奇談モンスターハンター   作:だん

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4節(1)

王宮内は、蜂の巣を突いたどころではない大騒ぎである。

平成に生きる読者諸君には、学校の教室内にスズメバチの群れが侵入したとでも想像していただくと、イメージがしやすそうだ。

なんとかせねばと走り回るもの。

なんとかせねばとただ騒ぐもの。

なんとかしろと、ただ騒ぐもの。

何することなく、ただ騒ぐもの。

で、どったんばったん大騒ぎである。

残念ながら大型モンスターへの対処をハンターズギルドに頼りきっている状態の本土の人間達では、なんとかせねばと走り回る側の人間はとても少ない様だ。

やるべき事を行うにも、ギャーギャーと騒ぐ周りの連中が邪魔をしている様にも見えてしまう。

しかも残念なことに、上から順に人数の割合は増えて行く様で、王宮勤めの貴族達は思い思いの命令ばかり飛ばし兵を混乱させるだけである。

ただ、皆迫り来る超大型の古龍種、ラオシャンロンの亜種に恐怖していた事だけは、全員に共通の思いであった。

そしてごく一部、少数の人間に、思考が追いつかずに硬直するものと、何をするべきか解っており、落ち着いて行動する者がいる。

フィオール達はその後者だ。

 

「狼狽えるな!」

 

王宮の正面玄関である大扉を蹴やぶらん勢いで入ってきた一行の先頭に立つフィオール・マックールが、父譲りの朗々と響き渡る声で喝を入れた。

慌てふためく衛兵や貴族、軍人達であったが、振り返る中、フィオールが皆に向かって言い放つ。

「落ち着け!まずは状況の確認が最優先だ!物見からの報告は逐一、まとめて私と、近衞騎士長に伝える様に!非戦闘員は最低限の荷物を持って避難経路の捻出及び確保を急ぐんだ!」

これを聞いて、まずは兵士達が、主にフィンに日頃鍛えられている下級兵に位置するもの達が動き出す。

「王国軍元帥閣下は何処に居られるか!わかる者は、至急軍議を行う故、会議場まで来ていただく様伝達せよ!女中の皆さんは、貴族方の避難補助をお願いしたい。当方のミハエルとリコリス、及びネコチュウがフォローいたします!」

素早く指示を飛ばすフィオールに、場内の者は一にも二にもなく頷いて、彼の命を実行するために走り出した。

「頼むぞ、みんな」

フィオールが振り返ると、指示を受けた仲間達がうなづいて走り出した。

「貴族の皆々様方には、今回我々ハンターズギルドの指示に従っていただく!人命最優先だ!理解していただきたい!」

響き渡るフィオールの凛とした声に、不測の事態に怯えきった貴族達は、反対意見なぞ出さずに頷くのだった。

「フィオール君!僕らは貴族達の誘導が終わり次第、市街の避難誘導に向かうから、こっちの対応は任せるよ!」

走り行くミハエルからかけられる声に(おう)と返し、フィオールは背後にコルナリーナに支えられながら立つ自身の父に目を向けた。

これで構わないか、と。

それに対し偉大なる彼の父は、頷いて応える。上々であると。

 

「姉上っ!」

そんな人の行き交う激流の中から、小さな姫が彼らに向かって駆け寄ってくる。

「ローラ!」

「ご無事かっ!?マックール邸で爆発と、城下でモンスターが現れたと聞いて、気が気ではおれなんだのじゃ!」

そのままエレンに飛びついてくる妹を抱きとめて、「ええ、私は平気よ」と応えたエレンは、一瞬フィオールと視線を交わしてローラに向き直った。

「ローラ、お願いがあるの。すぐに国王陛下への謁見を手配してくれますか?一刻を争います」

真剣な姉の表情に、少しだけ驚くローラ姫であったが、「わかったのじゃ!」と素直に踵を返すと、恐らく王の元へと続くのであろう、王宮中心の大階段を駆け上がっていった。

「王には会議場に急がれます様、しかとお願い致しますローラ姫!」

補足で走り行く背中にかかったフィオールの声に、一旦振り返って元気よく手を振って返す仕草をして見せると、ローラは一国の姫とは思えぬレベルで長く豪奢なスカートをたくしあげると、目を見張るスピードで人の行き交う階段を駆け上がっていった。

「あらあら。お転婆ねぇ」

呆れ顔で呟くのは、真白い童女シア・ヴァイスである。

「まるで跳緋獣(おサルさん)みたい」

言ってくすくすと鈴が転がる様な笑みをこぼす。

「これじゃあ、御茶菓子はお預けね」

口の下に人差し指など当てて人々の行き交う様を眺めるその姿は、年齢にそぐわぬ怪しさがあった。

「ねえねえフィオールさん。私は部外者なんだけれども、その会議場に同席しても構わないかしら?」

フィオールの隣に立って、可愛らしく小首を傾げながら横目で問う真白い童女に、フィオールは「かまいませんよ」と即答する。

「えっ!?」

背後で彼の父を支えるコルナリーナが反応するが、フィオールは視線だけでそれを黙らせた。

「我々としても、また貴方に何処かに行かれても困りますしね。ディーンの件もあります。寧ろ我々から同席をお願いするところでした」

「そう」

なら良かったわ、と。

フィオールの答えを聞き、満足そうに微笑むシアであった。

「……」

何気ない様な会話ではある。

だが、コルナリーナは底知れぬ恐怖に対抗し、それが表層に現れぬ様に繕う事がこれほどまでに労力伴うのかと辛酸を舐める思いであった。

この目の前の真白い童女。

あの得体の知れない赤い雷を呼び寄せた彼女は、はっきり言って異様である。

その佇まいは勿論だが、武を納めたコルナリーナをもってしても腹の芯から来る威圧感を感じずにはいられない。

だが、彼女の目の前のフィオールとエレン。そして先程避難誘導で走っていったミハエルは、その威圧感などものともしないのか、シアに対する態度はいたって平常なのである。

一体どれほどの胆力であろうか。

何よりも驚きなのは、あのおとなしいエレンまでもが、シアに対して全くと言っていいほど動じていないのである。

「父上、かまいませんね?」

そんな彼女の思いとは裏腹に、彼女の未来の夫はやはり“それ”をおくびにも出さない。

「ああ、私も命の恩人を無下にする程愚かではないつもりだ」

そう返す義父は流石といったところか。

お茶菓子は今度是非ご馳走させていただこうなどと冗句(ジョーク)を返す余裕すら見せてくれる。

「まぁ、楽しみだわ」

対して悪魔の様に整った容姿で華の様に笑うシアは、ふとこちらを見るコルナリーナの視線に気付いたのか、ふっと笑みだけ寄越す。

「大丈夫よお姉様」

そう言ってシアが、悪戯っぽく自分の眉間を人差し指で指して見せた。

そこで漸く、コルナリーナは自分が険しい表情をしていた事に気付き、思わず顔を赤くしてしまう。

「コル、シア嬢に私達に対する害意はない。心配無用だ」

そう言うのはフィオールであった。

「ご、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの」

慌てて謝るコルナリーナに、シアは特に気分を害したふうもなく、「気にしないで、慣れてるもの」と返して微笑むのだった。

それでも、もう一度だけコルナリーナが謝って、この話題は終了となった。

だが、それにしても。と、コルナリーナは思わずにはいられない。

いったい、何が起きようと言うのだろうか。

変貌したバーネット卿の異様。

この真白い童女。

そして、突如として出現した老山龍。

どれだけ努めても、その不安だけは拭う事が出来なかった。

 

・・・

・・

 

「無茶だっ!」

打って出るしかない。

フィンの提言に、悲鳴じみた声をあげたのは、この国の王国軍元帥閣下である。

軍務を取り仕切る初老の、と言うより老齢に入った元帥は、その頭の白髪すら青ざめておる様だった。

…やれやれ。

胸中でのみ、フィンは嘆息する。

本土側の人間の、典型的はパターンだ。

ヒト相手にはいくらでも偉ぶる事が出来ようはずなのに、相手がいざ大型モンスターとなるとこれである。

(けい)は、我が軍にどれほどの被害が出ると思っておるのだ!」

二十年前の暗黒時代が余程恐ろしかったのだろう。

辺境の大型モンスターの生態系が乱れた、通称暗黒時代。

若かりし元帥も、当然国王と共に軍を率いて戦った。

だからこそだろうか。

元帥だけでなく、先の時代を知る老齢将校達は、大型モンスターの対処を恐れる傾向にあった。

そんなところをつけ込む様に、バーネット卿は今までの地位を手に入れたようなものだが 、今はそれを論ずるべき場所ではない。

「ええい!今はそのような事を論ずるべき時ではなかろう!老山龍(ラオシャンロン)……いえ、岩山龍(イェンシャンロン)と言うべきだろう。()の龍はもう王都の目と鼻の先まで迫っているのですぞ」

彼にしては珍しく、声を荒げて見せるフィンに対し、軍の重鎮達は情けなくも首をすくめるばかりだ。

それもそのはず。彼らがもっとも頼りとしていた王都の守りを任せていた崇龍(ドラクル)の謀反により、彼の手による防衛ラインの一部が十全に機能していない事が、先の物見の報告によって判明しており、人材(マン・パワー)としてもっとも頼りになる老雄はその崇龍(ドラクル)の謀反で負傷していると言う。

第一、天地に知らぬものなしと言われるフィン・マックールの英雄譚。老山龍退治は今より遥かに若い頃の話だ。

老いてなお衰えぬと言われるフィンであっても、寄る年波は確かに彼の頰に刻み込まれている。

将校達の絶望ぶりは是非もない。

「まずは兵達を城門前に集め、王を逃す時間稼ぎを……」

「いや、無理だ。軍を動かすにも時間がなさすぎる」

「国民を避難させるのにも、人員が必要であろう」

「バーネット卿の設備で迎撃はできぬのか!?」

「飛竜種であれば、撃退はできるであろうが、此度は相手が巨大すぎる。おそらくは……」

「ではどうすればいいというのだ!」

「急ぎ、大長老殿に使いを走らせては……」

無駄だ。間に合うはずがない。

エレンが声には出さずにいた答えは、フィンが代わりに伝えてくれた。

皆ああでもないこうでもないと、話がちっともまとまらない。

「呆れた。とんだデモデモダッテね。いい歳をしたおじいちゃんが、みっともないったらないわ」

小声で言う程度には気を配ってくれたのか、シアが呟くのが耳に入ったエレンが「シアさん」と呼びかけて簡潔に注意を促すのだったが、彼女本人は少しも悪びれた様子などない。

エレンの言葉にも、何か問題でもあるのかとばかりに微笑み返してくる程である。

まぁ、言葉や態度には出さないまでも、エレンも大方シアと同意見ではあるのだが。

「なんと言う事だ……」

シアに取られていた気を元に戻してみれば、将校の一人が泣き言を口走って頭を抱えているところであった。

…情けない。

エレンの正直なところの感想である。

恐らくは、彼女の仲間達共通の認識であろう。

王宮で暮らしていた頃、彼らの顔色を伺っていたのが馬鹿らしく思えるエレンであった。

さて、遅ればせながら現状を説明させていただこう。

今この場には、ハロルド王を円卓の中心に、軍のお歴々が囲むように座しており、エレン達の代表的な立場として、フィンが王の対面に座る形だ。

エレン達はフィンの後方に並んで立っている状態で参加する事になっている。

エレン達が会議場に入った時には、ほぼ全ての人物が揃っており、最後に王が到着し、会議の開始となった。

ちなみに、王の入室にちゃっかりと第二王子と第三王女も入ってきており、王子は王の隣に、第三王女のローラは、今回はエレンの側まで近づいて、彼女達ハンター組であるフィオール、エレン、コルナリーナ、そしてシアのそばで、椅子に座らず立っての参加を希望し、侍従が彼女用に椅子を用意しようとするのを断った。

対大型モンスター用の装備に身を包んだフィオールとエレンが、王宮内で異彩を放つ中、それ以上の存在感のシアに、ローラをはじめとしてその場の皆が注視したのだが、フィンの「彼女は我が息子の連れであり、今回のルドルフの乱心の際、私の命を救ってくれた恩人である」と説明し、半ば無理矢理同席を許可させ、シアもこの会議の参加を許されたのであった。

そして、会議という名の時間の浪費が始まって、小一時間程経過したのが、今この時だ。

段々と腹が立ってきたのを自覚しながら、エレンはなんとか辛抱する。

…ディーンさんだったら、こんな時なんて言うのでしょうね。

そう思った彼女だったが、そんな自分がいかに彼の影響を受けていたかと思い、苦笑する。

ディーンがこの場にいたら、きっとこう言うに違いない。

…馬鹿らしい、時間の無駄だ。おいフィオール、こんなジジイども放っておいて、とっとと行こうぜ!何してんだエレン、置いてくぞ!……でしょうか。

そこまで想像し、思い出し笑いにも似た感情にかられたときであった。

エレンが、彼女自身が驚く程あの出鱈目な青年の影響を受けていたように、彼女の大切な仲間の一人でもある彼の親友も、どうやら彼女と同じくあの出鱈目男の影響を強く受けていたようであった。

「……情けないな」

ポツリと呟く声は、シアのそれとは違い、はっきりとこの広い会議場に響く。

この、普段は寡黙な、ディーンとはまるで正反対の彼の親友は、自ら進んで輪を乱すことを良しとしないところがある。

だが、今この瞬間の彼、フィオール・マックールは違っていた。

「何じゃとっ!?」

先程までの弱りっぷりが嘘の様に、将校の一人が激昂する。

いや、一人だけではない。

恐らくはけ口を探していたのだろう、何人かの将校が立ち上がる。

「何ぞ申したかっ!マックールの小倅が!」

「久しく帰ってきたと思えば、何じゃその口はっ!」

強く出られる相手だと、こうも豹変するものか。

呆れを通り越して笑いだしそうになるのを堪えるエレンの右隣では、シア・ヴァイスが本当に肩を震わせていたのは見なかった事にし、左隣で不安そうにエレンの袖を引っ張るローラを安心させるため、彼女の手を握ってやりながら、エレンは怒れる老兵達を前にしてなお一歩進みでる、この頼りになる仲間の背を見守る。

「笑止千万」

そのフィオールは、将校達の怒声を一身に浴びながらもピシャリと会議場全体に響き渡る声で言い放つと、自分の父の席の隣に立つや、一言だけ父に詫びを入れるのだった。

「申し訳ありません父上。これ以上は埒が明かないので、我らの流儀で行かせていただきます」

視線は眼前の老兵どもから逸らす事なく言い放つ息子に、彼の父は苦笑まじりに嘆息しつつ言うのだった。

「仕方あるまい。私もこうまで弱腰だとは思わなかったものでな。すまないが、お前に任せるとしよう」

「承知しました」

短く応えたフィオールは、一瞬だけ父に低頭すると、キッと円卓ないを睨み据えた。

その鋭い、例えるなら槍の切っ先の様な視線に当てられた将校達が、思わず押し黙る中、フィオールが口を開く。

「嘆かわしいな」

淡々と、老人達のように激昂するでもなく言う。

だが、声に乗った気迫は彼らのそれをものともしない。

「騎士たるもの、己を天下を護る剣とせよ」

その言葉に、今まさにフィオールに食ってかからんとしていた将校達が、ぐっと息を飲んだ。

その言葉は、彼の父の教え。そして、彼の槍にかけた誓いであると共に、騎士の一つの理想だ。

先程までの将校達の、我が身優先のものとは、明らかに違う。

「私はこの王国で育った。モンスターハンターとして修行に出たのは、いずれ父を凌ぐ(をとこ)となって、民を護る一振りの剣になる為だ。そして、今がまさに、剣としての本分を全うすべき時と、私は思う」

凛とした声が、会議場に響いて行く。

最早、フィオールの言葉を遮る者などいなかった。

将校達も、騎士なのだ。

そして、彼らもようやく思い出そうとしているのだ。

自分も、本来は彼と同じく、民を護る為の剣であった事を。

「軍を動かすのが難しいのであれば是非もない」

フィオールの言葉は続く。

彼とて、解っている。

恐ろしいのだ、彼らは。

否。それはフィオールだって同じである。

相手は天災と称される古龍種。

その中でもこと巨大さは軍を抜く老山龍の、更に上をゆく岩山龍なのだ。

恐れるなという方が、本来は無体な話なのである。

しかしそれでも、彼は揺るぎはしないのだ。

 

「私が、参りましょう」

 

英雄の息子。フィオールが言う。

自ら死地に赴くと。

「しょ、正気か……」

将校の一人が思わず口を開く。

それでも彼らは恐ろしいのだ。

暗黒時代を生きた彼らは身を以て知っているのだ。

この辺境を跋扈する、大型モンスターの脅威を。恐ろしさを。

しかも相手は動く霊峰だ、無理もなかろう。

だが、フィオールは揺るがない。

「ええ。私もここらで父を超えておかないと」

言い放って、フ、と笑って見せる程だ。

「言ってくれるな、フィオールよ」

言い放たれた父が苦笑するのに「ええ、父上」と、少しも悪びれる事なく、フィオールは言う。

「我が親友(とも)は、あの出鱈目な男は、おそらくこの程度の試練など、こう言いながら難なく乗り越えて行く事でしょう」

言って、最後の言葉だけは、エレンに向き直り、彼は言う。

 

「誰に言っていやがる。とね」

 

その通りだ。と、エレンは思う。

確かにあの出鱈目な彼ならばそう言うに違いなかった。

「まったく」

力強く頷きあうエレンとフィオールに、彼の父は顔に刻まれた皺を深くする。

…なるほど、どうやら我が息子は今や一端(いっぱし)(をとこ)になっていた様だ。

「近衛騎士長、フィン・マックールの名の下に命ず。息子よ、行ってこい!」

「承知!」

応えるや、フィオールが踵を返す。

「フィオール!」

そんな彼に、父が今一度声をかける。

振り返った彼に、キラリと光る物が投げてよこされる。

反射的の掴み取ったそれは、みれば一つの鍵であった。

「館の武器庫に、“取って置き”を保管してある。今のお前になら相応しかろう。餞別に持っていけ」

鍵に落とした視線をあげた先には、彼の父が自分を見つめていた。

交差する視線は一瞬だけ。

(をとこ)と認められた。それだけわかれば充分だ。

「場所はパーガンに尋ねるといい」

頷き、若き達人は再び踵を返した。

「エレンさん。先に向かいます」

「わかりました。私もすぐに」

すれ違いざま、短く言葉を交わし合う。

今ハンターである彼らがやるべきことは疑いようがない。

迫り来るモンスターの撃退であるのだ。

しかし、この場に残るエレンにはまだやる事が残っている。

ちらりと、フィオールの視線が一瞬だけ真白い童女をかすめるが、彼女は「御武運を、フィオールさん」と手を振るだけであった。

「ええ、ありがとうシア嬢。出来れば、私が戻るまでくつろいでいてください」

「お約束は出来かねるけど、ご提案はありがたく」

返ってくる不敵な言葉に、同じく不敵に笑みを返し、今度こそフィオールは立ち止まらなかった。


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