またもやの接戦の末に抜け出した白望さんのお話ですー。
何時もはあんまり書かないようなお話になりました!
喜んで頂けたら幸いですー。
雪華というにはどっしりとしたぼた雪降り積もる中。暖房効いた家にて、更にこたつに入って完璧な暖を取っているそれこそ雪華のように可憐な少女が一人。
背もたれにもたれかかって天井を薄く見上げながら彼女、小瀬川白望は屋根から雪が落ちる音を聞きながらまどろんでいた。
一歩外に出たらとたんに凍えてしまうようなこんな寒い日には、誰も彼も動きたくないのが当たり前。そう固く信じ込んでいる白望は、怠惰な心地に任せている。
「テレビは……いいかな」
今にも寝入りそうな夢現。そういえば今頃はそこそこ愉快なテレビ番組がやっていたことを思い出すが、しかし白望はわざわざそのためにこたつから手を出すことすら嫌って動かない。
彼から貰った手袋をしっかりしていたというのに学校からの帰路にて冷えきった手は、しかしもうかじかんではいなかった。だが、ぽかぽかと気持ちよくなってきたこの手のひらを使うのすら、もう面倒。
というか、もう寝たい。ちゃんと学校にも行ったし部活だって最後までやり切った。もう休んだって誰も文句は言わないだろう。
そう思い、白望は目を瞑る。そして大きなおもちをテーブルに乗っけてぐだっとしたところ。
「失礼しますー……って、シロさん。こたつで寝ちゃ駄目でしょ! 風邪引いちゃいますよ……ほら、起きて下さい!」
「ん……京太郎……」
「半纏の下は制服ですか? 悪くしたらシワになっちゃいますよ?」
「ダル……」
どたばたと、買い物袋を携えながら白望が住んでいるアパートにやってきたのは、須賀京太郎。
彼の小言にすっかり目を覚ましてしまった彼女は、自分の格好を見直して少し悩んでから、そのまま気を抜いてぐうたらを続ける。
どうやら、制服がシワになる可能性と制服を脱ぐ面倒を量って、まあどうにかなるだろうと放ったようだ。これには、京太郎も苦笑する。
「はは、こういうのもシロさんらしいといえばその通りですけど、男の俺の目とか気にならないんですか?」
白望が脱ぎ捨てたコートをたたみながらそんなことを言う京太郎。
勿論、年頃の少女ではある白望も彼の目が気にならないことはないが、しかしやけに胸のあたりに向かうそれも彼女はまあいいやとしてしまう。
じろり、と冷蔵庫に食べ物をせっせと入れるために動く大柄な背中を白望は改めて認める。
百八十センチを越える長身を持つ京太郎は、しかし高校三年生の白望の二つ年下。
少年と青年のいいとこ取りをしたような、あどけなさと凛々しさを併せ持つ彼は白望とは遠めの親戚であり。そして。
僅かに口元を緩めてから、白望はそっと零した。
「彼氏の前で格好つける必要なんて……ないよ」
「そんなもんですか?」
「そう」
素直にも首を傾げる京太郎の前で、白望のカオリナイトの顔に紅が差す。言いきってみたが、しかし彼女も少し恥ずかしくなったようだった。
顔を隠すように、白望は口元までこたつの中へと潜りだす。そんな彼女の照れを面白がって、京太郎は微笑んで言葉をかける。
「俺は、シロさんの前では出来るだけ格好つけたいですけどね」
「どうして?」
「そりゃあ、シロさんみたいな美人が彼女でいてくれるんだから、頑張らなくちゃってくらい思いますよ」
言いながら牛乳にはちみつを混ぜてから、電子レンジにかける京太郎。
勝手知ったる彼女の家の中、彼にとっては何の気のない一言を置いただけ。
しかし、白望は大いにそれを気にした。湯気立つカップを二つ持ってこたつへとやって来た京太郎の腕に、彼女は手を置く。
「京太郎」
「どうしました……わ」
そして、白望はぐいと京太郎をその身に引き寄せた。突然のことだったが、彼がカップを何とか天板の上に安堵出来たのは幸いか。
いつものぐうたらしている彼女からは考えられないほどの力強さ。驚く京太郎に、しかし白望は何も語らない。
「シロ、さん?」
まつ毛の一本一本の長さが見て取れる距離。白望の透明度の高い美しさを間近で見つめながら、魅入られた京太郎はただ彼女を呼ぶしかなかった。
「それはダルいよ」
「え?」
そして、白望は心底ダルそうに、そう言う。やがて、耐えきれなくなった彼女は。
「わ、シロさん!」
それが当たり前のように、京太郎を抱きしめた。大きなおもちの感覚、そしてそれだけでなく想い人の体温の高さに驚く彼に、白望は言う。
「私は、京太郎が好きだよ……ありのままの、京太郎が好き。……それだけは、迷わない」
それは想いの篭った愛言葉。恋にさ迷い周囲を振り回して何人もの少女たちを傷つけた挙げ句に京太郎と結ばれた彼女の、本心だった。
暖房に温められたからというだけではない熱のこもった吐息が、京太郎の頬を撫で付ける。そして、恥ずかしげに目を伏せて、白望は言った。
「だから、私の前で、頑張らなくていいから……あ」
赤く染まった白磁の頬。そこに京太郎は知らずに手を当てていた。
こんなことまで言われて、男の子はどう思うだろう。最低でも京太郎は応えようと思った。どこまでも綺麗なこの人を絶対に傷つけないようにと、悲しいくらいに優しく。
彼は彼女の口に口を付けた。
「シロさん……」
「ダルいから……呼び捨てで、いい」
「シロ……」
「ん……」
そして、一、二度ついばむようなキスが終わり。少女は少年の前で目を閉じた。
可愛らしく尖らせた唇。その桃色はあまりに愛らしい。京太郎の心が今までになく燃え上がったその時。
ばん、と扉が開かれた。
「シロー、京太郎君ー、遊びに来たよー!」
「トヨネ、せめてノックをしてから入らないと駄目じゃないって……わわっ!」
「ん!」
「エイスリンってハート描くのすっごい早いんだね……あはは……ごめんね、二人共。お邪魔しちゃって……」
ぞろぞろと、扉から現れたのは、宮守女子校麻雀部のメンバー。彼女らは、ちょうど抱き合い今キスしようとしている彼彼女らをしっかりと目撃していた。
「いや、その……」
「はぁ……」
見られてしまった二人に負けずに顔を赤くする彼女らに、京太郎は慌てる。
そして、反して白望は冷静にため息一つ。
見られた。これで後でからかわれるか根掘り葉掘り聞かれるのは確定したと、彼女は思う。
しかし、そうならこのくらいで止めるのは勿体ないな、とも考えて。再び迷うことなく白望は京太郎を引き寄せる。
「後がダルいけど、いいや。ん……」
「んぅ!」
「おおっ!」
「わわっ、シロ、凄いよー」
彼女は迷いに迷った末に、マヨヒガにたどり着き、この上ない宝を得た。だからもう、彼に対して迷うことなんてありえない。
そして白望は大好きな皆の前で一番に好きな京太郎と、とても熱い口づけを交わすのだった。
次のカップリングは誰がいいでしょうか?
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京照
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京和
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京咲
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京モモ
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ヤンデレ