緋弾のアリア~理念の刃~   作:サカズキ

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バスジャックとかハイジャックとか、好きで巻き込まれる訳じゃない『上』

最悪だ。なぜって?だってそりゃ暴走しているバスに乗っているのだから。

 

「なぜ俺がこんな役を………」

 

武偵高生徒のひしめく社内に突入したのはいいが、乗り物酔を起こしてどうしようなく気持ちが悪い。どうしてこうなったか。それは、朝に受けた呼び出しが原因だ。

 

 

 

朝。久方ぶりにゆっくりしてから寮をでた。今日は雨なので、徒歩で行こう。その時に7時58分発のバスが寮の前に来ており、そのなかは生徒たちでひしめく。俺からすれば、乗り物酔する上にあれだけ人がいれば地獄だ。それを横目に歩き去る。その道中に携帯がなる。

 

「もしもし?」

 

『悠?今すぐC装備で、女子寮の屋上に来て』

 

ただそれだけの言葉だが、それでも電話の相手。アリアの声音から、世間話ではないのは分かった。

 

「分かった。C装備で女子寮屋上だな?」

 

『そうよ!早く来なさい』

 

一方的に通話が切られた。そのまま急いで走り、女子寮の屋上に出る。そこには、同じC装備のアリアとキンジ。それに狙撃科(スナイプ)のレキがいる。

 

「事件か?」

 

遠くを見つめるアリアに話しかける。

 

「えぇ。ちょうどSランクが四人。いい感じ」

 

「で内容は?」

 

「バスジャックよ」

 

「バスジャックねぇ…………バス?」

 

「武偵高通学バス。あんたたちのマンションを7時58分に出たやつ」

 

ああ。あれか。ん?まてよ。あれには沢山の生徒が乗っていたような?なら、ジャックなんて出来るわけが。

 

「考えているのはわかるわ。でも社内に犯人はいない。その代わり車体のどこかに爆弾が仕掛けられてる」

 

「爆弾。ジャック。まさか………『武偵殺し』?」

 

そう呟くと、キンジが否定するように言った。

 

「まて、あの犯人は捕まっただろ?なのになんで……」

 

そう言い終わる前に、アリアが答えた。

 

「違う。真犯人は別にいるのよ」

 

「は?どう言うことだよ!訳わかんねぇ。説明しろ」

 

パニクっているキンジをなだめて、アリアに向き直る。

 

「ともかく。今回のが真犯人にしろ、摸倣犯にしろ何とかするのが先だ。そうだろ?」

 

そういって何とか場を納める。そこ後、ヘリに乗り空中からバスをおう。

 

「半ば屋上に呼び出されて、予想していたが。うっぷ」

 

あんたねぇみたいな顔でアリアが見てくるが、これは仕方がないだろう?体質なのだから。彼女は彼女で愛用の銃をメンテしている。

 

『見えました』

 

アリアとキンジ。それにレキと俺はインカムをつけていて、それを通して会話している。うるさくて普通の話し声では聞こえないんだ。

 

「み、見えん」

 

『ホテル日航の前を右折したバスです。窓に武偵高の生徒が見えます』

 

『あんた視力いくつよ?』

 

『両目ともに6.0です』

 

キンジとアリアが顔を見合わせて驚いている。俺は妹の右目限定だが、それ以上の目を持っているので、驚きはしない。

ヘリがようやくバスに近づく。パッと見ただけだが、かなりの速度だ。

 

『空中からバスの屋上に移るわ。あたしは外側。キンジと悠は中から探して。レキはヘリに待機』

 

キンジはまだ納得いかないようだが、するしかないのだ。しなければ、速度を落とせば爆発はお約束。ならいつかは、バスの燃料切れで爆発することも可能性で出てくる。

強襲用のパラシュートをつかい、バスの屋上に降り立つ。その時にキンジは転げ落ちそうなのを、アリアが右手をつかんで何とか防いだ。そのあと車内の様子をミラーで確認し、窓を中の人に開けてもらい入った。瞬間に色々と言われたが、交錯しすぎて訳がわからん。その時。

 

「キンジ!悠!」

 

「武藤!お前いたのか!」

 

「あぁ。ちくしょう!なんだって俺がこんな目に」

 

それは、この場の誰もが思っているのではないか?

 

「ととととと遠山先輩!助けて」

 

俺は知らんが、キンジは知っているようで、彼が事情を聞いている。そして、俺に向き直ると手にあったのは携帯で。

 

「速度を落とすと、爆発、しや、がります」

 

なんかイラつく言いかただが、問題はそっちじゃない。

 

『悠?キンジ?聞こえてる?なかの様子は?』

 

「生徒と運転手は無事だ。そっちはどうだ?」

 

『あったわ、車体下。ガジンスキーβ型プラスチック爆弾。「武偵殺し」の十八番。炸薬量は、ざっと見積もっても3500立法センチはあるわ!』

 

殺す殺さないじゃない。そもそもハイジャックやバスジャックはあくまで要求や目的の手段。これではただの殺戮と変わらん。

 

『潜って解体をーーーーきゃ!』

 

アリアが叫んだ瞬間。バスに衝撃が襲う。中にいた俺たちもそれの被害に会う。その招待は一台のオープンカー。今は距離をとっている。

 

「アリア大丈夫か?」

 

そういって通信機に問いかけたが、応答はない。衝撃によって気絶したか?それなら早く車内に入れないと。そう思いキンジと共に屋根を伝って、後部に回り込もうと窓から身を乗り出す。アクセル音がしてそちらを向くと、そこにはバスの後ろにいた車が。その座席にはUZIがあり、その銃口がこちらを向いている。

 

「ま、まずい!「みんな伏せろ!」」

 

キンジと共に大声で車内に叫ぶ。そこは武偵。叫んだ瞬間にみんな頭を下げた。が、俺とキンジは窓から身を乗り出していたので、反応が遅れた。二人して車内に吹っ飛ばされた。

 

「いっつつ」

 

「これは何回なっても慣れないな」

 

グラリ。車が変な風に揺れる。と言うか実際に揺れた。運転席を見ると。

 

「ちぃっ!まずい」

 

運転手の肩に被弾しており、ぐったりとハンドルにもたれかかるようになっていた。

 

「有明コロシアムを、右折、しやがれ、です」

 

落ちている携帯から器械質な音声が流れる。

 

「…………武藤!運転変われ!なんとしてでも現状維持だ!お前のドラテク信じてるぜ!」

 

「お、おう。分かった!任せろ」

 

運転手を座席に寝かして、代わりに武藤が運転席に座る。ついでにC装備にあったメットも被らせる。これでバスの速度は確保した。バスはすでにレインボーブリッジに入ったところ。あと一時間もしないうちに、バスは都心に入る。燃料を計算しても、都心を抜ける前に必ず爆発する。

 

「くっ!」

 

「大丈夫かキンジ?」

 

振り落とされそうになりながらも、必死にバスにしがみつく。何とか屋上に上りきり、ワイヤーを使って上ったアリアがいる。

 

「無事みたいだな」

 

「ヘルメット以外はな」

 

「そういうあんたはどうしたのよ?」

 

「運転中の武藤にかしてる」

 

ため息をつかれ、あきれられた。その瞬間。

 

「なっ?馬鹿!」

 

振り向く。前方にいつの間にかいた、例の車が俺たちに向かってUZIを撃ってきた。当たる。このままだと、アリアは庇おうとこっちに向かって突進してくる。キンジは呆然として。このままでは二人が傷つく。失うまた。そう思った瞬間に、車の上にいると言うのに俺は気がつかないうちに明鏡止水を使っていた。銃弾がスローモーションのように見える。いつものように、ジャケットから高周波ナイフをとりだし刃をだして、銃弾を斬る。自分のだけではなく、キンジやアリアを狙っていた弾丸も斬り落とす。

 

「悠、お前……………」

 

「話はあとだ。俺は目の前の虫を黙らせてくる。お前らは爆弾を何とかしろ」

 

そういって俺は目の前の車に飛び乗るために少し下がり、思いっきりとんだ。飛んでいる時に、撃たれたが難なく斬り落とし、車の座席に飛び乗った。銃口がこちらを向くが、打たれる前に壊してやった。あとは楽だ。遠隔操作を切って、手動にしてやればいい。その辺りもなんとこなして、車の主導権を握り、バスの邪魔になら無いように路肩に止める。バスが通りすぎるときに、キンジとアリアが見えた。俺は二人に右手の親指をたてて、二人に見せる。

 

「さて、あとは何とかするだろ」

 

そうおった矢先。パンッ!銃声が三つした。

その瞬間、バスから何かが飛んでいった。そのまま海に落ちる。

 

ードウウウウウッ!!

 

爆発して海に水柱ができる。

 

 

 

 

何とか死人なしで帰ってこれたが、一応俺とキンジ。アリアは武偵高病院で検査をしてもらうことにした。結果は言うまでもなく大事なし。アリアが少し時間かかったが、まぁ問題ないだろな。

 

「『武偵殺し』か」

 

病院の待合室で俺は一人ごちる。俺が去年のクリスマスに巻き込まれた事件も、武偵殺しの仕業だったらしい。俺に記憶は無いが、あの事件は相当ひどいものだったらしい。犯人は捕まったと聞いたとき、俺にはふと言い様のない疑いの心があった。

『本当にそれはあの武偵殺しか?』と。一言で言うなら、あっけなさ過ぎる。資料を読むとあり得ないくらいに狡猾なやつが、そんな簡単に。

 

「そうよ!だから言ってるじゃない。誤認逮捕だったの!」

 

いつの間にか戻ってきていた、アリアが目の前にいた。

 

「どうした?そんなに怒って?悪いもんでも食ったか?」

 

「違うわよ!それはキンジが!………………もういいわよ」

 

何かキンジとあったらしい。聞かない方がいいだろ。本人たちの問題だし。

 

「結局。日本まで来て、こんな」

 

イラついてるのが、いやと言うほどわかる。

 

「キンジの事。嫌いになってやるなよ?あいつにも、身を焦がすようなことがあったんだ。自分を棚にあげて、誰かを見下すのはやめてほしい」

 

「なによ!あんたまで!………もう……いいわよ」

 

そういって彼女は歩いて言った。

 

「誰だって、自分が一番不幸だと思うよな。例え、そうでないとわかっていても」

 

俺は彼女の背中を見つめながら呟いた。


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