1人と1匹   作:takoyaki

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百五話です

GWらしく、外出の話を。
映画とかどうですか?
自分は、地雷覚悟で映画を見た事が何回かあります。
意外に地雷じゃないか、それ以上の出来の良さに驚いた事があります。
まあ、見事踏み抜いたのもありますが……



てなわけで、どうぞ



説明してはならない

「出し惜しみなんてしない!」

ホームズは、そう言って足を炎で包む。

「紅蓮脚!!」

炎に包まれた脚がジャオを襲う。

槌を地面に起き、柄の部分を盾にする。

ホームズは、防がれたのを悟ると、直ぐに一歩引き、右足を軸に置き換える。

そして、

「獅子戦哮!!」

闘気の獅子がジャオに襲い掛かる。

しかしジャオは、防がない。

代わりに槌を持っていない手を獅子に向ける。

「戦迅狼破!!」

狼の闘気が現れ、獅子の闘気を食い殺す。

そして、獅子を食い殺すと今度は、ホームズに襲いかかった。

慌てて盾で防ぐが、それでも吹き飛ばされる。

「狼に食い殺されるとは、大した獅子じゃのう」

そう言うと更に拳を握る。

「金剛拳!!」

全体重を乗せたジャオの一撃をホームズは、宙にいながらもろに食らってしまった。

「──────っ!!」

湧き上がる吐き気に堪らず吐き出す。

危うく意識が飛びそうになるが、口を噛んで血を流し、意識を引き止める。

「こんのっ!!」

ホームズは、放たれた拳の手首を無理矢理掴むとそのまま、ホームズは脇に向かって爪先を蹴り上げる。

(急所狙い!!)

「だがのう……」

ジャオは、そう言うと槌をから手を離し、拳を固める。

そして、ホームズの脚が届く前にもう一発こんどは、顎を殴りつける。

「ぐっ」

ホームズは、そのままごろごろと吹き飛ばされた。

地面に投げ出されたホームズは、何とか起き上がろうとするが、膝に力が入らない。

「なん……で?」

「顎への衝撃が膝にきておるんじゃろ」

そして槌を構える。

「ジャリ!!」

「『ファースト・エイド』」

ヨルの呼びかけにエリーゼの精霊術が発動し、ホームズのダメージを和らげる。

その瞬間、ホームズの顎にもらったダメージも消えた。

ジャオは、その一連流れを見て一瞬硬直した。

ホームズは、そのまま逆立ちをして、両足でジャオの頭を挟む。

そして、そのまま地面に向かって叩き落した。

「ぬおっ!」

「フランケンシュナイダー、お前の母親の得意技だったな」

「いや、まだまだ母さんには及ばないねぇ、何せ」

ジャオに目を向ける。

ジャオは、響く頭を抑えながら何とか立ち上がった。

「仕留めてないからねぇ……」

ホームズは、頬が引きつるのを感じる。

完全に不意をついての一撃だ。

だというのに、まだ倒れない。

(これが、四象刃(フォーブ)、不動のジャオって訳かい……)

ホームズは、もう一度身構える。

そんなホームズを見て、ジャオは考え込む。

(全く、次から次へと……驚かせてくれる……)

 

 

 

 

 

 

 

『目立つものを引けひらかして、それに注意を取られた瞬間、別の止め一撃が来る』

 

 

 

 

 

 

ウィンガルの言葉が脳裏をよぎる。

 

 

 

 

そして、更に考える。

今一番目立っていたのは?

包帯がとれ、ジャオいっぱい食わせ、投げ飛ばした。

(ホームズじゃな……)

逆に目立っていないのは、エリーゼだ。

(あそこで、回復の精霊術を唱えられなかったら気づかんかった……)

ホームズは、見事にジャオの注意を移動させていた。

案の定、視線を移せば、エリーゼが目立たないながら精霊術の詠唱を始めている。

なら、もう時間との戦いだ。

ジャオは、痛む頭を抱え、駆け出す。

そして、まずは、ホームズに向かって槌を振るう。

突然の突進に防ぐのは、無理と判断すると、地面を強く踏み込んだ。

「守護氷槍陣!!」

氷の槍が複数出現し、槌の威力を若干削ぐ。

削げなかった威力は、そのままホームズ襲い、退かされる。

ホームズは、ジャオの狙いに気づいたようだが、足が思うように動かず倒れる。

障害物は、消えた。

ジャオは、そのままエリーゼに辿り着くと、拳を固め殴る。

エリーゼは、慌てて詠唱を止めるとガードをする。

けれども、所詮子供。

「きゃっ!」

大きく後ろに吹き飛ばされた。

ジャオは、静かに近づく。

「今度は、お主が切り札だったんじゃな……」

そう言ってちらりとホームズを見る。

エリーゼは、杖を支えに立ち上がる。

「……あのファーストエイドがなければ、儂は気づかんかった」

そう言って何とか立っているエリーゼに目を向ける。

「皮肉な事じゃ。その優しさが、お主らを追い込むなんてのお………」

そう言って、槌を大きく振り上げる。

その瞬間、エリーゼは、ジャオに向かって杖を突きつける。

 

 

 

 

 

「勘違いしないでください。

私が、ホームズに優しくしたことなんてない……です」

 

 

 

 

 

エリーゼの不満気な顔とともに、ダンと地面を踏み込む音が響いた。

 

 

 

「守護方陣!!!」

 

 

 

 

巨大な光の陣が展開され、ジャオ、エリーゼを纏めて拘束する。

思わず舌打ちをして、エリーゼとホームズを睨む。

これは、壊せる。

その程度のものだ。それは実証済みでもある。

そう言って力を込める。

しかし、どんなに力を込めても全く壊せない。

「なに!?」

驚くが直ぐに分かった。

最初のあれは、大して力を込めていなかったのだ。

壊せると思わせる為に。

壊すことが出来ない陣に囚われたジャオは、身動きが取れない。

しかし、それはエリーゼも同じ……

 

 

 

 

 

「深淵の盟約を果たせ!」

 

 

 

はずだった。

 

 

エリーゼは、杖を突きつけた姿勢のまま、詠唱を始めていた。

「なっ?!」

「馬鹿だねぇ………クィーンに自分から近づくなんて」

 

 

 

 

─────『エリーゼが動けようと動けまいと関係ないでしょう?』─────

 

 

 

 

 

 

 

 

──────『精霊術士(エリーゼ)が動けようと動けまいと関係ないでしょう?』──────

 

 

 

 

ジャオは、ようやくホームズの言いたいことが分かった。

詠唱中は、動けない。

勿論中断すれば動ける。

しかし、どうせ詠唱を中断する気のないエリーゼだ。

守護方陣で拘束されていようと、いまいと関係ない。

 

 

 

 

──────私が、ホームズに優しくしたことなんてない……です

──────

 

 

確かに全くもって優しくない。

 

 

自分の詠唱が終わるまで、四象刃(フォーブ)の一人を足止めさせているのだから。

(くそっ!アレだけ注意しておったのに……結局ホームズから、注意をそらしてしもうた……)

「『リベールイグニッション!!』」

 

 

 

後悔してももう遅い、エリーゼの精霊術は、至近距離でジャオに向かって放たれた。

「ぬおおおおお!!!」

ディバインストリークと似ているが、色が闇のような色だ。

何とか耐えているが、それも時間の問題だ。

遠のく意識を何とか保たせる中で気づく。

(陣が消えておる?)

何故、陣が消えているか?

答えは簡単、ホームズが解いたからだ。

ホームズは、守護方陣を解くと右足を下げる。

闘気纏う。そして、その後、炎が現れ、闘気と混ざり合う。

準備は、出来た。

後重要なのは、タイミングと度胸だけ。

迫り来る、ジャオに向かってホームズは、右足を大きく下げ、ジャオを後ろから蹴りつける。

「獅子戦哮・────」

蹴られた瞬間闘気が上がる。

(ほむら)!!」

焔を纏った闘気の獅子は、ジャオを後ろから食いに掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前からは精霊術、後ろからは獅子戦哮・焔。

二つの攻撃に挟まれたジャオは、なす術がない。

そのままジャオは、気を失って倒れた。

倒れたジャオを見下ろし、ホームズはニヤリと笑う。

「おれ達の勝ちです、ジャオさん」

そう言ってホームズは、エリーゼの方へ歩いて行った。

他の面子を見ても、全員勝っていた。

ホームズは、ため息を吐く。

「あー、疲れた」

「自分で立てた作戦……です」

エリーゼの指摘にホームズは、肩をすくめる。

ホームズとしては、腕を残り時間がある内に使うつもりだった。

しかし、エリーゼにクギを刺されたのだ。

絶対に止めろ、と。

自分も戦うのだから、と。

ホームズもそこまで言うなら、とこの作戦を立てたのだ。

結果エリーゼに重要な役目を任せる形になった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

『じゃあ、今言ったような感じで頼むよ』

『……………容赦のない作戦ですね。まぁ、私が言い出した事ですけど』

完全にエリーゼが決め手の作戦だった。

『出来るだろう?おれの友人なんだから』

『本当にエリーゼ大丈夫なんだろうなー!』

『100%とは、行かないけれど頑張るさ』

『………らしい返事ですね………』

エリーゼは、呆れ顔だ。

その言葉を聞くとホームズは、自慢げな顔で腕に支障のない程度にエリーゼの頬をつねる。

 

 

 

 

 

 

 

『君の友人を信じたまえ。君の友人は、やる時はやる男だよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

エリーゼは、その時の事を思い出し、静かに頬を撫でた。

あの、作戦を授ける時のホームズの顔はとても頼もしかった。

「普段から、そうしていれば、もう少し、違う……ですよね」

ホームズは、それを聞くと少し驚いたように目を見開く。

「およ?もしかして、ドキッとしちゃった?」

ホームズがヘラヘラとしながら言うとシラっとした視線を送る。

「ホームズなんかにドキッとしたら、病気です」

『ふせいみゃくー!!』

帰ってきた言葉は、無情だった。

ホームズは、心底傷ついた顔をする。

「ほんっと………優しくないよね、君」

「別にジャリに限った話じゃないだろ」

基本的にホームズに優しくしてくれる女性は、切ない程いない。

ヨルの言葉にホームズは、頬を引きつらせると直ぐに思い出しように片手を上げる。

「エリーゼ」

ホームズは、そう言って片手を上げた。

エリーゼは、一瞬止まるが包帯の取れた腕を見ると直ぐに思い直し、少しジャンプをしてホームズの手を叩くようにハイタッチをする。

「サンキュー。おかげで助かったよ」

「どういたしまして、です」

エリーゼは、ふふふと得意げに笑った。






《サーストンの三原則》
というのがあります、今回の連続投稿のタイトルの元ネタです。
これは、マジックをする上で守らなくてはならないことらしいです。(一説によればこれが有名なのは、日本だけなんて話もありますが……)

何処かの月下の奇術師が好きな方やマジック好きの方には馴染みの深いものですね。



まあ、今回も例のごとく、微妙に文字ってあるのですが……(順番とか省いたりとか)


正しくは、
・これから起きる事象を説明してはいけない
・繰り返してはいけない
・種明かしをしてはいけない

の三つです。
えぇ、例のごとくホームズは何も守っていません。
繰り返してるし、種明かしもしているし、まぁ、説明したかどうかは皆さんの裁量次第なのですが、個人的には破ってると思います。



長くなりました。ではまた、百六話で( ´ ▽ ` )ノ

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