戦姫絶唱シンフォギア 〜子の為に人を止めたモノ〜 作:円小夜 歌多那
アレは嘘だ。
祝! 4期5期決定!!!
もはや決定しすぎじゃないか!?
監督さん達が倒れないかどうか心配になるのは私だけ?
体が…………痛いです。
「ひぐぅえぇ……」
座席に座るのも一苦労だったよ……。
「あ゙ぁ-……いつつ」
「一夏、ここ開いてるよ」
ぐっへー、と背もたれに体を投げ出してだらけてるところに、おじいちゃん化した一兄もやってきて偶然開けられていたシャルちゃんの隣席に座った。
ホント偶然だよ。血で血を洗う聖戦なんんて私たちは見てない
「……やれやれ、機械の体でも寝違えるってあるんだな……」
膝の上に置いたよう君が首や背をさすってる。なんか珍しいものを見た気分です。
「響はまだ分かるけど……二人はどうしたの?」
「一夏殿のは響のと似たようなものだ。肉体の限界を超えて瞬時加速を連続しようしまくった後遺症だ。俺のは……まぁ、なんだ。別件とだけ言っておく」
「ん?」
「すっごい気になるんだけど……」
おかしいな……。よう君から冷ややかな視線が突き刺さる。
とはいえ半月目なジト目+上目遣いだから怖くない。むしろ可愛い。
「イアちゃん、響は何したの?」
『(よう君抱き枕からの鯖折り、そのままお腹にヘッドバット)』
「響、それは無いと思う」
「ふぇ!? ……いつぅー」
わかんない所でディスられた!? 聞こえないようにしてしてまでイアちゃんはいったい何を言った。そして私はいったい何をした。
「こっち、こっち~。このバスだよ~」
むー? 聞き覚えのある声がバスに搭乗してきた。
珍しいことがあるもんです。あののほほんちゃんが非常事態でもないのに、誰かを引率してるみたい。
「ここね。ありがとう」
続いて乗り込んできたのは女性。それも眩しい金髪でスタイル抜群な外国美人さんです。あんな人旅館にいたっけと騒がしくなるのは当然だけど、昨日のメンバーは顔だけは知った人だった。
それにしても、もう起きて大丈夫なんでしょか。
私の体がイカれちゃうくらい殴り合って、一兄も激痛にさいなまれるくらいの高速展開をやって、それで私たちが休んでる間もずっとISを運用してたのに……。
羨ましいぐらい頑丈な体しってるぅ~。
「あれがおりむーだよ~。んでんであのちっちゃいのがひーじーだよ~」
二人に用があるんだ。
たしかナターシャさんだっけ?
「貴方が織斑一夏君? それでそっちの子が聖踊君……思ってたより小さいわね」
「大きさなど関係ない。闘うのはISであって、奏者ではない。乗り手の姿形は問うまい」
「それもそうね」
それで納得しちゃえるんだ……。
あと今のよう君は踊君じゃなくて、よう君。これ大事!
「えっと、あなたは……?」
「私はナターシャ・ファイルス。
よっしゃ、正解! ちゃんと名前覚えてた。
「ちゅっ……。これはお礼。ありがとう、白いナイトさん」
ふぁっふぉぅ……。
な、なななナターシャさんのくちびるが、うぃちにいの……ふぇ!? 世界が真っ暗に。
「見せられないぞ」
『ようさん頑張って下さい! うぶきさんが居なくなったら未来さんに怒られちゃいます』
なぜそこで未来!? うぶきさんって何!?
む~。折角大人な世界が見れそうだったのに……。
「え……あ……え……?」
「ふふ、少年ちゃんもありがとう」
「俺もか?」
よう君もデスと!? 手、邪魔!! 見えない。
「落ち着け、サージェ化してるぞ」
「目をグリグリしないで~。痛いー」
いたたた……世界がぼやけて見える。って、ひぅ!?
一兄の背に修羅がいた。それもたくさん。
「はっはっはっ」
「イーチーカー?」
「蹴り飛ばされる覚悟は」
「できてますわよね?」
「ちょっ、お前らいったいなにを!?」
あわわわ……。怖い怖い。
体がすくみ上がりお隣の子と一緒に震える。バス内の温度がガクッと下がった気がする。
「ぎゃぁああーーーー」
「「「「「「合掌」」」」」」
よう君もご一緒に。
皆でパンパン。
ふふ、面白い子達だったわね。
「おいおい、な火種を蒔いてくれるなよ。ガキの相手をするのは大変なんだぞ」
余計
あらあらお冠ね。バスを降りたところであのお人と出会ってしまった。
「思っていたよりもずっと素敵な男性だったから、つい」
世界最強の女性と謳われるミス・オリムラ。
「……それで、昨日の今日でもう動いても平気なのか?」
彼女が言っているのは昨晩のことだ。
意識がなかったからよくわからないのだけれど、私たちは随分と無茶なことを繰り返し行っていたらしい。
でも私の体には全くと言っても良いほどに異常がない。
「えぇ、問題ないわ。あの子が護ってくれたから」
それはずっと一緒にやってきた大切な
痛かったでしょうね……、辛かったでしょうね……、怖かったでしょうね……。
「やはりそうなのか?」
「あの子は私を護るために、望まない戦いに身を投じた。コア・ネットワークの遮断に、強引な第二形態移行。あの子は私のために自分の世界を捨てたの」
……許せない。
あの子はただ飛びたかっただけだった。なのに外部から侵入した何者かがあの子を狂わせた。正常な判断を奪い全てのISを敵に見せかけ襲わせた。
「必ず追い詰め、この報いは絶対受けさせる」
『意気込んでるところ水を差すようですまないが、その前に軍を抜けることをおすすめするぞ』
「?」
今の声は?
「聖か? 何か知っているのか?」
『残念ながら元凶は知覚していない。だが軍の対応が気に食わん。人命よりもメンツを優先し、新たにで出会えた友を蔑ろにされるのは見過ごせない』
彼、バスの中に居たわよね……。どうやって話しかけてるのか、気にならないのかしら?
千冬さんが無駄だというように私を見て頭を振った。
『イアがハッキングを仕掛けたところ米軍はナターシャ・ファイルスという人物の存在を抹消しようとしていたらしい。一夏殿らが救い出したことで所属しているというデータだけは直されているが福音もろとも闇に葬る準備は万端のようだぞ』
「……そう」
今更のことなのね……。
なんとなく察して彼の話を聞くことにした。そして言われたのは予想していたことだった。
「坊やには理解出来ないかも知れないけど、それが軍なのよ」
国を守るのが軍の務め。一軍人のために国民を危険に曝すわけにはいかない。私たち軍人は軍人になった頃から切り捨てられる覚悟ができているものだ。
『………………………………………………そうなのかもしれないな』
彼の言葉に目の前にいる千冬さんが息を呑んだ。
『俺は坊やなのかもな。どれほどの時間を過ごそうと俺は正式な軍って奴には属したことはなかった。そういう大人のやり方、というもののは経験したことがない』
時間が経てば嫌になるくらい突きつけられることになる、とも言おうかと思ったけれど止めておこう。子供に聞かせる話じゃないわ。
でも彼は続けてこう言った。
『だが、そんな下らないやり方なんぞこっちから願い下げだ。真のOTONAというのはな、どんな状況にあってもガキを守り通すものだ。一人のガキを切り捨てなければ得られぬものに価値などありはしない』
清々しいほどに真っ直ぐな言葉だ。
『簡単な逃げ道ばかり選ぶ者に付いていっても破滅するだけだぞ』
反論できなかった。
人を切り捨てるというのは自分が切られるかもしれないということだけでなく、誰もついて行けなくなる、ということも起こりえるということ。
前者なら歯車に物が詰まったようなもので取り除くだけで組織は回り続ける。けれど後者は歯車その物が無数にないような状態だ。組織は空回る。
彼の言う通りだ。このまま軍にいても近い将来、私は破滅することになるだろう。
……でも、私はそれで構わない。
「……それでも、今は軍の力が必要なのよ」
あの子を狂わせた元凶を突き止めるためには軍の肩書きが不可欠なのだ。私個人ではハッキングどころかISの解析すらままならないし、様々な技術者との連携も取れない。
元凶を見つけるためならどんなに環境が悪かろうと耐えてみせる。
『そうか……。ならば選別だ。気が向いたら頼ると良い』
彼の言葉が聞こえなくなると同時に、携帯が振動した。
「くっく、奴が坊やか。お前も凄いことを言う」
「あら? 事実じゃない。見た目通りでないとしてもまだ16でしょう? まだまだ子供よ」
「どうなんだろうな」
何がおかしいのかしらね。
「……気を付けろよ」
「ご忠告どうも。仇を討つまでは死なないわよ。じゃあね」
最後にそう話してバスから離れる。
さてさてこれからどうやって探そうかしら?
……と、その前にメール見とかないとね。
今回にてIS編は終了です。
軽い空白期を挟んでから聖踊の最終章へと参る所存です。