戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜   作:円小夜 歌多那

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ほぼ一ヶ月も開いてしまって申し訳ありません。
パソコンがぶっ壊れてしまったのと忙しくなったのダブルパンチで非常に遅くなってしまいました……。
まだ治ってはないんですが、突然プッツンすることがなくなって一安心。
ではでは週1投稿再開です。(問題なければ……)



第Ⅶ話

「それじゃあ早速だけど円状制御飛翔からはじめましょうか。シャルロットちゃんとセシリアちゃん、『シューター・フロー』でやってみせてくれるかな?」

 

 忘れ去られたラーメンのように伸びきっていた皆が立ち上がる……最中に楯無さんは満面の笑顔と名指しという名の刃で追撃を加えた。

 された二人は顔面真っ青。何故私たちが!? とでも言いたそうな顔で苦情を申し立てた。

 

「何故私たちが!?」

 

……ちょっと訂正、言いたそうじゃなくて、言うための顔だったみたいです。

 

「それに、それは射撃型用のバトル・スタンスですよね? 一夏には余り意味がないんじゃないでしょうか?」

 

「いえ、そんなことないわ。これだって一夏君には良い勉強になるはずよ」

 

 皆の頭の上で疑問符が踊る。

 一兄はセカンドシフトしたことで射撃武器を手に入れた。だから射撃練習が必要なのは理解してる、むしろ「やれ」と皆で圧力を掛けるくらいです。

 でも射撃型用の訓練をする程かと言えばそれはノーとはっきり言っちゃえる。

 だってその銃もとい荷電粒子砲はとんでもなくピーキーな子なんだもん。超絶威力があるけどシールドエネルギーの消費量が笑えない。試合中だと10発撃てるかどうか分からないくらいかな。

 弾数的にはオートマチック拳銃と同じくらい。でもマガジンなしの消費するのは最初から自身の体力なんていう残念仕様。撃てば撃つほど敗北が近づくのに射撃型とかあり得ません。

 

 で、ところでなんだけど『しゅーたー・ふろー』ってなに?

 

「解説の一兄~」

 

「…………流れ弾?」

 

「おお! ……でもシューターって撃つ人って意味じゃなかったっけ?」

 

「そういやそうだな……てことはつまり」

 

「「居場所を喪ったパイロット!」」

 

「んなわけあるかぁあああっ!」

 

 ズゴンと頭の上に鈍器が振り下ろされた。

 ISの絶対防御抜くとか、鈴ちゃんなんてバカ力……!

 

「確かにシューター・フローは射手が流れるって意味だけど、流されたわけじゃないわよ。円軌道でこうしゅらしゅら避けながら撃ち合うってやつよ」

 

「「へー」」

 

「……なんで知らないのよ。ちゃんと書いてたはずなだけど?」

 

 呆れたような目で見られてもこればかりは仕方がないと思う。だって私たちだもん。

 

「私、格闘家」

 

「俺、剣士」

 

「「だから覚えるわけがない!」」

 

「「「「「だから万年赤点なのよ/んだ/ですわ」」」」」

 

 なぜわかった!?

 あ、私たちの名誉のために言っとくけど、流石に全部赤点なわけじゃないからね。全体の4割くらいしかないんだから!

 

「それでよくここに……って、貴方たちは適正Sだったわね…………」

 

 それでも最近はあんまり取ってないよ。そしてこれからは私は一つも取る気は無いんだよ。

 正確には取るわけにはいかない! だけどね。

 え、何故かって?

 言わせるなよ、恥ずかしい。……未来と踊君と翼さんとクリスちゃんと師匠にがっちり固められちゃったからですよ!!

 これは虎さんも狼さんもビックリ状況じゃないかな。

 前門の未来、後門の踊君、右門の翼さん、左門のクリスちゃん、さらには天上の師匠。はっはっは、これでいったい何処に逃げろと? 地下がある? ところがどっこい地下は二課の本部だ!

 ……ね、取れないでしょ? 赤点なんて……。

 

「え、どうしたの?! いきなり泣き出して?!」

 

「ううん。何でもないの。ちょっと現実を見ちゃって……」

 

「ああ、いつもの……」

 

 いつもって、そんなしょっちゅうあるみたいな……、はい、拗ねてみたけど心当たりが結構ありました……。

 

「はいはい、余計な話はそこまで。二人ともやっちゃってくれる?」

 

「「はい!」」

 

 楯無さんの指示で二人は距離を開けて向かい合い銃口を突きつけた。観客の私たちは端によりつつないよう知ってる組に従って見やすい場所に移る。

 

『いくよ、セシリア』

 

『いつでもよろしくてよ、シャルロットさん』

 

 二人の周りで風が吹いた。ちょっとずつ加速していく機体は正面ではなく互いに右少し前、加えて上にも進んで円柱のような軌道を描いて飛ぶ。

 首が痛くなる手前ほどの高度に至ったその時、二人が射撃型用の本領を見せつけてくれた。

 先に撃ったのはシャルちゃんだ。それを円から外れずに急な加速で躱しセシリアちゃんは向けていたレーザーライフルで撃ち返した。でもシャルちゃんは減速からさらに高度を落とすことで難なく避け、即座に上げた速度でできていたズレを修正。再び引き金を引いた。

 やっていることは大雑把に言ってしまえば撃って撃たれて躱して撃ってと長々と続くループだ。でもやっていることは常に違う。加速減速、上昇下降、連射に乱射に速射といくつもの技術をまぜこぜにした撃ち合いが繰り広げられる。

 それは一つのエンブじゃ納まらないほどの争いだ。

 空中を舞う妖精のような姿で魅せる演舞、緩急付けたステップで踊るかのように乱れぬ輪で魅せる円舞、自分自身のスキルそのもので切磋し武芸で魅せる演武。

 これは近接じゃ真似できないね。まぁ、8の字というか花びらというかそんな別軌道でいいならできるかもだけど。

 

『私たちじゃ、八の字でも難しいと思いますよ?』

 

「そなの?」

 

 イアちゃんの否定がオープンチャンネルで伝わってきた。

 

『響さんは面白いことを言いますねー。逆に聞かせてもらいますが、ニールハートに真面な曲線軌道が描けるとでも?』

 

「そりゃー……」

 

『バンカーの加速で機動力を補っているニールハートに曲線軌道ができるとでも?』

 

「………………」

 

『どこぞの星の戦士のマシンのように止まって走るしかできません』

 

「た、確かに!」

 

 星の戦士のマシンが何のことだかさっぱりだけど、私たちは止まって走るがデフォでした。精々できる軌道は筆記体で書く小文字のエルのような尖ったうっすい曲線もどきくらいなもんです。

 おおー、空の花火が激しくなってる。

 

『い、一夏!? 何してるの?!』

 

『一夏さん!?』

 

 ひょえっ!?

 なんか急激に荒々しくなった。おまけに流れ弾がわんさか振ってきて、洒落にならないくらい危ないんだけど!?

 いったい一兄は何をしたの。

 

「一夏君にはああいうマニュアル制御も必要なんだよ。わかったかな?」

 

 あぁ……楯無さんとすっごいいちゃいちゃしちゃってる……見た目上は。

 なんとなくでいいから一兄も学んでくれたら良いのに……。本人的にはやっぱり気付いてないんだろうなぁ。そのせいで被る周りの迷惑は甚大だって言うのに……。

 

『『あ』』

 

 撃つならあっちを狙って下さい。って、落ちた。

 集中が乱れに乱れたお二人は揃って被弾、真っ逆さまだ。一兄が大丈夫か、なんて軽々しく聞いて、いきなりどうしたとか聞いちゃってるけど、なんて酷な質問をするんだ。

 原因は一兄なんだけど、二人は当然言えない。言っちゃえば楽になるんだけど無理な話、あうあうなんて奇声を発して大変そうです。

 

「本当に大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃ!」

 

「ありませんわ!!」

 

「何で怒られてんだよ!?」

 

「うふふふ……やっぱり面白いわ~」

 

 怒られる一兄のアホ顔を見てすごく楽しそうに楯無さんは無関係のように笑う。原因作ったのになんて無責任な人なんだ。フォローしようという優しさはないのか。

 観客だった箒達も混ざっちゃって収集が付けられない……。

 

「楽しそうですね。……会長?」

 

「ひっ!?」

 

 ひゅるりと背筋にひんやりする何かを感じた直後、楯無さんの影から女性が覗き込んでいた。何でもない普通の眼鏡を不気味に光らせそっと佇む姿はさながら幽霊。

 

「う、虚ちゃんがなんでここに……」

 

「華道をしている後輩から連絡がありましたので。貴女がまたよからぬことを考えていそうなので止めて欲しい、と」

 

 あ、この人が五十鈴先輩が呼んだって言う頼れって人なんだ。

 隙を突いて楯無さんは逃げだそうとしたけど、虚さんは無機質な笑みを浮かべてがしっと肩を掴んで止める。目がマジな微笑みをそのままにずいっと顔を近づけると、優しそうな声色で楯無さんに問いかけた。

 

「いったい何をしているんですか、会長?」

 

「何って、後輩君たちのために訓練を……」

 

「私には後輩が縮こまっているのを見てストレス発散しているようにしか見えないのですが?」

 

「そ、そんなことはないわヨ? 虚ちゃんったら早とちりしちゃっテ~」

 

 目でスクロールしながら何を仰ってるんでしょうか。嘘なのはバレバレで虚さんの笑みは凄味を増した。

 これには楯無さんも戦いたみたいで冷や汗をだらだらと垂れ流して声なき悲鳴を上げている。

 

「そうですか」

 

「わ、わかってくれたのね!」

 

 なんとっ!

 

「それほど後輩の方達のためを思っているのですね」

 

「そうよ! その通りよ!」

 

 ここでぇっ!

 

「なら会長がしっかりお手本を見せてあげないといけませんね」

 

「まぁ、それはそうかもしれないわね。私としたことがうっかりしてたわ」

 

 天の恵みがぁっ!!

 

「それなら模擬戦をしましょう!」

 

「え?」

 

 降り!

 

「会長と聖君とで」

 

「ごめんなさい。遊んでました」

 

 注がなかった!!

 

「なんだ。やらないのか?」

 

 打鉄装備でインファイトをする踊君。

 しっかり高校生モードになってやる気まんまんじゃないですかー。しかも打鉄もなんか普段より関節の動きとかスムーズでモーター音が凄い生き生きしてるんだけどー。あと踊君の繰り出した打鉄の膝からなんか獣染みた何かまで出てるしー。

 いや、それどうなってるの? 気じゃないよね? てか獅子じゃないよね!? 吼えたりしてないよね!?

 

「せっかく改造して出せるようにしたのだがな……。残念だな、打鉄語」

 

 訓練機なのに名前まで付けちゃってるし……これは私でもやりたくない相手だよ。

 そんなことを思ってる間に楯無さんが連行されていき、残ったのは今だ冷めない一夏紛争と落ち込んでしょんぼりするよう君(よっぽどショックだったんだ)と着いてけない私。

 取り敢えず私はよう君に「出したいなら、一夏に向かって撃てば良いんじゃないかな」と言えば良いんだね(確信)!




――パソコンの壊れた当初――

「……このあたりでセー」
プツン
「ブ?」
……シーン
「電池切れ?」
取り敢えず電源
……シーン
連打
……シーン
長押し
……シーン
リセット
……シーン
充電器をブスリ
正しく起動できませんでした
(データ? 残ってるわけないじゃん。ざまぁw)
「巫山戯んな!?」

その後も
Wordを開いてタイピン……プツン
メモ帳を開いてタイピ……プツン
ネットを開いてタイピ……プツン 
嫌がらせのように続き心はポキン

もう絶望するしか、ない!

漸く真面な打ち込みができるようになって感動中な今日この頃~。

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