艦娘の思い、艦娘の願い   作:銀匙

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長門の場合(30)

 

カ級が呼びに行ってから10分後、ル級をつれてカ級が戻ってきた。

「ハーイ長門サーン、ドウシタノヨー?」

「連レテキマシタヨ?」

「カ級、ありがとう。ル級、忙しい所すまない」

「平気ダヨー、何カアッタ?」

「抽選について、進言と提案があるのだ」

「ウン?」

「間違ってたら教えて欲しいのだが、これで合ってるか?」

長門が見せた紙にはこう書いてあった。

 

抽選の玉数:10000球

当たり玉数:100球

救済措置回数:累計50回

1回の救済数:400食

 

「ウン、間違ッテナイヨー」

「この場合、50回外れ続ける確率は約60%だ」

カ級が頷いた。

「大体半数近クガ救済ッテ、皆言ッテル」

「6000体が1回400食の救済で食べ終わるには16回必要だ」

ル級が頷いた後、首を傾げた。

「ソウ・・ダネ・・アレレ?」

「なんだ?」

「救済枠ッテ毎週ヤッテルカラ、50回アル筈ナンダヨー」

「そうだ」

「デモ16回デ終ワッチャウノ?毎回満員近イヨー?」

ル級とカ級は顔を見合わせて頷いた。

長門は続けた。

「先程カ級に聞いたのだが、途中で当たっても50回外れたら救済されるな?」

「ソウダネー、当タッタ時ニスタンプカードハ回収シテナイヨー」

「とすると、1万人全員が50回+当選回数分後に1回救済措置を受けるんだ」

「ア」

「当選者分は約40%、つまり4000食」

「一方、救済枠の余剰分は34回。それに400食をかければ13600食だ」

「・・・ツマリ、当選者が食べててもおよそ1万食ハ余ル筈ダネ」

「そうだ」

「・・・アレレー、ジャア毎回200食分ハドコ行ッテルノ?」

「ちなみに、摩耶達に聞いたのだが」

「ウン」

「毎回カレーは320食しか用意してないそうだ」

「ヘ?」

「摩耶が言うには300食だと少し足りないから、大盛り分と余裕を見て320にしてる、と」

 

 ザ・ザーン。ザザザーン。

 

しばらく、事実が沁みこむまでル級とカ級はぽかんとしていた。

が。

「ェェエェェエエエェエエエエエ!?」

「ウッソー!?」

長門は二人の絶叫に頷いた。

そりゃそうだろう。

500食になるよう調整していたつもりが300食しか出ていなかったのだから。

「ちなみに300食として計算すると、50回で9800食程度だから概ね計算が合う」

 

ル級はがっくりと岩に四つん這いになった。

「ソンナ・・・ダカラ後ノ方デ並ブト売リ切レニナルッテ言ワレルノカ・・・」

長門はル級を見ながら、摩耶からの伝言を伝えた。

「だが、摩耶達が応じられるのは現状で限界だったらしい。だから丁度良かったのだ」

「ヘ?500ジャナイノ?」

「その、500という数字はどこから出て来たんだ?」

ル級はしばらく空を睨んで唸っていたが、

「・・・・ア」

「思い出したか?」

「・・・多分私ガ、トリアエズ500ニ制限シヨウッテ・・言ッタカラ・・ダヨー」

長門は溜息を吐き、カ級はジト目で見た。

「会長・・確認シテナカッタンデスカ?」

「ゴメンダヨー、デモ結果的ニ正シクテ良カッタヨー」

そして、長門は続けた。

「ちなみに金曜からは、毎日500食の準備をしている。ル級から500食と聞いたのでな」

「アーウー」

「ただ、余らせるのは勿体ないから、クジと救済枠を計算したのだ」

「フンフン」

「こうすると、大体ピッタリになる」

 

抽選の玉数:10000球

当たり玉数:400球

救済措置回数:連続30回

1回の救済数:100食

 

「これからは毎日配るから、30回だとおよそ月に1度は救済が発動される」

カ級がうんうんと頷いた。

「当選も400食になるから、救済枠に行く確率も30%程度に下がる」

「当タッテ食ベラレル確率ガ増エルッテ事ネ?」

「そうだ。余る数も60食程度だから、大盛り等を考えれば誤差といえる」

「ナルホドネ」

「ただし、これは当りが出たらポイントカードは回収しないといけない」

「本当ニ1ヶ月外レ続ケタ人ダケ救済ッテ事ネー?」

「うむ。ちなみに現状通りとするなら、こうなる」

 

抽選の玉数:10000球

当たり玉数:150球

救済措置回数:累計30回

1回の救済数:350食

 

カ級が渋い顔をした。

「現状通リッテ事ハ、当タッタ人モ更ニ救済枠デ食ベラレルンデショ?」

長門が頷いた。

「当選者がかなり有利な仕組みだな」

「何トナク納得デキナイナー」

ル級は腕を組んだ。

「外レ続ケテモ月1回ハ食ベラレルンデショ?」

「そうだな」

ル級はガリガリと頭を掻いた。

「当タッタ人ノポイントカード回収ッテ、微妙ナンダヨネー」

「というと?」

「例エバ現状ダト、49回外レテ50回目ニ当タッタトスルデショ」

「うむ」

「アル程度溜マッテルトネ、回収シヨウトスルト泣クンダヨー・・」

カ級が遠い目をした。

「確カニ、アト1回デ食ベラレルッテ所マデ溜メタラネ・・」

「当タリヲ順番ノ繰リ上ゲト見ルカ、エクストラボーナスト見ルカ、カ」

長門が答えた。

「後者を取っても当選者数は100体から150体に増える」

「・・ウン」

「救済措置までの回数も50回から30回に減る」

「・・オオ」

「しかも週1回から日に1回になるから7倍速く貯まる」

「・・オオオオ!」

「年1回から月1回と説明するより、そう言った方が説得力はあるだろう」

「ソウダネ」

「ちなみに前者の場合は、当選数が一挙に4倍に増える」

「オオ!」

「勝って良い気分で食べられる確率が今の倍以上に増える」

「イイネ!」

「救済措置までの回数、7倍速く貯まるのも一緒」

「ソウダヨネ!」

「ただ、ポイントカードは回収、だ」

「ウームムムムム」

長門は説明しながら、多分当選数150で現状通りになるだろうな、と思った。

だが、カ級はル級に訴えた。

「会長!」

「ナ、ナニ?」

「私、本当ニクジ運無インデス!クジ運ダケハドウニモナラナインデス!」

「マァネ・・・」

「ダカラコノ機会ニチョットデモ平等ニ!何卒!」

長門がぽつりと言った。

「滅多に当たらなければ、不公平感は少ないかもしれないな」

二人は長門を見た。

「エ?」

「ドウイウコトデスカ?」

「ちょっと待ってくれ・・ええと・・」

長門が電卓を再び叩きはじめるのを、二人はじっと待っていたが、

「ふむ、こういうのはどうだろう?」

 

抽選の玉数:10000球

当たり玉数:10球

救済措置回数:累計30回

1回の救済数:340食

 

 

カ級が目を見開いた。

「タッタ10人シカ当タラナイノ!?当タル訳無イジャン!」

ル級がそっと尋ねた。

「ア、アノ、ポイントカードハ・・」

長門が頷いた。

「回収しないで良い」

ホッとするル級の横で、カ級が気付いた。

「アレ、総食数ガ350ニ減ッテマセンカ?」

「そうだ。今の摩耶達の作る分量だ」

「他ニモ理由ガアルンデスカ?」

長門が肩をすくめると

「将来、1万5千とか2万になった時に備えて生産量を温存しておく、という事だ」

ル級がごくりと唾を飲んだ。

 

 


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