艦娘の思い、艦娘の願い   作:銀匙

114 / 526
file68:リ級ノ本音

 

11月8日夕方 某海域の小島

 

「アラアラ、今日ハ、レ級サンモ一緒ナノネ」

既に目を覚ましていたリ級は、タ級と一緒に現れたレ級を見つけると言った。

「リ級サ~ン、久シブリ~」

「元気ソウネ。楽シイ事デモアッタ?」

タ級はふと気づいて溜息を吐いた。

そういえば私に提督弄りをする時のリ級と、レ級の普段の行動って似てる。

気が合うみたいだし、もしかして根っこは似たり寄ったりなのかしら。

「デネ、リ級サン」

「ナニ?」

「提督ニ、タ級ヲ、嫁入リサセナイ?」

ぶふぇっ!

タ級は突然の提案に咳き込んだ。何を言い出すのこの変態戦艦!

「ウーン」

え?ボス、何で考え込んでるの?!

「タ級、提督にホの字なんだって~」

「チョ!何ヲ言イ出スノヨ!」

「ソレハ前カラ知ッテルンダケドネ」

「ボスマデ何言ッテルンデスカ!」

しかし、リ級とレ級がニヤリと笑いながらタ級を向くと、

「違ウノ?」

というと、タ級は真っ赤になって

「ウ、ア、ソノ、アノ、エエト」

と、口ごもってしまった。

「可愛イワヨネ~」

「タッチャンハ純真ダカラネエ」

「深海棲艦ノ、グラビアアイドルハ、伊達ジャナイワネ」

「良イ子デショウ?」

二人でひとしきり弄り、タ級が真っ赤になって黙りこくった後、リ級は少し俯くと

「・・良イ子ダシ、幸セニナッテ欲シイケド、一番ノ戦友デモアルノヨネ」

と、言った。レ級はそんなリ級を見てうんうんと頷くと、

「寂シイ?」

「チョットネ」

「本音ハ?」

「・・ゴメン。スッゴク寂シイカラ居ナクナッテ欲シクナイノ」

「ダヨネ。私モ、タッチャン居ナクナルノハ寂シイ」

「後ネ、私ハ艦娘ニ戻ルワケニ行カナイノヨ」

「ドウシテ?」

「誰ガ「彼女」ノ面倒ヲ見ルノヨッテ話」

「ア」

「暴走シタラ洒落ニナラナイデショウ?」

「・・・・・ウーン」

レ級は少し考え込むと、閃いたように目を開き、

「ジャア「彼女」ヲ使ッテ戻シタラドウカナ?」

タ級とリ級は眉をひそめた。

「ハ?」

「エット、「彼女」ハ作ルカ、治スカハ出来ルケド、艦娘ニ戻ストカ出来ナイデショ・・・」

「デモ、彼女ガ、大人シク艦娘ニ作リ変エテクレレバ万事解決ジャナイ?」

「ソリャソウダケド、ドウヤッテヤルノヨ?」

「艦娘ニ戻スヨウニ、操作ヤ設定ヲシタラ良インジャナイカナ」

「設定?」

「今マデ「彼女」ハ好キ勝手にシテタカラ、「深海棲艦」ヲ「作ッテ」ルンデショ?」

「ソ・・ソウネ」

「傷ツイタ深海棲艦ヲ寝カセレバ治療シテクレルシ、誰モ何モ言ワナイカラ自分デ考エテルンダト思ウ」

「ソウネ」

「ダッタラ、「今度カラ艦娘作ッテ!」ッテ頼ンダラ良インジャナイ?」

「ソンナ簡単ナ事ナノカ?」

「解ンナイケド、作ルノガ上手イ人ナラソウイウノ出来ソウジャン?」

「ソ、ソンナ都合ノ良イ人居ルカナ?」

「ダカラ提督ニ、タ級ヲ嫁ニヤルカラ、ソウイウ人連レテ来テッテ頼モウヨ!」

「オイ。私ガ袖ノ下カヨ」

「ソノ時、リ級モ一緒ニ戻レバ良イジャナイ」

「・・・・悪クナイケド、私ハ別ニ提督ラバージャナイシナア」

「ソウナンダ」

「マ、タ級ノオ母サンッテ設定デ良イカ」

「設定?!」

「ヨシ!ジャア提督ニ相談ニ行キマショ!」

「ハァ・・・今度ノ水曜日ハ大変ソウデスネ」

「何言ッテルノ。明日行クワヨ明日!」

「サスガリ級サン!話解ル~!」

「イエーイ」

ハイタッチするリ級とレ級に、タ級は慌てて聞いた。

「アッ、明日ハ月曜デスヨ?」

「ドウセ提督ハ島ニ居ルンデショ?旗デモ振レバ大丈夫ヨ、キット」

「ヤレバナントカナルヨネ!」

「ヨゥシ!ジャア朝ウチノ拠点ニ集合ネ。コノ3人デ」

「解ッタ!」

タ級は深い溜息を吐いた。今度からリ級とレ級は会わせない方が良い。混ぜるな危険、だ。

でもこの話。上手く行くと良いな。

 

 

11月9日早朝 工廠

 

「ふわあ~あ」

工廠長は身支度を済ませると外に出た。

まだ冷たい朝の空気。海面から立ち上る水蒸気が薄い霧のようだ。

「おはようございます!」

工廠長が声の方を向くと、いつも通り睦月がちょこんと敬礼していた。

「おはよう睦月。今朝も早いのぅ」

「えへへ・・・へあっ!?」

睦月がぎょっとした顔で自分を見ているのに気づいた工廠長は、

「どうした?」

「あ・・・あ・・・あああああ」

カタカタと震える指で工廠長の背後を指差す睦月。

つられて振り返ると、そこには深海棲艦が居た。

リ級、レ級、タ級。それもeliteかflagship級。

工廠長は普通なら飛び上がるほど驚いたはずだが、2体には何となく見覚えがあった。

「んー、あんた達、ひょっとして研究班の所に来てる方々かの?」

タ級がほっとした顔で口を開いた。

「約束ノ曜日ジャナイ時ニスミマセン。提督ト研究班ノ人ニオ願イガアリマシテ」

「まだ5時前じゃから、誰も起きとらんぞ」

「ア、ジャア後デ出直シマ・・ムグググ!」

しかし、レ級はタ級の口を塞ぐと

「何時ニ来タラ一番早ク会エルカナ!何トカ会イタイノ!」

「ふむ。摩耶と夕張は早朝ランニングしとるから、5時半位かのう」

「30分!ドッカデ待ッテテモ良イデスカ!」

「プハッ!レ級!アンマリ無理言ワナイノ!」

「まぁ、そこの木の桟橋の所で待ってるなら構わんと思うがの」

「アリガトウゴザイマス!」

「睦月」

「は、はい!」

「すまないが、実技棟のトラックで待ってて、摩耶達に知らせてくれんか?」

「解りました!」

 

「ほれ」

桟橋に座っていたレ級達が顔を上げると、工廠長がお茶を盆に載せて持っていた。

「もう冬じゃからの。南の島といえど寒かろう」

「ア、スイマセン」

「頂キマス」

「アリガトウ」

「わしも頂くとしよう。朝のこの眺めが好きでのぅ」

「霧ノ海原、デスカ」

「うむ。幻想的じゃろ?」

「太陽ガ眩シイデス」

「ははははは。そういうもんかの」

 

「え?今?」

「はっ、はい。研究班の皆さんを知ってるようでしたけど・・」

寝ぼけ眼の夕張をトラックに引っ張ってきた摩耶は、睦月から話を聞いて首を傾げた。

いつもの、といえば確かにタ級とリ級は居るが、レ級は知らない。

それに、今日は月曜日だ。いつもの日じゃない。

知らないタ級とリ級とレ級が、なりすましているかもしれない。

「夕張」

「うん」

「提督と長門に知らせてこい。アタシは姉ちゃん達を起こしてくる」

「そうだね!ちょっといつもと違いすぎる」

「あっ、今皆さんは工廠の裏の桟橋に居るはずです!」

「了解。睦月は一旦寮に戻ってろ」

「えっ!?ご、ご存じ無い方なんですか?」

「多分大丈夫だと思うけど、念の為だ」

「で、でも、工廠長さんが今応対してます!」

「なにっ!?」

「お茶出しておくからって」

夕張と摩耶は顔を見合わせると

「急ごう!」

「はい!」

「睦月は自室で隠れてな!後でインカムで知らせるから!」

「は・・はい」

 

「・・・・」

睦月は寮に戻ったものの、唇をきゅっと結ぶとドアを開けた。

工廠長さんの危機に何もしないなんてやっぱり嫌だ!

駆逐艦の自分が持てる対戦艦装備って何だろう?

相談してみよう!

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。