1人と1匹   作:takoyaki

200 / 242
百九十九話です。



やっと、裏ダンジョンをクリアしました。なんか完全にやりきってしまいました………(トロフィー集めは諦めてます)
物語は、終わってくれないと嫌ですけど、終わってしまうとキャラクターとのお別れが凄く寂しいです。
特にゲームの方が強いです。そして、中でもテイルズは更にそれが強いので、クリアしてしまうといつも寂しい気分になってしまいます……



そんな寂しさを胸に行くぜ百九十九話( ´ ▽ ` )ノ



窮地の仲

「や、やっと着いた………」

「お疲れ、ホームズ」

レイアの労いをホームズは、弱々しく笑って返す。

目的地に着くと一行は、急いで馬車から降りると研究所に乗り込んだ。

「お前、酔わなかったな」

ヨルの言葉にホームズは、青白いままの顔を向ける。

「まあ、振り落とされないように必死だったからねぇ……」

他にやることがあってそれどころではなかったのだ。

そんななかジュードが、落ちているものを拾う。

「これ、黒匣(ジン)の外装だ」

「中身は?」

ホームズの質問にジュードは、首を横に振る。

「いや、それより、それ!」

レイアが指さした荷物には、斜めに切り込みが入っており中身が外から見える。

「………なんだい?これ?」

そう言ってちらりとヨルをちらりと見る。

ヨルも首を傾げる。

「さてな」

そんな彼らに構わずローエンは、荷の中身を考える。

「恐らく黒匣(ジン)でしょう」

黒匣(ジン)?」

ホームズは、首を傾げる。

そう言ってから積荷を見る。

「そっか、ここは研究所、黒匣(ジン)を作ってもいるってわけか………」

だが、そうなるとまた問題が出てくる。

「これやったのって、まさか………」

「まあ、あの王と大精霊だろうな」

ヨルの言葉にアルヴィンは、ぎゅっと拳を握る。

エリーゼは、それを見るとミラ達の方を向く。

「バランさんが心配です」

「そうだね。早く行こう」

ジュード達は扉に向かって歩く。

ホームズは、振り返って馬車の行者に向き直る。

「そうだ。誰かが乗せてくれと頼んだらその人を乗せて移動していいです」

そう言いつつミラ達に目線で尋ねるとミラ達も頷いて返す。

「……わかりました。みなさんもお気をつけて」

ホームズは、ひらひらと手を振って返事に変えた。

ローズは、少し後ろを歩きながら落ちている黒匣(ジン)の外装を手に取る。

黒く、そして、少しだけ重いそれは手にぴったりと収まった。

ローズが今まで見てきた黒匣(ジン)は、人の命を奪い続けていた。

だが、ここに来て黒匣(ジン)に救われた人もいた。

どちらかが誤りというわけではない。

きっとどちらも正解なのだろう。

ただ、そんな感傷とは別にローズには、先ほどから気になっていることがある。

 

 

 

 

 

「どこかで、見たことがあるのよね………これと似たの」

 

 

 

 

 

だが、肝心のどこで見たかをローズは、思い出せていない。

(忘れちゃったか…………随分小さかったものね……)

ローズは、ため息を吐く。

どんなに小さなことでも思い出して伝えたい。

自分が殺されかけたというのにそれでもローズを守ろうとするホームズ。

そんな中にいれば何としても役に立ちたいと思ってしまうのが、人情だ。

 

 

 

 

 

そこに正解、不正解は、存在しない。

 

 

 

 

 

ローズは、いつか思い出す時のきっかけになればと懐にしまった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「暗いわね……」

ローズは、そう言いながら辺りを見回す。

明かりは一つとしてない。

明かりが灯るであろう道具は全て沈黙している。

見えないわけではないが、この薄暗い中を歩くのは大変だ。

「そう?結構見えるよ。君、鍛え方が足りないんじゃない?」

鍛え方が足りないという言葉にローズの眉がぴくりと動く。

ホームズは、構わずそう言いながら歩く。

「いや、僕らも見えづらいよ」

そんなホームズにジュードが、言う。

ホームズは、驚いたようにジュードを見る。

すると、他の面子も頷いていた。

「えーっと………」

ホームズが、状況を掴めず首を傾げているとヨルがフードからひょっこりと顔を出す。

「説明してやろうか?」

「お願い」

ヨルは、フードから出てホームズの肩に乗る。

「俺の視力を移した時に夜目が効くようになったんだよ」

ヨルはそう言って自分の目を尻尾で示す。

ヨルの目は、猫そのものだ。

ジュードは、ポンと手を叩く。

「そうか。猫は暗いところでも見えるもんね」

「というか、お前、世ノ精途(ウルスカーラ)で気づかなかったのか?」

明かされたホームズの能力に当の本人は、不満げだ。

「なんか、新能力にしては大分地味なんだけど………もっと、こう相手の動きが先読み出来るとか、幻覚を見せるとか、相手の視界を支配するとかそう言うのないのかい?」

「欲しかったら、寿命を九十八年払え」

「手に入れた瞬間死ぬんだけど」

地味にリアルな数字にホームズは、頬を引きつらせる。

ヨルは、そんなホームズに呆れたようにため息を吐く。

「視力戻っただけで、よしとしておけ」

ヨルの言葉にホームズは、思案顔だ。

そして、ポンと手を叩く。

「もしかして、非常識・改が出来るようになったのって、これが原因かい?」

「今更だな………」

ヨルは呆れている。

もう訂正するつもりもないようだ。

改めて発覚するなんとも微妙な特殊能力にホームズは、ため息を吐く。

「もっとかっこいいのが良かったなぁ……」

「まあまあ」

気落ちするホームズの肩をレイアがポンと叩く。

そして話題を変えるようにレイアは、辺りを見回す。

「それにしても何にもないように見えるけど、ホームズどうなの?」

「うん。実際何もないね。何かあって欲しいのかい?」

一行は遂に曲がり角に差し掛かっていた。

ホームズの言葉にレイアは、首を横に振る。

「いや、そうじゃなくてさ。オルダ宮に入った時はいろんな仕掛けがあったじゃん。だから、ここはそんなことないのかなぁって………」

「まあ、ここはオルダ宮じゃないし大丈夫だろう?」

ホームズののんびりとした言葉にヨルは、ため息を吐く。

「そう言うのをな」

曲がり角を曲がった先には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふらぐというんだ」

 

 

 

 

 

 

 

エレンピオスの空中戦艦で見た機械がずらりと並んでいた。

緑色に光る機械の光を見ればホームズなど頼らなくても危機的状況なのが一目瞭然だった。

ホームズは、構える。

「やるしかないねぇ……」

「自爆装置がないといいな」

子猫バージョンのヨルの言葉にホームズは、固まる。

この狭い所で爆発などされたらたまったものではない。

「………心を込めれば通じるよね」

「奴らに心があればな」

ヨルの無情な言葉と共に機械は、銃口を体から取り出す。

冷や汗が落ちる。

ローエンは、頷く。

「手は一つしかなさそうですね」

「そう……ですね」

「ははは………ハァ……」

レイアのため息と共にローズは、頬を引きつらせる。

「つまり………」

ジュードの言葉と共に一行は、回れ右をする。

 

 

 

 

 

「戦力的撤退!!」

そして、そのまま全速力で走り出した。

当然のように機械が追いかける。

「どうしておれのふらぐは、こんなのばっかりなんだー!!もっときゃっきゃうふふなふらぐがあったっていいじゃないか!!」

「頭の悪いこと言ってないでどうにかしろ、阿呆」

「んなこと言ったって壊すことも出来ないし、逃げるしかないだろう!!」

「もうヤダこの厄病神!!」

「ふらぐ建てんのに協力した君が何言ってるんだい!?」

ぎゃあぎゃあ騒ぎながら来た道を逆走一行。

ホームズは、迫り来る機械を睨む。

「アルヴィン!あいつらなんで薄暗い中あんなに迷いなくおれたちを追ってこれるんだい!?」

アルヴィンは、走りながら指をさす。

「あの緑の光。あれが多分暗視スコープの役割を果たしてんだろ」

「あんしすこーぷ?」

「暗い所でも明るいところのように見える眼鏡みたいなもんだ」

ホームズは、アルヴィンの言葉を反芻する。

それから一つの可能性に辿り着く。

(ものは試しだ!)

「ローズ!!詠唱の短い光属性の精霊術……なんだっけ?あの光の球で、なんか弾けるやつ」

「フォトン?」

「そうそれ!ダメージなくていいから一瞬で光らせておくれ!!いいかい?一瞬で光らせるんだよ?弱い光の球なんて間違ってもだすんじゃあないよ」

「注文がくどい」

ローズは、そう言うと刀を構えず手をかざす。

「お願いします。光球、現れてください」

丁寧にそして静かに語りかけるローズ。

「フォトン!」

その瞬間迫り来る機械を光が包んだ。

機械たちから緑の光が消え、動きが止まった。

「今のうち!!」

言うが早いかホームズ達は、そのまま近くの部屋に飛び込んだ。

全員入ったのを確認するとホームズは、直ぐに鍵をかけた。

肩で息をしながらホームズは、扉を殴る。

「くそ!これじゃあ、バランさんを探すどころじゃあないゼ!どうすればいいんだい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、バランか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

突然背後からした声にホームズ達は思わず振り返る。

 

 

 

 

 

 

するとそこには、拳銃を構えた男が佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

白衣に身を包み黒縁眼鏡をかけた黒髪短髪の男。

「もう後数秒その名前が出てくるのが遅かったら、僕はこの引き金を引いていた」

男は、そう言いつつ拳銃をおろそうとしない。

まだ警戒は、解いていないようだ。

「さて、質問しよう」

銃口は、ホームズにピタリと合ったいる。

「お前達は何者だ?バランと一体どういう関係だ?外で起こっていることはなんだ?」

男は眼鏡を直す。

「因みに嘘を言っていると僕が判断したら、問答無用でこの引き金を引く」

その殺気に思わずローズは、一歩下がる。

だが、ホームズは対照的に鼻で笑う。

「嘘か本当かどうやって判断するつもりだい?」

「技師にかかれば、お前らの嘘を見抜くぐらいわけないさ」

「?」

「人は嘘をつくとき、無意識にやってしまうことがいくつもある。それを少しでも行ったらお前らを僕は、嘘つきと決定する」

ホームズは、頬を引きつらせる。

「自信満々じゃあないか。己の知識に随分と自信があるようで」

「当然。でなければ、研究など出来ない」

そういってホームズの目を睨みつける。

「自信を持って挑んで、そしてその自信を壊されて、研究なんてその繰り返し。何千の敗北と何万の失敗を繰り返して成功を目指す。それが、研究というものだ」

銃口は、ホームズに向いたままだ。

「そんな僕にちんけな嘘は通じない」

ホームズは、ため息を吐いた。

少しからかってやろうかと思ったが、やめた。

そもそもそんな時間がない。

「おれの名前は、ホームズ。ホームズ・ヴォルマーノ。バランさんとは………」

続きを言おうとした瞬間、男の手から銃が落ちた。

「あの………落ちましたけど?」

「いま、なんと言った?」

「あの………落ちましたけど?」

「違う。前だ」

「バランさんとは…………」

「違う。もっと前だ」

「ホームズ・ヴォルマーノ」

その言葉に男は、上を向く。

「母親と父親は誰だ?」

「ベイカーとルイーズ」

男は、ため息を吐く。

「あの………大丈夫です?」

「もういい」

男はそう言うと落とした拳銃をポケットにしまう。

男は椅子に腰を下ろす。

そんな男を見てホームズは、眉をひそめる。

「人に銃突きつけて、名前名乗らせて、自分は名乗らないつもりかい?」

ホームズの言葉に男はため息を吐く。

「そっくりだな………その物言い。どっち似でも面倒臭いが、その中でも最上級の方と瓜二つだ……」

男はもう何度目か分からないため息を吐く。

「名前、名乗らないと失礼だな」

そう言うと男は胸の前に手を置く。

「僕の名前は、エラリィ(丶丶丶丶)。お前の父親と同期でお前の母親とは知り合いだ」

ホームズのポンチョがズルっと肩からずれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇええええええええええっ!?」









エラリィさんの登場です。


外伝のメインメンバーですが、本編での活躍はいかに!?




では、また二百話で( ´ ▽ ` )ノ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。