ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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アニメ、ハイスクールD×D三期楽しみだ。
黒歌の声がざーさんだったら笑うw
黒猫繋がりでww


第四十八話 「グレモリー公爵家」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第四十八話

「グレモリー公爵家」

 

 半日ほどだろうか、汽車に揺られようやく冥界のグレモリー領が窓の外に見えてきた。

 グレモリー領は流石に公爵家というだけあり、相当に広大で、リアスが言うには日本列島の本州ほどはあるとの事だ。

 

「すっげぇ……」

「あ、そうだわイッセー、ゼノヴィア、イリナもし領内に欲しい土地があったら教えて頂戴? イッセーの領として分け与えるから」

「へぁ!? わ、分け与えるって……えええ!?」

「領土を分け与えるとは、また随分と豪快な……」

「この歳で地主になれるなんて思わなかったなー……」

「あら当然じゃない、今見えている領土は全体が私個人所有の領土なのよ? 当然だけど眷属に分け与えるのも吝かじゃないわ……実際、あなた以外の全員が私から分け与えられた領土を持ってるのよ?」

 

 そう言われて一誠達は他のグレモリー眷属、朱乃、祐斗、小猫、ギャスパーを見るが、全員頷いてそれぞれリアス個人所有の領土内に分け与えられた自分達の領土を持っていると言った。

 勿論、それでもまだ領土は余っているので、一誠達に分け与える分は十分過ぎるほどあるらしい。

 

「因みに、将来的に私がグレモリー家の正式な当主になったらお父様が所有している領土も受け継ぐ事になるのよ……正直、少し領土を分け与えたとしても、それでもまだ余って困るくらいよ」

 

 金持ちはこれだから……、あのあかいあくまが聞いたらさぞお怒りになるだろうな、とアーチャーは生前の戦友を思い出していた。

 

「もうそろそろ着くわ、皆は降りる用意をしておいて……それで、アザゼル……先生は」

「俺はこのままグレモリー領で降りないで真っ直ぐルシファー領へ行ってサーゼクスと会談だ。今度の若手悪魔の会談の事で色々と話し合いをな」

「そう」

 

 まだアザゼル先生と呼ぶのに慣れない様子のリアスに苦笑しながらアザゼルが問いかけに答えると、納得したのかリアスはもう何も問わず荷物を纏め始めた。

 他の皆も準備を始めていたのだが、アーシアの分は既にリアスが声掛けをした段階でアーチャーが済ませてしまっている。

 

「マスター、忘れ物は無いな?」

「はい、大丈夫です!」

「ルイーナ、君はアザゼルに着いて行くのかね?」

「ううん、私も一緒に降りるよ」

 

 どうやらサーゼクスの所に行くのはアザゼルだけらしい。

 ルイーナは堕天使側の特使であるのと同時にアーシア護衛の任務も兼ねているらしいので、一緒に降りるのも当然か。

 勿論、アーシア護衛の任務を受けているのはルイーナだけではなく、イリナやガブリエルも同じだ。今回はガブリエルが本来の仕事の都合で遅れて来る事になってしまったが。

 

「着いたわ、降りましょう」

 

 ようやく目的の駅に到着したので、アザゼルを除く一行は荷物を持って電車を降りる。駅には人だかりが出来ていて、その大半がメイド、そして先頭には執事が立っていた。

 

「お帰りなさいませ、リアスお嬢様」

『お帰りなさいませ、リアスお嬢様、眷属の皆様、お客様』

 

 どうやらこのメイド集団と執事はグレモリー家からのお出迎えというわけだ。リアスが帰郷するという話は実家に通っている筈だから、公爵家令嬢のお出迎えなどあって当たり前か。

 

「んじゃあ、俺はこのままサーゼクスんところに行って会合終えてからリアスの家に向かうから、俺が行くまではバカンスを楽しみな」

「そう、じゃあアザゼル……先生、お兄様によろしくね」

「おう、それといい加減に先生って呼ぶの慣れろよな」

「……追々ね」

 

 複雑な表情をするリアスに苦笑しながらアザゼルは窓を閉めて、そのまま汽車が出発して行った。

 残されたリアス含むグレモリー眷属とアーチャー、アーシア、ルイーナは用意されていた馬車に乗る事となった。

 勿論、全員が乗れるほど馬車は大きいわけではないため、何台かに分けて乗る事になっている。

 

「じゃあ私と朱乃、小猫、ゼノヴィアで一台、イッセーと祐斗、ギャスパーで一台、アーチャーとアーシア、イリナ、ルイーナで一台に分けるわよ」

 

 とはいえ、アーチャーは別に馬車に態々乗る必要が無い。霊体化して馬車の上に乗って、アーシアとイリナ、ルイーナが馬車の中に入る。

 たとえ和平を結んだとはいえ、完全に危険が無くなったわけではないので、万が一賊が襲ってきた時は馬車の上に乗るアーチャーが狙撃する事になっているのだ。

 

「ねぇルイーナ、ルイーナは前まで冥界に住んでたんだよね?」

「うん、神の子を見張る者(グリゴリ)の本部が冥界の堕天使領にあるからね」

「どんな所なんですか?」

「う~ん……一言で言うなら、変人の巣窟?」

 

 馬車で移動中、イリナとアーシアがルイーナから神の子を見張る者(グリゴリ)について話を聞いていた。

 せっかく一緒に暮らしているのだから、ルイーナが今まで居た場所の事について色々と聞いて知っておきたいらしい。

 しかし、ルイーナから聞く話を聞いて今まで抱いていた堕天使のイメージが随分と崩れた。特に幹部が変人揃いで、神器(セイクリッド・ギア)マニアのアザゼルを筆頭に戦闘バカのコカビエル、ドMのバラキエル、特撮オタクのアルマロス、マッド研究者のサハリエルが主に変人だ。

 堕天使幹部で常識人なのはシェムハザ、ベネムネ、タミエルの三人だけなのだとか。しかもシェムハザは副総督として色々気苦労の耐えない苦労人で、出産間近だという悪魔の奥さんが居るのだが、最近は中々自宅に帰れず奥さんに寂しい思いをさせている事を悩んでいるとのこと。

 

「あ、私シェムハザ様にならお会いしたことあります」

「え!? ホントなのアーシアさん!」

「はい、教会を追放されてレイナーレ様に拾われる前なんですけど、シェムハザ様が生活費などを出して下さって……最初はお断りしたのですが、どうしてもと」

 

 それは初耳だ。まだ教会を追放されたばかりの頃のアーシアは別に神の子を見張る者(グリゴリ)所属というわけではなかったのに、その副総督であるシェムハザが何故アーシアを一時期とはいえ面倒を見るような真似をしたのか。

 それは今考えても仕方が無い事なので、三人の話は別の話題に移った。女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、乙女の会話に話題は事欠かないらしく、馬車の上で霊体化したまま周囲を警戒しつつ、それを聞いていたアーチャーはマスターが楽しそうにしている事に胸を撫で下ろしていた。

 

 

 馬車に揺られること数十分が経過して、ようやくグレモリー公爵家の本邸が見えてきた。

 馬車の上に立つアーチャーは駅からここまで襲撃が無かった事に安堵しつつ、視界の向こうに見えるグレモリー公爵家本邸を見て感嘆なため息を零す。

 

「やれやれ、貴族の豪邸などルヴィアの実家で見慣れているつもりだったが……中々どうして、公爵家ともなれば規模が違う、あれでは城だな」

 

 生前、まだ魔術師として未熟だった頃の事だ。アーチャーは魔術の師である遠坂凛と共にイギリスの時計搭へ留学した際に凛と同じ宝石魔術の名門、エーデルフェルト家で執事のアルバイトをしていた。

 エーデルフェルト家もまた、フィンランドの名門貴族として相当な豪邸だったが、このグレモリー公爵本邸はそれを遥かに上回っている。

 

「ふむ、こうして豪邸を見ていると執事の血が疼くな……どれ、マスターが涙目になるかもしれんが、まぁ私のようなサーヴァントを召喚したマスターの責任という事で私も遊ばせて貰うとするか」

 

 この時、アーシアが嫌な予感がしたとかで一瞬震えたのだが、アーチャーがそれに気づいたのかどうかは、定かではない。

 

 

 馬車がグレモリー公爵本邸に到着した。近くで見ればますます城にしか見えない大豪邸の玄関前には玄関から馬車まで一直線にレッドカーペットが敷かれ、その周りには大勢のメイドと執事が一列に並び頭を下げていた。

 そして、玄関前にはグレイフィアが一人立っており、周りのメイド達と同じく頭を下げてリアス達の出迎えをしている。

 

「おかえりなさいませ、リアスお嬢様、眷属の皆様、アーシア様、アーチャー様、ルイーナ様」

 

 アーシアが馬車から降りた段階でアーチャーも実体化して彼女の後ろに控えていたのだが、やはりグレイフィアのメイドとしてのスキルは高いと感心する。

 他のメイドや執事達の練度も中々のもので、超一流の執事を自負するアーチャーも内心で対抗心を燃やしていた。

 

「ただいまグレイフィア、お父様やお母様はいらっしゃるかしら?」

「はい、旦那様も奥様も皆様のお帰りを心待ちにしておいでです」

 

 グレイフィアは優雅にその場で扉の方へ振り返り、ゆっくりと扉を開いていく。レッドカーペットは中にまで続いており、大きな玄関ホールには巨大なシャンデリアが見えた。

 そして何より驚いたのは、その玄関ホールに見慣れない一人の少年が立っており、リアス達の姿を確認するや否やリアスの下へ駆け寄ってくる。

 

「おかえりなさいリアス姉さま!!」

「ミリキャス! 久しぶりね!」

 

 ミリキャスと呼ばれた赤髪の少年はリアスに抱きつき、リアスもそんな少年の頭を撫でる。まるで姉弟のようなやり取りだが、このミリキャスという少年の顔つき、何処かで見た覚えがあった。

 

「部長、その子は……?」

「ああ、イッセーやゼノヴィア、イリナ、アーシア、アーチャーは初めてよね。紹介するわ、この子はミリキャス・グレモリー……お兄様と、そこに居るグレイフィアの息子で、私の甥に当たる子よ」

 

 なるほど、サーゼクスとグレイフィアの息子だったのか。確かによく見ればサーゼクスとグレイフィア、二人の面影を感じさせる。

 それに、まだ幼いながらも魔王と最上級悪魔を両親に持つが故の膨大な魔力をその身に秘めている事から、将来は確実に優秀な悪魔となるだろう。

 

「ミリキャス、彼らが私の新しい眷属と、それからお客様よ。左から兵藤一誠、ゼノヴィア、紫藤イリナ、アーシア・アルジェント、アーチャー、ルイーナ」

「ミリキャス・グレモリーです! 皆さん、よろしくお願いします!」

 

 躾がよく行き届いているのだろう、大変礼儀正しく良い子だ。

 

「おお、リアス! 帰っていたか」

「お帰りなさい、リアス」

「お父様! お母様!」

 

 すると、ホールにある螺旋階段の上、吹き抜けになっている二階の通路に二人の人物が顔を出した。

 リアスやサーゼクス、ミリキャスと同じ赤い髪を持った壮年の男性と、亜麻色の髪のご婦人、リアスとサーゼクスの父と母であり、ミリキャスの祖父母だ。

 

「主人は以前にお会いした事があるでしょうけど、私とは初めましてですね? 赤龍帝・兵藤一誠殿、聖剣デュランダルのゼノヴィア殿、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の紫藤イリナ殿、聖女アーシア・アルジェント殿、サーヴァント・アーチャー殿……リアスの母、ヴェネラナ・グレモリーと申します」

 

 ヴェネラナ・グレモリー。アザゼルからの事前知識によれば、グレモリー卿と結婚する前はソロモン72柱が第1位、大いなる王の地位を持つバアル大王家の姫君で、バアル家最強の女性と呼ばれる程の大悪魔だった。

 亜麻髪の殲滅姫(ルイン・プリンセス)と呼ばれ、娘のリアスの二つ名である紅髪の殲滅姫(ルイン・プリンセス)の前身を築いた歴戦の勇士でもある。

 今では結婚して前線を退いているが、その実力は衰えておらず、亜麻髪の絶滅淑女(マダム・ザ・エクスティンクト)と呼ばれ、その筋の者からは畏怖の念を抱かれている程だ。

 

「立ち話もなんですし、部屋をご用意させましたので、皆様どうぞお部屋へご案内致しますわ。グレイフィア、お願いね?」

「はい、奥様。それでは皆様、お部屋へご案内致します、こちらへ」

 

 グレイフィアに案内され、用意された部屋へ向かう道中、一誠がミリキャスに随分と懐かれたのか、色々とミリキャスから質問されて困っていた。

 アーチャーはというと、部屋へ向かいながら屋敷内のメイドや執事の仕事を拝見して、その仕事ぶりを評価しつつ、改善点をリストアップしている。

 

「グレイフィア・ルキフグス」

「何でしょうか? アーチャー殿」

「後ほど屋敷のメイド、執事の仕事について私なりに改善点を洗い出してみたから話をしたい」

「っ! それは……大変興味がありますね」

 

 まさかこの男、本気でグレモリー公爵家の使用人達の頂点にでも立つつもりなのかと、アーシアとイリナ、ルイーナは思っていた。

 とりあえず、アーシアが感じた嫌な予感は、当たりそうだと、アーシアは今から泣きそうになってしまうのだが、肝心の従者はそれに気づいていても止める気配は無さそうだった。




ロスヴァイセの声、誰でしょうねぇ。ちょっと楽しみ。

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