魔法の時計は狂わない   作:炭酸ミカン

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1年目の話その7

 ホグワーツには寮対抗杯というものがある。普段の授業や行いで優秀な成績をとった生徒の所属する寮に先生が点数を与え、その1年間の合計を寮ごとに競うのだ。

これだけを聞くと機知と叡知に優れたものが集う寮と言われるレイブンクローが有利なように思えるかもしれない。事実、レイブンクローの生徒は真面目な優等生が多く授業で点数を稼ぐ機会も多い。

だがこれの点数には寮対抗で行われるクィディッチの試合の点数も加算されるため、ただ通常の授業で良い成績をとるだけでなくクィディッチも強くないとトップは狙えない。

そんなシステムをとっているため多くの点数を稼ぐことのできるクィディッチのプレイヤーはもてはやされヒーローのような扱いを受けることがある。ハリー・ポッターがグリフィンドールで強い人気を誇るのは彼がクィディッチのプレイヤーとして優秀であることも理由の1つだろう。

しかし普段の行いによって加点があると言うことは当然減点もあると言うことである。

 

 

 寮対抗杯でトップを維持していたグリフィンドールがハリー・ポッターの過失による減点で最下位に転落したというニュースが各寮に流れていた。5点や10点はまだある方だが150点も減点されると言うのは中々無いことでグリフィンドール以外の寮でも結構な話題になっていた。

「あーあ、折角今年はスリザリンの連中が寮杯をとることはなくなるって思ってたのに……誰かさんにはがっかりだぜ」

マイケルが軽く失望したようにいった。

「あら、あなたは『生き残った男の子』が嫌いだったんじゃないの?」

確かにパドマが言うように彼はハリー・ポッターにあまりいい印象を抱いていなかった。

「まあな。でもスリザリンの連中に威張り散らされるのもいい気分がしないぜ」

グリフィンドールが最下位に転落して現在のトップに繰り上がったのはスリザリンである。ここ数年の間スリザリンが寮杯をとり続けており、今年こそ他の寮がとれる絶好の機会でもあっただけにグリフィンドールの転落には失望の声も多い。

「それにしても150点も減点って何をやったんだろう?だって普段追加してもらえる点数だって5点とかなのに」

イアンも残念に思っていたがそれよりも大きく減点された原因の方に興味が向いていた。

「そうそう簡単なことじゃそんなに減点はされないでしょうからやっぱりアレなんじゃないかしら」

マイケルの方は俺が知るかよといいたげな態度であったが、パドマの方は心当たりがあるらしく人差し指を立てて得意げな表情をとっていた。

「アレって?」

「学校が始まってすぐに注意事項が色々言われたじゃない。アレを破ったんじゃないかと思うのよ」

イアンはそんなことあったっけ?と首を傾げていたがマイケルの方は思い出したような素振りでイアンに話しだした。

「あったな、そんなの。ほらダンブルドアが言っていただろ」

「ええと……授業の合間に廊下で魔法を使ってはいけませんってこと?」

「違う、そんなの結構いろんな奴が破ってるじゃないか。その後の『とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい4階の右側の廊下に入ってはいけません』ってやつだよ」

若干呆れたようにしながらもマイケルが細かく教えてくれる。

「そっちの方かー。でもあの辺りは授業で行き来する場所でもないし普通にしてたら破ることもないんじゃない?」

イアンも最初に受けた注意の中で1つだけ明確に命の危険があると言われていたのでそれをよく覚えていた。だが注意された場所は特に授業へ向かう途中で利用する道でもなかったので考えには浮かばなかったのだ。ハーマイオニーやネビルから聞く限りのハリーはそこまで規則を破るタイプに感じられなかったのも大きい、現実にはスリザリンに負けないくらいの常習犯になるのだがそんなことを今の彼が知る由もない。

「普通じゃないことしたからあれだけ減点されたんでしょう。多分『例のあの人』を倒したとか周りに言われて舞い上がってたのよ」

そうに違いないと言った体でパドマが続ける。実際ハリーは特例として1年生はクィディッチのプレイヤーになれないという規則を無視して選手となり、これまで華々しい活躍をしていてグリフィンドールのヒーローのような扱いを受けていた。

「ま、そんなことよりもだ。そろそろ学期末試験が迫ってきてる。幸いにもレイブンクローはまだそこまでスリザリンに点差をつけられている訳じゃないからここで頑張ればまだうちの寮がトップになる可能性はあるぞ」

ちょっと沈みがちな空気を察したのかマイケルが明るく言った。レイブンクローは勤勉な生徒が多いためそれなりにいい成績を維持している。クィディッチはあまり得意ではないのか普段はそこで離されてしまうが、今回トップであるスリザリンはグリフィンドールに負けているため例年と比べるとそこまで大きく点を稼げておらずレイブンクローがトップになれる余地は十分にある。

「50点くらいだから頑張ればいけるわね、でも誰かさんはいい成績がとれるのかしら?この間減点されてなかった?」

パドマはマイケルの方を見てクスリと笑った。

「明日から頑張ればいいのさ」

 

 

 3人はそこから勉強に力を入れてそこそこレイブンクローの得点に貢献するのだが、ギリギリにハリー、ハーマイオニー、ロン、ネビルの4人がグリフィンドールに点を入れて順位が逆転し狐につままれたような気分になるとはだれも考えていなかった。




身内バレして書くのがなんとなく恥ずかしくなって1年間近くも放置してしまった。
すみません。久々なんでキャラが食い違ったりしてるかもしれません。
とりあえず1年目は次くらいで終わりで2年目には割とすぐ入れるんじゃないかな。
読んでる人がいるかどうかは分かりませんが、またちょこちょこと亀更新を続けていこうと思います。
よろしければお付き合いをば

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