1人と1匹   作:takoyaki

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百七十九話です



Amazonで買おうかな………
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てなわけで、どうぞ


千里の道も一歩ずつ

「やれやれ、ずいぶん淋しい景色だねぇ……」

ニアケリア霊山をホームズは、そう言いながら足を進める。

『ぶつくさ、言ってないで早く登れー!!』

「やだね」

先ほどから歩みの遅いホームズをティポを急かすが即座に断られた。

ホームズを先頭としているため、エリーゼ達も速さは変わらない。

「だったら、休憩をもう少し減らして欲しい……です」

「疲れる前にこまめに休まないと後で動けなくなるよ」

ピシャリと言われてしまいエリーゼは、ぐっと押し黙る。

そして、ローエンの方を見る。

「残念ながら、今回は珍しくホームズさんが正しいですよ」

「すげぇ、言い方が引っかかるんだけど」

「ホッホッホッホ」

からかうような笑顔にホームズは、頬を引きつらせる。

「にしても、レイアも急かしてくるかと思ったんだけれど……こう、『競争だー!!』みたいな?」

「ホームズがわたしのことどう思ってるかよく分かった」

レイアの半眼にホームズは、肩をすくめる。

レイアは、ため息を吐く。

「お母さんに何回か山に放り込まれたからね。何をしたらダメかぐらいわかるよ」

ジュードも隣で頷いてから、不思議そうにホームズを見る。

「それにしてもホームズも大分慣れてるよね、どうして?」

ジュードの言葉にホームズが今度はため息を吐く。

「あのねぇ、みんなお忘れかもしれないけど、おれ、行商人だゼ?山をいくつ越えたと思ってるんだい?」

呆れながら説明するホームズにジュードは、納得したようだ。

「ま、アオイ村に行く時も山だったしな」

ヨルの言葉にホームズは、うんうんと頷いている。

それからポツリと続ける。

「まあ、山に強くても船に弱いけどな」

「喧嘩売ってるなら買うよ」

ホームズとヨルは、睨み合う。

いつもの調子で言い合うヨルとホームズにジュードがため息を吐く。

「無駄な体力使うよ」

ジュードの言葉にホームズとヨルは、ピタリと口を閉じる。

しかし、ジュードの注意で黙ったにしては、目が険しい。

「………ホームズ?」

ジュードの言葉にホームズは、無言で曲がり角の先を指差す。

そこには、ミュゼと戦っているガイアスがいた。

二人の戦いは、ガイアスの方が押していた。

ミュゼは、苦しそうに浮き上がると空を睨みつける。

「私がこんなに苦しんでいるのに………どうして何も言ってくれないのよ!!ずっと!ずっと!ずっと!」

その取り乱した姿にガイアスは顔をしかめる。

「精霊のくせに、己のなすべきことも見出だせんのか」

「黙れ!!」

ミュゼは、そう言うと視線を空からガイアスに移す。

「マクスウェル様のところには、行かせない!それが今の私の全て!!」

そう言うと小さな精霊術の球体を次々と作り出し放っていく。

ガイアスは、それを身体を僅かにそらしてかわす。

「愚か……いや、哀れだな」

「─────っ!!」

ガイアスのその抉るような言葉にミュゼは、頭を掻き毟るとそのまま空へと消えていった。

ガイアスは、それを追って消えていった。

それを見届けるとジュード達は岩陰から出る。

「やれやれ。以前とは、別人のようだね、彼女」

『別人じゃなくて、別精霊ー!』

ホームズの言葉にティポの訂正が入る。

「それもそうだね」

ティポの言葉にうんうんと頷いている。

「原因の一端が、何を言っているだか」

ヨルは、呆れたように返す。

ホームズに二回も負けたと言うのも今のミュゼの状態に拍車をかけているのは、事実だ。

「見下して挑んでくる方が悪いんだよ」

ヨルの言葉にホームズは、淡白に返すと俯いているジュードを覗き込む。

「どうしたんだい、随分浮かない顔だね?」

ホームズの質問にジュードは、少し迷った後ゆっくりと口を開く。

「……ミュゼはさ、誰かに言われたことを必死に守ろうとしているように見えるんだ……」

黙って聞いている面々にジュードは、言葉を続ける。

「前の僕みたいに」

ホームズは、腕を組んで黙って聞いている。

「もちろん、だからって許せるわけじゃないよ、それでもさ………」

「相手のことを考えちゃうんだよね。ジュードらしいね」

レイアは、呆れたように笑う。

それから直ぐに目を険しくする。

「それでも」

「うん。決着はつける……ううん、つけなきゃいけないんだ」

力強く頷くジュードを見てホームズは、組んだ腕を解く。

「きっと、向こうもその気だろうね」

「えぇ。というより、ミュゼさんは決着程度で済ますつもりはなさそうですが」

ローエンは、そう言いながらホームズを見る。

ホームズは、肩をすくめる。

「別に構わないさ。女の子に嫌われるなんていつものことさ」

ニヤリと言うホームズにローエンは面白そうに笑っている。

「こんなにこの言葉が、頼もしいと思える日が来るとは思いませんでした」

「だろう?」

ホームズは、そう言うと少し考え込む。

「そういえば、あの子を見てないねぇ………」

ホームズの口から出た「あの子」という言葉にレイアは、顔を俯かせる。

あの鬼気迫るローズを見ているレイアは、胸が締め付けられるのだ。

「てっきり、エレンピオス人を襲いまくってるミュゼと一緒にいると思ったんだけど………」

「もう、とっくに殺されてたりしてな」

どうでも良さそうに言うヨルをホームズは、睨みつける。

「あまりくだらないこと言うと怒るよ」

「怖い怖い」

睨みつけるホームズの視線を涼しい顔してかわすとヨルは、ニヤリと底意地の悪い笑みを浮かべる。

そんな彼らのやり取りを見てレイアは、ぎゅっと手を握りしめる。

「ホームズは、さ、……もう一度会ってどうするつもりなの?」

レイアの質問にホームズは、頭を掻きながら考える。

「会ったら教えるよ」

ホームズは、そう言うとポンチョを翻す。

翻るポンチョから覗くホームズの手が震えているのをレイアは、見逃さなかった。

思い出すあの時のこと。

人の悪意ならいくらでも目の当たりにしてきた。

だが、掛け値なしの狂ったような憎悪を受けたのは初めてだった。

しかも最も受けたくない相手からだ。

心配そうなレイアにホームズは、少しだけぎこちなく笑う。

「………大丈夫。力も貰った、覚悟も出来てる」

ホームズは、小袋をぎゅっと握りしめる。

そう言ってジュード達に視線を向ける。

「…………さて、そろそろ行くかい?」

体調を確認するホームズにジュード達はこくりと頷く。

「よし、それじゃあ行こう。山頂まで後少しだ」

そう言うとホームズは、再びゆっくりとした足取りで歩き出した。

その歩みの速度にエリーゼは、半眼でホームズを睨みつける。

「………」

「不満げだな」

「別に」

突然エリーゼの肩に乗ったヨルに少しだけ目を丸くするとそう言った。

言葉とは裏腹に明らかに不満そうだ。

「どうせ、私に合わせてのこと……です」

エリーゼの言葉に今度はヨルが目を丸くする。

「ほう?気付いていたのか?」

エリーゼは、こくりと頷く。

ホームズの歩く速度は、エリーゼが疲れるか疲れないかのギリギリ速度なのだ。

「長い付き合いになりましたから」

エリーゼの半眼のまま大変不服そうに言った。

気遣いもありがたいが、それを全く説明しないホームズに呆れているようだ。

ヨルは、そんなエリーゼを面白そうに笑う。

「八つ当たりしていた奴から、そんな言葉を聞くなんてな………」

何を言っているのか直ぐにわかったエリーゼは、ヨルを睨みつける。

「本当にいい性格してますね」

エリーゼは、げんなりとした調子でため息を吐く。

そんな会話をしていると山頂にジュード達は辿り着いた。

山頂には、黒い靄のようなものが広がっている。

しかし、ホームズは先に進まない。

そして、顔を上げると立ち止まっているホームズが目に入る。

「ホームズ?」

首かしげるエリーゼ。

立ち止まっていたホームズは、くるりと振り返ってエリーゼの肩にいるヨルを見る。

「ヨル、君、気付いてただろう?」

「まあな」

ヨルは短くそう答えるとぴょんとホームズの肩に飛び乗る。

「ハァ………」

ホームズは、額を押さえる。

「なに?どうしたの?」

レイアは、ホームズの後ろから前へと歩みを進め不思議そうにその先へ目を向ける。

 

 

 

 

 

そこには、アグリアとプレザ、そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウソ…………」

 

 

 

 

 

アルヴィンとローズがいた。

 

 

 

 

 

 

ホームズは、彼らを見て苦笑いする。

 

 

 

 

 

 

「ははは………なにも今じゃなくても………」

 

 

 

 

揺れる声と震える手。

 

 

 

 

 

 

ホームズの覚悟が問われるのはこれからだ。

 

 

 

 

 

 







この章のタイトルは、再会。


また会いたい人、会いたくない人、それら全てをひっくるめて再会です。



本編では、別れていた期間が嘘のように皆揃い始めました。
ヒロインも久々に再登場です!!


企画もまだまだやってます!!
是非どうぞ



では、また百八十話です( ´ ▽ ` )ノ

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