戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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第肆拾壱話

「それじゃあ転校生を紹介します。まぁ、みなさんもよく知っている子なんですけどね。では、シャルロットさんどうぞ」

 

 今日も転校生(笑)が来ました~。シャルル君がシャルロットちゃんに転性しただけなんだけど。

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

 服の中に隠していた濃い目の長ーい金髪を出して首本で縛ったいるくらいです。制服はまだ届いてないので男性用のまま……あ、でもさらしは付けてないみたい。女性特有の膨らみがあるのがわかる。どうやって隠してたんだろうってくらい大きいのが二つ。

 

「おかしいと思った。シャルル君美少年過ぎるんだもん。美少女なら納得。これからよろしく」

 

「だよね~。でも美少女は美少女で結構アリ?」

 

「えっ?」

 

「「「アリアリ」」」

 

「えぇっえ!?」

 

 このクラス、どこまで行ってもブレないなー……。もう男女見境なくなってるんですけど……、それで良いの? …………て、私も特に問題ないや。

 

「ちょっと待って! そう言えばこの前から男子も大浴場が使えるようになったんじゃなかったっけ?」

 

「あ、そういえば一緒に出てくるのを見た気が」

 

「「「「「…………!?」」」」」

 

 某ダンボールな傭兵さんが見つかった時のような効果音が鳴った気がする。そして聞こえてくるのはグギィ、グギィと金属がすれるカウントダウン。

 あ、これアレだ。一兄南無なヤツ。

 

「イィィイイチィカァアアアァアア!!」

 

 うわぁ……、また扉が……。鈴ちゃんは扉になにか怨みでもあるのでしょうか……? 靴跡がくっきり残るほど勢いよく蹴られて、また涙を流していた。

 

「そこんところ、どういうことか説明して貰えるかしラ?」

 

 あー、また踊君がそっと回収してる。いつもご苦労様です。

 

「いや、それは!」

 

「死ネぇえェェエエ!!」

 

 風が気持ちいな~。

 

「えっ、ちょっ!? 問答無用か!?」

 

「……ふっ!」

 

「AIC!?」

 

 おぉー、もう扉が直ってる。さっすが、踊君仕事が早い。

 

「さ、サンキュー、ラウ――むぐっ!?」

 

 あ、一兄とラウラちゃんがキスしてる。えんだー! って叫んだら良いのかな? え? ……………………キスぅぅぅううっ!?!?

 なんと言うことでしょう。あの朴念仁で唐変木なお兄ちゃんがキスしてる!? 生まれてこの方16年(+グヘホゥッ!?「コリナイネ?」)な私は一度も経験ないのにぃー!

 ……いいなぁ。

 

「うぉ! せ、セシリア!?」

 

「オホホホホッ、ワタクシとしたことが外してしまいマシタエワ」

 

「っ!」

 

 今度はピンク色の光線が目の端を……って、熱っ、眩しっ!? てか怖っ!? 今の当たってたらお陀仏になっちゃってたんですけど!?

 セシリアさんの目にハイライトがない、ですと!? 誰か、描き忘れてますよ!?

 

「くそぉっ!? なんでこうなるんだ、よっぉっと!? うわぁっ!?」

 

 一兄が窓から逃亡してくれると思ったら、窓に触れようと伸ばしていたその手の前を銀色の一閃が奔った。え、あれ真剣じゃん!? しかも篠ノ之道場で似た柄を見た覚えがある気が……。

 

「逃がすと思っているノカ?」

 

 うわ、箒ちゃんまで!? ……予想してたけどさ! 辻斬り万歳な目をした箒ちゃんが剣を正面に構え一兄のみを真っ直ぐ睨み付ける。傍にいる私たち一般生徒に見向きもしないで。

 

「わ、悪い。シャ……ル? あ、あのぉー、その手に持っていらっしゃるのはなんでしょうか?」

 

「にこっ」

 

「に、にこっ……?」

 

 そして見直したら一兄がシャルちゃんのおっきな胸にダイブしていたんだ。うん。後ろとか横とかいろんなところから、ブチッって音が聞こえちゃったね。

 しかもされたシャルちゃんは恥ずかしがる前になぜかわっかんないけど盾殺し(シールド・ピアース)なるパイルバンカーを構えてらっしゃる。

 

「うぉっ!?」

 

 間一髪で避ける一兄。

 でもその先にもプッツンした子がひーふーみ-。このまま一兄にいられると私たちの命に関わりそうです。

 ってことで、最終手段、いってみよー!

 

「一兄!」

 

「ひ、響っ! 助け「無理!!」……せめて言わせろよ!?」

 

 一兄の腕を掴み片足を思いっきり後ろに踏み込む。その方向には私が何をしようとしているのか読み取った踊君が既に行動してくれていた。

 

「100パー全開! イっちゃえ! (一兄の)ハート(物理)のゼンブ!」

 

「え!? ちょっ待っ! いくらなんでもこんな覚悟はできて!?」

 

 踊君の開けた窓から一兄をポイした。

 ぐるんぐるん回って飛んでいく一夏、我ながら天晴れな投げっぷりができた、と自負しちゃいます。すごーく飛んでいくのにあんまり落ちてない。

 あ、白式を展開した。

 

「「「「「あぁっ!? 待てっ!!」」」」」

 

 次々と逃げた(捨てられた?)一夏を追って窓から飛び出していく乙女達。1対5の凄絶な鬼ごっこが幕を開けた。

 

「よしっ。これで教室の平和は他も保たれたよ!」

 

「「「「一人の命が絶たれたけどね!?」」」」

 

「よくやった、織斑妹。では授業を開始する」

 

「「「「放置っ!?」」」」

 

 やったー。ちー姉に褒められた。

 

 

 

「ひ、酷い目に遭った……」

 

「自業自得だよ」

 

「どういうことなんだよ……」

 

 あの後、五体満足で振り切ってきた一兄に文句を言われたけど気にしない。だって一兄が気付けば良いだけの話だもん。さっきのラウラちゃんの行動も妹や小さい子みたいな好意だとしか思ってないそうだし……。

 

「「「「「一夏(さん)! ちょっと来(い/なさい/て)!!」」」」」

 

「…………おぅ」

 

「が、がんばってー」

 

 ぐわしっ! と掴まれ誘拐されてく一兄を手を振って見送る。

 

「響、久し振りだな」

 

 すれ違うようにして踊君が来た。って、あ、この感じ!

 

「やっぱり踊君だ!」

 

「呵々、おう。俺だ」

 

 今まで聖ーズだったのが久し振りに私のよく知る踊君本人が目の前にいた。姿形は変わんないけど、やっぱりいつもの踊君が一番安心する。

 

「えっと……、何年ぶり?」

 

「あの事件以来、こっちには戻ってきてないからな……。9年ぶりくらいだ」

 

「うへ、もうそんなにたったんだ……。それで、どうしたの? 改まって会いに来るなんて何かあったの?」

 

「ようやく奴さんの尻尾が掴めてたんで、ちょっと休息しに来ただけだ。周りの奴等からも働き過ぎだって怒られたしな」

 

 働き過ぎなのは聖ーズ全体じゃないかな? それに休息って言っても結局試合とか事件とかで休めてなさそう。何名か大怪我してたし……。

 

「ところで尻尾って、なんの?」

 

「…………本気で言ってるのか?」

 

 冷たい目で見られ、「うん」と答えると頭を抑えてなんか呆れられてしまった。

 

「なんで俺たちがここに来たと思っている?」

 

「あ……!」

 

 そう言えば悪神だか邪神だったか面倒な神様が転生させた人たちを何とかするんだった。

 

「そでした。進捗はどんな感じ?」

 

「小物は皆、既に投獄済みだ。あのおっさんの話だと50人だったから……残りは10人だな。内1人の『ローラン』を騙った者は今ジハードが追っている最中で、他にも響も知ってる『桐生龍也』、こっちは牢獄送りにできるほどの罪がないせいで手をこまねいてはいるが、待っときゃいつかボロを出すだろうからこっちも問題なし。しかしその他のがな、ある大物組織に属しているために手が出せない状況だ。深追いしすぎると逃げられる」

 

 やれやれ、と肩をすくめて踊君は呟く。

 

「忘れててごめんなさい……」

 

 ど、どうしよう。すっごい大変そうだった。踊君でも攻めきれない組織があるなんて思ってもみなかった。これ、私も手伝った方が……?

 

「言っておくが、手伝おうなんて思うなよ。潜入、工作、と隠密過多なこっちに響がいても宝の持ち腐れだ。響は一夏たちの傍にいてくれ」

 

 あはっ、私にできそうなことがなかったや。こそこそ隠れて? ムリムリ、全力全壊が私のやり方でだし。

 

「それに響が傍にいれば俺も安心だからな」

 

「あんしん?」

 

「この世界、やっぱ織斑一夏がこの世界の中心、主人公みたいだ。あの世界の鍵が響だったようにあいつが未来の鍵になる」

 

「あ、やっぱり? じゃなきゃこんな女子校に入学することにならないよね」

 

 それに一夏の周りばっかで事件起こるし。それで違ったら世界どうなってんの? って話です。

 

「勿論俺もするつもりだが、響には一夏たちを鍛えてもらいたいんだ。これから先、どんな事件が降りかかるかわからない。その時、あいつらが後悔しなくてすむように」

 

 そう言った踊君の目は悲しそうだった。他の踊君にはない本当の愁いの表情。私の知らない、ディバンス達(踊君以外)も知らない前世でのことなんだと思う。

 

「そろそろ教室に戻るぞ」

 

「うん」

 

 何時か話してくれるかな?


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