させたんです」

「どうして………」

「だって、ホームズが全ての元凶なら、ローズちゃんの両親が原因ということまで考えないじゃないですか」

自分が被害者だということに辿り着けば、加害者だという結論を考えない。

「ホームズのせいだとローズちゃんに信じさせることによって真実に気づかせないようにしていたんですよ」

「でも………なんで………」

女性は、頷く。

「考えられるのは、三つです。

一つは、ローズちゃんに両親のやっていたことを知って欲しくなかったから。

自分の両親が非合法の連中とつるんでいたなんて聞きたい情報じゃないでしょう?」

ローズは、頷く。

「二つ目は、ローズちゃんの両親を庇うため。

いい加減気付いていると思うのですけど、その時のサプライズパーティーは、確実にローズちゃんを逃がすための策ですよ。

そして、ローズちゃんを逃したということは、連中が来ることをローズちゃんの家族は知っていた。

それでもローズちゃんを救うために命を賭けた両親の思いを受けて、ホームズが庇おうとした」

「三つ目は?」

「その両方です」

女性は、そう言った後、ため息を吐く。

「これ以外にも例えば、過去のトラウマから、なんてこともあるかもしれないですけど」

女性は、そう言ってローズに向きなおる。

「どちらにせよ、ホームズはローズちゃんのことを大切に想っているということです。それが、女性としてなのか、友人としてなのかは、分からないですけどね」

対して思い入れのない人間の家族のことなら別に特に肩入れしない。

勿論、こんな手段を簡単に選んだのは、あの村での出来事が起因している。

ローズは、唇を噛み締める。

「私は、ホームズに………」

ここまで大切にしてくれた人間にローズのやった事は、なんだ?

外道と言われても文句は言えない。

俯いてしまったローズに女性は、かける言葉を探す。

そんな時視界の片隅に転がっている二つの刀を見つける。

「おや?」

不思議そう首をかしげながら、刀に近づくと手に取る。

そして、刀を鞘から抜く。

もう一つは、完全に折れていた。

「あぁ、だからですか……」

女性は、ため息を吐いて自分の持ってきた刀を見る。

(全く、面倒くさい役を人に押し付けてくれたものですね……)

女性は、優しい声で尋ねる。

「さて、ローズちゃん。これからどうするんですか?」

「どうするって………いい加減ここから出ようと思っていたところですけど……」

ローズがポツリとこぼした瞬間、部屋がドンという音ともに震える。

「今のは………」

「何だか、もりあがっているようですね」

女性は、そう言いながら、ローズを見る。

ローズは、懸命に堪えるように唇を噛み締めていた。

何を堪えているのか?悔しさか?

違う。

ローズが堪えるのは、悔しさなんていうものではない。

ホームズ達の戦いに向かいたいという気持ちを持てない。

なにせ、今の自分が行ったところで、後悔と罪の意識に潰された状態では足手まといでしかないのだ。

ローズは、それが分かっている。

そして、納得しているため動けないのだ。

「辛そうですね」

女性は、どうやらそんなローズを見抜いているようだ。

ローズは、こくりと頷くと何かを振り払うかのように立ち上がろうとする。

そんなローズを女性が止める。

「ダメですよ、ローズちゃん。立ち上がるのは、答えを出してからです」

「でも、悩んでいる暇があったら、行動した方が………」

「悩む暇があるなら悩まなくていけないんです」

女性は、そう言ってくるりと椅子を回す。

「よく人は、

『悩む暇があったら行動しろ!』

『考える暇があったら行動しろ!』

『迷う暇があったら行動しろ!』と、悩むことや考えることや迷うことが間違いみたいに言うものです」

そう言って女性は、ローズを見据える。

「でもね、ローズちゃん。だったら、人間は何のために頭なんて場所があるんですか?」

女性は、更に続ける。

「大事な事は、考えなくてはいけないのです。迷わなくてはいけないのです。悩まなければならないのです」

そう言うと女性は、優しくそしてはっきりと告げる。

「ローズちゃん、答えを出しなさい。ローズちゃんが立ち上がる答えを、刀を手に取る答えを」

「………悩みながら、行動するのは……」

「今のローズちゃんがそれの結果じゃないのですか?」

女性の言葉にローズは、返す言葉もない。

悩みながら進み答えを出したものもいる。

だが、ローズは、行動することに重きを置き考えることを放棄した。

結果がこれだ。

ホームズのこと、今の状況のこと、ローズは、考え込むが暗闇を進んでいるような感覚に陥る。

その間に時間が過ぎていくのを焦るばかりだ。

女性は、椅子の車輪を転がして近づくとポンと肩を叩く。

「ローズちゃん、ヒントをあげましょう」

女性は、そう言って指を一本立てる。

「まずは、立ち上がる答えと刀を手に取る答えを出すのです。そして、これが片付いたら、今度は、ホームズのことを考えなさい」

女性の言葉にローズは、こくりと頷く。

ローズは、まず、立ち上がれない理由を考える。

それは、自分が足手まといになってしまうのが分かっているからだ。

助けに行った結果、ホームズ達の足を引っ張り取り返しのつかないことが起こるのが怖い。

だが、それは助けに行かなくても同じことが言える。

助けに行かず、取り返しのつかないことになる可能性だってある。

どちらの選択肢を選んだところで等しく後悔する可能性があるのだ。

でしゃばって後悔するか、

尻尾を巻いて後悔するか、

ローズの中にあるのは、この二択だ。

ローズは、それを選べずにいる。

確かにこの女性の言う通りだ。

今、無理矢理に全てを振り払って、助けに行ってもホームズを見た瞬間に刀を持つ手に力が入らなくなる自信がある。

だが、この場所で全てをやり過ごしてしまったら、もう二度とローズは彼らの顔を見る事は出来ないだろう。

(ダメだ………立ち上がる理由が見つからない……)

なら、もう一つを考えるしかない。

(刀を手に持つ答え……)

それを考えた時、花畑でのホームズが蘇った。

あの時、ホームズは、ローズがイジメの対象とならないようワザとローズを突き放した。

突き放された時は、理不尽に起こった出来事に呆然とするしかなかった。

だが、別れる間際に姉から語られたホームズの真意を聞いた時、感じたのは自分の惨めさだ。

それを感じた時、ローズは思ったのだ。

何を?

刀を握ることを決めた理由だ。

その理由とは、かけ離れた使い方をしてしまった。

ローズは、弾かれたように顔を上げる。

(そうだ…………忘れてた。ううん、忘れちゃいけなかった!)

ローズは、拳を握り締める。

そして、女性を真っ直ぐに見据える。

そのローズの瞳には、決意の炎が灯っていた。

涙で濡れた瞳は、もう何処にもなかった。

「答えは、出たのですか?」

「はい」

そう言ってローズは、口を開く。

「私は、自分に力がないばかりに自分の傷を人に押し付けるような事はしたくない、そう思って刀を取りました」

だが、それとは、かけ離れた理由で刀を振るってしまった、結果不幸を振りまいてしまった。

「だから、私は、刀を取ります。でしゃばっても後悔する、尻尾を巻いて逃げても後悔する。だったら、でしゃばります。尻尾を巻いて逃げて自分の傷を人に押し付けたくないから」

思い出は力に、過去は希望に、過ちには贖罪を。

「それが、答えですか?」

「はい」

「六十点ですね」

「へ?」

まさかの返答に戸惑うローズに女性は、拾った刀の折れていない方を投げて渡す。

「今のローズちゃんの答案には、空欄があります」

「…………ホームズのこと」

「はい。でも、今の答えは満点ですよ。だから、残りの空欄も埋めてくださいね」

女性の言葉にローズは、確かにそして、力を込めて頷いた。

それを満足そうに見ると女性は、ゴソゴソと懐を探して、もう一つの刀を取り出す。

「それは………」

「見た所、ローズちゃんは二刀流ですからね。持って行ってください」

「え、でも?」

「一応、業物らしいのでちゃんと手入れしてありますよ」

「いや、そうじゃなくて!それじゃあ、貴方の武器が………」

女性は、にっこり笑うと立ち上がり、自分の座っていた椅子を人差し指の上に軽々と乗せる。

そして、少し弾いて宙に浮かせるとそのまま拳骨で殴りつけた。

殴られた椅子は、そのまま壁に激突し粉々に砕け散った。

唖然とするローズに女性は、笑いかける。

「私は身体を武器にして戦うんです。何と言っても軍人ですからね」

ローズは、この時になって女性が扉を壊して入ってきたことを思い出した。

「…………心配は、いらないということですか?」

「そういうことです」

ローズは、ため息をつくと髪をまとめる。

そして、髪を止める紐が無いことに気付く。

そんなローズに女性が髪留めを投げてよこす。

ローズは、慌てて片手で受け止める。

「これは?」

「シュシュと言うんですよ。可愛かったので買いましたが、ローズちゃんの方が似合いそうなのであげます」

ローズは、シュシュを使って髪をまとめる。

後ろで髪をまとめる気合が入る。

「よし!」

ローズは、軽くジャンプをしてそして腰にある二つの刀を確認した後女性の方を振り返る。

「あの、その、ありがとうございました」

「どういたしまして」

女性は、穏やかに笑って頷く。

「色々言いたいことや聞きたいこともあるんですが、一つだけ」

「何ですか?」

「お名前教えてくれませんか」

「嫌です。恥ずかしいので」

即答されてしまいローズは、立つ瀬も無い。

そして、そのままの笑顔で続ける。

「ローズちゃんが全部に答えを出して、私が満足して、そして気が向いたら教えてあげる、というのでどうです?」

「………というか、会いに行くには、どうすればいいんですか?」

「巡り合わせ、運に任せましょう」

いけしゃあしゃあと言うその金髪の女性にローズは、苦笑いを浮かべるとそのままホーリーボトルを浴びて部屋から出て行った。

それを見届けると女性は、大きくため息をついて床に腰を下ろす。

「やれやれ、本当に面倒くさいこと押し付けてくれたものです」

そう言って開く女性のGHSには、事の顛末とそれに伴うフォローと刀を持ってくることの指示が書かれていたメールがあった。

差出人は、エラリィ。

「…………はぁ……全く、女の子泣かしたならそれのフォローぐらい自分でして欲しいものです」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女性と別れてローズは、音のする方に走っていた。

足を進めるたびに轟音が近づく。

そして、最も音が大きい建物にたどり着いた。

たどり着いた時、また轟音が鳴り響く。

音は、真上から聞こえる。

「ここの、屋上?」

階段を登っていたら間に合うか分からない。

そんなローズに一つの案が浮かび上がる。

(こりゃあ、ホームズのことの無茶だとか言えないわね……)

ローズは、腰の二刀を引き抜き目の前でばつ印を作りだす。

「登れ、トラクタービーム!」

ローズの身体が屋上を目指して上がっていく。

ローズは、上がりながらもう一つ詠唱を始める。

「飛べ、アリーヴェデルチ!!」

途中まで上がったところから更に風の陣が現れローズを勢いよく、上空に飛ばした。

空中に放たれたローズの瞳には屋上でホームズに襲いかかろうとしている雷を纏った人型が、飛び込んできた。

ローズは、一つに括られた髪をなびかせ、そのまま宙返りをするとそのまま人型、ヴォルトを二刀で切りつけた。

両肩から袈裟懸けにボルトは、切り裂かれた。

ホームズ達は、突然現れたローズにポカンとしている。

「えっ?そんな、どうして?」

「話せば長いわ」

ローズは、そういうと自身に敵意を向けるヴォルトに目を向ける。

「ローズ、そいつはとんでもない速さで動く、だから……」

そう言った瞬間ヴォルトの姿が消えた。

そして、ローズの背後に現れる。

だが、それよりも早く、ローズのリリアル・オーブが輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

かつて輝けなかったリリアル・オーブはローズの思いに応えるように燦然と輝き、彼女を包み込む。

 

 

 

 

 

 

 

「女の覚悟を見せてやる!!」

 

 

 

ローズは、刀を鞘に収め、マナを込める。

「技!」

すると、コンマ一秒時が止まった。

「体!」

その隙にローズは、前から使っていた刀を抜刀する。

刀が鞘を走る甲高い音が響く。

それを時の止まった中で聞けるのは、ローズだけだ。

白銀の刃は、ヴォルトを切り裂く。

切り裂いた刀は、宙を舞う。

刀がくるくると回っている時に切り裂かれたヴォルトが動き出し、ローズの背後に回ろうとする。

ローズは、それを睨みつけながらもう一刀に手をかける。

「心!!」

ローズは、そう言って先ほど貰ったばかりの刀を引き抜く。

刀は、ヴォルトが移動するより速くヴォルトを捉えた。

「やっと揃った、心技体!」

ローズは、飛び上がって宙にある刀を掴む。

「とくと味わえ私の全力……」

二つの刀をローズは、高々と振りかぶる。

ローズの二刀にマナが収束していく。

「崩襲剣・極!!」

二刀は、ヴォルトに叩きつけられた。

辺りに衝撃が走り屋上には、ひびが広がっていく。

砂煙が舞い上がり何も見えなくなる。

しばらくして、それが晴れるとそこには、凛として立ちながら風に髪をたなびかせるローズの姿があった。

「ローズ………」

ホームズの声にローズは、振り返りながら二つの刀を鞘に収める。

「どんなもんよ!」

無い胸を張るローズを見て、ホームズはくすりと笑う。

「大したもんだよ、君は」

 

 

 

 

 





長かったな…………本当に……


さてさて、お次は第三章「出会い」です。


タイトルの通り様々な出会いの章です。
アルヴィン、エリーゼ、ローエン、マーロウ、そして最後に(笑)今回活躍してくれたローズです!!
まあ、前の二人は殺し合いをした面々なので、初めて出会った訳じゃないですけど………。
頭の中で巣食っていたヒロイン、ローズが出せたので、これも中々思い入れのある章です。


さてお次は?


てなわけで、ではまた二百七話で( ´ ▽ ` )ノ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。