4月18日昼 岩礁
「今日モ居ナイネ」
「モウチョット、待ッテミヨウ」
「ソロソロ、入レナイカモ、ネ」
同じ頃、提督室
「てっ、提督!が、がが、岩礁に!」
部屋に飛び込んできたのは青葉である。
秘書艦の扶桑がにこやかに応じる。
「ハイ、背伸びをして深呼吸~♪」
「すー・・・・はー・・・」
「もう1度♪」
「すー・・・・はー・・・」
「落ち着きましたか?」
「はーい・・って、違う!違うんです提督!」
「どうした青葉さんや」
「岩礁に!深海棲艦が!並んでるんです!」
「は?青葉、エンタメ欄の記事に困ってるからと言って」
「違います!本当なんです!」
「えー?」
「ホントだ・・・」
提督は岩礁側の監視小屋にたどり着き、据え付け型の大型双眼鏡で見ていた。
「よく裸眼で解ったな青葉」
「ジャーナリストは観察眼が大事です!」
「ふむ。これは偉い。褒めてあげよう」
「ソロル新報を朝晩2回発行して良いですか?」
「それは文月と相談してください」
「ダメって事じゃないですか~」
「しっかし、小屋に向かって行儀よく並んでるなあ・・・」
「そうなのですか?」
「ほれ、扶桑も見てみ」
「・・・・あ。なんか可愛いですね・・・」
「うむ」
提督は考え込んだ。攻撃するつもりなら、あの数が居れば小屋なんて一瞬で粉だ。
待ち伏せならDMZ指定の外で潜って待ってるだろう。
小屋に並んでるってことは・・・あ。
「青葉!」
「なんですか!?」
「特大記事が書けるかもしれないがアルバイトしないか!」
「やります!何でも言ってください!」
「鳳翔の店で大鍋一杯のカレーとご飯を作ってもらってきなさい!ほいお金!」
「は?」
「理由は見れば解る。多分間違いない。さぁ行ってきなさい!」
「い、いってきまーす」
「扶桑!」
「はい」
「研究室の夕張と、スコーピオンに居る蒼龍、飛龍に来るよう伝えてくれないか?」
「はい」
「ちょっと遠いな。よし、後で間宮の店で何か食べなさい」
「うふふ。頂きます」
「提督!お呼びですか?」
「お、すまないな3人とも。扶桑もお疲れ様」
そこに青葉が大鍋と御ひつを乗せた台車と共に現れた。
「ふえー、カレー重いですぅ」
「カレー?」
「そう。深海棲艦達が来てるんだ。小屋を先頭に並んでる」
蒼龍がピンときた顔をした。
「・・・あ」
「多分、あの子じゃないかな」
「うっは!凄い数だな!」
岩礁の小屋に近づくと、その数が次第に分かってきた。
イ級やチ級など、20体は居るだろう。
行儀よく並んでいたが、提督達を見つけると大きく手を振ったりしている。
「な、なんですかなんですかこれ!」
「青葉、しっかり取材しろよ!」
「任せてくださいっ!」
「テートクー」
「マタキター!」
「カレーテートク!」
「なんだそのカレー提督って」
青葉はシャッターを切りまくっていた。提督になつく深海棲艦!信じられない光景です!
夕張は録画し続けていた。次のオフには秋葉原へNASとHDD買い足しに行こう。
そして。
「イタダキマース!」
「コレガ、カレー・・・」
「オイシイ!」
提督達は早速深海棲艦にカレーライスを振舞った。
なんとまあ、皆、上手に食べるわと夕張は思った。特にイ級。
青葉はヘブン状態だった。1面からエンタメ欄まで埋め尽くす勢いですよ!特にイ級の器用さ!
満腹で横たわる深海棲艦の1隻へ、蒼龍が近づいていった。
「イ級ちゃん、元気?」
「・・・アノ、ヲ級、ダヨネ?」
「そうよ」
「ソッチハ、楽シイ?」
「そうねえ。提督は相変わらず変だけど」
「ソレハ、ワカッテル」
提督が盛大にくしゃみをした。
「カレー食べに来たの?おいしいよね」
「ソレモ、アルケド」
「けど?」
「私モ、ソッチニ、戻リタイ」
「そっか」
「戻レルカナ?」
「相談に乗るよ。他にもそういう子が居るのかな?」
「補給組ハ大体、ヲ級ノ話ニ、興味ヲ持ッタケド、マダ半信半疑」
「そうでしょうね」
「アト、デキレバ」
「何?」
「イツ来レバ会エルカ、知リタイ。何日モ待ッテタカラ、疲レタ」
「そっか。頑張ったね。まずは会う日を決めましょうか」
「ウン」
「提督!」
「なんだい?」
「カレー曜日を決めましょう」
「なにそれ?」
「深海棲艦の子達と会う日です」
「なるほど。カレー曜日か。まあ金曜日が妥当か?」
「そうですね。お昼のカレーを多目に作ってもらって持って来たら良いですし」
「こっちで皆とカレー食うのも良いだろう」
「カレー、金曜日?」
「オ昼ニ来レバ会エル?」
「そうよ。金曜日のお昼。カレー作って待ってるわ」
「カレー曜日!金曜日!オ昼!解ッタ!」
「食事の後で相談があれば聞くわ。それで良いかしら?」
「ウン!解リヤスイ!」
「今日相談したい子は居る?」
「今日ハ皆疲レテルカラ、今度ノ金曜ニ、マタ来ル」
「そっか。偉かったね。待たせてゴメンね」
「ウウン。マタ会エテ、嬉シカッタ」
「そうね」
「ア、アノ」
一隻のチ級が近づいてきた。
「金曜日ハ、カレーラーメンモ、アル?」
「提督、どうします?」
「良いんじゃないの?箱で買って備蓄しとけばいい」
「アリガトウ!食ベテミタカッタ!」
「どういうこと?」
「カレーラーメンハ、オイシイッテ記憶ガアルケド、他ガ思イ出セナイ」
「そっか。うん。用意しとくね!」
「金曜日!マタ来ル!」
「皆、またおいで!」
「マタネ!提督!」
「金曜日!オ昼!カレー!」
そうして深海棲艦達は海に帰っていった。
見送った後、提督は二人を見てマズい事に気付いた。
青葉と夕張の目が星になってる。この場面で遭遇させてはいけなかった気がする。
「夕張さん!青葉感謝してもしきれません!後で必ずお返しします!」
「メモリカードの予備なんて幾らでもあるからあげるわ!」
「良いのですか!青葉嬉しいです!」
「その代わり、データ頂戴!」
「秘密を守れますか?」
「もちろん!」
「このスクープのピンチを救ってくれた恩返しです!過去分も全部どーんと差し上げちゃいます!」
「あ、あの、青葉さん」
「なんですか提督?」
「私のネタは止めてください」
「えー」
「・・誰がここに連れてきたのかな?」
「外します!」
「よし」
「あ、え、わ、私のもあるのかしら?」
「扶桑さんはないですよ?あ、提督の布団を」
「きゃあああああ!そのネタまだ持ってるの!?」
「写真付きで持ってます!」
「そ、それは止めて。お願い」
「渡すものが無くなっちゃいます・・・」
「青葉さん、別にエンタメ欄はいいよ。調査の情報源にしたいのよ」
「そうですか?じゃあ真面目に書いた1面とか社会面が良いですね」
「ええと・・・扶桑さん?私の布団に何したの?」
「何でもないです!何でもないです・・・・」
そういえば青葉も趣味の為に大量のデータを持ってるよな。
ふむ、この出会い遭遇は吉と出るか凶と出るか。
しかし、私の布団に何したんだろう・・・気になる。
長門型抱き枕欲しいです。
と、思ったら見つけたので、ついポチってしまいました。
長門「おっ、お前・・・」