魔法の時計は狂わない   作:炭酸ミカン

9 / 10
1年目の話その終わり

 学期末試験が終わりを迎え、試験から解放された生徒たちが各々のんびり過ごしている中グリフィンドールのハリー、ロン、ハーマイオニーの三人は外にも出ずに寮の談話室で話し合っていた。

「なんだか落ち着かないよ、ハリー」

ロンがそわそわしながら言う。

「そりゃこれからやることを考えたらね、僕だって足が震えてきそう。ハーマイオニーがうらやましいよ」

ハリーの視線の先ではハーマイオニーが呪文の本をめくり必死になって使えそうな呪文を探していた。ロンと同様、ハリーも落ちつく訳がなかった。なにせこれからやろうとしていることは魔法界全体の運命がかかっているのだ。

彼らは魔法薬学の教授でスリザリンの寮監でもあるスネイプが学校の奥に隠された賢者の石を盗み出そうとしているという情報を得ていた。万が一『石』がスネイプの手に渡ってしまえば魔法界史上最悪の魔法使いヴォルデモートが復活してしまうかもしれない。ならばその前に自分たちが先に『石』を手に入れてスネイプが手に入れられないようにしてしまえばいい。これがハリー達に考えられる最善の行動だった。

「先生たちが頼りに出来ない以上私たちでやるしかないわ。『例のあの人』が戻ってきたらもう寮杯がどうこう言ってる場合ではないもの」

「君って一旦割り切るとすごいよね」

明らかに怪しい会話をしている彼らだったが、先日の事件でグリフィンドールが大量に減点されてしまった原因のメンバーであったので周囲の寮生からはまるでいないかのように扱われていたことが幸いし誰も気に留めようとはしなかった。

『石』をとりに行くのは夜が更けてきて寮の談話室に誰もいなくなって動きやすくなってからになる。早く談話室が空にならないだろうかとハリーは祈りながら時間を過ごした。

 

 

 最後に談話室に残っていたリー・ジョーダンが伸びをしてあくびをしながら出て行くのを見届けるとハリーは透明マントを部屋にとりに行った。『石』のある部屋に辿り着く前にフィルチに見つかってしまえばスネイプから『石』を守ることはできない。

マントを部屋からとってきて談話室に戻り3人で最後の確認をしようとした時、談話室の隅から声がかかった。

「君たち、なにしてるの?」

ネビルだった。右手には今にも逃げ出したそうな様子のトレバーが握られている。

「なんでもないよ、ネビル。なんでもないさ」

ハリーは若干慌てながらもマントをとっさに背中に隠した。

「外にでるつもりなんだろ」

ネビルはじっと3人の顔を見つめた。

「ううん、そんなことはないわよ。外になんか出て行かないわ。ネビル、夜も遅いしもう寝たら?」

ハーマイオニーがごまかして言ったが不審さは取り除けてはいなかった。ハリーは時計にちらりと目をやり、もう時間があまり残されていないことを感じていた。こうしている間にも『石』が奪われてしまうかもしれない。

「外に出てはいけないよ。何をするつもりか分からないけど君たちのやろうとしていることは危険だってことは分かる」

真剣な表情でネビルは言った。

「ネビル、わからないだろうけどこれは……」

「分かるよ!」

怒ったようにネビルが叫ぶ。

「一体何が分かるって言うんだよ!ネビル!さっさとそこをどけよ」

ロンも癇癪をおこしてネビルに言う。

「……賢者の石のことだろ」

ネビルがためらいがちに口にした言葉はハリー達にとって非常に大きな爆弾だった。

「……うそ、なんであなたがそのことを知っているの?」

ハーマイオニーが呆然とした態度でぽつりともらした。これは何カ月もかけて調べてきたハリー達3人と先生たちしか知らないはずのことだったからだ。

「ちょっと前にレイブンクローのイアンに聞いたんだ。君たちがニコラス・フラメルについて調べているって」

ネビルは3人の顔を見つめながら確かめるように話しだした。

「僕、魔法史の授業が苦手だから細かいところは分からなかったけどカエルチョコレートに載ってたぐらいのことは分かったよ。そして学校が始まった時のダンブルドアの言葉を思い出してホグワーツに何かが隠してあるって気が付いたんだ!それが賢者の石っていうのは勘だったけど……」

興奮した様子で言い終えると彼は立ちふさがるように移動して3人の行く先を塞いだ。

「それなら分かるだろ!『石』が悪い奴の手に渡ったらどうなるか。『例のあの人』が復活してしまうかも知れないんだ!」

「そうだ!ネビル!バカはよせ」

ハリーとロンはほとんど怒鳴りながらネビルに訴えていた。

「バカ呼ばわりするな!ダンブルドアも言ってただろう!とても痛い死に方をしたくない人は4階右側の廊下に近づくなって!友達が危険なことをしようとしてるんだ!止めて何が悪いのさ!」

ネビルはトレバーを床に落として拳を握って構えた。床に落ちたトレバーはぴょんとはねてどこかへといってしまった。

「ごめんなさい、ネビル。それでも私たちは行かなくてはならないの。本当にごめんなさい」

そういってハーマイオニーは杖を構えると呪文を唱えた。

「ペトリフィカス・トタルス、石になれ!」

ネビルの体が気を付けのポーズをとると動かなくなり、そのまままるで石になったかのように倒れた。

ハーマイオニーが駆け寄ってネビルを起こすと彼は悲しそうな目で3人を見ていた。

「ネビル、ごめんね。たとえ危険でも誰かがやらないといけないんだ」とハリーが言った。

「きっと帰ってくるから大丈夫だよ、ネビル」

ロンがそう言い残したのを最後に3人は寮を出ていった。

 

 

 その後のことを少しだけ話すと3人は目的を達成しグリフィンドールの得点に大いに貢献することになる。稼いだ点数はハリーが60点、ロンが50点、ハーマイオニーが50点だった。そして最後にネビルが20点を稼ぎ、数年ぶりにグリフィンドールが寮杯を獲得しネビルが周りにもみくちゃにされるのは、数日後の話である。

 

 こうして最後に大波乱を巻き起こしてホグワーツの1年は終わりを迎えた。




とりあえずこれで1年目が終了です。
あまり変化のないかもしれない原作主人公たち、でもネビル君がNEBIRUになってないか心配。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。