1人と1匹   作:takoyaki

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百三十六話です



今年も高校の同級会があるそうです。



三カ月も前にこの日は無理だよと連絡を入れた日が同級会の日として提案されました………


来るなってか!行くなってか!


あぁそうかよ!仕事してやるよコンチクショー!


てなわけで、どうぞ




灯台下真っ暗

「通信機って言うんだ」

不思議そうな顔をしているローズから通信機を借りアルヴィンがスイッチを押す。

「味方と連絡を取るのに使うんだ」

 

 

【船内の侵入者を一名確保!至急応援頼む】

 

 

 

通信機から流れた声に一同は口をぽかんと開けている。

『すげー。声出てる』

「お前が言うな」

「君もね」

ヨルの突っ込みにホームズは、半眼で切り捨てる。

そんな面々に一同は頬をひきつらせる。

 

 

 

 

 

【くっ……貴様……にをする!離……俺を……れだと思っている!!】

スピーカーの音声は止まらず何処かで聞いたような声が聞こえてきた。

「これって………」

ホームズは、自分の頬が引きつるのを感じていた。

【くそー………また………いつに……負ける……か!?】

「ミラ?」

「知らん」

困ったようにいうホームズにミラは、ため息をつきながらそういう。

「イバル、助けに行かなくていいの?」

「すべてが終わった後でいい」

ホームズの時もそうだったようにまず優先すべきはなすべきことだ。

ミラがそういうと船に衝撃が走る。

「な、何?」

エリーゼがキョロキョロと辺りを見回す。

ミラは、悔しそうに俯く。

「また、精霊が大量に死んだ」

「クルスニクの槍を使ったってことか」

アルヴィンは、舌打ちをするように空を見上げる。

「急がないと!」

ジュードの言葉にミラは頷き、再び歩き出した。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「この先にクルスニクの槍があるんだよね」

「みたいね」

レイアの言葉にローズは、そう返す。

「槍に捕まった四大を助けなきゃ」

エリーゼが力強くそういうとティポがふよふよと浮かぶ。

『ミラの友達だもんねー』

ミラは、それを隣で聞きながらハッとした顔をする。

「そうか。四大なら私の抱える矛盾にも答えられるかもしれない」

ブツブツと小さく呟くミラにエリーゼは、不思議そうな顔をする。

「……ミラ?」

「!いや。なんでもない」

レイアは、両手を握りしめミラを見る。

「ミラ。ボーッとしてると置いてくからね」

ミラは、そんなレイアの物言いに目を丸くした後フッと笑う。

「言うな?」

そう言うとミラは、ニヤリと笑う。

「お前たちこそ遅れずについて来い」

「OK。やっぱりミラは、こうでなくちゃ!」

レイアは、うんうんと頷きながらそう言った。

「ふーん………」

ヨルは、それを見てニヤリと笑った。

「どうしたんだい?」

「いや。別に」

「うわぁ、隠し事。感じ悪い」

「お前にだけは、言われたくない」

和やかなミラ達の会話と違いギスギスした会話を続けるヨルとホームズにジュード達は頬をひきつらせる。

「あのさ、急ごうって言ったよね?」

「まあな。何せ……」

そう言ってアルヴィンは、銃弾を放つ。

放たれた銃弾は、宙を浮く黒匣(ジン)の機械にに命中した。

「敵さんがどんどん集まって来ちまうからな?」

「やれやれ」

ホームズは、その機械に回し蹴りを当てる。

そして、ジュードが追撃の拳を当て、敵の機械を砕く。

「ホームズ、無駄口叩いてないで行くよ」

「なんか、君も大分おれに対して遠慮がなくなってきたよね」

ホームズは、ジュードの言葉にため息を吐いて目の前の扉に手をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「うぉ!なんだい、これは?」

ホームズは、扉の先の光景に思わず息を飲む。

扉を抜けた先は、天井にシャンデリアがぶら下がっており一階から二階にかけた吹き抜けとなっていた。

およそ敵の本拠地としては、考えづらい豪華で煌びやかな内装だった。

「………綺麗……」

『お城みたーい!』

レイアとティポの言葉にローズは、不思議そうに首を傾げ、アルヴィンに尋ねる。

「ここ、本当に軍艦なの?どう見てもそうは見えないんだけれど」

「そりゃあな。このジルニトラは、二十年前、この海を旅した旅客船だからな」

アルヴィンは、そう言いつつ一階につながる階段とその先の扉を見つけた。

ホームズは、ポンと手を叩く。

「あぁ!そうか!わかった!」

「何が?」

レイアが首を傾げる。

「ジルニトラ!どこで見たのか、やっと思い出した!名簿だ!」

「名簿?」

ホームズは、カバンを漁ろうと思ったが、置いてきた事を思い出すと諦めて口を開く。

「母さんに渡されたんだよ、エレンピオスへの手かがりとして、『ジルニトラ』の乗客名簿を」

ホームズは、そう言ってぼんやりと辺りを見回す。

「そっか、これがあの二十年前にリーゼ・マクシアにやってきた船なのか………」

ホームズは、クルリと身体をアルヴィンに向ける。

「それで?」

「何が?」

「おれは、この船がとある実験に巻き込まれてこっちに来たって聞いているんだけれど、そのとある実験ってなんだい?」

ホームズは、彼らと合流する前にディラックから大体の話の概要を聞いている。

しかし、細かいところまでは知らないのだ。

「クルスニクの槍の実験、オリジナルの方のな」

ホームズは、首を傾げる。

「オリジナル?」

「そ。今ある奴は、その二十年前のクルスニクの槍を真似して作られたんだ」

「にしては、色々と効力がえげつないんだけど………最初からあぁだったのかい?」

ホームズの問いかけにアルヴィンは、話している最中に見つけた階段へと歩みを進め、一行はそれについていく。

「まぁ、こっちで色々開発したんだろ」

アルヴィンの言葉にジュードは、うつむく。

「それってやっぱり、精霊を欲しかったから?」

「…………エレンピオスは、黒匣(ジン)とともに発達した世界だ。

黒匣(ジン)と精霊は、文明の要なんだよ」

レイアは、アルヴィンの言葉を聞きホームズに尋ねるように目を向ける。

ホームズは肩をすくめる。

「おれも初耳。黒匣(ジン)の溢れた世界とは聞いていたけれど、それに支えられてたなんて聞いてない」

「どうして止められないんですか?」

エレンピオスと黒匣(ジン)の話を聞き、エリーゼがアルヴィンに尋ねる。

『きっと、アルヴィンみたいに野蛮な奴らばっかなんだろー!』

ティポの言葉付きで。

しかし、そんなティポの言葉にアルヴィンは、面白そうに笑う。

「俺、野蛮か?」

「胡散臭いだけだ。ホームズといい勝負だ」

ヨルは、馬鹿にしたように言う。

ヨルの言葉にホームズは、ムッとした顔をする。

「理由なら、そこにいるだろ」

アルヴィンは、そう言ってホームズを指差す。

霊力野(ゲート)がないのは、何もホームズだけじゃない。

それは、エレンピオス人共通の特徴なんだ」

アルヴィンは、再び歩み進め、一階に下りる。

「だから、精霊術を使えない。マナを操るなんてマネ、俺たちには出来ないんだ」

ミラはようやく納得がいったようだ。

「それで、黒匣(ジン)を使っていたのか?」

「そゆこと」

アルヴィンは、右手を軽く動かしそう言う。

アルヴィンの説明が終わる頃には、全員一階に辿り着いた。

ローズは、腕を組む。

「なんか、色々事情があるのね」

しみじみと言うローズにアルヴィンは、意地の悪い笑みを浮かべる。

「おや?同情した?」

「まさか。私、そこまで人間出来てないわよ」

家族を皆殺しにしたアルクノアに同情などしない。

裏の事情を知っているアルヴィンは、何も言い返す事なく、少しだけホームズに視線を向ける。

ホームズは、それに気づかないフリをして一階の扉を指差す。

「アルヴィン、これなんだい?」

ホームズの指差す扉には、赤い光の線のようなものが張り巡らされていた。

「封鎖線だな。また面倒なものを……」

アルヴィンは、近寄ってそれを確かめる。

『ホームズ。試しに通ってみてよー』

「よせ。身体弾け飛ぶぞ」

アルヴィンの忠告を聞くとホームズは、無言でティポを睨みつける。

ティポは、気まずそうに視線をそらしてふよふよ宙を浮く。

「それで、こいつはどうすればいいんだ?」

ヨルの言葉に皆が頭を抱えているとミラの持っている通信機からアルクノアの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

【報告!中央部に封鎖線展開完了!

しかし、他区画の封鎖線が起動しません!】

【何!発動機の不調か!?】

【いえ。発動機は、二つとも起動中。他の装置の故障と思われます】

【中央の封鎖線を消すわけにはいかない。何としても左右の発動機を死守しろ!】

【了解!】

 

 

 

 

 

 

 

そこで通信は、切れた。

「………ナイスタイミング」

ホームズは、怪訝そうに通信機を見る。

「………これさ、通信機全部に音声が飛んでくの?なんか、こう通信する相手を指定する事とかできないのかい?」

情報ダダ漏れの通信機を前にホームズは、思わずそう呟いた。

「基本は無理だな。それに伝言ゲームやるよりは、効率がいいだろ?」

「まぁ、確かに」

ホームズは、ふむと頷き、封鎖線をもう一度見る。

「にしても、元客船になんて物騒なものを仕掛けているんだか………」

ホームズは、ため息を吐く。

そんなホームズを見て、エリーゼが尋ねる。

「アルヴィンは、この船に乗ってたんですか?」

「ん?まあな。母さんとの旅行だった」

旅行とは楽しいものだ。本来なら。

だが、結果は悲惨なものだったのだ。

アルヴィンは、いつものように背中越しに言葉を告げるためどんな表情をしているか、分からない。

一行は、そんな話をしながら別の扉を目指す。

「ところで、お前の両親はやはり商売関係か?」

アルヴィンの質問にホームズは、頷く。

「多分ね。どこに行こうとしてたか知らないけどねぇ………」

ホームズは、顎に手を当てながらそう呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う。新婚旅行だ」

 

 

 

 

 

そんなホームズの言葉をヨルがバッサリ切り捨てる。

「………………は?」

「いや、なんでホームズが驚いてるの……」

ジュードの言葉にホームズは、首を傾げる。

「え?てっきりそうかと……」

「阿呆。あいつが、一言でもそうだと言ったか?」

ホームズは、ぐるぐると頭を回して考える。

「言ってないね………」

この十八年間ずっとそうだと思っていただけにホームズは、その突然の展開についていけていなかった。

「そっか………そうだよね。あの人だって、新婚旅行ぐらいしたよね……」

「実の母親をなんだと思っているんだ、お前は」

アルヴィンは、呆れながらそう言うと封鎖線の貼られていない扉を開ける。

そこは薄暗い回路となっていた。

エリーゼがそんな中、ホームズに尋ねる。

「そう言えば、ホームズの両親の馴れ初めってどんなだったんですか?」

「え?知らない」

ノータイムで返したホームズに一同は、がくりと肩を落とす。

「なんで?」

レイアの言葉にホームズは、言いづらそうに頬をかく。

「いや、さ、そのおれの母さん父さんの墓参りに行くたびに泣いてたから、聞きづらかったんだよね……」

その言葉に思わずレイア達は閉口した。

そうホームズの父親は母親より先に死んでいる。

それが辛くなかったわけないのだ。

墓参りに行けばその人のことを思い出し、涙が溢れていた。

出来る限りホームズの両親の話に触れないよう気をつけていたのにうっかり触れてしまい、レイアは後悔した。

その重い空気を感じたホームズは、慌てて口を開く。

「いや、まあ気にしないで!そのいつもはとても元気な人だったから………」

「俺は知ってるぞ」

ホームズの言い訳を遮るようにヨルが口を開いた。

ホームズは、開いた口がふさがらない。

「…………なんで君が知ってるんだい?」

「あいつ、酔う度に同じ話をしてきたからな。いい加減覚えた」

何てことないふうにいうヨルにホームズは、少し不満そうだ。

「……おれには、話さなかったのに」

「聞かれなかったから言わなかったんだよ。

父親を知らないお前に話しても辛いだけだと思ったんだよ」

ヨルはつまらなそうに言った。

父親の顔を知らないホームズにそれを語るのは、母親からしてみればやり辛い。

父親がいない、という事で寂しい思いをしているかもしれない息子に聞かれてもいない父の話をする事が、ルイーズには出来なかったのだ。

ホームズは、それを聞くと目を丸くし、それから寂しそうに笑う。

「そっか………聞いてあげればよかったかな………」

もうそれが叶わないことをレイアは、知っている。

ホームズは、そんなレイアの視線に気づくと慌てたようにヨルに尋ねる。

「それで、おれの母さんと父さんの馴れ初めってどんなだったんだい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確か仕事場の自己紹介だったと言ってたぞ、軍だと言ってた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ストップ」

ホームズは、頭痛を堪えるように眉間を揉む。

「ごめんもう一度、言ってくれる?」

「自己紹介だったとさ」

「もう少し後」

「仕事場の」

「後って言ったよね?」

「軍の」

「はいそこ」

ホームズは、振り返ってレイアを見るがレイアもコクリと頷いている。

どうやら聞き間違いではないようだ。

「おれの母さんと父さん、軍にいたの?」

「軍と言っても憲兵みたいなものみたいだったらしいぞ。普段は、町の巡回。不審者確保みたいなことをやっていたらしい。

勿論有事の際は、言わずもがな、な訳だが」

キャパを超えかけているホームズは、必死にヨルの話についていこうとする。

まぁ、確かに、一介の行商人があそこまで強いというのは、確かにおかしい。

これで納得は出来る。

無理やりそう頷いていると、明るくなったホームズに釣られてレイアが興味津々という風に尋ねる。

「それで、どんな関係だったの?同期?同僚?それとも先輩後輩?」

ぐいと詰め寄るレイアにたじろぎながら、ヨルは首を横に振る。

 

 

 

 

 

 

 

「確か、教官と訓練生だったらしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予想を突く返しに一同の空気は凍りついた。

「ホームズ。話についていけてないんだけど………」

「耐えてアルヴィン。おれも一緒だから」

ついていけない男性陣を他所にレイアとエリーゼは更に盛り上がる。

「先生と生徒っていうほど離れてない、でも教える立場と教えられる立場というのは、何かこう……」

『ロマンチックー!』

「………どこが?」

ホームズは、ローエンの方を見るがローエンも首を横に振るばかりだ。

「ふむ、たが、ホームズの母が訓練生というのは、苦労しそうだな」

「だね。ホームズのお父さん苦労したんだろうな………」

レイアとミラは、言いたい放題言っているがホームズもコクリと頷く。

「あの人を教えるなんて想像もしたくないよ」

うんうんと納得している面々を見てジュードは、頬が引きつる。

「まぁ、苦労しそうですね」

仮にも軍に勤めていたローエンは、そう頷く。

そんな一行の反応を無視してヨルは、散々聞かされた自己紹介で交わされた言葉を思い出す。

「確か、最初に教官、その次に訓練生の順番で自己紹介だったらしい」

ヨルは、そう言って言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『こんにちは。これからこの班の指導を担当することになった教官の(・・・)ルイーズ・ヴォルマーノです。よろしく』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『そっち((ですか))!?』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一行の全力の突っ込みがジルニトラに響き渡った。

この後、アルクノアを呼び寄せてしまい一行は少しだけ後悔した。

 

 

 

 









ホームズ母の方が教官です(笑)



ホームズ父は、不幸だったという事で



ではまた百三十七話で( ´ ▽ ` )ノ

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