ハイスクールD×D~堕ちた聖女の剣~   作:剣の舞姫

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ああ、4月の第三期が楽しみ。


第四十三話 「聖女の後悔」

ハイスクールD×D

~堕ちた聖女の剣~

 

第四十三話

「聖女の後悔」

 

 ヴァーリの力による周囲の物全ての半減の力、それがリアスのおっぱいまで半分にしてしまうというアザゼルの指摘によって驚異的なパワーアップを果たした一誠は、先ほどまでとは一変し、ヴァーリを一方的に追い詰めるほどになっていた。

 パワーアップの理由が女性の胸、という時点でドライグが先ほどから涙声になっているのだが、残念ながらそれを気にする者は今のところ一人も居ないのは哀れだが。

 

「グハッ!? な、何だこのスピードは!?」

 

 ヴァーリですら反応出来ない速度で接近し、ヴァーリの鳩尾に一誠の左拳が突き刺さって衝撃が鎧の内側、ヴァーリ本体に徹った。

 血を吐きながら何とか一誠から距離を取って遠距離戦を取ろうとするヴァーリだったが、一誠の追撃から逃げる事は出来ない。

 

「ヴァーリ! テメェを野放しにしてたら、部長どころか他の皆のおっぱいまで半分になっちまう!! これは、部長のおっぱいの分!!!」

【Divide!】

 

 再び、今度は白龍皇の籠手(ディバイディング・ギア)となっている右拳が鳩尾に突き刺さり、ヴァーリの力を半減し、その分更に一誠がパワーアップする。

 

「これは! 朱乃さんのおっぱいの分!!!」

 

 血を吐くヴァーリに更に追い討ちとして頭突きをする。衝撃で一誠もヴァーリもフルフェイスになっていた鎧の頭部が砕けてしまい、二人揃って素顔が露出した。

 二人とも、口から血を吐いて、口周りに血の跡がべったりくっついているのに、一誠もヴァーリもそれを気にする余裕は無い。

 

「これは、成長中のアーシアのおっぱいの分!!!」

 

 蹴りが決まるが、正直に言おう、アーチャーに聞かれていたらと考えると血の気が引く思いだ。

 

「ゼノヴィアのおっぱいの分!!!」

 

 鎧が無くなったヴァーリの左頬にストレートが入り、脳を直接揺らした。

 

「イリナのおっぱいの分!!!」

 

 頂肘が再び胸に決まり、ヴァーリの胸の鎧が砕け散った。同時に一斉の右肘部分の鎧も砕けて腕が露出してしまう。

 

「そしてこれは! 半分にされたらまるっきり無くなっちまう小猫ちゃんのロリおっぱいの分だぁああああああああ!!!!!」

 

 裏拳が、ヴァーリの顎を直撃して脳震盪を起こした。確実にこれがクリーンヒットとなったのだろう、バランスを失ったヴァーリが地面に力無く落下して激突する。

 

「……イッセー先輩、後で殺します」

 

 因みに聞かれてたらしい。小猫がぶっとい青筋を浮かべて物騒な事を口走っていた。

 小猫から発せられる殺気に内心ビクビクしながら一誠は地面に着地して荒い息を吐きながらヴァーリの様子を伺う。

 

「くっ……お、面白い、まさか俺が、立てなくなるほど追い詰められるとはな」

 

 二度も脳を思いっきり揺さぶられたヴァーリは、どうやら足に力が入らなくなったらしく、横たわったまま立ち上がれずにいるようだ。

 たとえ悪魔と人間のハーフで、人間以上の身体能力を持っていても、脳を揺さぶられてまともに立てる筈も無い。

 

「面白すぎる、なぁアルビオン……彼になら、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を見せるだけの価値がありそうだな」

『自重しろヴァーリ、この場でそれは良い選択ではない。もう間もなく美猴が来る、それまで何とか持ちこたえろ』

「その為には、覇龍(ジャガーノート・ドライブ)が一番だ……あれ以外では立てそうにない」

 

 一誠が倒れているヴァーリを捕らえようと近づいた時、ヴァーリは不適な笑みを一誠に向け、そして己が最大の切り札を発動する呪文を発するため、その口を開く。

 

「我、目覚めるは覇の理に全てを奪われし、二天龍なり」

『ヴァーリ! 我が力に翻弄されるのがお前の本懐か! 自分を見失うな!』

 

 呪文を唱え始めたヴァーリにアルビオンが静止の声を上げると、突如上空から何かが結界を破って侵入してきた。

 中華風の衣装に身を包んだ黒い短髪の男性で、その手には一本の棒……所謂棍棒、もしくは如意棒と呼ばれる武器を持っている。

 何事かと一誠が構えるが、侵入者には戦意が感じられず、人懐っこい笑みを浮かべているだけだ。

 

「美猴……もう時間か」

「おう、北のアース神族と一戦交えるから早く帰って来いってよ」

「な、何モンだテメェ!」

 

 どうやらヴァーリの知り合いらしい。随分と親しげにしている様子から同じ禍の団(カオス・ブリゲード)の一員かと思われる。

 

「そいつは美猴、闘戦勝仏の末裔だ」

「は、はぁ……?」

 

 闘戦勝仏と言われても一誠には何が何だか理解出来ない。随分と勉強不足というか、歴史の成績が悪いのか。

 

「わかりやすく言えば、西遊記で有名なクソ猿……孫悟空だ」

「そ、孫悟空だって!?」

 

 孫悟空、それは中国の四代奇書小説「西遊記」に登場する上仙、道教では今も尚、崇拝される神であり、香港や台湾、東南アジアでは斉天大聖と呼ばれ信仰されている。

 別名、孫行者。元々は一匹の石猿が、とある理由で美猴王と名乗るようになり、その後に弟子入りした仙人より孫悟空という法名を与えられたのが始まりだ。

 

「まさかお前まで禍の団(カオス・ブリゲード)入りしてたとは、世も末だなぁ……いや、白いドラゴンに孫悟空、お似合いでもあるか」

 

 確かに孫悟空が登場する西遊記にも白竜の話があるので、ある意味でお似合いと言えば間違いではないかもしれない。

 

「カッカッカッ! 俺っちは初代とは違って、自由気ままに生きるんだぜぃ……お、あっちも終わってるみたいだな」

 

 美猴がアーチャーと戦っている筈のバーサーカーの方へ目を向けてみれば、倒れたアーチャーにバーサーカーが歩みより、今まさにトドメを刺そうとしている所だった。

 

「あ、アーチャーさん!?」

 

 まずい、そう思った一誠は慌ててバーサーカーへ突撃しようとしたのだが、突如バーサーカーが方天画戟を振り上げた態勢のまま動きを止めて、数秒後その姿を霊体化して消した。

 

「あっちも帰ったみたいだし、俺っち達も帰ろうぜぃ?」

「ああ、それは良いが……起こしてくれるか?」

「お? なんだヴァーリ、いつまで寝てるのかと思ったら起きれないんか?」

「ああ、脳を何度も揺さぶられてな……足腰に力が入らない」

「へぇ、赤龍帝ってそこまで強いのか! 良いねぇ、じゃあ今度は俺っちとも戦ってくれよな!」

 

 キラッキラした目を一誠に向けてそう宣言した後、美猴は地面に如意棒を突き立てて転移らしき術を発動した。

 地面に出来た渦の中に二人が沈んでいき、完全にその姿が消えていく。

 

「兵藤一誠……今日は本当に楽しかった。また、やろう……今度は今よりもっと強く、もっと激しく、それまで俺も、腕を磨いておくとしよう」

「ま、待て逃がすか! っ! うおっ!?」

 

 逃げる二人を追おうと一歩踏み出した一誠だったが、突如鎧が解けてその場に倒れてしまった。

 禁手化(バランスブレイカー)の維持が出来なくなり強制的に解除されたのだろう。同時に先ほどまでの爆発的なパワーアップの影響で身体には一切の力が入らない。

 

「あれだけの力を一瞬とは言え爆発的に発散したんだ、無理も無い……まぁ暫く筋肉痛に悩まされるだろうが、その間はゆっくり休め」

「ああ、そうさせて貰うよ……身体、動かねぇしな」

「イッセー!!」

「兵藤一誠!!」

 

 倒れた一誠を心配して、リアスとゼノヴィアが駆け寄ってきた。

 邪魔だとばかりに押し退けられたアザゼルは苦笑しながらもう一人倒れている人物の方に目を向けてみれば、そちらはそちらでアーシアとイリナ、セラフォルー、ガブリエルが駆け寄り、アーシアとガブリエル、セラフォルーによって必死の治療が行われている。

 

「良いねぇ、美少女に囲まれるなんて……まぁ、約一名は全く羨ましくないが」

「おや、アザゼルは相変わらずガブリエルが苦手ですか?」

「ああ? ミカエルか……ああ、苦手だね、あいつは昔っからな」

「まったく、貴方とガブリエルは幼馴染なのですから、もう少し素直になっては如何です? 確か貴方が堕天した理由は貴方が大昔に知識を与えた人間のお尻を触ったからではなく、ガブリエルのお尻を触ったからでしたよね?」

「うっせぇな、んな黒歴史を公言してんじゃねぇよ。それに人間の尻触って堕天したのはコカビエルだぜ?」

「そういえば彼、昔は生真面目な天使でしたが、何故そんな真似をしたんでしょうね?」

「さぁ? どっかの誰かさんに嗾けられたんじゃねぇの?」

 

 とんでもない歴史的事実が暴露されているが、幸いにして聞いている者は居なかった……サーゼクスただ一人を除いて。

 

「彼らも中々面白い関係だ、そう思わないかい? グレイフィア」

「サーゼクス様、盗み聞きははしたないですよ、魔王なのですから御自重下さい」

 

 

 一方、倒れたアーチャーに真っ先に駆け寄ったアーシアは涙を流しながら聖母の微笑(トワイライトヒーリング)で腹部の治療を行っていた。

 未だ出血の止まらない腹部の傷を塞いでからでなければ、アーチャーが死ぬと思ったが故の判断だが、千切れかけの右腕に手が回るほど魔力が残るかどうか。

 

「アーチャーさん、アーチャーさん!」

「アーシアちゃん、手伝うよ!」

「私も、微力ながらお手伝いします」

 

 アーシアがアーチャーの腹部の治療を行っている間に、ガブリエルが右腕の、セラフォルーが他の細かな傷の治療を始め、イリナは涙を流すアーシアの両肩に手を沿え、励ましの言葉を掛けていた。

 

「大丈夫、セラフォルー様とガブリエル様が手伝って下さるから、きっと助かるよ」

「はい……ありがとう、ございます」

「ううん、アーチャー君は恩人だもの☆」

「必死に戦った殿方を癒すのも、女性の務めですよ」

 

 涙を拭って治療を再開したアーシアだったが、内心ではアーチャーへの心配だけではなく、自身への怒りで一杯だった。

 アーチャーが全力で戦えなかったのは自分の所為だと。アーシアがマスターだから、魔術師として未熟で、魔力の絶対数も少ないから、アーチャーは全力を出せず、彼本来の宝具も使えなかったのだ。

 もし、アーシアの魔力の絶対値がもっと高ければ、アーチャーのステータスは今より上だっただろうし、宝具だって使えた筈。

 それを考えると、アーシアは未熟過ぎる己を責めずにいられない。

 

「……っ! 私は、アーチャーさんのマスター失格です」

「え? どうして? アーシアさん」

「私の、魔力が少ないから……アーチャーさんは全力を出せなかったんです」

「えっと、どうしてアーシアちゃんの魔力の少なさがアーチャー君の全力を出せなかった事に繋がるのかな?」

「……サーヴァントさんは、マスターの魔力によってステータスが決まるんです。供給出来る魔力が多ければ多いほど、生前に近い力が発揮出来ますが、私の魔力ではアーチャーさんの生前と同等レベルの戦闘が出来るほど供給出来ないんです」

 

 アーシアは令呪に目を落とす。己の未熟が原因で一角を失う事になり、これを戒めとしてもっと強くなろうと決意した。

 だけど、アーシアが強くなったとしても、魔力の問題をどうにかしなければいつまでもアーシアはアーチャーの足手纏いでしかない。

 何が覚悟を決めただ。何が強くなるだ……強くなる前に、魔術師として未熟過ぎる自分を、魔力が少ない自分を、アーチャーに供給出来る魔力を、まず始めに何とかしなければならなかったのに、自分のことばかり考えていた。

 

「アーシアさん、ひとつお聞きしたいのですが」

「はい……?」

「悪魔に……僧侶(ビショップ)に転生すれば魔力は増えた筈です。それを、しなかったのは何故ですか?」

 

 ガブリエルの問いにセラフォルーとイリナも確かにと思う。

 悪魔の駒(イービル・ピース)の一つ、僧侶(ビショップ)の駒は魔力を底上げする効果がある。それを使って悪魔に転生していれば、アーシアの魔力の問題は解決したのではないのかと。

 

「駄目、なんです。悪魔に転生すると、私は魔術が使えなくなりますし、転生するという事は人間として一度死んでしまうという事です。死んだ時点でアーチャーさんとの契約は切れますし、再契約したとしても魔術回路が死滅して、魔力供給出来なくなって結局はアーチャーさんが現界していられなくなりますから」

 

「魔術回路? 何ソレ?」

「魔術を使うのに必要な霊的器官ですが……イリナさん、ご存知無いんですか?」

「え? ……聞いたこと無いよ、だって魔術師って悪魔の魔力を人間が扱えるようにアレンジしたものを使うんじゃないの?」

「え?」

「え?」

「?」

「?」

 

 どうにも知識に齟齬が生じて会話が成立しない。

 とりあえず、このことはアーチャーが起きてから改めて尋ねる事にして、今はアーチャーの治療に専念する事にした。

 

「どうやら校舎の修復も始まったみたいですね」

「本当ですね! 悪魔や天使様、それに堕天使が協力して校舎修復作業してる!」

 

 この分なら無事和平成立と考えて良いだろう。

 一つの目的が一先ず完了して、ホッと胸を撫で下ろしたアーシアは、治療を終えたアーチャーを膝枕しながら聖母の微笑(トワイライトヒーリング)に目を向けた。

 

「もし、私が禁手化(バランスブレイカー)に至るなら……アーチャーさんのお役に立てる進化をしたいです、聖母の微笑(トワイライトヒーリング)……あなたは、どんな進化をしてくれるんでしょう?」

 

 アーシアの呟きに、何か返事が来る事は無い。当然だ、聖母の微笑(トワイライトヒーリング)には赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)のように魂が封じられているわけではないのだから。

 ただ、アーシアが聖母の微笑(トワイライトヒーリング)から目を離し、星空を見上げたとき、一瞬だが聖母の微笑(トワイライトヒーリング)が緑色の光を帯びたのに、気づく事は無かった。




次回はアザゼル先生が登場。







一誠「ちょ、小猫ちゃん!?」

小猫「イッセー先輩、死んでください」

一誠「な、何で!?」

小猫「誰が半分になったらまるっきり無くなるロリおっぱいですか」

一誠「あ、あれは! その……ごめんなさい!」

小猫「……許しません」

一誠「え? あ、い、いや……やめ、アッーーーーーーーー!!!!!」

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