ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

77 / 93
お待たせしました! とりあえずパソコンを新しく買い換えました。
前のパソコンからデータのサルベージはまだしていないので、現状で用意出来るのはこの作品だけですが。

今回、セイバーのマスターが判明します。


第七十三話 「魔女と剣の英霊」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第七十三話

「魔女と剣の英霊」

 

 ディオドラが去り、オカルト研究部の誰もがアーシアを心配していたのだが、アーシアは特に気にした様子も無く、いつも通りの時間になると帰路についていた。

 心配した一誠が今日くらいは自分の家に泊まるかと聞いてきたものの、それを丁重に断って自宅に通学路を歩いていると、いつもなら霊体化しているアーチャーが突然実体化する。

 同時に、アーシアの令呪に走る疼き、これは近くにサーヴァントと、そのマスターが居る証であり、帰宅方向の違う藍華とアサシンではなく……敵が現れた証だ。

 

「マスター、武装を」

「はい!」

 

 瞬時に、アーシアは鞄の中からマグダラの聖骸布を取り出して身に纏い、最近ゼノヴィアから教わった亜空間の格納スペースから細剣フォーリンを取り出した。

 右手にフォーリンと堕天聖女の弓籠手(ダウンフォール・セイント・ドレッドノート)、左手に黒鍵を構えたアーシアは髪の毛で作った使い魔を四方に飛ばし、それを触媒に人払いの結界を張る。

 

「この気配は……最悪だな」

「よもや、こうも早く貴殿と合間見えることになろうとは……運命とは残酷な事だ」

「はわわ! 今日は戦いに来たんじゃありませんからね?」

「まったく、何故俺が付き添いなどと……戦えないのであれば来る理由も無いのにな」

 

 現れたのは、青年が二人と、少女が一人。内一人は白龍皇ヴァーリ・ルシファー、それから漆黒の鎧を纏うのはセイバーのサーヴァントで、最後の一人である少女は……初めて見る顔だ。

 金色の髪と青い瞳が特徴的な少女は、魔女のようなトンガリ帽子とローブ姿で、見るからに魔術師……つまり、彼女こそがセイバーのマスターという事になる。

 

「あの、初めまして! 私、ヴァーリ様率いるヴァーリチームの一員で、ルフェイ・ペンドラゴンと申します! えっと、セイバーさんのマスターです」

「ペンドラゴン、だと……?」

 

 自らのファミリーネームをペンドラゴンと名乗った少女、ルフェイは今日は戦いに来たのではないと言っているが、アーチャーとアーシアにはそれどころではない。

 ルフェイの名乗ったペンドラゴンというファミリーネーム、その名はアーチャーにとって大きな意味を持つ名なのだ。

 

「まさか、セイバーの……サー・ランスロットのマスターがアーサー王の子孫とは、随分な因果関係だな」

「ぺ、ペンドラゴン家って、凄い名家ですよぉ……教会に居た頃に聞いた事があります。ペンドラゴン家は先祖代々受け継ぐ史上最強の聖剣を所持していると」

「あ、それは兄が受け継いだコールブランドの事ですね。でも私は聖剣の適正がありませんでしたので、魔法使いになって、今はこうしてセイバーさんのマスターなんてやってるんですよ」

 

 コールブランド、その名を聞いてアーチャーがまず思ったのは、エクスカリバーの贋作に続きカリバーンの贋作までもがこの世界にあるのか、という事だった。

 コールブランドとはアーサー王が岩から引き抜いた選定の剣、カリバーンの別名であり、彼の剣はアーサー王が騎士道に背いた行いをした為に折れてしまった剣……つまり、アーサー王の失われた宝具だ。

 

「それで、セイバーのサーヴァントと白龍皇まで引き連れて戦いに来たのではないと言っていたが、何用で態々現れた?」

「えっと、用事があるのは実はヴァーリ様でして、私は特に……ただ、アーシアさんに会うという事だったので、同じマスターとしてご挨拶をと」

「私はマスターがアーチャーのマスターとお会いするという事だったので付いてきた。アーチャーのマスターは人柄的に考えて騙まし討ちをするような御仁ではないと思っているが、万が一を考えるのもまた、我々の仕事なのでご容赦願いたい」

 

 アーシアに、ヴァーリが用事? 白龍皇である彼が用事があるとすればそれは赤龍帝の一誠にだと思うのだが、その一誠にではなく、何故アーシアに用事なのか。

 

「アーシア・アルジェント、ディオドラ・アスタロトには気をつけろ。兵藤一誠やリアス・グレモリーにもそう伝えておけ」

「ディオドラさん、ですか」

 

 意外な人物の名を聞いた。つい先ほど会ったばかりの男の名を、ヴァーリから聞く事になるとは思わず、つい一瞬だが頭の理解が追い付かなかった。

 

「奴は表面上でこそ好青年を偽っているが、裏では随分と悪事を働いているらしい。そして、奴の狙いが君だと知ってね。シェムハザが気に掛けていた君には教えておくべきかと思ったんだ」

 

 話はそれだけだと、ヴァーリは一足先に立ち去ってしまった。ポケットに見えたラーメン屋の割引券は、見間違いだと思いたい。

 

「さて、どうしましょうか……? ヴァーリ様はラーメン屋に行くみたいですし」

「マスター、以前からの考えを伝えるべきでは?」

「そう、ですね!」

 

 ルフェイが改めてアーシアと向き合った。その瞳からは敵意も戦意も感じ取れない為、アーシアもフォーリンと黒鍵を下ろして構えを解く。

 

「私こと、セイバーのマスター、ルフェイ・ペンドラゴンは貴女との戦闘を望みません。ここに、停戦協定を結びませんか?」

「停戦、ですか?」

 

 ルフェイはアーシアとの戦闘を望まない。が、味方というわけでもないので、停戦協定を結ぶという形を取りたいと言って来た。

 勿論、普通ならそんな話を突然された所で信用出来るわけがないのだが、アーチャーですら納得せざるを得ない物を持ち出してきたのだ。

 

「協定を結ぶ際に、こちらにサインをします」

「っ!? 自己強制証明(セルフ・ギアス・スクロール)だと!? 正気か貴様ら!?」

 

 自己強制証明(セルフ・ギアス・スクロール)、それは魔術師にとって最も容赦の無い呪術契約の一種で、それによって結ばれた契約は絶対となり、魂に刻み込まれる。

 本来なら魔術刻印を用いて行われるものなのだが、アーシアもルフェイも魔術刻印を持たない魔術師であるため、今回は魔術刻印の代わりに令呪を用いて契約を行う事になった。

 

「一つ、セイバー及びそのマスターと、アーチャー及びそのマスターの恒久的敵対を禁ず。一つ、代理者を用いてお互いのサーヴァント及びマスターを狙う事を禁ず。一つ、両マスター及びサーヴァントは互いの家族・友人・知人に対して害を成した際は本契約を一時的に無効とする。以上を持って私ことルフェイ・ペンドラゴンは契約します」

「……賜りました。アーチャーのマスターこと私、アーシア・アルジェントもまた、以上を持って契約を結びます」

 

 これで、アーシアとアーチャー、ルフェイとセイバーは互いに敵対行動を取れなくなった。魂に刻まれた契約は絶対であるため、アーシアとルフェイは今後、死後もこの契約によって縛られる事になる。

 

「あの、どうしてこのような契約を?」

「えっと、ヴァーリ様が仰ったんですけど、「いずれアーシア・アルジェントの力を借りなければならない時が来る。その時に彼女と敵対関係にあるのは不味いから、一番の敵対関係になりそうなお前は真っ先に停戦協定を結ぶなりしておけ」との事です」

「私の力を、ですか?」

 

 何故、ヴァーリがそのような事を言って来たのかは謎だが、今考えたところで本人は既にラーメン屋へ向かってしまったので意味は無い。

 一先ず、こうして停戦協定を結んだ以上、お互いに情報開示は必要だろうと判断し、アーチャー陣営とセイバー陣営、揃って近くの喫茶店へと向かう事となった。

 

「あ、アーチャーさんは私服に着替えてくださいね」

「セイバーさんもお願いします」

「……承知した」

「承知」

 

 アーチャーは戦闘服からいつもの黒いズボンに黒いワイシャツ姿になりアーシアの後ろに付く。同時にセイバーも全身黒づくめのスーツ姿になってルフェイの背後に立った。

 

「私も、一度貴殿とは話をしてみたかった。何故、貴殿がマスターのご先祖……我が王、騎士王の失われた剣を持つのかを」

「私とて同じだ。騎士王……アルトリアと君の確執、聞きたい事がある」

 

 マスター同士に話があるように、サーヴァント同士にも話したい事は山ほどあるのだ。お互いに騎士王を知る者同士、そして騎士王に対して並々ならぬ感情を持つ者同士、嘗ての騎士王のマスターだった男と配下だった男、二人の男は殺気ではないが禍々しいオーラを放ちながら歩き始める。

 因みに、それぞれのマスターである少女二人はというと、己が従者の事はさておきアーシアが鞄から取り出したスイーツ特集の雑誌を開いてどんなケーキを食べるかで盛り上がっていた。




次回、結ばれた協定と互いの情報開示。
そして……現れたのは神の子と狂ったエクソシスト。
剣と弓の初共闘は、最強のサーヴァントとの戦いだった。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。