月から聖杯戦争の勝者が来るそうですよ?(未完)   作:sahala

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 相も変わらず展開が進まないな~。


第4話「エリザベートの惨紛クッキング from アンダーウッド」

 ―――“アンダーウッド”・エリザベートの楽屋兼私室

 

「もう! せっかくのステージが台無しじゃない!」

 

 乱暴に槍を投げ捨てながら、エリザベートが愚痴に言う。派手な金属音と共に槍が床に突き刺さったが、エリザベートは構わなかった。

 

「デカブツを片付けたと思ったら、今度は大トカゲってどういう事よ!?」

 

 一人癇癪を起こしながら、ステージ衣装や下着を脱ぎ捨てる。突然の巨龍襲来にステージの衣装合わせを(一人で)行っていたエリザベートはそのまま駆けつけた為、エリザベートがこの日の為に用意したステージ衣装はボロボロになっていた。しかし、そんな事よりも今は汗や返り血でベトベトな身体を洗い流したかった。

 

「あー、イライラする! あの大トカゲ、今度出て来たらドラゴンステーキにしてやるわ!」

 

 ズカズカと足音を大きく立てながら、エリザベートは浴室に入ってシャワーの蛇口を開ける。たちまち、水樹の新鮮な水を炎のギフトで温めた温水がエリザベートの身体を包んだ。‟六本傷”の刻印が入った石鹸やシャンプーで返り血や汗を洗い流し、今度は浴槽に湯を入れる。凹凸は少ないが均整の取れた肢体を浴槽に沈める頃には、エリザベートの癇癪もいくらか収まっていた。

 

「せっかくブタ共の為にディナーショーにしようと思ったのに………何よ、馬鹿トカゲのせいで全部台無しじゃない」

 

 浴槽の縁に顎を乗せながら、エリザベートは憂鬱な顔になった。巨人族との戦いで死んだ‟アンダーウッド”の同士の慰霊祭を兼ねた自分のライブで料理をこさえたというのに、間髪入れずに襲撃してきた巨龍のせいで当然ながら収穫祭は無期限の延期、さらにはライブ会場になるはずだったメインステージも大部分が破壊されたいた。

 

「いっそ路上ライブにしようかしら? 学校アイドルとかマスターなアイドルとか、最初は路上ライブから始めたって言うし………」

 

 ムーンセルにいた時に見たサブカルチャーのアイドルの情報を思い出しながら、エリザベートは思考する。

 

「でもやっぱり、あのトカゲは邪魔ね。何よりデカいというだけで、ドラゴンアイドルのあたしより目立っているのは気に食わないわ。一刻も早く消し去って………いえ、待つのよエリザ。‟アンダーウッド”を揺り動かす様な悪のドラゴン………そこへ颯爽と登場するあたし………そして悪のドラゴンは倒され、勇者エリちゃんの冒険は伝説へ………これよ!」

 

 ザバン! と勢い良く浴槽から立ち上がるエリザベート。

 

「決めた! 次のステージはヒーローショーにする!」

 

 色々と思考が脱線しているが、幸いにも(もしくは不幸にも)この場にはエリザベート以外は誰もいない為、エリザベートの新たなライブ企画に異論を挟む人間はいなかった。さっそく勇者っぽい鎧を見繕わなきゃ! と満面の笑顔で浴槽から出ようとした時、エリザベートはハタと気付いた。

 

「あ、そういえば………ディナーショーに使う予定だった料理はどうしようかしら?」

 

 ステージや衣装は新調するとしても、料理はそうはいかない。保存がきく物でもないし、かと言って捨てるにはもったいない。しばらく考え込み、エリザベートはある事を思い出した。

 

「そうだ! サラに届ければいいじゃない!」

 

 ※

 

 ―――“アンダーウッド”収穫祭・本陣営

 

 一夜明け、十六夜達は召集を受けていた。案内された部屋の先には‟一本角”の頭首兼“龍角を持つ鷲獅子”の議長、サラ=ドルトレイク。“ウィル・オ・ウィスプ”の名物幽鬼にして参謀のジャック・オー・ランタン。“六本傷”の頭首代理として、ガロロの娘のキャロロ=ガンダックといった面々が席に着いていた。対して“ノーネーム”からは頭首のジン=ラッセル、逆廻十六夜、久遠飛鳥、そしてセイバーが席に着いた。キャスターは目の前で白野が消えた事に責任を感じて憔悴していたので、大事を取って休ませていた。

 

「えー、これよりギフトゲーム“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING"の攻略作戦会議を行うのです! この場に出席できないコミュニティからは作戦方針を委任状という形で受け取っているので、各コミュニティは責任ある発言をお願いするのですよ」

「分かった」

「はいはーい」

 

 司会を任された黒ウサギへサラとキャロロがそれぞれ返事をする。キャロロの特徴的な鉤しっぽを見ていたセイバーは、何かに気付いた様に声をかけた。

 

「そなた・・・・・・確か余達がよく通うカフェの給仕ではなかったか?」

「そうですよ常連さん。いつも御贔屓ありがとうございます♪」

「彼女は“六本傷”の頭首・ガロロ=ガンダック殿の24番目の娘でな。ガロロ殿に命じられて東側に支店を出しているらしい」

「ふっふーん♪ ちょっとした諜報活動です。常連さん達の良い噂もちゃんとボスに流してますよ」

「ほほう・・・・・・?」

 

 感心した様に相槌を打つセイバーだが、突然イタズラを思いついた子供の様にニヤリと目を細めた。

 

「これはイカンな、よもや余達が治める土地に間諜が紛れ込んでいたとは。これは早急に対処せねばな、アスカ?」

「そうねえ・・・・・・。あのカフェで話していた内容が全部筒抜け、というのは頂けないわよねえ。ここは一つ、地域支配者(レギオンマスター)として2105380外門に警戒を呼び掛けるべきよね、十六夜くん?」

「よし来た。帰ったら早速チラシを作ろうぜ。“六本傷”の看板に南側の間諜の姿あり! とか書いて外門中に張り回ればいいだろ」

「ちょっ、ちょっと! それじゃウチの店が潰れちゃうじゃないですか!」

 

 目に見えて慌てるキャロロに、十六夜達は悪代官の様にニンマリと笑う。

 

「それならホレ、誠意の見せ方があるよな?」

「・・・・・・・・・“ノーネーム”の皆様に限り、今後は一割引きで、」

「「「三割だ(ね)」」」

「う、うにゃあああぁぁぁっ!! サラ様~~~!!」

 

 問題児三人にぼったくられたキャロロをサラはヨシヨシと撫でる。しかし、自ら諜報活動をしていた事をバラして嵌められたのは自業自得なので、そこら辺のフォローはしない。

 

「あ、あのう・・・・・・・・・そろそろ会議を進めて良いでしょうか?」

 

 黒ウサギが恐る恐ると聞き、一同は居住まいを正した。

 

「まず最初の議題ですが、サラ様より皆様にご報告があるそうです」

 

 何? と皆が訝しる中、サラが立ち上がる。さっきまでキャロロを撫でていた時とは打って変わった沈痛な表情に、皆の緊張感が高まる。

 

「・・・・・・・・・今から言う事は、この場だけの秘密にして欲しい。決して口外してはならない」

「わ、分かりました」

 

 一同を代表して、ジンが答える。

 ゴクリ、と誰かが固唾を飲む音が大きく響く。

 

「まず一つ目。“バロールの死眼”が盗まれた」

「な!? バロールの死眼が!?」

「本当ですかサラ様!?」

 

 ジンとジャックが驚愕に声を上げる。

 

「ふむ・・・・・・黄金の竪琴と共に盗まれたか? となれば、今は巨人族の手にあるというわけか」

「いや、少なくとも巨人族の手には渡っていないだろう」

「何? どういう事だ?」

 

 セイバーの推測にサラははっきりと異論を唱えた。相変わらず硬い表情のまま、衝撃の事実を打ち明けた。

 

「・・・・・・・・・付近の警戒に出ていた“二翼”からの報告だ。巨人族が、全滅していた。それも明らかに殺された様なやり方で、だ」

 

 瞬間、各々から驚愕の声が上がった。巨龍が現れるまで“アンダーウッド”の一番の敵対勢力であり、現状でもっとも“バロールの死眼”を盗んだ容疑者として第一候補だった巨人族の全滅に、この場に集まった全員がすぐには信じられなかった。キャロロが恐る恐ると手を上げる。

 

「あ、あの・・・・・・それって、巨人族達も巨龍の被害に遭ったという事ですか? それなら別に問題は―――」

「いや、“二翼”の報告だと死後数日は経っているらしい。少なくとも、“アンダーウッド”に巨龍が現れる前に死んでいたのは確かだ」

「どういう事? レティシアを攫って、巨龍を操っているのは巨人族の背後にいた連中ではないの?」

 

 飛鳥の疑問ももっともだ。そもそも巨龍が召喚されたのは“黄金の竪琴”がレティシアと共に奪還されたのが原因だ。その“黄金の竪琴”は巨人族を操っていたローブ姿の女が持っていた物だから、いま巨龍を操って“アンダーウッド”を襲撃した黒幕はローブ姿の女で間違いない。しかし、彼女の手駒である巨人族が全滅する理由がまるで分からなかった。

 

「黒幕が巨人族を殺した、という線は無いかしら? 巨龍が召喚できたから、巨人族は用済みだから始末したとか―――」

「それは無いぜ、お嬢様。始末するしても時期が早い。巨龍と併せて“アンダーウッド”を襲った方が、こっちの戦力を消耗できる。本来の階層支配者を滅ぼし、1ヶ月に渡って連盟と戦争できた司令官にしちゃ、その判断はお粗末すぎだ」

 

 飛鳥の推測に十六夜は首を振った。無論、十六夜が相手を過大評価しているだけの可能性もある。しかし、その程度の損得勘定も出来ない相手が南側下層で最大コミュニティを相手どれるとは思えなかった。

 

「・・・・・・・・・死眼が無くなったのは、いつの話ですか?」

「気付いたのは昨日だ。巨龍が来る前日の一昨日までは私が毎日確認していた」

 

 ジンの質問に、サラは隠すことなく答えた。

 

「だから、奪われたのは恐らく巨龍襲撃の混乱の最中。それまでは連盟の金庫番が鍵をかけて保管していた」

「・・・・・・その金庫番の方は今どちらに?」

 

 ジャックがカボチャ頭の奥から訝しむ様な声音を出す。口には出さないが、金庫番が襲撃犯達と裏で繋がっている可能性を考えていたのだ。しかし、サラは沈痛な顔で告げた。

 

「・・・・・・残念だが、問い質す事は出来ん。もうこの世にはいない」

「なっ・・・・・・・・・」

「正確には自殺していた。それも、巨龍が襲撃するより前に」

「―――フン、そういう事かよ」

 

 何度目になるか分からない驚愕の事実にジャックが色を失う中、十六夜は特に驚く事なく鼻を鳴らした。

 

「おい、議長。確認なんだが・・・・・・“黄金の竪琴”の保管もソイツの仕事なんじゃないか?」

「・・・・・・ああ、そうだ」

「決まりだな。死眼と竪琴を盗んだのは金庫番だ。で、死人に口無しという所だろ」

「アイツは私の信頼できる部下だった。裏切るなんて、とても考えられないが・・・・・・」

「さあな。心変わりでもしたか・・・・・・あるいは洗脳でも受けていたか。このタイミングで自殺した、というのはそういう事だろ」

 

 ギリッ、とサラの歯が軋む音が響いた。“黄金の竪琴”の奏でる音は士気を操れたのだ。ならば・・・・・・応用で、音を聞いた物の思考を操るという離れ技も出来たかもしれない。そしてお誂え向きに、敵地であっても音楽を奏でるという楽器の神器。十六夜が示した可能性は、有り得ないと切り捨てられなかった。

 そんな恩恵をその場で破壊せず、保管庫に厳重に仕舞う様に指示したのはサラだ。さらに信頼した部下だから、と鍵を任せていたのもサラだ。それらの甘い目論見によって巨龍の襲撃を招き、信頼できる部下まで失ったと考えるとサラは自責で押しつぶれそうだった。

 

「サラ様・・・・・・」

「いや・・・・・・・・・大丈夫だ」

 

 黒ウサギの気遣わしい視線に、サラは首を振った。

 悔やむのは後でも出来る。しかし、自分を責めてばかりもいられない。自分は一本角”の頭首兼“龍角を持つ鷲獅子”連盟の議長だ。自分を信頼してついて来てくれる者達の為にも、今はこの事態の打開策を思いつかなくてはならない。

 サラは深呼吸をすると席から立ち上がり、一同に向き直った。

 

「どうやら、死眼と竪琴の紛失は私の判断が招いた事の様だ。謝罪は後ほど必ず行う。その代わり、事態解決の為に今は私に力を貸してくれ」

 

 この通りだ、とサラは頭を下げる。

 

「頭を上げて下さい、サラ様。そもそも僕達“ノーネーム”は、ゲームの攻略の為に出し惜しみはしません」

「ヤホホホ。我々は貴方に責任を取って貰おうとは考えていませんよ」

「そうですよ! 他のコミュニティ達もサラ様だからこそ、安心して方針を任せられるんですよ! これがグリフィス様とかだと、自分のせいじゃないとゴネているでしょうし」

 

 それぞれのコミュニティの代表達から、サラを励ます声が上がる。十六夜達もその言葉に異論を挟まなかった。

 

「・・・・・・・・・ありがとう。では次の報告だが、」

 

 コンコン。

 

「サラー、いるー?」

 

 ノックの音と同時に、会議室に間延びした声が響いた。声の主に、サラは顔をしかめた。

 

「エリザベート・・・・・・いきなり何の用だ?」

「何よー、ちゃんとノックはしたじゃない」

「いま大事な会議をしているんだ。つまらない用事なら後に―――」

「そんな事より、そろそろお腹を空かしていると思って昼食を持って来たわよ!」

 

 サラの迷惑そうな顔に全く悪びれず、エリザベートは持ってきた巨大な鍋をドンっとテーブルに置いた。

 

「そろそろお昼の時間じゃない? 本当はブタ共に作ったディナーショーの料理なんだけど、サラなら食べて貰って構わないわ。あ、飛鳥達もどう? 特別に私の料理を食べさせてあげるわ」

「あのな、いまはそんな場合じゃないと・・・・・・!」

「まあまあ、サラ殿。少し休憩を入れても大丈夫でしょう。時間も時間もですし、腹が減っては戦は出来ぬと言いますからお昼休憩にしてもよろしいのでは?」

 

 人の話をまるで聞かないエリザベートに、一喝しようとしたサラをジャックが宥める。見れば時計は12時を指していた。何より、サラの心労を考慮して一端休憩を入れた方が良いとジャックは考えていたのだ。

 

「ジャック殿がそう言われるなら・・・・・・」

「流石はカボチャお化け、話が分かるじゃない! とくとご覧なさい、これが私の必殺料理よ!」

 

 胸を反らしながら、エリザベートは鍋の蓋を開ける。

 瞬間―――世界は静止した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい、エリザベート」

「ん? なに?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だこれは?」

 

 エリザベートは、よくぞ聞いてくれましたと言わんばからに得意(どや)顔 になる。

 

「これぞ、“エリちゃんスペシャルシチュー・アンダーウッドremix.ver”!! ささ、冷めない内に召し上がれ♪」

 

 エリザベートは笑顔で薦めたが、誰も手をつけなかった。赤い。とにかく赤い。スープも浮かんでいる具材も真っ赤に染まり、地獄の蓋の様にグツグツと煮えだっていた。しかしサラが聞きたいのは、そんな些細な事ではない。シチューの中に唯一、真っ赤に染まっていない黒いアレは―――

 

「あの、サラ様」

「言うな」

「いや、でもあれは、」

「何も言うな」

「・・・・・・・・・どう見ても、“バロールの死眼”に見えるのですが」

 

 ジンの指摘に現実を直視しなくてはならず、サラはマジマジと鍋の中を見た。そこには、ついさっきまで話題になっていた巨人族の至宝が、湯気を立てながら真っ赤なシチューに浸かっていた。

 

「・・・・・・・・・エリザベート。これ、どこで手に入れた?」

 

 ギギギッと油が切れたブリキ人形の様に、ゆっくりとサラはエリザベートの方を向く。それに対し、特にこだわった部分を誉められた絵描きの様に満面の笑顔になるエリザベート。

 

「あ、それ? 大変だったのよ! 手頃な石がそこら辺になかったから、サラが持っているのを思い出して借りたわ。言ってなかったっけ?」

 

 もちろんサラはそんな事を聞いていない。キリキリと痛み出した胃を押さえながら、サラは質問を重ねる。

 

「・・・・・・・・・どうやって見つけた?」

「なんか前に訪ねて来た時に、そんな石を慌ててしまったじゃないの。石なんか大事に仕舞うなんて変なの、とは思っていたけど」

「・・・・・・・・・鍵は?」

「へ? 最初から開いてたわよ? だから、自由に借りて行っても良いのかな~って・・・・・・・・・」

 

 そういえばそんな事もあった。以前、サラが“バロールの死眼”を確認した時に、運悪くエリザベートが部屋に入って来たのだ。慌てて仕舞って誤魔化したつもりだったが、目ざとく覚えていた様だ。

 

「・・・・・・・・・何でそれが料理に入ってる?」

「せっかく作るのだから、普通のシチューじゃつまらないじゃない? だから焼き石シチューにしてみたわ!」

 

 えっへんと胸をはるエリザベート。因みに、焼き石シチューとは熱した石の熱でシチューを煮る料理であって、断じて石と一緒に煮込む料理ではない。

 要するに、だ。“黄金の竪琴”と一緒に盗む為に鍵が開けられた金庫にエリザベートが一足早く入り、サラには無断で借りた後、“バロールの死眼”は今までエリザベートの鍋料理の中に沈んでいたという事だ。そこまで理解が及んだ瞬間、サラの精神は一つの答えを出した。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うーん」

「サ、サラ様!? しっかり! お気を確かに!?」

 

 許容量の超えたストレスに、白眼を剥いて気絶したサラに慌ててキャロロが寄り添う。キャロロの悲鳴を聞きながら、サラの意識はブラックアウトしていった。

 

 ※

 

 ーーー“アンダーウッド”・???

 

「アウラさーん! “バロールの死眼”、見つかりましたかー?」

 

 水晶玉を覗き込んでいるアウラに、鈴は声をかけた。せっかく“黄金の竪琴”と共に奪い取る計画を立てていたというのに、いざ盗もうとしたら死眼の方は消えていた。出来るなら回収したい、と思っていたアウラは今の今まで潜入させた使い魔を通して“アンダーウッド”に探りを入れていたのだ。

 アウラは表情の消えた顔でゆっくりと振り返る。 

 

「ア、アウラさん・・・・・・・・・?」

「リン・・・・・・・・・ちょっと後ろを向いて、耳を塞いでいて貰えるかしら?」

 

 言っている事の意味が分からないが、アウラの有無を言わせない口調に、リンは慌ててその通りにする。リンがしっかりと耳を塞いだのを確認すると、アウラは思いのままに、心から叫ぶ。

 

 それでは皆様、ご一緒に。

 

「―――この、どこに出しても恥ずかしいバカ亜竜がああああああああああああああああっ!!」




 概念摘出!

 SSR礼装『エリちゃんスペシャルシチュー・アンダーウッドremix.ver』

保有スキル:敵見方全体の即死耐性をダウン。
詳細情報:アンダーウッドの新鮮な食材と共に、“バロールの死眼”を煮詰めた至高の一品。お気に召して頂ければ幸いです。

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