魔法の時計は狂わない   作:炭酸ミカン

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1年目の話その2

 結局ネビルはトレバーを見つけられず涙目になりつつも、ちょっと強気そうな知らない女の子と一緒に戻ってきた。意外と女の子にもてるんだなとイアンは思った。

 なんでも女の子が言うには列車がもうすぐホグワーツに着くらしく制服に着替えておいた方がいいとのことだった。彼女も着替えるらしく碌に自己紹介もしないまま急いでコンパートメントを出て行った。ちょっと前歯が大きいことが印象的だったかな。

「大丈夫だよ、ネビル。きっと親切な人が保護していてくれるさ」 

 トレバー見つからなかったことで落ち込んでいるネビルを励ましながら着替えをする。

「そうかな。誰かが魔法の実験台にしたりしてないといいけど……」

「流石に人のペットにそんな扱いはしないでしょ」

 ……近い将来ネビル自身がトレバーを実験台にしたりすることをイアンは知らない。

 

 

 新入生は最初に組みわけの儀式をする。彼らがグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクローそしてスリザリンの4つの寮のいずれかに所属するかを決める大事な儀式だ。それは毎年恒例の行事ではあるが何をやるかわからない新入生にとってみれば不安で仕方がないものである。

 新入生の中には兄弟から聞いたのか、トロールと取っ組み合いをさせられるんだと言っているもの、魔法の実力を測るためにテストがあるんだわと言って呪文を暗唱しているものなど様々なうわさに踊らされて皆の不安をあおっていた。

 イアンは他の皆とは違い冷静かと言えばそんなことはなく、むしろガチガチに緊張していた。理由はさっき列車であった女の子、ハーマイオニーが僕たちの近くでぶつぶつと小声で教科書に載っていた呪文を片っ端から暗唱しているからである。列車を降りた後彼女と合流、自己紹介をし終えてこの話題になってからはずっとこの調子でトレバーが帰ってきたことに喜んでいたネビルも落ち込んでいる。

「カギを開けるのはアロホモラ……よね、それで確か浮遊呪文は……」

「ねえ、ハーマイオニー」

 イアンは懐中時計を手の中で弄びながら彼女に声をかけた。流石に不安と緊張で声もどこか上ずっていたが。

「なあに?イアン」

 彼女の声は僅かな時間でさえも惜しいといった感じだ。

「やっぱりテストってあるのかな」

「あるんじゃないかしら。学校の入学テストで実力を測って寮ごとに適切になるように組み分けするのってそんなにあり得ないことではないと思うのよ」

 確かにその通りで、いい加減に決めてしまえば寮ごとに成績の優良者が偏ってしまいあまり良いことにはならなそうである。

「そっか、でもまだ何も知らない新入生にそんなことやらせないと思うよ。ネビルは何か知らない?」

 流石にちょっと前まで魔法の存在すら知らなかった生徒にいきなりそんなことをさせるとはイアンには思えなかった。そもそも未成年の魔法の使用が禁止されていなかっただろうか、予習なんか出来ないはず。

「ごめん。僕あまりそういうこと聞いてないんだ。婆ちゃんも行けば分かるとしか言ってくれなかったし」

 ネビルが知っているかと思って聞いてみたがあまり両親から聞かされたということはないようで知らないようだった

「でも授業の前に予習をするのは当然だわ」

 二人はこう自信満々なハーマイオニーを見てると不安がこみ上げてくるのだった。

「そういえば君はどこの寮に入りたいの?」

「グリフィンドールかしら、勇気のある人たちの集まるいい寮だって言う話よ。……逆にスリザリンはあまりいい話を聞かないわね」

 新生活を前にかなりの予習を積んできている彼女がそういうならそうなのかもしれない。僕もいい寮に入れるといいんだけど分からないな。

「そういえばネビルのお父さんはどの寮なの?」

「グリフィンドールさ」

「すごい、じゃあネビルもきっとグリフィンドールだよ」

 イアンがそういうと少しネビルは表情を曇らせた。

「うん、そうだと……いいな」

 それはどこか叶わないものを願うような表情だった。

 

 

 あれこれと色々な説が流れていた組み分けだったが、いざ始まってみるとただ帽子を被るだけの儀式だった。ハーマイオニーはがっかりしたような肩すかしをくらったような表情をしていて、イアンとネビルは安心からほっと溜息をついた。

 

 

 組み分けが始まりアルファベット順に生徒が呼ばれ次々と進んでいく。イアンが見ていると組み分け帽子は一瞬で決めることもあれば長々と何も反応しないことがあった。

 ハーマイオニーもネビルもグリフィンドールの寮に組み分けされて、彼が何か法則でもあるのかなと考えていると横にいる顔色が悪い細めの生徒が目に入った。黒い髪に緑の眼、額にある稲妻の形をした傷が特徴的な男の子だった。

「どこか調子でも悪いの?」

 男の子は声をかけられると思っていなかったのかびっくりした顔をしていた。

「ああ、いや、そんなことは無いんだけど……。君はどんな寮に入るか心配じゃない?その……スリザリンに入ったりしてしまわないかとかさ」

 イアンも心中は不安だったが、帽子の歌を聞く限り自分の向いた寮に入れてくれると感じていたためそこまで深く考えていなかった。

「どうだろう。不安だけど」

「だけど?」

彼がイアンに聞き返した時、丁度イアンの名前が先生に呼ばれた。

「オーティス・イアン!」

組み分け帽子のところに足を向けながらイアンは彼に言った。

「多分、何とかなると思うんだ」

 

 

そしてイアンは今後の人生を左右するだろう帽子を被った。

少し時間が経ってから帽子は彼の入るべき寮の名を告げた。

 

「レイブンクロー!」

 

機知と叡智に優れた者が集う寮、そこが彼のホグワーツにいる間の家になる。




なんとなく書いてるんで多分設定ミスとかあるんだろうけどお見逃しを

どうでもいいけどオリジナルキャラクターでレイブンクローとかハッフルパフの生徒っていないよね。なんでスリザリンばっかなんだろう?

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